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21話
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光が治った後に目を開けると同じような場所だった。
窓もないのでここも多分地下なのだろう。
違うところは広さくらいだろうか。こちらの方が随分広い。
王様に謁見をする上でまた一悶着あった。
男たちはフィレルさんに謁見をさせたくなかったようだが、「こちらに戻って来たことを報告せねばならないので」となんだかんだフィレルさんも謁見することになったのだ。
王様に会う時の礼儀作法なんて知らないからとても心強い。
片膝をつき、右手は左胸に左手は拳をつくって床に置く。頭は上げていいと言われるまで上げちゃいけない...。
心の中で繰り返しながら王様が来るのを待つ。
静寂の中待つのも緊張したが、足音が聞こえてくるとより一層緊張感が増した。
「面をあげよ」
腹に響くような低い声に心臓がさらに早鐘を打つ。ドキドキしながら顔を上げると恐ろしく顔の整った人と、以前殿下と呼ばれていた人がいた。
あの人が王様なんだろう。殿下と同じ形の耳だからきっと王様もライオンの獣人かな?
....というか、ここの人たちは顔立ちが整い過ぎててまじで年齢不詳。
「其方がチヒロか」
「は、はい。千裕・栗原と申します」
「22と聞いていたが随分幼く見えるな」
それはもう聞き飽きましたよ....。
「...しかし、フィレルも戻ってきたのか」
「はい。些か強引な召喚でしたので、私の友人が手荒い待遇を受けるのではと危惧いたしました」
「ほう?友人だと?」
「ええ。ですので召喚の理由を伺いたく存じます」
「なに、理由はお前と同じだよ。この目で無害かどうか確かめたかっただけだ」
「報告書が誤りだと?」
「ははっ、そうは言っておらん。ただ、全てをそのまま信じるのも危険だと臣下たちがうるさくてな。この目で見ておくのも良いと思ったのだ。それにベアドルも会いたがっていたしな」
横にちらりと視線を送ったので殿下の名前なのだろう。その証拠に殿下が口を開く。
「最初見たときは私より年下だと思っておりました。リベルが拷問を行うと言っていたのでどんな奴かと思っていましたが...やはり大したことはなかったようですね?」
む、なんかバカにされたみたいでムカつく。
自分は大したことあるとでも言いたいのか。
「....大したこと...というのが武力のことであれば、そうですね。魔術も使えないですし我々の脅威にはならないでしょう」
「何が言いたい?」
「いえ。ただ事実を申し上げたまでです」
「...ふん。まあよい。其方には戦争が終わるまで城に留まってもらうことにした」
「!?」
はぁ!?なんで!?
「....理由を伺っても?」
「簡単な話だ。あそこは最前線だろう?あんなところに得体の知れない人族が居るのは皆不安なのだ。もし情報を流されたら事だしな」
なっ....、スパイだと思われてる....!?
「その心配は無用だと申し上げたつもりでしたが、伝わっておりませんでしたか?」
「それはお前の意見であろう?それだけじゃ納得しない奴が多くてな。それなら此処に居てもらった方がいろいろと手間が省ける」
それって監視されるってこと....?
「.....ですが、こちらには人族を良く思っていない者が多すぎます。チヒロ殿に危害が及ばぬとも言い切れません」
「それは何処に居ても同じ事。心配ならお前の選んだ護衛をつけるといい」
「....承知いたしました」
そんなこんなで緊張の謁見は終了した。
いや、ほんとフィレルさんがいてくれてよかった....。俺ほとんど喋らなかったし...。喋れなかった、と言った方が正しいかもしれない。
「フィレルさん、ありがとうございました」
「....いえ。申し訳ありませんでした。できれば砦へ送り届けたかったのですが....」
「なに言ってるんですか!フィレルさんがいなかったらどうなってたことか!」
もう手汗酷かったんですから!
「...ありがとうございます。砦より不便な生活となってしまいますがご容赦ください。チヒロ殿には信頼のおける護衛を2人つけますので、決して離れませぬよう」
「こちらこそありがとうございます。ご迷惑おかけします。....ところで、ここはそれほど危険な場所なんでしょうか?いまいち状況がわからなくて....」
砦にも人族が嫌いな人はいたはずなのに、状況がそんなにも違うものなのだろうか。
「砦ではリベルの匂いがついていれば比較的安全でしたが、此処では違います。一番厄介なのは貴族ですね。人族は滅びた方が良いと思っている者も少なくありません」
「えっ!」
過激発言だな!それはちょっと極端すぎません!?
