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18話
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「フィレルさん!」
翌日、朝一番にフィレルさんに会いに行った。
「チヒロ殿、おはようございます」
「おはようございます。すみません、朝早くに」
「いえいえ。この歳になると早くに目が覚めてしまうので。むしろ話相手になって頂けると助かります」
ああ、やっぱフィレルさんと話すと癒される....。
「ありがとうございます」
いかん。和んでいる場合じゃない。
フィレルさんに会いに来たのはもちろん昨日、リベルが言っていたことを確かめるためだ。
ヴィスに聞いてもリベルに口止めされているのか教えてくれないのだ。
「獣人族はみなさん動物に変身できるんですか?」
そう言うとフィレルさんは目を少し見開いた。
「....申し訳ありません。リベルの奴、お伝えしていなかったのですね...。あやつは後ほど仕置きしておきますのでどうかご容赦下さい」
「あ、いえ。怒ってるわけではないんです!ただ、事実確認を....」
リベルをお仕置き....。ちょっと見たいかも。
「はい。我々は皆、動物に姿を変えることができます」
ああ....。やっぱり本当だったのね....。
がっくりとうなだれるとフィレルさんが心配そうに覗き込んだ。
「リベルがなにか困らせるようなことをしましたでしょうか?」
「えっ!?」
途端に昨日のことが脳裏に浮かび、顔に熱が集中する。
そんな俺を見てフィレルさんは頭をかかえた。
「匂いが濃いとは思っておりましたが...、よもや無理矢理行為に及ばれたのでは...?」
匂いが濃いってなに!?えっ、みんなにバレてるってこと!?
たしかにヴィスに会ったとき驚いた顔してたなって思ってたけど!
前半の言葉が衝撃すぎて、後半は耳に入ってきていなかった。
「チヒロ殿?」
「あ、いえ、その、えと...。そうだ!匂いを消す方法とかって無いんですか?」
「.....あるにはあります....が、消さないほうが良いでしょう」
「え?なんでですか?」
だってリベルとヤりましたって言いながら歩いてるようなもんでしょ!?
めちゃくちゃ嫌なんですけど!恥ずかしいんですけど!もうみんなの顔見れないよ!
「マーキングは貴方の身を守るためでもあるのです」
「マーキング....?身を守る...?どういう意味ですか...?」
「元々、私がリベルに貴方へのマーキングを頼みました。相手がリベルであればこの砦の者は手を出せませんから」
「あの、マーキングってなんですか?」
「....申し訳ありません。先に私がお伝えしておくべきでした。マーキングは本来、恋人同士が行うものなのです。相手に自分の匂いをつけることでこの人は自分のものだとアピールするために」
な、なるほど....?
ん?ってことは....、俺とリベルが恋人同士だと思われてたってこと!?
「それをフィレルさんが頼んだって....、どうしてですか?」
「この砦では実力も階級もリベルが一番上なので、あやつに逆らう者はこの砦にはおりません。なのでリベルの匂いがついていればチヒロ殿の安全は保障されます」
リベルって思ってたより偉かったのか...。
「え、階級もですか?フィレルさん、元宰相ってお聞きしましたけど」
「ええ、あくまで"元"ですので。私ではなんの牽制にもなりませんよ」
そういうものなのか....。
ならフィレルさんにマーキングしてもらうのは無理ってことか。
「あの、匂いは触るだけじゃつかないんですか?」
触るだけでいいなら我慢できると思うんですよ。
俺の為にやってくれてるわけだしね。
ただ、狼の時はやたら耳や首筋を舐められていたのでリベルだとわかっちゃった今、それはちょっと遠慮したい。
「触るだけですとすぐに消えてしまうのであまり意味がありません。一晩中触っていれば別ですが....」
なんてこったい。じゃああんなことされ続けなきゃいけないってこと?
「もしリベルが嫌ということであれば他の者を紹介することもできますが.....」
「え....」
うーん....。でも全く知らない人ってのもなぁ....。
そもそも護衛がいるのにマーキングってしなきゃいけないものなの?
そうじゃん。必要なくね?よし、リベルにそう伝えてみよう。
「あ、いえ、大丈夫です」
「....そうですか、何かありましたら遠慮なく仰ってくださいね」
「はい。ありがとうございます。あ、あと人の姿に戻るときって絶対裸になるって言ってたんですけど本当ですか?」
「ええ。本当です。動物のときに服は着れませんので。なので人前では滅多に姿を変えません」
「なるほど...。じゃあ動物になるときは服が脱げるってことですか?」
「はい。そうです」
そういうとこはちょっと面倒くさそうだな。
「動物に変わるときってどんなときなんですか?」
「そうですね....。まず、なんの獣人かにもよりますが、動物の姿になると身体能力が向上します。視力や嗅覚、聴力、あとは鳥類の獣人は飛べるようにもなるので偵察するときなんかは大抵動物の姿です」
えー!じゃあリュード飛べるんだ!いいなー!
頼んだら見せてもらえるかな?
「ただ、動物の姿では喋ることができないのでコミュニケーションがとれないのが難点ですね」
「あ、喋れないんですね」
喋れないふりとかではなかったのか。
にしても説明あってよかったと思いますけどね!
