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第二章 原作開始
第59話 残念王子と再び飛ぶ原作主人公
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「――さっさと私たちの視界から消えて! この事はカサブランカ王にも報告させていただくわ!」
そうだな。王様に報告、これが一番波風立てないやり方だと思う。
俺たちがなにを言っても自分に都合の良い方へ曲解するし。どうせ、これだけ言っても……。
「ああ、そうか、脅されてそんなことを言わされてるのだな。なんて野蛮で狡猾な愚民どもだ」
ほらな……。やっぱり自分は間違ってないって方向にねじ曲げてる。
「ファラフェル王女。心配ありません。こうなれば今すぐ父上に進言して参ります。そしてクリーク辺境伯とイルミンスール伯爵に罰を与えるよう提案してきましょう」
……俺たちはもう呆れてものが言えないってのを、実体験させてもらっている気分だ。
さらにファラは可哀想なものを見る目になってるし……。
リズ? リズは俺の胸の中で『すんすん……ふぁぁ』とか言ってる。幸せそうだから置いておこう。
「しかしこの後は入学式の挨拶もせねばなりません。それが終わり次第父上に報告いたします。心配は必要ありません。すぐにでもことを進めて参ります。ですからファラフェル王女、しばしの辛抱です」
「あのさ――」
「なーに、父上も入学式に御臨席しております。おおかたクリーク辺境伯もイルミンスール伯爵も来ていることでしょうからね。そうだなキサマらの入学自体取り消してくれよう」
「王子、あなたそれ本気で言ってる? ……まあいいわ。とりあえず私たちの前から消えて」
「ここまで言っても態度を変えられないとは……おいたわしい……。キサマ! キサマらの入学取り消しでは済まさない! クリーク辺境伯家とイルミンスール伯爵家は今日でおしまいだ! せいぜい今のうちに貴族である身分を楽しんでおけ! 行くぞ!」
ツバを飛ばしながら言いたいことだけ言ったあと踵を返し俺たちから離れていった。
ツバはちゃんと肩を抱いて二人を王子から遠ざけ、避けたけどね。
その様子を見て顔を真っ赤に染めながら教室から出ていこうとするヒエン王子。
それと、ずっと気になってたんだけど、王子の付き人だろうか、暴走する王子の背後でなにか言おうとオロオロしていた人がいたんだよな。
制服着てるし、同級生だよ……ね?
「ドルーア! なにをしている! 行くぞ!」
王子が教室の出口からこちらに向かって叫んでる。
ん? ドルーア? ……ドルーア……っ! 聞いたことある。ってか土魔法が得意で、魔物にボロボロにされた町や村を復興する中心人物、その功績が認められ、のちのドルーア辺境伯だ。
その頃ドライの罪が冤罪と分かり、本当の罪人であるクリーク辺境伯が罰せられ、取り潰しが決まって領地を任されるんだよな。
……ごめんなさいドルーアさん。辺境伯への道は潰してしまったかもしれないです。
「も、申し訳ありません。殿下にはなんとか言って聞かせますので。で、では失礼いたします」
ペコペコと早口で俺たちに謝ったあと、見えなくなったヒエン王子を追いかけ教室を出ていった。
……言い聞かせる、ね。一応だけど……頑張れ、たぶん話しは聞かないだろうけど、将来を潰しちゃったし、応援はしておくよ。
出ていった直後はシーンと静まり返っていた教室にざわざわと活気が戻ってきた。
「ふう。とりあえず今のクソ王子とのやり取りは二人のお父様たちに伝えるよう観覧席にいるカイラに念話で話しておくわ」
「ああ、さすがに入学式の挨拶では言わないだろうけど、早めに知らせておいた方がいいよな。っていうかさ、ちょっとヤバそうな王子だったな」
「ちょっと? ちょっとどころじゃないわ、常識が無さすぎね、あれで首席での入学とか信じられないわよ。あのクソ王子、絶対成績を改竄してるわね」
『二人ともー、クソ王子とかヤバそうな王子って言ってるからさー、まわりがドン引きしてるよー』
しまった、とファラと目を合わせたあと、まわりを見ると、イスの言う通り俺たちを見て、こそこそ話し声が聞こえてきた。
「「しぃー」」
まわりのみんなに向かって人差し指を口に当て、黙っててねと目で訴えておいた。
ちょっと考えなしに口に出しすぎたみたいだな。反省。この手の話は念話だな。
「おっ、ここか」
三人でクソ王子の話なんてせず、入学式後の会食について話していると、勇者アーシュが教室にやって来た。
「確か同じクラスに王子がいるはずなんだがどこだ? それらしい奴が……いない? なんでだ?」
うん。鼻とおでこに傷が残ってる。それと当然右の頬はパンパンに腫れ上ってるし。
「しゃーねーな。ってお前! 極悪人ドライ! お前も一緒のクラスだったな!」
ん~、極悪人か、ってことはコイツ、転生者で原作知ってるけど、知識が穴だらけなんじゃね?
