勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

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12話

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「なら食堂行こうか。人も集まるし紹介するのに都合がいい」

「え!?食堂あるの!?」

「当たり前だろ?部屋に運んでもらえるのはほんの一部だよ」

えー....、絶対俺運んでもらう資格ないよね....。

「それなら俺も食堂で食べたい」

「はぁ?なんでわざわざ。運んでもらうやつの方が豪華だぞ」

尚更食堂がいいんですけど!

「いや、俺にそんな豪華な食事食べる資格なんてないし」

「資格ならあるさ。チヒロは強制的にこっちに連れて来られたんだし。被害者だろ?」

「でもそれはレムール国の所為じゃん」

「それはそうだけど人が召喚されるかもしれないってわかってて放置してた俺らも同罪みたいなもんだろ」

「え!?みんなそう思ってるの!?」

「他の奴らはどうかわかんないけど少なくともリベル団長とトリス殿は責任感じてたみたいだったよ」

うそん....。リベルも?それはちょっと想像できないけど...でもきっと、俺が前あんなこと言ったからだよね...。


『で、でも...!人も召喚されるかもしれないことは分かってたんですよね....?』
『ならなんで....!そんな無責任なこと....!』


衣食住お世話になってるから十分感謝してるのに...!
あれ、待てよ?お礼、言ってなくね....?
うわっ、俺最低ー....。

トリスさんとは最近会ってないとはいえ会おうともしていなかったし、リベルとは会ったのにあまつさえ隠れるという愚行。

「.....ねえ、ローレン。トリスさんとリベル...団長に会いたいんだけど....」

「ん?ああ、わかった。伝えておくよ」

「お願いします....」


そんなこんなでお昼は獣騎士団のみんなと食堂で食べれることになった。
脱!ボッチ飯!


団員が一度に集まると混雑するので、3回くらいに分かれて食事をするらしいけど思ったより人が多く賑わっている。

ローレンはきょろきょろしながら食堂へ入っていくと、2人組で食事をしている人に声をかけた。

「よっ、お疲れさん」

「あれ、ローレン。この時間だったか?」

「いや、今日は付き添いだよ」

「えっ!まさか噂の人族?」

「うわ!初めて見た!思ってたより小さくて可愛いな!」

俺の顔を見た瞬間ぐっと身体を近づけて興奮気味に迫られる。

え、俺噂になってんの?どんな噂だろ....。聞きたい様な聞きたくないような....。
それに小さくて可愛いって...。こっちの人たちにしてみたら日本人なんてみんな小さくて可愛いんだろうな....。

「落ち着け、お前ら。まずは自己紹介だろ」

「ごめんごめん。僕はオルガーだよ。よろしくね」

「俺はテッド。よろしくな!」

「俺は千裕です。よろしくお願いします」

2人とも狐の獣人らしいが3人とも種類の違う狐さんらしい。
たしかに耳や尻尾の形が少し違う。

オルガーさんは灰色の髪の毛に黒の瞳、大きな耳と長くて太い尻尾。

テッドさんは少し暗めの灰色の髪に琥珀色の瞳。オルガーさんと比べると小さめの耳に尻尾もしゅっとしている。

ローレンは琥珀色の髪と瞳で耳と尻尾はオルガーさんとテッドさんの丁度中間くらいの大きさだ。

ローレンが持ってきてくれたご飯を食べながらたくさん話をした。

このおかずが美味しいとかこれは苦手だとかたわいもない会話なのにめちゃくちゃ楽しい。
たしかに前に食べていたご飯の方が豪華で味もいいけど、今の方が断然美味しい。
お腹だけじゃなく心まで満たされる感じ。


「人族にも無害そうな奴いるんだな」

そろそろオルガーとテッドの休憩も終わり、というところでテッドが悪気もなく言った。

「無害そうって....。むしろ人族の印象ってどんな感じなの?」

「んー...、陰湿で狡猾...かな」

うわぁ...。思ったよりイメージ悪ぅー....。

「あれ、でもほとんど人族に会ったことないんだよね?どうしてそんなイメージが?」

「親にずっと言われてきたしな。子供の頃なんて『いい子にしないと人族が来て奴隷にされちゃうよ!』とかみんな言われてたんじゃないか?」

「言われてたね~」

.....そりゃ印象悪くもなるよ....。

「親世代は頭の固い人が多いから向こうの第二王子とかトリス殿のことも良く思ってない人が多いみたい」

「そう、なんだ....」

トリスさんのことすら良く思ってないんじゃ俺1人でどうこうできる問題じゃない気がする....。

少し空気が重くなった時、ローレンが俺の背中をバシン!と音が鳴るくらい強く叩いた。

「いっ...!」

「そんなしんみりするなって。大丈夫。もっと気楽にいこう」

「......そう言ってくれるのは嬉しいけど...。叩くならもうちょっと優しく叩いてくれる...?」

「ちょっと強かったか?」

「ちょっとじゃないからね!?背骨折れるかと思ったからね!?」

思わずそう叫ぶと3人ともお腹をかかえて笑い出した。

ちょっと、笑わせるつもりなんて一切なかったんですけど。
笑いどころがイマイチ理解できない。
まあ、お陰で空気も軽くなったしいいんだけどさ。


食事を終え、オルガーとテッドと別れてから席を立つと後ろからローレンの名前を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると男の人が慌てた様子でこちらに向かって走って来るのが見える。

「どうした?ジャル。そんな慌てて」

「ルディがヒートだ。俺が代わるから行ってやれ」

「えっ、もう少し先だと思ってたのに...。.....わかった。でもチヒロを送ってから行くよ」

「辛そうだったから早く行ってやれ。リベル団長もご存じだから」

「っ...でも....」

....なんかよくわかんないけどローレンが行かなきゃいけないってことだよね?

「ローレン、俺はいいから行ってあげて?」

そう言っても動こうとしない。何を迷ってるのかわからないけどローレンはジャルさんの方にチラリと視線を送るとジャルさんが深くため息をついた。

「心配するな。仕事はきっちりやるよ」

「.......わかった。頼んだぞ。チヒロ、すまん。リベル団長の所にはジャルに送ってもらってくれ」

「うん。わかった」
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