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3話
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「は!?結婚!?」
まさか結婚までしているとは思わずかなり大きな声がでた。
「もう!なんで言っちゃうかな!後でゆっくり説明しようと思ってたのに!」
「悪かったって」
「ごめん、樹。びっくりしたよね...。あのね、こっちでは日本と違って同性婚もできて、日本ほど同性の恋愛に対して偏見なくてね...」
必死に説明してくれるが聞きたいことはそこじゃない。
「いや、それは別にいいよ。俺もゲイだし偏見はない」
しまった。
「え!?」
ゲイだと言うつもりはなかったのにうっかり口が滑ってしまった。
「そうだったの!?」
「ゲイってなんだ?」
「男の同性愛者のことだ。ってか俺のことはいいから。兄貴はノンケだったよな?」
「う、うん....」
「無理矢理一緒になったってわけじゃないのか?」
ま、見てればわかるけど。
「違うよ!?俺も望んで結婚したから!」
「そっか、まあ幸せならなんでもいいよ。祝福する」
「樹....。ありがとう」
ぎゅっと抱きしめられ頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「俺からも礼を言わせてくれ。それと、ハルトを必ず幸せにすると誓う」
金色の瞳がすうっと細められた。
男前かよ....!
見ているこっちが恥ずかしくなり視線を逸らした。
「話がひと段落ついたようでしたらご飯にしませんか?」
いつの間にかレオンが食事を用意してくれていた。
ところで、とレオンが飲み物を配りながら言った。
「イツキの髪は茶色なのですか?」
なぜか残念そうに聞かれた。
「は....?これは染めてるだけだけど...?」
「色を変える技術があるのでしたね...!それでは元は黒なのですか?」
「そうだけど」
「綺麗なのに勿体無いですね....」
「勿体無い?」
「こっちでは黒い髪と瞳の人は居ないんだって」
「1人も?」
「はい。ハルトを初めて見た時は驚きました」
「へー。俺からしたらそっちの方が綺麗だと思うけどね。これもすぐ黒に戻るし」
正直、奇抜な髪色が似合う外国人風な顔立ちも羨ましい。
「わかる!憧れるよね~」
食事中はもっぱら魔法の話になった。
魔力があれば全属性扱えるらしくもはやチートだろ、と思ったのだがそんな簡単なものでもないらしい。
イメージが重要らしいがこればっかりはやってみないとわからない。
春翔が初めて使った時に暴発させたことがあったようで魔法の使用は習うまで禁止された。
これからの詳しい話は明日、ということになり部屋割りで揉めた。
春翔が俺と一緒に寝たいと言い出したからだ。
まあ俺も知らない奴と寝るよりかはその方がありがたい。
「俺にレオンと寝ろって言うのか?」
うん、確かにベッドの大きさがこれと同じなら180を超えている2人が一緒に寝るのは少しかわいそうだ。
「私も団長とは嫌ですね」
「じゃあ...俺とレオンが一緒とか?」
「は!?なぜそうなる!」
「私はそれでもいいですよ?」
「だって、レクスなら樹に手出したりしないでしょ?」
はい?俺はそんな心配をされてたのか?
レクスは頭を抱えてため息をついた。
「私は手を出しそうってことですか?」
レオンは相変わらずにこにこと楽しそうだ。
「レオンを信じてないわけじゃないよ!?でも、ほら、万が一ってことも....。樹可愛いし!」
いや、可愛くはないだろ。
「私がハルトに手を出すとは思わないんですか?」
「それはない」
キッパリと言い放った。
ふっと笑って蚊帳の外だった俺の方を向く。
「イツキはどうしたいですか?」
「早く寝れればなんでも」
そもそも我儘を言える立場ではない
「なら決まりですね。明日に備えて今日は休みましょう」
春翔とレクスの背中を押した。
「レオン、手出しちゃ駄目だからね?」
「わかってますよ」
「樹、.......母さん達は、元気にしてた....?」
一緒に寝たいと言い出したのはそれが聞きたかったのもあるんだろう。
「ああ、元気だよ」
「そっか....よかった...。2人とも親不孝者になっちゃったね」
「ほんとに....」
「じゃあ、お休み」
「お休み」
2人になり部屋に静けさが戻った。
「なぜ嘘を?」
「...なんのことだ?」
「お母様のことですよ」
「!?」
ばっと振り返ってレオンを見るがその顔は笑っておらず、真剣な面持ちだった。
「....関係ないだろ」
「そうですね。ですが体調が悪いようでしたら言うべきでは?」
言うべきだと?なにも知らないくせに...!
