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魔王と少女と大公達の日常
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朝日に照らされるロームルス城。
城の主であるゼノン王は一人フラフラと城内を散策していた。
「クリスティーナとエリザベスは無事だろうか……うまくガレウス邪教団の情報を掴んでいるだろうか……」
ブツブツと独り言を呟きながら行くあてもなく歩き回るゼノン王。そうしてフラリフラリとさ迷った結果、兵士達の訓練場へと辿りつく。訓練場では兵士達が熱心に剣を振るっていた。
「国王陛下! おはようございます!」
「こんなに朝早くから訓練とは、精が出るな」
「王国と国民を守るため、常に力を磨いております!」
「それは頼もしい限りだ……ん?」
「グルオォォーッ!」
「……はっ!?」
ふと上を見あげたゼノン王は、驚きのあまり言葉を失ってしまう。
空を覆う巨大な影、ビリビリと響き渡る鳴き声。突然の異常事態に兵士達も剣を振りあげたまま硬直状態だ。
「なんだ……あの……、あれはドラゴンか……?」
バサバサと翼を羽ばたかせ訓練場へと着地する巨体。その正体はウルリカ様の配下にして魔界の大公爵、黒竜ドラルグである。
「グルルル、到着シマシタウルリカ様!」
「うむ! ご苦労じゃったなドラルグよ!」
「今の声は……まさかウルリカ!?」
「うむ? その声はゼノンじゃな!」
ドラルグの背からヒョッコリと顔を覗かせるウルリカ様。よく見るとドラルグの背に乗っているのはウルリカ様だけではない。
「ドラルグちゃんは凄いわね、ロアーナの町からロームルスまであっという間だったわ」
「エミリオさんの魔法も凄かったです。気温や風圧を完全に制御していました、お陰で快適な空の旅でしたね」
「楽しかったですねカーミラちゃん」
「ニャオンッ」
オリヴィア、ヘンリー、ヴィクトリア女王、そしてカーミラの楽しそうな声。
どうやら下級クラス一行は、ドラルグとエミリオの力を借りてロアーナの町から帰ってきたらしい。
「ハッハッハッ! やはり空を飛ぶのは刺激的で気持ちいいな!」
「そうですねエリザベス様、なんだかハマっちゃいそうです!」
「投石機で空を飛ぶのは禁止ですからね……」
ついでにクリスティーナとエリザベス。ゴーヴァン、スカーレット、カイウスの聖騎士三人も一緒のようである。
聞こえてくる声はワイワイと楽しそうなものだ、しかし全員が空の旅を楽しんだわけではないようで。
「おえぇ……俺は二度とゴメンだ……」
「私もですぅ……うっぷ……」
ナターシャとゴーヴァンにとって空の旅は刺激的すぎたらしい。二人は顔を真っ青に染め、グッタリと倒れている。
「おいウルリカ、これは一体どういうことだ! このドラゴンは一体なんだ!」
「グルル? ソコノ人間、ウルリカ様ニ向カッテ無礼ナ口ヲ利クナ!」
「あぁ、ウルリカ様に対する失礼な態度……これは死刑確定ですね……」
ゼノン王の物言いに対して、エミリオとドラルグはピクリを反応を見せる。と同時に明確な殺意をもってゼノン王を睨みつける。
「お下がりくださいゼノン王! ここは我々にお任せを!」
「うおぉっ! 命に代えても陛下を守る!」
凄まじい殺気に晒されながら、それでも兵士達は怯むことなくゼノン王を守ろうとする。これは一触即発かと思いきや──。
「これエミリオ! ドラルグ! 妾の友達を怖がらせてはダメなのじゃ!」
「しかしウルリカ様──」
「“コツンッ”なのじゃ!」
「そんなっ!?」
「アタァッ!?」
ウルリカ様の“コツンッ”によって一触即発の状況は回避──と思ったのもつかの間、“コツンッ”されてしまったドラルグはグラリと体勢を崩してしまう。
「グオォォ……」
「おい……おい待て待て!!」
