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正体不明の襲撃者
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ロームルス城を出発して数刻、エリッサ王女は馬車に引き籠り続けていた。
王族専用に用意された広く豪華な馬車に一人きり。誰に語りかけるわけでもなく、グチグチと文句を口にしている。
「あの子供は一体なんだったのよ、私より年下のくせに!」
声を荒げ床を踏み鳴らす、ウルリカ様に対する怒りは収まっていないらしい。
「ふぅ……まあいいわ、ようやく南ディナール王国へ帰れるのだから。まったく清々するわね……でもこれで本当によかったのかしら?」
ダンダンと床を踏み鳴らしながら、不意にコクリと首を傾げる。
「私のせいで同盟は締結されなかったのよね……それにシャルロットへのお詫びも出来ていないわ……。本当にこのまま帰国していいのかしら? 王女としてやるべきことを果たせているのかしら? 私は……私は……」
先ほどまでの苛烈な態度から一転、不安に満ちた表情でボロボロと大粒の涙を零す。つい数秒前とはまるで別人のようだ。
「うぅ……私は……私は悪くないのよ! 元老院と、シャルロットと、あの子供が悪いのよ!!」
泣きじゃくっていたかと思いきや、顔を真っ赤に染めて怒りを露にする。やはり平静を欠いているのだろうか、あまりにも激しい感情の変化である。
「私は悪くないの、私は頑張っているのよ! ハミルカルだって言っていたもの、私は頑張って──きゃっ!?」
興奮して立ちあがった直後、激しい揺れが馬車を襲う。
跳ねあがった直後の急停止により、エリッサは慣性に押され座席へと叩きつけられる。
「痛っ……」
幸いエリッサにケガはなさそうだ、しかしは痛みでまともに動けない。とそこへ──。
「エリッサ王女……!」
「クリスティーナ王女?」
扉をこじ開け駆けつけたのはクリスティーナである。
ボロボロに破れた衣服、額から流れる真っ赤な血。しかしクリスティーナは自身の惨状を気にもとめずエリッサの身を案じる。
「無事……? ケガはない……?」
「私は平気よ、それより今の揺れはなに?」
「私達は……正体不明の集団から……襲撃を受けてる……」
どうやら先ほど馬車を襲った揺れは、何者かの襲撃によるものらしい。報せを聞いたエリッサは、声を荒げてクリスティーナへと詰め寄る。
「襲撃? どういうことよ!」
「私にも……詳しくは分からない……」
「分からないじゃないわよ、きちんと説明しなさいよ!」
「今は……時間がない……、早く……避難しましょう……」
「私に指図しないで! 元老院はどうしてるの? ロムルス王国の護衛はなにをやってるのよ!」
緊急事態にもかかわらず、あろうことか癇癪を起すエリッサ。ケガを負っているクリスティーナを心配する素振りすら見せない。
「困ったわね……ん……?」
すっかり困り果てていた最中、クリスティーナはエリッサの異変に気づく。
「エリッサ王女から……妙な魔力を……感じる……」
「な、なによ……ちょっと!?」
「じっとして……動かないで……」
「近寄らないで! 私に触らないで!」
「これは……魔法の痕跡……?」
クリスティーナはエリッサを押さえつけ、同時に素早く杖を構える。魔法のこととなるや普段の緩慢な動きからは想像もつかない機敏さだ。
「これは……精神に作用する魔法……、作用というより……精神支配に近い……、どうしてエリッサ王女に……?」
「触らないでって言ってるでしょ!」
「そういうこと……エリッサ王女の豹変は……魔法の影響……」
「この、いいかげんに──」
「魔法解除、リムーブ……」
「──あっ!?」
クリスティーナによる魔法解除、直後エリッサの首筋から淡く柔らかな光が溢れ出す。数秒間に渡る光の放出を経て、エリッサはパタリと意識を失ってしまう。
「これで……エリッサ王女に……かけられていた魔法は……消えたはず……、それにしても……一体誰が……」
エリッサを抱きかかえたまま、考えに没頭するクリスティーナ。しかし外からの激しい爆発音に、ハッと現実へ引き戻される。
「考え込んでる場合じゃない……緊急事態だった……、エリッサ王女を連れて……避難しなくちゃ……」
エリッサを抱え立ちあがろうとした、その時──。
「そこまでだ」
「……っ!?」
何者かに後頭部を殴打され、クリスティーナの意識は暗闇へと落ちていくのだった。