翌日、朝一番にフィレルさんに会いに行った。
「チヒロ殿、おはようございます」
「おはようございます。すみません、朝早くに」
「いえいえ。この歳になると早くに目が覚めてしまうので。むしろ話相手になって頂けると助かります」
ああ、やっぱフィレルさんと話すと癒される....。
「ありがとうございます」
いかん。和んでいる場合じゃない。
フィレルさんに会いに来たのはもちろん昨日、リベルが言っていたことを確かめるためだ。
ヴィスに聞いてもリベルに口止めされているのか教えてくれないのだ。
「獣人族はみなさん動物に変身できるんですか?」
そう言うとフィレルさんは目を少し見開いた。
「....申し訳ありません。リベルの奴、お伝えしていなかったのですね...。あやつは後ほど仕置きしておきますのでどうかご容赦下さい」
「あ、いえ。怒ってるわけではないんです!ただ、事実確認を....」
リベルをお仕置き....。ちょっと見たいかも。
「はい。我々は皆、動物に姿を変えることができます」
ああ....。やっぱり本当だったのね....。
がっくりとうなだれるとフィレルさんが心配そうに覗き込んだ。
「リベルがなにか困らせるようなことをしましたでしょうか?」
「えっ!?」
途端に昨日のことが脳裏に浮かび、顔に熱が集中する。
そんな俺を見てフィレルさんは頭をかかえた。
「匂いが濃いとは思っておりましたが...、よもや無理矢理行為に及ばれたのでは...?」
匂いが濃いってなに!?えっ、みんなにバレてるってこと!?
たしかにヴィスに会ったとき驚いた顔してたなって思ってたけど!
前半の言葉が衝撃すぎて、後半は耳に入ってきていなかった。
「チヒロ殿?」
「あ、いえ、その、えと...。そうだ!匂いを消す方法とかって無いんですか?」
「.....あるにはあります....が、消さないほうが良いでしょう」
「え?なんでですか?」
だってリベルとヤりましたって言いながら歩いてるようなもんでしょ!?
めちゃくちゃ嫌なんですけど!恥ずかしいんですけど!もうみんなの顔見れないよ!
「マーキングは貴方の身を守るためでもあるのです」
「マーキング....?身を守る...?どういう意味ですか...?」
「元々、私がリベルに貴方へのマーキングを頼みました。相手がリベルであればこの砦の者は手を出せませんから」
「あの、マーキングってなんですか?」
「....申し訳ありません。先に私がお伝えしておくべきでした。マーキングは本来、恋人同士が行うものなのです。相手に自分の匂いをつけることでこの人は自分のものだとアピールするために」
な、なるほど....?
ん?ってことは....、俺とリベルが恋人同士だと思われてたってこと!?
「それをフィレルさんが頼んだって....、どうしてですか?」
「この砦では実力も階級もリベルが一番上なので、あやつに逆らう者はこの砦にはおりません。なのでリベルの匂いがついていればチヒロ殿の安全は保障されます」
リベルって思ってたより偉かったのか...。
「え、階級もですか?フィレルさん、元宰相ってお聞きしましたけど」
「ええ、あくまで"元"ですので。私ではなんの牽制にもなりませんよ」
そういうものなのか....。
ならフィレルさんにマーキングしてもらうのは無理ってことか。
「あの、匂いは触るだけじゃつかないんですか?」
触るだけでいいなら我慢できると思うんですよ。
俺の為にやってくれてるわけだしね。
ただ、狼の時はやたら耳や首筋を舐められていたのでリベルだとわかっちゃった今、それはちょっと遠慮したい。
「触るだけですとすぐに消えてしまうのであまり意味がありません。一晩中触っていれば別ですが....」
なんてこったい。じゃああんなことされ続けなきゃいけないってこと?
「もしリベルが嫌ということであれば他の者を紹介することもできますが.....」
「え....」
うーん....。でも全く知らない人ってのもなぁ....。
そもそも護衛がいるのにマーキングってしなきゃいけないものなの?
そうじゃん。必要なくね?よし、リベルにそう伝えてみよう。
「あ、いえ、大丈夫です」
「....そうですか、何かありましたら遠慮なく仰ってくださいね」
「はい。ありがとうございます。あ、あと人の姿に戻るときって絶対裸になるって言ってたんですけど本当ですか?」
「ええ。本当です。動物のときに服は着れませんので。なので人前では滅多に姿を変えません」
「なるほど...。じゃあ動物になるときは服が脱げるってことですか?」
「はい。そうです」
そういうとこはちょっと面倒くさそうだな。
「動物に変わるときってどんなときなんですか?」
「そうですね....。まず、なんの獣人かにもよりますが、動物の姿になると身体能力が向上します。視力や嗅覚、聴力、あとは鳥類の獣人は飛べるようにもなるので偵察するときなんかは大抵動物の姿です」
えー!じゃあリュード飛べるんだ!いいなー!
頼んだら見せてもらえるかな?
「ただ、動物の姿では喋ることができないのでコミュニケーションがとれないのが難点ですね」
「あ、喋れないんですね」
喋れないふりとかではなかったのか。
にしても説明あってよかったと思いますけどね!
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