ゼノン王の叫びも虚しく、体制を崩したドラルグは頭からロームルス城に突っ込んでしまう。
その衝撃は凄まじく、城壁の一部と尖塔はガラガラと音を立て崩れ落ちていく、そしてゼノン王もガックリと膝から崩れ落ちていく。
「あぁ……俺の城が……」
こうして王都ロームルスに、ドタバタな日常が帰ってきたのだった。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
時刻はお昼時。
ここは下級クラスの教室塔、四階にある“研究書大量教室”。
宙を舞う数々の魔術書、室内を飛び交う魔法陣、なんとも不思議で神秘的な光景だ。
魔術書と魔法陣を操っているのは、魔界随一の魔法の使い手である銀星エミリオである。せっかく人間界に召喚されたということで、エミリオによる特別授業が行われているのだ。
「このようにして一度発動した魔法を魔力へと再変換します。この時に大事な点は、“一の魔力”で発動した魔法を“二の魔力”に再変換することです。この作業を繰り返すことによって魔力を増幅させていきます」
「「「ほほぉー」」」
参加している生徒は、オリヴィア、ヘンリー、そしてクリスティーナ。三人とも目をキラキラと輝かせながらエミリオの授業を受けている。
「魔力の増幅は簡単な作業ではありません、いくつもの魔法陣を組み合わせ、効率よく魔力と魔法を循環させる必要があります。そのために作りあげた魔法体系を銀星術式と呼んでいるのです」
そう言うとエミリオは、どこからともなく青紫の王笏を取り出す。
「この杖は星杖ウラノス、銀星術式の展開を補助する杖です。杖の先端を飛び交う星々は、絶えず様々な魔法陣を描き続けています。最も効率のよい形で魔法陣を描き続けることで、銀星術式の展開を補助しているのです」
星杖ウラノスの先端では、大小無数の星々によって魔法陣が描かれ続けている。飛び交う星は幾千万、描かれる魔法陣は千変万化、複雑すぎる星の動きは目で追うことすら難しい。
「エミリオ様、質問をしてもよろしいでしょうか?」
「なんでしょう、オリヴィアさん?」
「私の杖も星杖ウラノスという名前なのです、ウルリカ様からいただいた杖です。これはエミリオ様の杖と関係あるのでしょうか?」
「あぁ、それはボクのウラノスを元にした量産型の星杖ウラノスですね。杖の内部で銀星術式を展開させることで、魔法発動を補助してくれるのですよ」
「私も質問……どうして量産型の杖なんて作ったの……?」
「ボクはいつの日か、誰でも自由に魔法を使える世界を作りたいのです。量産型の星杖ウラノスを使えば誰でも銀星術式を使えます。銀星術式を用いれば生まれつき魔力の少ない者でも魔法を使えます。ついでに生物を魔法媒体化することで簡単に魔法の使い方を教えられます」
そう語るエミリオの瞳からは、燃えるような情熱が感じられる。
「ちなみにボクは雑種という種族でして、魔界では最も非力な種族なのです。生まれ持った魔力量は非常に少なく、例えばそうですね……ヘンリーさんと比較した場合、ボクの魔力量は十分の一以下ですよ」
銀星の二つ名を持ち、大侯爵に数えられるほどの存在でありながら、エミリオの魔力量は人間以下だというのである。思わぬ事実に生徒達は驚きを隠せない。
「それでもボクより強い魔族は数えるほどしか存在しません、そしてボクを超える魔法の使い手は存在しません。魔法の力は弱者を強者に、不自由を自由に変える力があるのですよ!」
エミリオの夢、そして思いはしっかりと生徒達に伝わったようだ。
「今日はボクの知識を全てお伝えするつもりです、それでは授業を続けましょう!」
「「「はい!」」」
その後エミリオ先生による特別授業は、夜遅くまで続いたという。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
日も落ちかけた夕暮れ時、ここは王城内の兵士訓練場。