俺が冤罪で処刑されたってことを知らなさそうだし。
ダンダンと足音を立てながら窓際にいる俺たちの元に向かってくる。
「ぶふっ、なにあの顔」
「あー、あれは――」
「リズもいるのか! お前! なにしてくれてんだ! こんなことしやがって! 魔王を倒したあと嫁にしてやんねえぞ!」
「おい。リズは俺の婚約者だ。お前の嫁にはならない」
「は? なに寝ぼけてんだよ、お前はすぐに処刑されるからそんな、こ、と……誰だこの美少女は! ねえ君、俺アーシュって言うんだ。勇者。知ってるだろ? 教会に選ばれた光の勇者」
「あー、なぜそうなったか、すっごくわかったわ。ドライ、リズを止めなくてもいいんじゃない? 『ふぅーふぅー』って怒りが吹き出してるわよ」
「それも、そう、か? あ――」
拘束していた手を、ほんの少しゆるめた瞬間――
バチン! と今度は左斜め上に勇者アーシュは飛び、校門前の時より長い滞空時間のあと、教室の床に顔から落下した。
御愁傷様……。
そうだな。王様に報告、これが一番波風立てないやり方だと思う。
俺たちがなにを言っても自分に都合の良い方へ曲解するし。どうせ、これだけ言っても……。
「ああ、そうか、脅されてそんなことを言わされてるのだな。なんて野蛮で狡猾な愚民どもだ」
ほらな……。やっぱり自分は間違ってないって方向にねじ曲げてる。
「ファラフェル王女。心配ありません。こうなれば今すぐ父上に進言して参ります。そしてクリーク辺境伯とイルミンスール伯爵に罰を与えるよう提案してきましょう」
……俺たちはもう呆れてものが言えないってのを、実体験させてもらっている気分だ。
さらにファラは可哀想なものを見る目になってるし……。
リズ? リズは俺の胸の中で『すんすん……ふぁぁ』とか言ってる。幸せそうだから置いておこう。
「しかしこの後は入学式の挨拶もせねばなりません。それが終わり次第父上に報告いたします。心配は必要ありません。すぐにでもことを進めて参ります。ですからファラフェル王女、しばしの辛抱です」
「あのさ――」
「なーに、父上も入学式に御臨席しております。おおかたクリーク辺境伯もイルミンスール伯爵も来ていることでしょうからね。そうだなキサマらの入学自体取り消してくれよう」
「王子、あなたそれ本気で言ってる? ……まあいいわ。とりあえず私たちの前から消えて」
「ここまで言っても態度を変えられないとは……おいたわしい……。キサマ! キサマらの入学取り消しでは済まさない! クリーク辺境伯家とイルミンスール伯爵家は今日でおしまいだ! せいぜい今のうちに貴族である身分を楽しんでおけ! 行くぞ!」
ツバを飛ばしながら言いたいことだけ言ったあと踵を返し俺たちから離れていった。
ツバはちゃんと肩を抱いて二人を王子から遠ざけ、避けたけどね。
その様子を見て顔を真っ赤に染めながら教室から出ていこうとするヒエン王子。
それと、ずっと気になってたんだけど、王子の付き人だろうか、暴走する王子の背後でなにか言おうとオロオロしていた人がいたんだよな。
制服着てるし、同級生だよ……ね?
