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11 胡散臭いのはどうしようもありません
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「────なんだ、誰もいないじゃないか。ちっ、野良猫でも寄り付いたのか?」
勢い良く開けられた窓からエドガーが顔を出したかと思ったら、キョロキョロと辺りを見回すと「アミィとの時間を邪魔しやがって……毒でも蒔いてやろうか」と舌打ちをしていました。
私はと言えば、誰かに体を抱きかかえられて口を手で塞がれた、身動きの取れない状態で木の上にいます。抵抗しようとした瞬間サラッと揺れる銀色の髪が視界の端にうつり、自分を助けてくれた人物が誰なのかを察してしまいました。
「……もう少し、静かにしてて」
耳元でそう囁かれてパニックになりながらもおとなしく従うしかありません。咄嗟にアニーの姿を視線で探すと、あの場所から離れた所で隠れるように小さくなっているのが見えました。その側には誰かが付き添っているようです。どうやらアニーを守ってくれているようですが、この銀髪男の仲間なのでしょうか?
「……」
色々と訴えたくて視線を銀髪男の方に動かすと、黙ったままにんまりと笑顔を向けられてしまいました。
そして抱えられたまま公爵家から脱出して、人気のない夜の広場にてやっと解放されたのですが……。
まさか、あの憎きスパイに助けられるなんて屈辱でしかありません。彼は銀色の髪をさらりと揺らし、あのにんまり顔のままで灰色の瞳を細めて私を見てきました。
「……君は本当に普通の貴族令嬢ならやらないようなことばっかりするようだな」
「ア、アニーは……」
ずっと口を塞がれていたので少し息が乱れましたが、アニーがどうなったのかが気になりました。
「あぁ、君と一緒にいた子なら後からここにくるよ。もしも見つかっても仲間だとバレないように遠回りの別ルートで合流するように指示してるから。それにしても、無茶なことをしたもんだ。俺が助けなかったらどうなってたかわかってるのか?」
「……助けて欲しいなんて言ってません。余計なお世話だわ!」
「その割には手が震えてるよ?なんでこんなことをしたんだか。ちゃんと忠告しただろう」
そう言われてじわりと涙が滲みます。こんな人に涙を見せるなんて絶対に嫌なのに。1度溢れ出した涙は簡単には止まりませんでした。
「うっ……だって、他に思い付かなくて……!も、元はと言えばあなたがあんな忠告なんかしてきて、私の雇った調査人に圧力をかけたりするから、だから私は自分でっ……!」
私が涙目で訴えれば銀髪男は少しだけ気まずそうに眉を顰めました。私だって見つかるかもって思った瞬間はすごく怖かったんです。勢い余って無茶をした自覚はあります。私が不審者として捕らえられれば一緒にいたアニーはもちろん、伯爵家にも迷惑がかかるのはわかっていたのに。それでもあのまま泣き寝入りするのだけは嫌だったから、何かしたかったんです。
やっぱり私はただの不気味な桃毛なのだと痛感しました。領地を守る事も、レベッカ様の無念を晴らす事すらも出来ない役立たずなのです。
「悪かった、泣くなよ。……ああすれば君が諦めるかと思ったんだけどな。わかった、ちゃんと説明するよ。そうだなぁ、簡単に言うと……君の婚約者との婚約破棄はちょっと待った方がいいよ。って言いたかっただけなんだ」
「……それはなぜ?私の婚約破棄が隣国のスパイになんの関係が……」
すると銀髪男はギラリと視線を鋭くさせました。その視線で背筋に冷たい汗が流れた気がします。その鬼気迫る雰囲気に本能で“怖い”と感じるほどでした。
「────なぜって……そんなの、今、それをすると公爵家に飛び火が行くからだ。実の娘が罪を犯して修道院に送られたのに、罪滅ぼしに養女とした新しい娘が隣国の王子を裏切って浮気してたなんて公表したらどうなるかわからないほど君は世間知らずなのか?
……元公爵令嬢は君の大切な友達なんだろう?」
「……っ!」
そこまで言われて、私は自分の考えを後悔しました。確かにその通りだからです。私は自分の事しか考えてない愚か者だったのだと痛感しました。
私がエドガーとアミィ嬢の浮気を告発すれば書類上とはいえアミィ嬢の養子先の公爵家が咎められるのはわかりきったことなのに、なぜそこまで考えが及ばなかったのか……。
「わ、私……」
なんてことでしょう。私は、今も修道院に送られてしまったレベッカ様を大切に思い王族からの圧力に負けじと戦っている公爵家のおじさまとおばさまに追い討ちを掛けようとしていたのです。
このままでは、さらにレベッカ様を悲しませる結末になるところでした。
「では、どうすればいいのでしょうか……」
私はもうエドガーとは本当に婚約破棄したいと思っています。このまま結婚するなんて耐えられませんし、領地にとっても良いことは無いでしょう。ですが、私が婚約破棄を実行するとレベッカ様を悲しませるかもしれない……。それも耐えられません。レベッカ様もレベッカ様のご両親も、私にとっては大切な方たちなのです。
愕然とする私に銀髪男はとある提案をしてきました。
なにやら「んー……本当はもう少し様子を見てから言うつもりだったんだけどなぁ」とかなんとか呟いたかと思うと、再びあのにんまりとした顔を私に見せました。
「オレと手を組まないか?詳しくはまだ教えられないけれど……そうすればなんとかなるかもしれないよ」と。
「……え?手を組むって……」
その不思議な提案に思わずきょとんとしてしまいます。とにかく情報量が多すぎて目眩がしそうです。助けてもらったことは感謝しますが、それとこれは別問題です。それにしてもこのにんまり顔……。
やっぱり、とてつもなく胡散臭い感じがするのは気のせいでしょうか?