「クアァ……暇デアルナ……」
沈みゆく太陽に向かって大きなあくびをする黒い竜、黒竜ドラルグである。
巨大なドラゴンであるドラルグは、人間に見られると大混乱を起こしてしまう。というわけで王城内の兵士訓練場に隔離されているのである。
「暇スギル……ウルリカ様ハ遊ビニキテクレナイダロウカ……」
巨大な爪を地面に立ててイジイジと輪っかを描いている。恐ろしい見た目に似つかわしくない、なんとも愛くるしい仕草である。
「クオォォ……ッ」
「ムム?」
そんなイジイジドラルグに向かって、上空から真紅のドラゴンが降りてくる。
「オ前ハ確カ……」
「グルルゥ! (ドラルグの兄貴! ベッポさんのところでお世話になってます、アグニスと申します!)」
「ア、兄貴ダト?」
「グオォッ! (はい! マジで憧れです、兄貴と呼ばせてほしいです!)」
「ソウカソウカ! 我に憧レテオルノカ!」
どうやらアグニスはドラルグに憧れ、わざわざ王城を訪れたようだ。これにはドラルグもすっかり機嫌をよくする、先ほどまでのイジイジはどこへやら。
「トコロデアグニスヨ、我ニ何用カ?」
「グロロロッ、グオンッ! (はい! 自分はかつてウルリカ様に救ってもらい、その後ベッポ様に拾ってもらい、それからずっとお世話になってます。皆様のことが大好きで、なにか恩返しをしたいのです!)」
「ホホウ、ソレハヨイ心ガケデアルナ」
「グルルロロ…… (しかし皆様は危険な目にあわれることが多く、その度に自分は力不足を実感します……。もっと自分に力があればと……)」
そう言って自分の力不足を嘆くアグニス、悲しそうな瞳で夕焼け空を見つめている。
「グルッ、グルルッ! (自分はもっと強くなりたいです! ドラルグの兄貴みたいに、強いドラゴンになりたいです!)」
「オオ、我ミタイニ?」
「グルゥ! (はい! 兄貴みたいに強くてカッコいい、最強のドラゴンになりたいです!)」
「強クテカッコイイ、最強ノドラゴンカ……」
「グォッグォッ! (お願いしますドラルグの兄貴! 自分を兄貴の弟子にしてください!)」
「弟子カ、我ハ弟子ヲ取ラナイ主義ナノダガナ……」
ドラルグは顎に手をやり、じっと考えるそぶりを見せる。しかしよく見るとしっぽをパタパタ、嬉しい気持ちをまったく隠せていない。
「ヨシ、今回ハ特別デアル! オ前ヲ立派ナエンシェントドラゴンニシテヤルゾ!」
「グルルォッ! (兄貴! ありがとうございます!!)」
「ソウト決マレバ特訓デアル! グルオォォー!」
「グルオォォーッ!」
ちなみにこの後、特訓の余波で訓練場はメチャクチャに荒れ果ててしまう。しかしそれはまた別のお話。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
これまでに出てきた魔法紹介、第二弾なのじゃ!
✡第一階梯魔法✡
該当なし
✡第二階梯魔法✡
該当なし
✡第三階梯魔法✡
魔法名:筋力増強魔法
使用者:シャルル
✡第四階梯魔法✡
魔法名:風矢魔法セミヨンアロー
使用者:クリスティーナ
魔法名:紫炎魔法デスブレイス
使用者:ガレウス邪教団員
✡第五階梯魔法✡
魔法名:赤熱魔法グロリオッサブレイス
使用者:クリスティーナ
魔法名:銀星魔法アステル・ロアー
使用者:銀星エミリオ
✡第六階梯魔法✡
魔法名:暴風魔法トロピカルサイクロン
使用者:クリスティーナ
魔法名:灼熱魔法メイプルフレイム
使用者:クリスティーナ
魔法名:治癒魔法デモン・ヒール
使用者:オリヴィア
魔法名:銀星魔法アステロ・ジェイル
使用者:銀星エミリオ
魔法名:氷瀑魔法アイスフォール
使用者:エゼルレッド
✡第七階梯魔法✡
魔法名:焦熱魔法クランベリーファイア
使用者:クリスティーナ
魔法名:極炎魔法デモニカ・フレア
使用者:ウルリカ様
これからも驚きの魔法が続々登場するのじゃ、楽しみにしておるのじゃ!!
