【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@

文字の大きさ
67 / 139
第二章 原作開始

第63話 悪戯の目的

しおりを挟む
「俺がドライ様の奥さん……ど、どうしよう……」

 ボソボソと下を向いて歩き、何か呟いているアンジェラ王女は段差を踏み外した。

 ヤバッ――

「きゃ!」

「っと」

 体勢を崩し、宙に投げ出された王女の背後に移動して、両脇に手を入れ支える。

 ふう。間に合ったけど……アンジェラ王女、めちゃくちゃ軽いな。

 だけど……デカい。脇で支えたのは間違いだったと思う。むにゅむにゅだ。思わず指に力を入れてしまったけど、これ以上はヤバすぎる。早く下ろさなきゃまずいどころじゃない。

「ア、アンジェラ王女殿下、あの、下ろしますね」

 手足を縮め、体を丸めている王女に声をかける。

「あ、れ? 転けてない? 俺、飛んでる?」

「はは……飛んではいないですね。アンジェラ王女殿下、下ろすので足を伸ばしてもらえますか?」

「え? ド、ドライ様! おう、じゃなくて、はい、俺、ドライ様に助けられてる!? そ、そうだ、足ですね! 伸ばします!」

 腕の中で丸まっていた体をピーンと伸ばして気をつけの姿勢になってくれる。

 よし、緊張しているのか、おっぱいに触れてることには気づかれてない。今の内だ。

「下ろしますね」

 そ~っと三段ある階段の下まで降りて、床にゆっくりと足をつけてあげる。

「アンジェラ王女殿下。大丈夫でしたか?」

「は、はい! 大丈夫でしゅ! あ、あう……」

 くるりと俺の方に向き直り身長差が40センチあるからか、俺を見上げてくる。ちょっと噛んで真っ赤になっているけど、可愛い子だ

「良かったです」

「ドライ、すまないな。アンジェラはちょっと王族らしからぬ不注意なところがある。これからはお前も気をつけて見ていてやってくれ」

「お、オヤジ! じゃなくてお父様! ドライ様になんてこと言ってん――言ってるのですか! 取り消せ! でございます! いや、ドライ様に見られるのは嫌じゃないんですよ?」

 俺と王様の間で高速で向きを変えながらワタワタしてる。

 俺っ娘で、王様のことを『オヤジ』って呼んでるのか……。

「どうだドライ。少々言葉遣いはアレだが、お前の数々ある武勇伝を聞いてから、熱烈な支持者なんだよアンジェラは。可愛いだろ?」

「それは、まあ、可愛いと思います」

「ドライ様が俺のこと可愛いって……はふんっ――」

「あっ! 王女殿下!」

 ボンと赤い顔がさらに赤くなり、後ろに倒れてしまった。

 背中に手を回し支えてんだけど……気絶してる?

「くくっ。可愛いと言われ嬉しすぎて気を失うとか、可愛すぎるぞ。よし、ドライ、そのままアンジェラを抱っこしたままついてくるように」

「は?」

「抱っこされたまま起きたらどうなると思う? また気絶するとは思わないか?」

「王様……自分の娘に悪戯ばかりしてたら嫌われますよ」

「大丈夫だ。嫌いになるならドライとの婚約は破棄だと言えば許してくれる。おっと、時間が押している。ほら、早く抱っこしてやらんか。行くぞ」

「この王様は……完全に楽しんでるじゃないか……」

「わたくしのお父様も、たいがいおかしな王だと認識していますが、同レベルでおかしいわね」

 あまり言わないようにしているけど、ファラの意見には激しく同意だ。

 ちょっと人には見せられないくらい……幸せそうな顔で気絶している王女をお姫様抱っこして、笑いながら先を進む王様の後を追いかけた。





「ドライ。なぜアンジェラ王女殿下をヒザの上に乗せているのだ?」

「なぜなんでしょうね……父さん、理由は王様に聞いてください」

 俺たちが向かった先は学園長室に併設されてる貴賓室。王女はまだ意識が戻っておらず、ソファーに下ろそうとしたんだけど王様に止められた。

「ふむ。おおかたコイツの悪ふざけであろうが、婚約者と発表されてしまったのだ、問題はなかろう」

「ああ問題ない。と言うよりだ。アンジェラに婚約者がいない方が問題でな。今回の目的は親戚関係になるものたちの顔合わせが一番の目的ではあるんだが――」

 にやけた悪戯王の顔から、威厳がある王様の顔に変わった。

「――教国から打診があったのだ。アンジェラの魔法の才能に目を付けたのか、復活が間近と言われる魔王の天敵、勇者の従者にしろとな」

「勇者の従者? 王女を従者にとは強気だな」

 原作の流れが来てる。原作ではリズが聖騎士としてアンジェラ王女の近衛に抜擢されてすぐ、もう一人の聖女とアーシュがパーティーを組むんだよな。

 その前にリズの身内による暗殺イベントがあるけど、今はイルミンスール家で一番大事にされているし、その心配も無くなったから、好感度アップイベントのフラグは折れて跡形もない。

「その通りだ。返事の期限が建国祭だったのでな。一国の王に向かって期限を設け、返事を強要するなど反発したくもなるだろう?」

「くくくっ。お前らしい悪戯だな。相手が欲しいと思っているものを他人にやる。学生時代にも何度かやっていたのを思い出したぞ」

「だろう。今日も来賓で枢機卿が勇者の入学式のために来ていたからちょうど良かったのだ。それと、だ。少し訳ありな元聖女のこともあってな。まあちょっとアンジェラを驚かせてやろうって気も多少はあったが、な」

 あれは俺たちだけじゃなく枢機卿への王女は勇者の従者にはしないって意思表示兼、悪戯でもあったのか。

 あれ? 元聖女? いや、それより聖女もこの学園に来てる? おかしい……聖女は平民で学園には通わないはずだ。

 魔王討伐の旅に出るときに教会から派遣されて来てパーティーに加わる。それに実は孤児院時代のアーシュの幼馴染みでもあるんだよな。

 その聖女が学園に来てるとなると……原作の流れが相当変わってきてる?

「ふあー。あれ? 俺なんで寝てるんだ?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~

fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。 しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。 気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。 裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。 無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...