魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん

文字の大きさ
105 / 310

大変!

しおりを挟む
 サンサンと降り注ぐ日の光、やんわりと空を覆うかすみ雲。
 平和な朝のロームルス学園に、元気いっぱいな声が響いていた。

「今日も学校じゃ! 楽しい楽しい学校じゃ!」

 軽やかな足取りで教室塔へと向かうウルリカ様。両手にはオリヴィアお手製のクッキーを握りしめて、朝からとっても幸せそうだ。

「ウルリカ様? 落ちついて食べないと喉に詰まらせてしまいますよ?」

「平気なのじゃ、クッキーは喉に詰まらんのじゃ! なぜなら美味しいからなのじゃ! ポリポリ……」

 クッキーは喉に詰まらないという謎の主張に、オリヴィアは「はい?」と声をあげて呆れてしまう。
 一方のウルリカ様はというと、ほっぺたをクッキーでいっぱいにしながら教室塔へ向かっていく。すると前を歩く一人の男子生徒を発見する。

「シャルルなのじゃ! おはようなのじゃ!」

 前を歩いていたのは、同じ下級クラスのシャルルである。ウルリカ様の声に振り返ると、沈んだ声で挨拶を返す。

「あぁ……ウルリカ嬢にオリヴィア嬢、おはよう……」

「うむ? なにやらシャルルは元気がなさそうじゃな?」

「いつも元気なシャルル様ですのに、今日はお疲れのように見えますね」

「もしやクッキー不足かのう? 妾のクッキーを食べるかのう?」

「いや……クッキー不足ではなくてだな……最近は実家のことで忙しいのだ……」

 以前より少しやつれ気味なシャルルは、「はぁ……」と大きなため息をこぼす。

「確かシャルル様のご実家は、王都の端にある小さな教会でしたよね。教会でなにかあったのですか?」

「あぁ……実は先日から王都ロームルスに、教会の教主様がいらしているんだ。普段は総本山にいる教主様が王都にいらしたということで、王都中の教会は大騒ぎなんだ」

「教主様のお話は私も知っています、町中の噂になってますよね。もしかしてシャルル様のご実家も、その大騒ぎに巻き込まれているのですか?」

「そうなんだ……教主様におもてなしをするため、王都中の教会から人手を集めているんだ。それに父も招集されて……そういうわけで自分は、父の代理で実家の教会を任されてしまったんだ」

「急に教会を任されるだなんて、それは大変そうですね……」

 再び「はぁ……」とため息をこぼすシャルル。教会での仕事に追われているのだろう、すっかり疲れ切った様子である。

「シャルルは偉いのじゃ! 父の代わりに教会を守る頑張り屋さんなのじゃ! ポリポリ……」

 そう言いながらウルリカ様は、シャルルの頭を撫でようとしてグッと背を伸ばす。ところが背伸びをした拍子に、フラリと足をもつれさせてしまう。ほっぺたいっぱいにクッキーを頬張ったままフラフラとよろけてしまい、そして──。

「むむぐっ!?」

「ウルリカ様!?」

「大変だ! よろけた拍子にクッキーを喉に詰まらせてしまったようだ!」

「むぐぅーっ!」

 クッキーを喉に詰まらせてしまい、バタバタを暴れ回るウルリカ様。オリヴィアとシャルルは二人がかりで、なんとかウルリカ様を抑え込む。そしてクッキーを吐き出させるために背中を叩こうとした、その時──。

「大変ですわ! 大変ですわーっ!!」

 大声をあげながら走ってくるのは、同じ下級クラスのシャルロットである。走るシャルロットの真上を見ると、なにやら巨大な影がバサバサと羽ばたいている。

「グルオオォッ!」

「きゃあぁっ! ド……ドラゴンですぅ!?」

「ドラゴン!? なぜ学園内にドラゴンがいるのだ!?」

 真紅のうろこに覆われた巨大な体。ギラリと光る鋭い爪と牙。突如として現れたドラゴンに、オリヴィアとシャルルは大慌てだ。

「はぁ……はぁ……助けてくださいですの……。教室塔に向かっていたら……突然ドラゴンに襲われましたの……」

「くっ……このままドラゴンを放っておくわけにはいかない、しかし自分達だけでどうにか出来る相手か!?」

「むぐぅっ! むぐぅっ!」

「大変です! ウルリカ様の顔が真っ青です!」

「そうだった! 先にウルリカ嬢をなんとかしなければ!」

 上空には真紅の巨大なドラゴン、地上には真っ青な顔のウルリカ様。あっちもこっちも大騒ぎの大混乱である。そんな中さらに──。

「大変だー! 大変だぞー!」

 聞き覚えのある声の主は、同じ下級クラスのベッポである。どこにいるのかと探してみれば、なんとドラゴンの背中からヒョッコリと顔を覗かせているではないか。

「「「ベッポォ!?」」」

「むぐんっ!? ぷはぁ!」

 思いがけないベッポの登場に、大声をあげて驚くオリヴィアとシャルロット、そしてシャルルの三人。三人の大きな声に驚いたウルリカ様は、喉に詰まらせていたクッキーを飲み込んでしまう。

「はぁ……はぁ……死ぬところだったのじゃ……」

 クッキーを飲み込んで、ホッと一安心のウルリカ様。舞い降りてくるドラゴンを前に、まったく一安心ではないオリヴィア、シャルロット、シャルルの三人。
 そんな中ドラゴンの背中から、ベッポはピョンと飛び降りてくる。

「ちょっとベッポ! このドラゴンは一体なんですの!?」

「このドラゴンはですね……って、今はそれよりも一大事です!」

「「「「一大事?」」」」

「ナターシャが……ナターシャが誘拐された!」

「ナターシャが誘拐……って、なんじゃとー!?」

 大混乱に次ぐ大混乱、新たな事件の幕開けである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな
ファンタジー
全てを創世せし神によって造られた、様々な種族が生息する世界──その名はレディアダント。 世界は神の子孫代々によって守られ、幾多の脅威に挑みし者達は人々の間では英雄として語り継がれ、勇者とも呼ばれていた。 そして勇者の一人であり、大魔導師となる者によって建国されたレイニーラ王国。民は魔法を英雄の力として崇め、王国に住む少年グライン・エアフレイドは大魔導師に憧れていた。魔法学校を卒業したグラインは王国を守る魔法戦士兵団の入団を志願し、入団テストを受ける事になる。 一つの試練から始まる物語は、やがて大きな戦いへと発展するようになる──。 ※RPG感のある王道路線型の光と闇のファンタジーです。ストーリー内容、戦闘描写において流血表現、残酷表現が含まれる場合もあり。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...