城の主であるゼノン王は一人フラフラと城内を散策していた。
「クリスティーナとエリザベスは無事だろうか……うまくガレウス邪教団の情報を掴んでいるだろうか……」
ブツブツと独り言を呟きながら行くあてもなく歩き回るゼノン王。そうしてフラリフラリとさ迷った結果、兵士達の訓練場へと辿りつく。訓練場では兵士達が熱心に剣を振るっていた。
「国王陛下! おはようございます!」
「こんなに朝早くから訓練とは、精が出るな」
「王国と国民を守るため、常に力を磨いております!」
「それは頼もしい限りだ……ん?」
「グルオォォーッ!」
「……はっ!?」
ふと上を見あげたゼノン王は、驚きのあまり言葉を失ってしまう。
空を覆う巨大な影、ビリビリと響き渡る鳴き声。突然の異常事態に兵士達も剣を振りあげたまま硬直状態だ。
「なんだ……あの……、あれはドラゴンか……?」
バサバサと翼を羽ばたかせ訓練場へと着地する巨体。その正体はウルリカ様の配下にして魔界の大公爵、黒竜ドラルグである。
「グルルル、到着シマシタウルリカ様!」
「うむ! ご苦労じゃったなドラルグよ!」
「今の声は……まさかウルリカ!?」
「うむ? その声はゼノンじゃな!」
ドラルグの背からヒョッコリと顔を覗かせるウルリカ様。よく見るとドラルグの背に乗っているのはウルリカ様だけではない。
「ドラルグちゃんは凄いわね、ロアーナの町からロームルスまであっという間だったわ」
「エミリオさんの魔法も凄かったです。気温や風圧を完全に制御していました、お陰で快適な空の旅でしたね」
「楽しかったですねカーミラちゃん」
「ニャオンッ」
オリヴィア、ヘンリー、ヴィクトリア女王、そしてカーミラの楽しそうな声。
どうやら下級クラス一行は、ドラルグとエミリオの力を借りてロアーナの町から帰ってきたらしい。
「ハッハッハッ! やはり空を飛ぶのは刺激的で気持ちいいな!」
「そうですねエリザベス様、なんだかハマっちゃいそうです!」
「投石機で空を飛ぶのは禁止ですからね……」
ついでにクリスティーナとエリザベス。ゴーヴァン、スカーレット、カイウスの聖騎士三人も一緒のようである。
聞こえてくる声はワイワイと楽しそうなものだ、しかし全員が空の旅を楽しんだわけではないようで。
「おえぇ……俺は二度とゴメンだ……」
「私もですぅ……うっぷ……」
ナターシャとゴーヴァンにとって空の旅は刺激的すぎたらしい。二人は顔を真っ青に染め、グッタリと倒れている。
「おいウルリカ、これは一体どういうことだ! このドラゴンは一体なんだ!」
「グルル? ソコノ人間、ウルリカ様ニ向カッテ無礼ナ口ヲ利クナ!」
「あぁ、ウルリカ様に対する失礼な態度……これは死刑確定ですね……」
ゼノン王の物言いに対して、エミリオとドラルグはピクリを反応を見せる。と同時に明確な殺意をもってゼノン王を睨みつける。
「お下がりくださいゼノン王! ここは我々にお任せを!」
「うおぉっ! 命に代えても陛下を守る!」
凄まじい殺気に晒されながら、それでも兵士達は怯むことなくゼノン王を守ろうとする。これは一触即発かと思いきや──。
「これエミリオ! ドラルグ! 妾の友達を怖がらせてはダメなのじゃ!」
「しかしウルリカ様──」
「“コツンッ”なのじゃ!」
「そんなっ!?」
「アタァッ!?」
ウルリカ様の“コツンッ”によって一触即発の状況は回避──と思ったのもつかの間、“コツンッ”されてしまったドラルグはグラリと体勢を崩してしまう。
「グオォォ……」
「おい……おい待て待て!!」
ゼノン王の叫びも虚しく、体制を崩したドラルグは頭からロームルス城に突っ込んでしまう。
その衝撃は凄まじく、城壁の一部と尖塔はガラガラと音を立て崩れ落ちていく、そしてゼノン王もガックリと膝から崩れ落ちていく。
「あぁ……俺の城が……」
こうして王都ロームルスに、ドタバタな日常が帰ってきたのだった。
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時刻はお昼時。