「ドルーア! なにをしている! 行くぞ!」
王子が教室の出口からこちらに向かって叫んでる。
ん? ドルーア? ……ドルーア……っ! 聞いたことある。ってか土魔法が得意で、魔物にボロボロにされた町や村を復興する中心人物、その功績が認められ、のちのドルーア辺境伯だ。
その頃ドライの罪が冤罪と分かり、本当の罪人であるクリーク辺境伯が罰せられ、取り潰しが決まって領地を任されるんだよな。
……ごめんなさいドルーアさん。辺境伯への道は潰してしまったかもしれないです。
「も、申し訳ありません。殿下にはなんとか言って聞かせますので。で、では失礼いたします」
ペコペコと早口で俺たちに謝ったあと、見えなくなったヒエン王子を追いかけ教室を出ていった。
……言い聞かせる、ね。一応だけど……頑張れ、たぶん話しは聞かないだろうけど、将来を潰しちゃったし、応援はしておくよ。
出ていった直後はシーンと静まり返っていた教室にざわざわと活気が戻ってきた。
「ふう。とりあえず今のクソ王子とのやり取りは二人のお父様たちに伝えるよう観覧席にいるカイラに念話で話しておくわ」
「ああ、さすがに入学式の挨拶では言わないだろうけど、早めに知らせておいた方がいいよな。っていうかさ、ちょっとヤバそうな王子だったな」
「ちょっと? ちょっとどころじゃないわ、常識が無さすぎね、あれで首席での入学とか信じられないわよ。あのクソ王子、絶対成績を改竄してるわね」
『二人ともー、クソ王子とかヤバそうな王子って言ってるからさー、まわりがドン引きしてるよー』
しまった、とファラと目を合わせたあと、まわりを見ると、イスの言う通り俺たちを見て、こそこそ話し声が聞こえてきた。
「「しぃー」」
まわりのみんなに向かって人差し指を口に当て、黙っててねと目で訴えておいた。
ちょっと考えなしに口に出しすぎたみたいだな。反省。この手の話は念話だな。
「おっ、ここか」
三人でクソ王子の話なんてせず、入学式後の会食について話していると、勇者アーシュが教室にやって来た。
「確か同じクラスに王子がいるはずなんだがどこだ? それらしい奴が……いない? なんでだ?」
うん。鼻とおでこに傷が残ってる。それと当然右の頬はパンパンに腫れ上ってるし。
「しゃーねーな。ってお前! 極悪人ドライ! お前も一緒のクラスだったな!」
ん~、極悪人か、ってことはコイツ、転生者で原作知ってるけど、知識が穴だらけなんじゃね?
俺が冤罪で処刑されたってことを知らなさそうだし。
ダンダンと足音を立てながら窓際にいる俺たちの元に向かってくる。
「ぶふっ、なにあの顔」
「あー、あれは――」
「リズもいるのか! お前! なにしてくれてんだ! こんなことしやがって! 魔王を倒したあと嫁にしてやんねえぞ!」
「おい。リズは俺の婚約者だ。お前の嫁にはならない」
「は? なに寝ぼけてんだよ、お前はすぐに処刑されるからそんな、こ、と……誰だこの美少女は! ねえ君、俺アーシュって言うんだ。勇者。知ってるだろ? 教会に選ばれた光の勇者」
「あー、なぜそうなったか、すっごくわかったわ。ドライ、リズを止めなくてもいいんじゃない? 『ふぅーふぅー』って怒りが吹き出してるわよ」
「それも、そう、か? あ――」
拘束していた手を、ほんの少しゆるめた瞬間――
バチン! と今度は左斜め上に勇者アーシュは飛び、校門前の時より長い滞空時間のあと、教室の床に顔から落下した。
御愁傷様……。
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