12 / 37
10話
しおりを挟む
そんな俺にちらりと視線を投げると金色の瞳を少し細めた。
「リベル団長、お疲れです」
「ああ、楽にしろ。これから訓練か?」
「はい!今自己紹介が終わったとこです。まさかチヒロからリベル団長のニ———」
「ライド、余計なことは言わなくていい」
ライドさんの話を遮るように言葉を被せるが懲りずにまた口を開く。
「え、まさか本気で———」
「わかったな?」
「.....わかりましたよ」
そしてまたも遮られ、しかも有無を言わせないような圧力までプラスされてライドさんはさすがに口を閉じた。
「他の連中にも伝えておいてくれ」
「お任せください!チヒロに手をだしたらリベル団長が...いだだ!痛いっ!」
言い終わらないうちにリベルがライドさんの耳を容赦なく引っ張ったのでそれ以上言葉は続かなかった。
「おい、この耳は飾りか?」
「すみませんでしたっ...!調子に乗りました!きちんと伝えておきます!」
その言葉にリベルはぱっと手を離す。痛かったのか耳がぱたぱたと動いてかわいい。
俺の名前が出てきてるのに会話の内容は全くわからなかったけどねっ。
「頼んだぞ。......訓練もいいがほどほどにな」
そう言うと背を向けて帰っていった。
え?最後のって俺に言ったの?なんか目合ったけど....。気遣ってくれてる、のかな?
いや、そんなわけないか。たまたまだよな。
「ほどほどにって....。あの訓練の鬼が....?」
「相当入れ込んでるな。まあたしかに可愛いけど」
みんな仲良いんだなーとヴィスさんとライドさんの会話を聞きながら思う。
リベルと話しているときも気安すぎる、というわけではないが親しげだった。
そんな事を思っていると頭に何かが置かれた。
上を見上げると無表情なサムさんと目が合う。頭に乗せられたものはサムさんの手だ。
なんだろう?
首を傾げるとサムさんの目が少しだけ見開かれてすっと目を逸らされた。
そしてぽつりと言葉を漏らす。
「........怖くないのか?」
「へ?」
怖い?なにが?
「....俺が怖くないのか?」
「サムさんが?怖くないですよ?」
うん?なんでそんなこと聞くんだろう。
ってか怖がる要素ありましたっけ?
今のところ可愛い要素しかありませんが?
「......そうか。.....ならいい」
頭に乗せられた手が優しく髪を撫でる。
なんかちょっと恥ずかしいな...。
もしかしてサムさん俺のこと子供だと思ってる?
....ありえる....!ヴィスさんたちにも年齢言ったら驚かれたし!
「あの、俺22ですよ?」
こんなに間違われるなら『22歳です』って書いてどっか貼り付けようかな。いや、それはそれで恥ずかしいか。
俺の言葉に今度はサムさんが首をかしげる。
「.....知ってる。ヴィスから聞いた」
知ってたんかーい。ならなぜに子供扱い!
「サムは初対面の奴には大抵怖がられるからそれが嬉しかったんだろ」
リュードさんの言葉にサムさんが頷く。
そんな馬鹿な。あ、もしかして背が高いから睨んでるように見えちゃうのかな?
たしかに見ようによっちゃ怖い顔に見えなくも...ない。俺の場合は耳で相殺しちゃうけど。
「サムさん、ちょっと屈んでくれませんか?」
「.....?」
ああ、ほら。やっぱり。
屈んでくれたサムさんの瞳は見上げていた時よりも大きく見える。
「サムさん背が高いんでもしかしたら睨んでるように見えちゃってたかもしれないです!なんで目線を合わせればきっと怖がられなくなりますよ!」
少しの間目をぱちぱちさせていたがふっ、と少し笑ってまた俺の頭に手を乗せた。
「ん。ありがと」
頭撫でるの好きなのかな...?嫌じゃないからいいんだけどやっぱりちょっと恥ずかしい。
「同い年だし敬語じゃなくていい」
「え!?」
同い年!?サムさん22!?....神様、不公平すぎやしませんか?
「あ、俺も敬語なしでいいぞ!」
ライドさんがそう言うとヴィスさんもリュードさんも同じように言うもんだからみんな同い年なのかと思ったらさすがに違った。
ヴィスが25歳でライドが24歳。
リュードは21歳とまさかの歳下。雰囲気も落ち着いてるから全然見えない。
やっぱり神様は不公平ですね....。
「....ところで、俺は人族代表として合格...?」
そろそろトレーニングを、というところでずっと気になってたことを聞いてみた。
そうじゃないとそもそもスタートラインに立てない。
「なんだ、お前そんな事気にしてたのか?」
ヴィスが呆れた顔で言った。
そんなことって、重要なことでしょ!