ここは下級クラスの教室塔、四階にある“研究書大量教室”。
宙を舞う数々の魔術書、室内を飛び交う魔法陣、なんとも不思議で神秘的な光景だ。
魔術書と魔法陣を操っているのは、魔界随一の魔法の使い手である銀星エミリオである。せっかく人間界に召喚されたということで、エミリオによる特別授業が行われているのだ。
「このようにして一度発動した魔法を魔力へと再変換します。この時に大事な点は、“一の魔力”で発動した魔法を“二の魔力”に再変換することです。この作業を繰り返すことによって魔力を増幅させていきます」
「「「ほほぉー」」」
参加している生徒は、オリヴィア、ヘンリー、そしてクリスティーナ。三人とも目をキラキラと輝かせながらエミリオの授業を受けている。
「魔力の増幅は簡単な作業ではありません、いくつもの魔法陣を組み合わせ、効率よく魔力と魔法を循環させる必要があります。そのために作りあげた魔法体系を銀星術式と呼んでいるのです」
そう言うとエミリオは、どこからともなく青紫の王笏を取り出す。
「この杖は星杖ウラノス、銀星術式の展開を補助する杖です。杖の先端を飛び交う星々は、絶えず様々な魔法陣を描き続けています。最も効率のよい形で魔法陣を描き続けることで、銀星術式の展開を補助しているのです」
星杖ウラノスの先端では、大小無数の星々によって魔法陣が描かれ続けている。飛び交う星は幾千万、描かれる魔法陣は千変万化、複雑すぎる星の動きは目で追うことすら難しい。
「エミリオ様、質問をしてもよろしいでしょうか?」
「なんでしょう、オリヴィアさん?」
「私の杖も星杖ウラノスという名前なのです、ウルリカ様からいただいた杖です。これはエミリオ様の杖と関係あるのでしょうか?」
「あぁ、それはボクのウラノスを元にした量産型の星杖ウラノスですね。杖の内部で銀星術式を展開させることで、魔法発動を補助してくれるのですよ」
「私も質問……どうして量産型の杖なんて作ったの……?」
「ボクはいつの日か、誰でも自由に魔法を使える世界を作りたいのです。量産型の星杖ウラノスを使えば誰でも銀星術式を使えます。銀星術式を用いれば生まれつき魔力の少ない者でも魔法を使えます。ついでに生物を魔法媒体化することで簡単に魔法の使い方を教えられます」
そう語るエミリオの瞳からは、燃えるような情熱が感じられる。
「ちなみにボクは雑種という種族でして、魔界では最も非力な種族なのです。生まれ持った魔力量は非常に少なく、例えばそうですね……ヘンリーさんと比較した場合、ボクの魔力量は十分の一以下ですよ」
銀星の二つ名を持ち、大侯爵に数えられるほどの存在でありながら、エミリオの魔力量は人間以下だというのである。思わぬ事実に生徒達は驚きを隠せない。
「それでもボクより強い魔族は数えるほどしか存在しません、そしてボクを超える魔法の使い手は存在しません。魔法の力は弱者を強者に、不自由を自由に変える力があるのですよ!」
エミリオの夢、そして思いはしっかりと生徒達に伝わったようだ。
「今日はボクの知識を全てお伝えするつもりです、それでは授業を続けましょう!」
「「「はい!」」」
その後エミリオ先生による特別授業は、夜遅くまで続いたという。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
日も落ちかけた夕暮れ時、ここは王城内の兵士訓練場。
「クアァ……暇デアルナ……」
沈みゆく太陽に向かって大きなあくびをする黒い竜、黒竜ドラルグである。
巨大なドラゴンであるドラルグは、人間に見られると大混乱を起こしてしまう。というわけで王城内の兵士訓練場に隔離されているのである。
「暇スギル……ウルリカ様ハ遊ビニキテクレナイダロウカ……」
巨大な爪を地面に立ててイジイジと輪っかを描いている。恐ろしい見た目に似つかわしくない、なんとも愛くるしい仕草である。
「クオォォ……ッ」
「ムム?」
