魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん

文字の大きさ
141 / 310

第七階梯魔法

しおりを挟む
 時は少し遡る──。

 ロアーナの町を吸血鬼が襲っていたころ、ロアーナ高原では死んだはずの魔物が蘇り、ロアーナ軍へと襲いかかっていた。
 どす黒く変色した魔物は以前よりも凶暴性を増している。血と肉を撒き散らしながら暴れ回る姿は、この上なく悍ましい。
 しかしロアーナ軍の兵士は誰一人として怯んではいない。

「常に一対多の戦いを心がけろ! 血を浴びないよう注意しろ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 聖騎士ゴーヴァンによる指揮の元、ロアーナ軍は見事な戦いを見せていた。突然の事態にもかかわらず素晴らしい対応力と統率力である。
 しかし蘇った魔物はアンデットと化しており、そう簡単に倒すことは出来ない。どれだけ攻撃を加えても、瞬時に回復してしまうのである。

「くっ……ダメです! 斬撃が効いていません!」

「構わん! とにかく足止めに専念するのだ!」

 ゴーヴァンは一対多による足止めを徹底している、どうやら最初から魔物を倒すつもりはないらしい。一見すると不可解にも思える指示だが、その理由はすぐに明らかとなる。

「第五階梯……赤熱魔法、グロリオッサブレイス……」

 クリスティーナの魔法が炸裂したのである。全て焼き尽くす赤色の炎を前に、アンデットはなす術もない。

「次……次……次……」

 絶え間なく放たれる赤色の炎。驚くべきことにクリスティーナは、上位魔法である第五階梯魔法を連発しているのである。流石は国内屈指の実力を持つ魔法の使い手である。
 ロアーナ軍による足止めとクリスティーナの魔法によって、蘇った魔物はあっという間に数を減らしていく。しかし──。

「ジュルオォォッ!」

「っ……やっぱりタイラントドラゴンは……そう簡単には倒せないわね……」

 タイラントドラゴンは討伐難易度Aに分類される強力な魔物である。アンデットの不死性を手に入れたことで、いよいよ手がつけられない。

「困ったわね……うん……」

 クリスティーナは静かに考えを巡らせる。そうしている間にも魔法を放ち続けているのだから、まったくもって凄まじい。

「決めた……タイラントドラゴンは私が片づける……、少し集中するから……ゴーヴァンは時間稼ぎをお願い……」

「承知しました!」

 ゴーヴァンはすぐさまロアーナ兵を集めると、タイラントドラゴンへと突撃していく。

「「「「「うおぉーっ!!」」」」」

「いくぞ! 奥義、疾風双刃!」

 乱れ飛ぶ疾風の刃は、タイラントドラゴンに大きな傷跡を残す。しかしアンデットと化したタイラントドラゴンは瞬時に回復してしまう。

「倒せなくとも構わん! とにかく時間を稼ぐんだ!」

「「「「「はっ!」」」」」

「ジュラッ! ジュラアァッ!」

 暴れ狂うタイラントドラゴンの前に、ロアーナ兵は一人、また一人と吹き飛ばされていく。鎧によって命こそ守られているものの、戦闘に復帰することは難しいだろう。
 十数名いたはずのロアーナ兵は、ゴーヴァンを含めて数名しか残っていない。とてもではないがタイラントドラゴンを倒すことなど出来ないだろう。それでもゴーヴァンとロアーナ兵は決死の攻撃を続ける。

「必ずやクリスティーナ様がタイラントドラゴンを倒してくださる! もう少し時間を稼ぐのだ!」

「「「はっ!」」」

「ジュラアァーッ!」

 ゴーヴァンとて無事ではない、立っているのが不思議なほど負傷している。それでもゴーヴァンは諦めない。

「ははっ……この程度の相手、魔王に比べればどうということはない!」

 ボロボロの体を引きずって攻撃を仕掛けよとした、その時──。

「タイラントドラゴンから離れて!」

 声をあげたのはクリスティーナである。
 ただならぬ様子を察して、ゴーヴァンは慌てて指示を出す。

「総員退避! 急げ!」

 ゴーヴァンの指示でロアーナ兵は、蜘蛛の子を散らしたように戦場から退避する。
 残されたタイラントドラゴンはクリスティーナへと襲いかかる、しかしクリスティーナの表情に焦りの色はない。構えた杖を振り下ろし、静かに魔力を解き放つ。
 そして──。

「いくわよ……第七階梯……!」

 第七階梯魔法。
 全ての魔法の最高位、選ばれし者のみが扱える最強の魔法。

「焦熱魔法……クランベリーファイア……!!」

 それはまるで地上に太陽が落ちてきたかのような光景だった。
 超高温の炎がうなりをあげ、紅蓮の火柱がのたうち回り、発せられる熱波は何もかもを一瞬で焼き尽くす。

「ジュロオォ……ッ!?」

 燃え盛る炎に包まれながら、それでもタイラントドラゴンは肉体を維持していた。流石は討伐難易度Aの魔物だ、尋常ではない耐久力である。
 しかしそれも長くは続かない。第七階梯魔法の前には、アンデットの不死性などあってないようなものなのである。

「ジュ……オォ……」

 肉は融解し、骨は灰と化す。ものの数秒でタイラントドラゴンは、この世から完全に姿を消してしまう。
 ようやく炎が収まったころには、黒く焼け焦げた大地だけが残っていた。

「やった……やったぞ……!」

「タイラントドラゴンを倒した! 倒したぞ!!」

「クリスティーナ様がやってくれたぞ!」

「「「「「うおぉーっ! クリスティーナ様ーっ!!」」」」」

 勝利に沸くロアーナ軍。
 一方のクリスティーナは、魔力を使い果たしてフラフラだ。

「はぁ……はぁ……終わったわ……」

「お疲れ様でした、クリスティーナ様」

 全ての力を出し切ったクリスティーナとゴーヴァンは、すてんとその場に座り込んでしまう。
 全員ボロボロになりながら、それでも戦いはロアーナ軍の勝利に終わった──と、誰もがそう思った次の瞬間──。

「ほう……まさかタイラントドラゴンを倒してしまうとはな……」

 不気味に響く男の声。
 黒いローブに身を包んだ集団がロアーナ軍を取り囲む。

「なんだこいつらは!?」

「もしかして……敵……?」

 未だ危機は去っていない。

 そしてその様子を、一匹のコウモリがじっと観察していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな
ファンタジー
全てを創世せし神によって造られた、様々な種族が生息する世界──その名はレディアダント。 世界は神の子孫代々によって守られ、幾多の脅威に挑みし者達は人々の間では英雄として語り継がれ、勇者とも呼ばれていた。 そして勇者の一人であり、大魔導師となる者によって建国されたレイニーラ王国。民は魔法を英雄の力として崇め、王国に住む少年グライン・エアフレイドは大魔導師に憧れていた。魔法学校を卒業したグラインは王国を守る魔法戦士兵団の入団を志願し、入団テストを受ける事になる。 一つの試練から始まる物語は、やがて大きな戦いへと発展するようになる──。 ※RPG感のある王道路線型の光と闇のファンタジーです。ストーリー内容、戦闘描写において流血表現、残酷表現が含まれる場合もあり。

処理中です...