婚約破棄令嬢、不敵に笑いながら敬愛する伯爵の元へ

あめり

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12話 王国中央部にて

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 ゲシュタルト王国の中央政権。ラウツ王族の権力が最も強い地域だ。王都ユニバースがその地域になるが、現在では小規模の暴動事件が多発していた。その原因が……


「ちっ、アイリーンを追放したことで、ここまで民衆が激怒するとはな」

「ウィンドミル殿下、如何いたしましょうか? 現在は死者が出ないように穏便に制圧していますが、そろそろ本格的に武力鎮圧をしないと、暴動の波が大きくなるかもしれません」

 ウィンドミル・ラウツに意見をしているのは、兵士長の一人であるゴウラ子爵だ。彼は自ら前線に出て鎮圧していることから、相手の勢いが増していることに警戒していた。


「いや……武力制圧は不味い。自らの中枢の暴動に、本格的な武力介入をしたとなっては、各地を治めている貴族が図に乗りかねん。国王の交代時期の現在で、隙を見せるわけにはいかん。隣国のアランドロ女王国のこともあるしな」


「わかりました。そちらはしばらく、今まで通りの鎮圧にしておきます……それから、これは部下からの報告なんですが」

「なんだ?」


 ゴウラ子爵はウィンドミルが意見を崩さないと見るや、話題を変えた。しかし、その顔色は良くない。


「北の金鉱山の責任者からですが……今回は、ノルマ通りの金を持って来たらしいです」

「なに? 今になってノルマを達成したのか? あの便所の掃き溜めに連中が?」

「ええ……今まで文句ばかり言っていたらしいですが、今回は謝っていたと」

「……なにが起きてる?」


 ウィンドミルは腑に落ちないといった表情を見せていた。そもそも、あのような辺境地などに時間を割いているわけにはいかないのだが、彼の中で嫌な予感が生まれていた。

「金鉱山の土地を治めていたのは誰だ?」

「土地という意味合いでは、ラークス伯爵です。ただし、管理権がアイリーン様にあった以上、金の所有権は彼女にあるということになりますが」

「……アイリーンか」


 アイリーンは何処かで生きているのか? 奴隷としてどこかの馬の骨ともわからない男に買われているなどは期待していたが。ウィンドミルはそのような下衆な考えを巡らせていたが、嫌な予感は消えていない。


「ゴウラ子爵」

「は、はい。なんでしょうか?」

「ラークス伯爵に連絡を取り、早急に辺境地の金鉱山の調査に当たらせろ」


 突然のウィンドミルの発言にゴウラも驚いた。いくらなんでも唐突過ぎる。


「殿下、現状ではいきなりそのようなことは出来ません。ラークス伯爵も忙しい身ですし」

「何を言っている? 俺の言うことが聞けないのか? 子爵、どこかの娘と同じ末路を辿りたくなければ、すぐに取り掛かるんだな」

「……畏まりました」


 ゴウラ子爵は歯を食いしばっていたが、追放されることは避けたいと考え、ウィンドミルに一礼して去って行った。

「くそ……この忙しい時に、余計な心労が増えてしまった。どいつもこいつも……俺達王族があっての国家だということを忘れてやがるな」

 ウィンドミルはゴウラの態度にも怒りが沸いていた。やり場のない鬱憤は近くの壁に向けられた。

 その後、金鉱山に王国からの調査が入ることが正式に決まった。





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