「じゃあお前なら言えるか!?兄貴が死んでから両親は心を病んだなんて!どうせもう帰れないのにそんなこと知る必要ないだろ!?」
涙が出そうになって慌てて後ろを向いた。
「確かにハルトが聞いたら悲しむでしょうね。ですが私が聞いたところで関係ありませんので。あなたが全て抱え込む必要はないのでは?」
「.....わざと言わせたのか?」
「少し辛そうな表情でしたので...。吐き出したほうが楽になるかと。余計なお世話でしたらすみません」
「余計なお世話だ。だいたい、辛そうな顔なんてした覚えはない」
「そうですか。それは失礼しました」
全て見透かされているような気がしてくる。
こういう奴は苦手だ。
さっさと寝ようとしたが着替え用の服と体を拭く水を渡された。
「どうも」
着ている服はかなり汚れたので捨ててもらうことにした。
拭くだけでもかなりさっぱりとして気持ちがいい。
ベルトに手をかけるとレオンがまじまじと見てきた。
「それはなんですか?」
「....ベルトのことか?」
「ベルトと言うんですか?外し方が分からなくて諦めたのですが....。なるほど、そう外すんですね」
まて、なんで外そうとしたんだ。
「怪我の確認をしたかっただけですよ?」
「.......」
声に出していないことへのレスポンスはやめてほしい。
「見せて頂いてもいいですか?」
ベルトを外してレオンへ渡した。
「.....これは皮ですか?」
「合皮だろ」
「ゴウヒ...?」
「本物の皮じゃない」
「そんなものまで作れてしまうのですね....」
体を拭いて借りた服に着替え終わってもまだベルトを観察していた。
「そんなに気に入ったならやるよ」
「流石にこんな高価なものは頂けませんよ」
「そんな高い物じゃない」
「.....それでしたら買い取らせて頂けませんか?」
「は?」
「お金はいくらあっても困らないでしょう?」
確かにありがたいがこんな使い古しの安物のベルトを売るのは少し抵抗がある。
「.....勝手にしろ」
まあ、本人がいいってんならいいか。
めんどくさくなったのもあって丸投げした。
「それでは王都へ着いたらお支払いしますね」
「どうも」
やっと寝れる。
そう思って布団に潜り込んだが大事なことを言い忘れていました、とまだ寝かせてくれなかった。
まさか結婚までしているとは思わずかなり大きな声がでた。
「もう!なんで言っちゃうかな!後でゆっくり説明しようと思ってたのに!」
「悪かったって」
「ごめん、樹。びっくりしたよね...。あのね、こっちでは日本と違って同性婚もできて、日本ほど同性の恋愛に対して偏見なくてね...」
必死に説明してくれるが聞きたいことはそこじゃない。
「いや、それは別にいいよ。俺もゲイだし偏見はない」
しまった。
「え!?」
ゲイだと言うつもりはなかったのにうっかり口が滑ってしまった。
「そうだったの!?」
「ゲイってなんだ?」
「男の同性愛者のことだ。ってか俺のことはいいから。兄貴はノンケだったよな?」
「う、うん....」
「無理矢理一緒になったってわけじゃないのか?」
ま、見てればわかるけど。
「違うよ!?俺も望んで結婚したから!」
「そっか、まあ幸せならなんでもいいよ。祝福する」
「樹....。ありがとう」
ぎゅっと抱きしめられ頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「俺からも礼を言わせてくれ。それと、ハルトを必ず幸せにすると誓う」
金色の瞳がすうっと細められた。
男前かよ....!
見ているこっちが恥ずかしくなり視線を逸らした。
「話がひと段落ついたようでしたらご飯にしませんか?」
いつの間にかレオンが食事を用意してくれていた。
ところで、とレオンが飲み物を配りながら言った。
「イツキの髪は茶色なのですか?」
なぜか残念そうに聞かれた。
「は....?これは染めてるだけだけど...?」
「色を変える技術があるのでしたね...!それでは元は黒なのですか?」
「そうだけど」
「綺麗なのに勿体無いですね....」
「勿体無い?」
「こっちでは黒い髪と瞳の人は居ないんだって」
「1人も?」
「はい。ハルトを初めて見た時は驚きました」
「へー。俺からしたらそっちの方が綺麗だと思うけどね。これもすぐ黒に戻るし」
正直、奇抜な髪色が似合う外国人風な顔立ちも羨ましい。
「わかる!憧れるよね~」
食事中はもっぱら魔法の話になった。
魔力があれば全属性扱えるらしくもはやチートだろ、と思ったのだがそんな簡単なものでもないらしい。
イメージが重要らしいがこればっかりはやってみないとわからない。
春翔が初めて使った時に暴発させたことがあったようで魔法の使用は習うまで禁止された。
これからの詳しい話は明日、ということになり部屋割りで揉めた。
春翔が俺と一緒に寝たいと言い出したからだ。
まあ俺も知らない奴と寝るよりかはその方がありがたい。
「俺にレオンと寝ろって言うのか?」
うん、確かにベッドの大きさがこれと同じなら180を超えている2人が一緒に寝るのは少しかわいそうだ。
「私も団長とは嫌ですね」
「じゃあ...俺とレオンが一緒とか?」
「は!?なぜそうなる!」
「私はそれでもいいですよ?」
「だって、レクスなら樹に手出したりしないでしょ?」
はい?俺はそんな心配をされてたのか?
