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11話 開発 その3
しおりを挟む「あの危険なE区画の奥地にね……そんなに金が隠されてたか」
宿舎でE区画の報告を聞いた班長のデゴールは、驚きを隠せない表情になっていた。
「ええ、あの辺りを崩れないように重点的に整備して、魔物を排除したら、50年は金が出続けるんじゃない? ここの生活だって潤うと思うわよ」
「嬢ちゃん……マジで何者だよ……」
「私じゃないの。調べてくれたのはミランダなんだから。彼女の手柄かも」
と言いいながら、アイリーンはミランダに視線を合わせる。
「いえ……とんでもないです。私はアイリーン様の仰せの通りに動いただけ」
「いいえ、あなたの事前調査がなかったら、班長も信じてくれなかったでしょ。まあまだ、完全に信用されてるわけではないだろうけど」
そう言いながら、今度はデゴールの方向に目をやるアイリーン。デゴールは確かに信じられないといった思いを持っていたが、一人の女性が危険な区域に調査に行ったという事実を一蹴する気はなかった。
「はははっ。嬢ちゃんの先見の目の段階で既におかしいからな……よし、今後はE区画の開発に全精力を投入するぜ」
「やった! さすが班長! ゲシュタルト王国なんかに盗られる前に、早く進めてよね!」
「はは……さすが、追放された侯爵令嬢さんは言うことが違うねぇ……」
デゴールは苦笑いをしつつも、大胆な発言で国家を敵に回しているアイリーンに感心していた。追放された令嬢……本来であれば、生活能力など皆無であるはずだ。右往左往しつつ、醜態を晒してしまうのが想像できる図であったが、アイリーンはそんな様子を一切見せていない。
それどころか、アランドロ女王国の伯爵に取り入り、この金鉱山の管理権を譲渡して、金そのものも女王国に渡してしまおうと言うのだから恐ろしいものだ。
「……嬢ちゃん」
「えっ、なに?」
「なんか、嬢ちゃんを見てたら、こんな辺境地で中央部の奴らの態度に愚痴をこぼしてたのが阿呆らしくなってきたぜ。人間は、前に進まないと成長なんかできねぇって再確認させられたよ」
「ええ……班長?」
なぜか感動している班長に、アイリーンは困った表情になっていた。感動した理由はなんとなく察しが付いているが、その点で感動されると彼女は困るのだ。
「文句言う暇があるなら手を、足を動かせ。俺自身が昔から部下に言ってた言葉だったが……いつの間にか、忘れてたんだな。まさか、倍ほども若い嬢ちゃんに教えられるとは……」
「う、うん……そうね……あはは」
不味い……自分の行動力は、ゲームという完璧な知識チートのおかげだ。もしも、完全に何の情報もなければ、とても焦りまくり、なにもできなかっただろう。
料理や家事のことで褒められるのは、自らが努力で得た能力なので嬉しいが……デゴールに感動されるのは嬉しくはあったが、彼女の表情はなんとも微妙な様相を呈していた。
「げ、ゲームの知識だって、私が努力して手に入れた物だし……う、うん! そうよねっ! きっとそう!」
「ゲーム? アイリーン様、ゲームをしたいのですか?」
「あ、ううん。こっちの話」
悩んでも仕方ないと、アイリーンは全部、努力で手に入れたのだと思うことにした。
「さて、話もまとまりましたね。班長殿、私も協力いたしますよ。何なりと申し付けてください」
「へへ、新たな伯爵様に仕事を任せるっていうのは恐れ多いが……まあ、地盤の強化や照明の設置など、やることは山積みだからな! あんたの勢力で資材の調達とかは出来るかい?」
「ええ、出来るだけ早急に集めさせますよ」
やる気を再燃させたような態度のデゴールに触発されたのか、アルガスもテンションが上がっているように感じられた。
金鉱山の開発……アイリーン達にとっての生活の基盤となる財源。それが大幅に向上することになるのだった。
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