そんなイジイジドラルグに向かって、上空から真紅のドラゴンが降りてくる。
「オ前ハ確カ……」
「グルルゥ! (ドラルグの兄貴! ベッポさんのところでお世話になってます、アグニスと申します!)」
「ア、兄貴ダト?」
「グオォッ! (はい! マジで憧れです、兄貴と呼ばせてほしいです!)」
「ソウカソウカ! 我に憧レテオルノカ!」
どうやらアグニスはドラルグに憧れ、わざわざ王城を訪れたようだ。これにはドラルグもすっかり機嫌をよくする、先ほどまでのイジイジはどこへやら。
「トコロデアグニスヨ、我ニ何用カ?」
「グロロロッ、グオンッ! (はい! 自分はかつてウルリカ様に救ってもらい、その後ベッポ様に拾ってもらい、それからずっとお世話になってます。皆様のことが大好きで、なにか恩返しをしたいのです!)」
「ホホウ、ソレハヨイ心ガケデアルナ」
「グルルロロ…… (しかし皆様は危険な目にあわれることが多く、その度に自分は力不足を実感します……。もっと自分に力があればと……)」
そう言って自分の力不足を嘆くアグニス、悲しそうな瞳で夕焼け空を見つめている。
「グルッ、グルルッ! (自分はもっと強くなりたいです! ドラルグの兄貴みたいに、強いドラゴンになりたいです!)」
「オオ、我ミタイニ?」
「グルゥ! (はい! 兄貴みたいに強くてカッコいい、最強のドラゴンになりたいです!)」
「強クテカッコイイ、最強ノドラゴンカ……」
「グォッグォッ! (お願いしますドラルグの兄貴! 自分を兄貴の弟子にしてください!)」
「弟子カ、我ハ弟子ヲ取ラナイ主義ナノダガナ……」
ドラルグは顎に手をやり、じっと考えるそぶりを見せる。しかしよく見るとしっぽをパタパタ、嬉しい気持ちをまったく隠せていない。
「ヨシ、今回ハ特別デアル! オ前ヲ立派ナエンシェントドラゴンニシテヤルゾ!」
「グルルォッ! (兄貴! ありがとうございます!!)」
「ソウト決マレバ特訓デアル! グルオォォー!」
「グルオォォーッ!」
ちなみにこの後、特訓の余波で訓練場はメチャクチャに荒れ果ててしまう。しかしそれはまた別のお話。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
これまでに出てきた魔法紹介、第二弾なのじゃ!
✡第一階梯魔法✡
該当なし
✡第二階梯魔法✡
該当なし
✡第三階梯魔法✡
魔法名:筋力増強魔法
使用者:シャルル
✡第四階梯魔法✡
魔法名:風矢魔法セミヨンアロー
使用者:クリスティーナ
魔法名:紫炎魔法デスブレイス
使用者:ガレウス邪教団員
✡第五階梯魔法✡
魔法名:赤熱魔法グロリオッサブレイス
使用者:クリスティーナ
魔法名:銀星魔法アステル・ロアー
使用者:銀星エミリオ
✡第六階梯魔法✡
魔法名:暴風魔法トロピカルサイクロン
使用者:クリスティーナ
魔法名:灼熱魔法メイプルフレイム
使用者:クリスティーナ
魔法名:治癒魔法デモン・ヒール
使用者:オリヴィア
魔法名:銀星魔法アステロ・ジェイル
使用者:銀星エミリオ
魔法名:氷瀑魔法アイスフォール
使用者:エゼルレッド
✡第七階梯魔法✡
魔法名:焦熱魔法クランベリーファイア
使用者:クリスティーナ
魔法名:極炎魔法デモニカ・フレア
使用者:ウルリカ様
これからも驚きの魔法が続々登場するのじゃ、楽しみにしておるのじゃ!!
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クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
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三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
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