王族専用に用意された広く豪華な馬車に一人きり。誰に語りかけるわけでもなく、グチグチと文句を口にしている。
「あの子供は一体なんだったのよ、私より年下のくせに!」
声を荒げ床を踏み鳴らす、ウルリカ様に対する怒りは収まっていないらしい。
「ふぅ……まあいいわ、ようやく南ディナール王国へ帰れるのだから。まったく清々するわね……でもこれで本当によかったのかしら?」
ダンダンと床を踏み鳴らしながら、不意にコクリと首を傾げる。
「私のせいで同盟は締結されなかったのよね……それにシャルロットへのお詫びも出来ていないわ……。本当にこのまま帰国していいのかしら? 王女としてやるべきことを果たせているのかしら? 私は……私は……」
先ほどまでの苛烈な態度から一転、不安に満ちた表情でボロボロと大粒の涙を零す。つい数秒前とはまるで別人のようだ。
「うぅ……私は……私は悪くないのよ! 元老院と、シャルロットと、あの子供が悪いのよ!!」
泣きじゃくっていたかと思いきや、顔を真っ赤に染めて怒りを露にする。やはり平静を欠いているのだろうか、あまりにも激しい感情の変化である。
「私は悪くないの、私は頑張っているのよ! ハミルカルだって言っていたもの、私は頑張って──きゃっ!?」
興奮して立ちあがった直後、激しい揺れが馬車を襲う。
跳ねあがった直後の急停止により、エリッサは慣性に押され座席へと叩きつけられる。
「痛っ……」
幸いエリッサにケガはなさそうだ、しかしは痛みでまともに動けない。とそこへ──。
「エリッサ王女……!」
「クリスティーナ王女?」
扉をこじ開け駆けつけたのはクリスティーナである。
ボロボロに破れた衣服、額から流れる真っ赤な血。しかしクリスティーナは自身の惨状を気にもとめずエリッサの身を案じる。
「無事……? ケガはない……?」
「私は平気よ、それより今の揺れはなに?」
「私達は……正体不明の集団から……襲撃を受けてる……」
どうやら先ほど馬車を襲った揺れは、何者かの襲撃によるものらしい。報せを聞いたエリッサは、声を荒げてクリスティーナへと詰め寄る。
「襲撃? どういうことよ!」
「私にも……詳しくは分からない……」
「分からないじゃないわよ、きちんと説明しなさいよ!」
「今は……時間がない……、早く……避難しましょう……」
「私に指図しないで! 元老院はどうしてるの? ロムルス王国の護衛はなにをやってるのよ!」
緊急事態にもかかわらず、あろうことか癇癪を起すエリッサ。ケガを負っているクリスティーナを心配する素振りすら見せない。
「困ったわね……ん……?」
すっかり困り果てていた最中、クリスティーナはエリッサの異変に気づく。
「エリッサ王女から……妙な魔力を……感じる……」
「な、なによ……ちょっと!?」
「じっとして……動かないで……」
「近寄らないで! 私に触らないで!」
「これは……魔法の痕跡……?」
クリスティーナはエリッサを押さえつけ、同時に素早く杖を構える。魔法のこととなるや普段の緩慢な動きからは想像もつかない機敏さだ。
「これは……精神に作用する魔法……、作用というより……精神支配に近い……、どうしてエリッサ王女に……?」
「触らないでって言ってるでしょ!」
「そういうこと……エリッサ王女の豹変は……魔法の影響……」
「この、いいかげんに──」
「魔法解除、リムーブ……」
「──あっ!?」
クリスティーナによる魔法解除、直後エリッサの首筋から淡く柔らかな光が溢れ出す。数秒間に渡る光の放出を経て、エリッサはパタリと意識を失ってしまう。
「これで……エリッサ王女に……かけられていた魔法は……消えたはず……、それにしても……一体誰が……」
エリッサを抱きかかえたまま、考えに没頭するクリスティーナ。しかし外からの激しい爆発音に、ハッと現実へ引き戻される。
「考え込んでる場合じゃない……緊急事態だった……、エリッサ王女を連れて……避難しなくちゃ……」
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「そこまでだ」
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何者かに後頭部を殴打され、クリスティーナの意識は暗闇へと落ちていくのだった。
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