魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん

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侵入者

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 夜のデナリウス宮殿は、昼間とは違った美しさを湛える。咲き誇る大輪の噴水、夜空を映す幾本もの水路、優雅に舞い踊る水しぶき。誰しも目を奪われる、なんとも神秘的な美しさである。

「ふふっ、ステキな場所ね」

 噴水の音に紛れて聞こえる、艶やかな女の呟き。声の主であるザナロワは、水しぶきの帳を潜り宮殿へと足を進める。
 海岸の魔物に注意を向けさせ、一人デナリウス宮殿への侵入を果たしていたのだ。

「それにしても不用心ね、もっと厳重に警備しなくちゃ……あら?」

「こっちよ、正面の門を潜れば町へ出られるわ」

「ここで見つかっては台無しですわ、慎重にいきますわよ」

 ザナロワは足を止め、声の出所を静かに眺める。
 建物の陰から陰へ、コソコソと移動する七つの人影。正体はエリッサと下級クラスだ、間もなくしてザナロワの存在に気づいた模様。

「待ってエリッサ、あそこに誰かいますわ」

「あらあら、見つかっちゃったわね」

 ザナロワの微笑み、それは嗜虐心に満ちた邪悪な笑みだった。下級クラスは即座に危険を察知し、ザナロワへの警戒を強める。

「シャルロット様とエリッサ様はお下がりください!」

「そこの女、名を名乗れ!」

 ナターシャとシャルルは前衛、ヘンリーとベッポは二人の王女を護衛、オリヴィアは杖を抜き治癒魔法の準備。何度も命がけの戦いを潜り抜けてきただけあり、緊急時の行動は驚くほど早い。
 一方のザナロワはジッと一点を凝視していた、視線の先はナターシャの持つヨグソードだ。

「名前を尋ねる時は、まず自分から名乗らなくちゃいけないのよ? お父さんやお母さんに教わらなかったのかしら?」

「黙れ、名を名乗れと言っているのだ!」

「ふふっ、まあいいわ……私の名前はザナロワ、水の魔人ザナロワよ」

「魔人だと!?」

 魔人との遭遇は完全に想定外の事態、だが決して慌てることはない。特に男子三人の冷静さは際立っている、肝の座り方は大人顔負けだ。

「魔人ということはガレウス邪教団の一味で確定だよな」

「そうですね、そして残念ながらボク達では敵わないことも確定です。とはいえ出来ることはあります、ボク達なりに最善を尽くすべきです」

「同感だ、具体的にはどうする?」

「シャルル、ナターシャさん、ボクで魔人を足止めしましょう。倒そうとはせず足止めに専念です、絶対に無理はしないように。負傷した場合はオリヴィアさん、治癒魔法をお願いします」

「分かりました、いつでも傷を治せるよう備えておきます」

「ベッポはシャルロット様とエリッサ様を連れ、フラム王へ緊急事態を伝えてください。お二人は王族ですからね、何があっても守るのですよ」

「言われなくとも、絶対に守ってみせるぜ」

 王族二人の安全を優先し、無理のない範囲で抵抗を試みる。咄嗟に立てたとは思えないほど的確な作戦だ、しかしヘンリーは相手の力を見誤っていた。
 ザナロワはニヤリと微笑み、腰に結んであった短鞭を抜き放つ。まるで指揮を執るように、あるいは猛獣を躾けるように、短鞭を振るう姿はなんとも艶めかしい。

「ダメダメ、一人も逃がさないわよ」

 噴水から水路から、溢れた水は円を描き周囲一帯を取り囲む。なんとザナロワは短鞭を振るうことで、周囲の水を支配下に置いたのだ。

「さて、まずはヨグソードをいただくわ」

「危ないナターシャ嬢!」

 ヒュンと風を切る短鞭、ザブンと蛇のようにうねる激流。ナターシャは慌てて飛び退くも、巨大な水の蛇からは逃れられない。

「しまった──きゃあぁ!?」

「オリヴィア嬢、急いでナターシャ嬢に治癒魔法を!」

「ダメです、水に邪魔されて近づけませんっ」

「ふふふっ、これでヨグソードは私達の物よ」

 激流の威力は凄まじく、ナターシャは立ちあがることすら儘ならない。
 力の差は歴然、水壁に囲まれ身動き不能。魔人という脅威を前に万事休す、だが運は見放さなかった。

「神聖魔法、シャイニーギムレット!」

 突如として水壁を激しい閃光が貫いたのだ。ザナロワは身を躱したものの、あと一歩のところでヨグソードを奪い損ねる。

「はいはい、そこまでっすよー」

 飛び散った水滴を滴らせ、悠々と現れる白銀の少女。尊い純白の水着姿で、ザナロワの前にドンと仁王立ち。

「ここからは私が相手になるっす!」

「教主アルテミア……!」

 水着姿の勇者様、下級クラスの窮地に駆けつける。
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