レクスは頭を抱えてため息をついた。
「私は手を出しそうってことですか?」
レオンは相変わらずにこにこと楽しそうだ。
「レオンを信じてないわけじゃないよ!?でも、ほら、万が一ってことも....。樹可愛いし!」
いや、可愛くはないだろ。
「私がハルトに手を出すとは思わないんですか?」
「それはない」
キッパリと言い放った。
ふっと笑って蚊帳の外だった俺の方を向く。
「イツキはどうしたいですか?」
「早く寝れればなんでも」
そもそも我儘を言える立場ではない
「なら決まりですね。明日に備えて今日は休みましょう」
春翔とレクスの背中を押した。
「レオン、手出しちゃ駄目だからね?」
「わかってますよ」
「樹、.......母さん達は、元気にしてた....?」
一緒に寝たいと言い出したのはそれが聞きたかったのもあるんだろう。
「ああ、元気だよ」
「そっか....よかった...。2人とも親不孝者になっちゃったね」
「ほんとに....」
「じゃあ、お休み」
「お休み」
2人になり部屋に静けさが戻った。
「なぜ嘘を?」
「...なんのことだ?」
「お母様のことですよ」
「!?」
ばっと振り返ってレオンを見るがその顔は笑っておらず、真剣な面持ちだった。
「....関係ないだろ」
「そうですね。ですが体調が悪いようでしたら言うべきでは?」
言うべきだと?なにも知らないくせに...!
「じゃあお前なら言えるか!?兄貴が死んでから両親は心を病んだなんて!どうせもう帰れないのにそんなこと知る必要ないだろ!?」
涙が出そうになって慌てて後ろを向いた。
「確かにハルトが聞いたら悲しむでしょうね。ですが私が聞いたところで関係ありませんので。あなたが全て抱え込む必要はないのでは?」
「.....わざと言わせたのか?」
「少し辛そうな表情でしたので...。吐き出したほうが楽になるかと。余計なお世話でしたらすみません」
「余計なお世話だ。だいたい、辛そうな顔なんてした覚えはない」
「そうですか。それは失礼しました」
全て見透かされているような気がしてくる。
こういう奴は苦手だ。
さっさと寝ようとしたが着替え用の服と体を拭く水を渡された。
「どうも」
着ている服はかなり汚れたので捨ててもらうことにした。
拭くだけでもかなりさっぱりとして気持ちがいい。
ベルトに手をかけるとレオンがまじまじと見てきた。
「それはなんですか?」
「....ベルトのことか?」
「ベルトと言うんですか?外し方が分からなくて諦めたのですが....。なるほど、そう外すんですね」
まて、なんで外そうとしたんだ。
「怪我の確認をしたかっただけですよ?」
「.......」
声に出していないことへのレスポンスはやめてほしい。
「見せて頂いてもいいですか?」
ベルトを外してレオンへ渡した。
「.....これは皮ですか?」
「合皮だろ」
「ゴウヒ...?」
「本物の皮じゃない」
「そんなものまで作れてしまうのですね....」
体を拭いて借りた服に着替え終わってもまだベルトを観察していた。
「そんなに気に入ったならやるよ」
「流石にこんな高価なものは頂けませんよ」
「そんな高い物じゃない」
「.....それでしたら買い取らせて頂けませんか?」
「は?」
「お金はいくらあっても困らないでしょう?」
確かにありがたいがこんな使い古しの安物のベルトを売るのは少し抵抗がある。
「.....勝手にしろ」
まあ、本人がいいってんならいいか。
めんどくさくなったのもあって丸投げした。
「それでは王都へ着いたらお支払いしますね」
「どうも」
やっと寝れる。
そう思って布団に潜り込んだが大事なことを言い忘れていました、とまだ寝かせてくれなかった。
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