「これを機にチヒロ殿を利用しようとする者が現れるかもしれません」
「え、俺に利用価値なんてあるんですか?」
「....残念ながら。トリス殿のような魔術が使えないとあらば誘拐など容易ですからね...」
誘拐って!恐ろしい単語でてきたっ。
「取り敢えず私の屋敷へ向かいましょう。此処よりは幾分か安全のはずです」
そうして馬車に乗りフィレルさんの家へと向かった。
窓もないのでここも多分地下なのだろう。
違うところは広さくらいだろうか。こちらの方が随分広い。
王様に謁見をする上でまた一悶着あった。
男たちはフィレルさんに謁見をさせたくなかったようだが、「こちらに戻って来たことを報告せねばならないので」となんだかんだフィレルさんも謁見することになったのだ。
王様に会う時の礼儀作法なんて知らないからとても心強い。
片膝をつき、右手は左胸に左手は拳をつくって床に置く。頭は上げていいと言われるまで上げちゃいけない...。
心の中で繰り返しながら王様が来るのを待つ。
静寂の中待つのも緊張したが、足音が聞こえてくるとより一層緊張感が増した。
「面をあげよ」
腹に響くような低い声に心臓がさらに早鐘を打つ。ドキドキしながら顔を上げると恐ろしく顔の整った人と、以前殿下と呼ばれていた人がいた。
あの人が王様なんだろう。殿下と同じ形の耳だからきっと王様もライオンの獣人かな?
....というか、ここの人たちは顔立ちが整い過ぎててまじで年齢不詳。
「其方がチヒロか」
「は、はい。千裕・栗原と申します」
「22と聞いていたが随分幼く見えるな」
それはもう聞き飽きましたよ....。
「...しかし、フィレルも戻ってきたのか」
「はい。些か強引な召喚でしたので、私の友人が手荒い待遇を受けるのではと危惧いたしました」
「ほう?友人だと?」
「ええ。ですので召喚の理由を伺いたく存じます」
「なに、理由はお前と同じだよ。この目で無害かどうか確かめたかっただけだ」
「報告書が誤りだと?」
「ははっ、そうは言っておらん。ただ、全てをそのまま信じるのも危険だと臣下たちがうるさくてな。この目で見ておくのも良いと思ったのだ。それにベアドルも会いたがっていたしな」
横にちらりと視線を送ったので殿下の名前なのだろう。その証拠に殿下が口を開く。
「最初見たときは私より年下だと思っておりました。リベルが拷問を行うと言っていたのでどんな奴かと思っていましたが...やはり大したことはなかったようですね?」
む、なんかバカにされたみたいでムカつく。
自分は大したことあるとでも言いたいのか。
「....大したこと...というのが武力のことであれば、そうですね。魔術も使えないですし我々の脅威にはならないでしょう」
「何が言いたい?」
「いえ。ただ事実を申し上げたまでです」
「...ふん。まあよい。其方には戦争が終わるまで城に留まってもらうことにした」
「!?」
はぁ!?なんで!?
「....理由を伺っても?」
「簡単な話だ。あそこは最前線だろう?あんなところに得体の知れない人族が居るのは皆不安なのだ。もし情報を流されたら事だしな」
なっ....、スパイだと思われてる....!?
「その心配は無用だと申し上げたつもりでしたが、伝わっておりませんでしたか?」
「それはお前の意見であろう?それだけじゃ納得しない奴が多くてな。それなら此処に居てもらった方がいろいろと手間が省ける」
それって監視されるってこと....?
「.....ですが、こちらには人族を良く思っていない者が多すぎます。チヒロ殿に危害が及ばぬとも言い切れません」
「それは何処に居ても同じ事。心配ならお前の選んだ護衛をつけるといい」
「....承知いたしました」
そんなこんなで緊張の謁見は終了した。
いや、ほんとフィレルさんがいてくれてよかった....。俺ほとんど喋らなかったし...。喋れなかった、と言った方が正しいかもしれない。
「フィレルさん、ありがとうございました」
「....いえ。申し訳ありませんでした。できれば砦へ送り届けたかったのですが....」
「なに言ってるんですか!フィレルさんがいなかったらどうなってたことか!」
もう手汗酷かったんですから!
「...ありがとうございます。砦より不便な生活となってしまいますがご容赦ください。チヒロ殿には信頼のおける護衛を2人つけますので、決して離れませぬよう」
「こちらこそありがとうございます。ご迷惑おかけします。....ところで、ここはそれほど危険な場所なんでしょうか?いまいち状況がわからなくて....」
砦にも人族が嫌いな人はいたはずなのに、状況がそんなにも違うものなのだろうか。
「砦ではリベルの匂いがついていれば比較的安全でしたが、此処では違います。一番厄介なのは貴族ですね。人族は滅びた方が良いと思っている者も少なくありません」
「えっ!」
過激発言だな!それはちょっと極端すぎません!?
「これを機にチヒロ殿を利用しようとする者が現れるかもしれません」
「え、俺に利用価値なんてあるんですか?」
「....残念ながら。トリス殿のような魔術が使えないとあらば誘拐など容易ですからね...」
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「取り敢えず私の屋敷へ向かいましょう。此処よりは幾分か安全のはずです」
そうして馬車に乗りフィレルさんの家へと向かった。
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