「合格に決まってるじゃーん!」
ライドが両手を上げて近づいて来たと思ったら直前でぴたりと止まる。
「あっぶね、殺されるところだった」となにやらぶつぶつ呟いていたようだが何を言ってるかまでは聞き取れなかった。
サムとリュードも頷いてくれたのでほっとした。
これで今のところはフィレルさんの期待を裏切らずに済んだかな。
安心したところでトレーニングの流れを教えてもらった。
まず、基礎的な筋トレ。
これは腕立てとか腹筋とか日本でもよくやるような筋トレだ。ただ、回数がえぐい。最初はできる回数だけでいいってことになったけどみんなは200回くらいやっているらしい。化け物かよ。
次に体術の実践形式。
1対1や2対1などいろいろな想定をしながら実際に武器を使わずに対戦する。
軽く見せてもらったが獣人の身体能力がハンパない。これ、俺詰んだんじゃない?
最後に武器を使った実践形式。
得意な武器によって訓練は変わるのでとりあえず触ってみようということになった。
剣、短剣、槍、弓、と武器はだいたいこの4種類。
そういえば俺、高校のとき弓道部だったわ。
武器っていう概念がなかったから忘れてたけど。
...でも『かけ』がないんだよなぁ。
かけは右手につけて弓を引くための手袋のようなものであれがないと痛くてとても引けない。
しかも高校を卒業してから一度も引いてないから重くてしかたがない。
剣も槍も同じようにとても重かった。
ということでとりあえず筋肉がつくまでは短剣でのトレーニングを主にすることになった。
はっきり言って、道のりは遠い気がする。
「リベル団長、お疲れです」
「ああ、楽にしろ。これから訓練か?」
「はい!今自己紹介が終わったとこです。まさかチヒロからリベル団長のニ———」
「ライド、余計なことは言わなくていい」
ライドさんの話を遮るように言葉を被せるが懲りずにまた口を開く。
「え、まさか本気で———」
「わかったな?」
「.....わかりましたよ」
そしてまたも遮られ、しかも有無を言わせないような圧力までプラスされてライドさんはさすがに口を閉じた。
「他の連中にも伝えておいてくれ」
「お任せください!チヒロに手をだしたらリベル団長が...いだだ!痛いっ!」
言い終わらないうちにリベルがライドさんの耳を容赦なく引っ張ったのでそれ以上言葉は続かなかった。
「おい、この耳は飾りか?」
「すみませんでしたっ...!調子に乗りました!きちんと伝えておきます!」
その言葉にリベルはぱっと手を離す。痛かったのか耳がぱたぱたと動いてかわいい。
俺の名前が出てきてるのに会話の内容は全くわからなかったけどねっ。
「頼んだぞ。......訓練もいいがほどほどにな」
そう言うと背を向けて帰っていった。
え?最後のって俺に言ったの?なんか目合ったけど....。気遣ってくれてる、のかな?
いや、そんなわけないか。たまたまだよな。
「ほどほどにって....。あの訓練の鬼が....?」
「相当入れ込んでるな。まあたしかに可愛いけど」
みんな仲良いんだなーとヴィスさんとライドさんの会話を聞きながら思う。
リベルと話しているときも気安すぎる、というわけではないが親しげだった。
そんな事を思っていると頭に何かが置かれた。
上を見上げると無表情なサムさんと目が合う。頭に乗せられたものはサムさんの手だ。
なんだろう?
首を傾げるとサムさんの目が少しだけ見開かれてすっと目を逸らされた。
そしてぽつりと言葉を漏らす。
「........怖くないのか?」
「へ?」
怖い?なにが?
「....俺が怖くないのか?」
「サムさんが?怖くないですよ?」
うん?なんでそんなこと聞くんだろう。
ってか怖がる要素ありましたっけ?
今のところ可愛い要素しかありませんが?
「......そうか。.....ならいい」
頭に乗せられた手が優しく髪を撫でる。
なんかちょっと恥ずかしいな...。
もしかしてサムさん俺のこと子供だと思ってる?
....ありえる....!ヴィスさんたちにも年齢言ったら驚かれたし!
「あの、俺22ですよ?」
こんなに間違われるなら『22歳です』って書いてどっか貼り付けようかな。いや、それはそれで恥ずかしいか。
俺の言葉に今度はサムさんが首をかしげる。
「.....知ってる。ヴィスから聞いた」
知ってたんかーい。ならなぜに子供扱い!
「サムは初対面の奴には大抵怖がられるからそれが嬉しかったんだろ」
リュードさんの言葉にサムさんが頷く。
そんな馬鹿な。あ、もしかして背が高いから睨んでるように見えちゃうのかな?
