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3章 サマク商国
第34話 呼びに行く
しおりを挟む大通りを駆け抜けた等加と莉音は街の入り口でセバスチャンとたてのりと別れた方へ向かった。
砂埃を噴き上げて竜巻の素早さでホテルのロビーに転がり込む。
受付で台に乗って愛想を振り撒いていた猫人があまりの勢いに吹き飛んで転げ落ちた。
「あぁっ、ネコチャンごめん!」
「あの、ミツアミの連れです。部屋を教えてください!」
等加に抱き起こされた受付の猫は目を回しながら部屋を教えた。
「たてのり!たてのりーっ!」
猫の言葉を待たずに、ただでさえ大きな声をはりあげて叫びながら階段を上る莉音を等加が追いかける。
敬称を略していることにすら気がついていないほど焦る莉音をどこかで少しだけ面白く感じながら等加は後ろから莉音を抱き上げて加速した。
静かな2階の廊下に莉音の声が響き渡るが反応はない。
寝ているのかと思ったが、鍵もかかっていない不用心な一番端の部屋の中に押し入るとたてのりはプレートを脱いで身軽な格好のままベッドの上で剣の手入れをしていた。
飛び込んできた莉音を抱えた等加にも動じず迷惑そうに眉を顰める。
「…なんだ、お前ら。騒々しいな」
「アルちゃんが追われてる!捕まったら殺されてまうかもしれへんの!」
「はあ?」
混乱して発言が支離滅裂になる莉音を落ち着かせながら等加が代わりに今起きたことをかいつまんで話す。
相槌も打たず無言で聞いていたたてのりは等加の話が終わると静かに剣を鞘におさめた。
「北の奥…貧困街の方か……」
「行ったことあるん?」
靴を履いて立ち上がると剣を背中に背負う。
砂漠中ずっとプレートを脱いでいたせいで少し見慣れてしまったが、引き締まってはいるものの細身で華奢な体にパワータイプ御用達の大剣が担がれているのはなんともアンバランスで奇妙な光景だ。
焦っているでも怒っているでもなく、どこか遠い目をして懐かしむような素振りを見せるたてのりの眉間はいつもより皺が少なかった。
「…アルを拾ったのもそこだ」
「…え?…拾った?」
「お前らはタスクとセバスチャンを探せ」
莉音の疑問には答えずに、たてのりはそれだけ言うと景色がよく見えるホテルの大窓を開けて下へ飛び降りた。
大剣を抜いて振った衝撃で落下の衝撃を殺して着地している。
目だけで2階を確認してたてのりはそのまま大通りの方へと走った。
「輪舞曲!」
走りゆく姿に等加は2階から加速のバフをかける。
加速しながら走っていくたてのりの姿はすぐに雑踏に消えて見えなくなってしまった。
アルアスルと最も長い付き合いをしてきたはずのたてのりはもっと取り乱すものかと思っていた莉音は怪訝な顔をして等加を見上げた。
「もっと焦るかと思ったけどな。そんなに仲良くないんやろか?」
等加は目を丸くして、吹き出して笑う。
笑われた理由もわからない莉音はむくれて杖を振り回しながら部屋を出た。
「逆だろうよ」
「何!?早くいこ、等加!あーっ」
「あーもう危ない!」
ホテルの階段から落ちる莉音を追いかけて等加も下へと降りる。
たてのりの懐かしそうな目を思い出した等加は少しだけ微笑んだ。
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