勢い良く開けられた窓からエドガーが顔を出したかと思ったら、キョロキョロと辺りを見回すと「アミィとの時間を邪魔しやがって……毒でも蒔いてやろうか」と舌打ちをしていました。
私はと言えば、誰かに体を抱きかかえられて口を手で塞がれた、身動きの取れない状態で木の上にいます。抵抗しようとした瞬間サラッと揺れる銀色の髪が視界の端にうつり、自分を助けてくれた人物が誰なのかを察してしまいました。
「……もう少し、静かにしてて」
耳元でそう囁かれてパニックになりながらもおとなしく従うしかありません。咄嗟にアニーの姿を視線で探すと、あの場所から離れた所で隠れるように小さくなっているのが見えました。その側には誰かが付き添っているようです。どうやらアニーを守ってくれているようですが、この銀髪男の仲間なのでしょうか?
「……」
色々と訴えたくて視線を銀髪男の方に動かすと、黙ったままにんまりと笑顔を向けられてしまいました。
そして抱えられたまま公爵家から脱出して、人気のない夜の広場にてやっと解放されたのですが……。
まさか、あの憎きスパイに助けられるなんて屈辱でしかありません。彼は銀色の髪をさらりと揺らし、あのにんまり顔のままで灰色の瞳を細めて私を見てきました。
「……君は本当に普通の貴族令嬢ならやらないようなことばっかりするようだな」
「ア、アニーは……」
ずっと口を塞がれていたので少し息が乱れましたが、アニーがどうなったのかが気になりました。
「あぁ、君と一緒にいた子なら後からここにくるよ。もしも見つかっても仲間だとバレないように遠回りの別ルートで合流するように指示してるから。それにしても、無茶なことをしたもんだ。俺が助けなかったらどうなってたかわかってるのか?」
「……助けて欲しいなんて言ってません。余計なお世話だわ!」
「その割には手が震えてるよ?なんでこんなことをしたんだか。ちゃんと忠告しただろう」
そう言われてじわりと涙が滲みます。こんな人に涙を見せるなんて絶対に嫌なのに。1度溢れ出した涙は簡単には止まりませんでした。
「うっ……だって、他に思い付かなくて……!も、元はと言えばあなたがあんな忠告なんかしてきて、私の雇った調査人に圧力をかけたりするから、だから私は自分でっ……!」
私が涙目で訴えれば銀髪男は少しだけ気まずそうに眉を顰めました。私だって見つかるかもって思った瞬間はすごく怖かったんです。勢い余って無茶をした自覚はあります。私が不審者として捕らえられれば一緒にいたアニーはもちろん、伯爵家にも迷惑がかかるのはわかっていたのに。それでもあのまま泣き寝入りするのだけは嫌だったから、何かしたかったんです。
やっぱり私はただの不気味な桃毛なのだと痛感しました。領地を守る事も、レベッカ様の無念を晴らす事すらも出来ない役立たずなのです。
「悪かった、泣くなよ。……ああすれば君が諦めるかと思ったんだけどな。わかった、ちゃんと説明するよ。そうだなぁ、簡単に言うと……君の婚約者との婚約破棄はちょっと待った方がいいよ。って言いたかっただけなんだ」
「……それはなぜ?私の婚約破棄が隣国のスパイになんの関係が……」
すると銀髪男はギラリと視線を鋭くさせました。その視線で背筋に冷たい汗が流れた気がします。その鬼気迫る雰囲気に本能で“怖い”と感じるほどでした。
「────なぜって……そんなの、今、それをすると公爵家に飛び火が行くからだ。実の娘が罪を犯して修道院に送られたのに、罪滅ぼしに養女とした新しい娘が隣国の王子を裏切って浮気してたなんて公表したらどうなるかわからないほど君は世間知らずなのか?
……元公爵令嬢は君の大切な友達なんだろう?」
「……っ!」
そこまで言われて、私は自分の考えを後悔しました。確かにその通りだからです。私は自分の事しか考えてない愚か者だったのだと痛感しました。
私がエドガーとアミィ嬢の浮気を告発すれば書類上とはいえアミィ嬢の養子先の公爵家が咎められるのはわかりきったことなのに、なぜそこまで考えが及ばなかったのか……。
「わ、私……」
なんてことでしょう。私は、今も修道院に送られてしまったレベッカ様を大切に思い王族からの圧力に負けじと戦っている公爵家のおじさまとおばさまに追い討ちを掛けようとしていたのです。
このままでは、さらにレベッカ様を悲しませる結末になるところでした。
「では、どうすればいいのでしょうか……」
私はもうエドガーとは本当に婚約破棄したいと思っています。このまま結婚するなんて耐えられませんし、領地にとっても良いことは無いでしょう。ですが、私が婚約破棄を実行するとレベッカ様を悲しませるかもしれない……。それも耐えられません。レベッカ様もレベッカ様のご両親も、私にとっては大切な方たちなのです。
愕然とする私に銀髪男はとある提案をしてきました。
なにやら「んー……本当はもう少し様子を見てから言うつもりだったんだけどなぁ」とかなんとか呟いたかと思うと、再びあのにんまりとした顔を私に見せました。
「オレと手を組まないか?詳しくはまだ教えられないけれど……そうすればなんとかなるかもしれないよ」と。
「……え?手を組むって……」
その不思議な提案に思わずきょとんとしてしまいます。とにかく情報量が多すぎて目眩がしそうです。助けてもらったことは感謝しますが、それとこれは別問題です。それにしてもこのにんまり顔……。
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