たしかに見ようによっちゃ怖い顔に見えなくも...ない。俺の場合は耳で相殺しちゃうけど。
「サムさん、ちょっと屈んでくれませんか?」
「.....?」
ああ、ほら。やっぱり。
屈んでくれたサムさんの瞳は見上げていた時よりも大きく見える。
「サムさん背が高いんでもしかしたら睨んでるように見えちゃってたかもしれないです!なんで目線を合わせればきっと怖がられなくなりますよ!」
少しの間目をぱちぱちさせていたがふっ、と少し笑ってまた俺の頭に手を乗せた。
「ん。ありがと」
頭撫でるの好きなのかな...?嫌じゃないからいいんだけどやっぱりちょっと恥ずかしい。
「同い年だし敬語じゃなくていい」
「え!?」
同い年!?サムさん22!?....神様、不公平すぎやしませんか?
「あ、俺も敬語なしでいいぞ!」
ライドさんがそう言うとヴィスさんもリュードさんも同じように言うもんだからみんな同い年なのかと思ったらさすがに違った。
ヴィスが25歳でライドが24歳。
リュードは21歳とまさかの歳下。雰囲気も落ち着いてるから全然見えない。
やっぱり神様は不公平ですね....。
「....ところで、俺は人族代表として合格...?」
そろそろトレーニングを、というところでずっと気になってたことを聞いてみた。
そうじゃないとそもそもスタートラインに立てない。
「なんだ、お前そんな事気にしてたのか?」
ヴィスが呆れた顔で言った。
そんなことって、重要なことでしょ!
「合格に決まってるじゃーん!」
ライドが両手を上げて近づいて来たと思ったら直前でぴたりと止まる。
「あっぶね、殺されるところだった」となにやらぶつぶつ呟いていたようだが何を言ってるかまでは聞き取れなかった。
サムとリュードも頷いてくれたのでほっとした。
これで今のところはフィレルさんの期待を裏切らずに済んだかな。
安心したところでトレーニングの流れを教えてもらった。
まず、基礎的な筋トレ。
これは腕立てとか腹筋とか日本でもよくやるような筋トレだ。ただ、回数がえぐい。最初はできる回数だけでいいってことになったけどみんなは200回くらいやっているらしい。化け物かよ。
次に体術の実践形式。
1対1や2対1などいろいろな想定をしながら実際に武器を使わずに対戦する。
軽く見せてもらったが獣人の身体能力がハンパない。これ、俺詰んだんじゃない?
最後に武器を使った実践形式。
得意な武器によって訓練は変わるのでとりあえず触ってみようということになった。
剣、短剣、槍、弓、と武器はだいたいこの4種類。
そういえば俺、高校のとき弓道部だったわ。
武器っていう概念がなかったから忘れてたけど。
...でも『かけ』がないんだよなぁ。
かけは右手につけて弓を引くための手袋のようなものであれがないと痛くてとても引けない。
しかも高校を卒業してから一度も引いてないから重くてしかたがない。
剣も槍も同じようにとても重かった。
ということでとりあえず筋肉がつくまでは短剣でのトレーニングを主にすることになった。
はっきり言って、道のりは遠い気がする。
87
あなたにおすすめの小説
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
異世界で勇者をやったら執着系騎士に愛された
よしゆき
BL
平凡な高校生の受けが異世界の勇者に選ばれた。女神に美少年へと顔を変えられ勇者になった受けは、一緒に旅をする騎士に告白される。返事を先伸ばしにして受けは攻めの前から姿を消し、そのまま攻めの告白をうやむやにしようとする。
触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?
雪 いつき
BL
仕事帰りにマンホールに落ちた森川 碧葉(もりかわ あおば)は、気付けばヌメヌメの触手生物に宙吊りにされていた。
「ちょっとそこのお兄さん! 助けて!」
通りすがりの銀髪美青年に助けを求めたことから、回らなくてもいい運命の歯車が回り始めてしまう。
異世界からきた聖女……ではなく聖者として、神聖力を目覚めさせるためにドラゴン討伐へと向かうことに。王様は胡散臭い。討伐仲間の騎士様たちはいい奴。そして触手生物には、愛されすぎて喘がされる日々。
どうしてこんなに触手生物に愛されるのか。ピィピィ鳴いて懐く触手が、ちょっと可愛い……?
更には国家的に深刻な問題まで起こってしまって……。異世界に来たなら悠々自適に過ごしたかったのに!
異色の触手と氷の(天然)騎士様に溺愛されすぎる生活が、今、始まる―――
※昔書いていたものを加筆修正して、小説家になろうサイト様にも上げているお話です。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
狼騎士は異世界の男巫女(のおまけ)を追跡中!
Kokonuca.
BL
異世界!召喚!ケモ耳!な王道が書きたかったので
ある日、はるひは自分の護衛騎士と関係をもってしまう、けれどその護衛騎士ははるひの兄かすがの秘密の恋人で……
兄と護衛騎士を守りたいはるひは、二人の前から姿を消すことを選択した
完結しましたが、こぼれ話を更新いたします
花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?
銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。
王命を知られる訳にもいかず…
王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる?
※[小説家になろう]様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる