クリスティーヌの華麗なる復讐[完]

風龍佳乃

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「ちゃんと忠告したはずよ?」
クリスティーヌは微笑んだ。

彼女の目の前で跪き許しをこう使用人達
涙を流す者や震える者…それぞれだ。

クリスティーヌ・ボーン伯爵令嬢
ボーン家は今の時代には珍しく魔力を
受け継ぐ家門だ。
その力は味方となれば最強であり
敵となれば最悪となる。
誰もが羨み欲しがる血統…

歴代ボーン家の人間は2通りだった。
魔力が強く現れて人々の尊敬を集めるか
魔力が弱くて静かに暮らすか…

強ければ風呂の水を湯に変えたり
薪に火をつけたり…
グラスの水を氷にも出来るのだ。

そして稀に覚醒する強力な魔力は
城を焼き、大地を凍らせ。
反対に雨を降らせ大地をうるわせ
食物を育て国を豊かにする。
幸にも悪にでもなる力

強力な魔力保持者には逆鱗に触れない様
神として崇められて大切にされるの
だった。

貴族達はボーン家の血を受け継ぎたい為
婚姻を結ぶべく必死になり
諍いが起こる事もあるぐらいなのだ。

クリスティーヌは8歳の時に魔力を
見せた。
グラスに入った水を冷やし
蝋燭に火を灯し
間違いなくボーン家の血筋だと
皆が沸き立っていた。貴族達の争奪戦が
始まりクリスティーヌへの求婚の手紙が
毎日のように送られて来る様になり
クリスティーヌ13歳の時
2歳年上のビルウィル・ラーモン公爵
子息との婚約が決まった。

「僕がビルウィル、よろしくお姫様」

「クリスティーヌです。
    よろしくお願いします」

「僕達は結婚するんだ、ビルと呼んで」

「はい、ビル様」

クリスティーヌが婚約を結んだ直後、
妹のティファニーが10歳でようやく
魔力を覚醒させた。だが…
ティファニーの魔力は
クリスティーヌよりも強く皆の関心は
ティファニーへと向けられる様になり
クリスティーヌは陰口を言われる程に
なってしまった。

「ティファニー様は凄いですわ
    グラスの水を氷にしますのよ」

「私も見ましたわ薪に火をつけたのよ
   凄いわ」

「正直、、水を冷やすぐらいは
    魔力を受け継いだ人なら普通では?」

「まぁ、私の様に魔力が無い者には
    水を冷やすだけでも羨ましい
    ですけどね」

婦人や令嬢達はクリスティーヌと
ティファニーを比べながら話に華を
咲かせている。

クリスティーヌは会話を聞きながら
仕方ないじゃない…生まれ持った物
なんだから、、と思っていたが
その力の差は人々にとっては重要であり
クリスティーヌの環境が大きく変わる
事を意味していた。

使用人達はクリスティーヌよりも
ティファニーに付きたい。と申し出て
更にはティファニーを崇拝した。

その行動は日に日にあからさまになり
父や兄までもがティファニーを
可愛がった。

家族との食事も中心にいるのは
いつもティファニーで父や兄から
お茶に誘われる事も無くなってしまった

「お父様、私は王子様と結婚したいの」

「そうか、そうしてやりたいがなぁ
    今は無理なんだよ」

「えー、王子様がいいの!」

誰もが欲しがる魔力。ボーン家は
王族との婚姻を繰り返していたが、
血が濃くなり魔力暴走を起こしてしまい
死に至る事が増えてしまった
その為に1度王族と結婚した者が
居たらその後3代婚姻を結べない。
と決められている。

父も兄も妹も…私よりも魔力が強いから
余計に私は弱く見えてしまうのね。

自分にそう言い聞かせて辛さを堪えた

そんな中でもクリスティーヌは
ビルウィルと過ごす時間を大切にしていた。

彼だけは変わらない笑顔を向けてくれる
から…ビルウィルの存在は大きな支えに
なっていった。

婚約から2年クリスティーヌは15歳
そろそろ結婚の話が本格的に始まっても
いい頃だったがビルウィルから
焦らなくても大丈夫だよ。と言われ
ゆっくりと愛を育むと決めた。

使用人達は変わらずコソコソと話しを
している
「ビルウィル様ならティファニー様
    の方がお似合いなのに」

「ティファニー様はビルウィル様を
    気に入ってるみたいだけど
    クリスティーヌ様の婚約者だから
    遠慮しているみたいよ」

何言ってるのよ、バカバカしい!

「ちょっとあなた達!」

「あ、いらしたのですね。すみません」
「やだ、聞かれちゃったわ」

クリスティーヌは不快をあらわにした
「微々たる魔力も無いくせに
   あなた達が私の噂話しを立てるなんて
   勘違いにも程があるわ」

「そうですね。すみませんでした」

「だから何であなた達が私を馬鹿にした
    物言いなのかしら?
    あなた達はここの使用人なのよ」

「私達はボーン家の使用人で
    ティファニー様のメイドですから
    クリスティーヌ様に従う必要は無い
    ので、、」

クリスティーヌは怒りで手から炎を
出すと使用人達は逃げる様に走って
行ってしまった。

何なのよ!あの失礼な使用人は!

クリスティーヌが部屋でくつろいでいる
と「ちょっといいか」
入って来たのは兄だった

「何でしょう」

「お前、ティファニーの使用人達に
    暴力を振るったらしいな
    どういうつもりだ?」

「え?暴力なんて振るってません」

「魔力を出したそうだな」

「……だとしても暴力だなんて」

その時、突然の突風が吹き
クリスティーヌは後ろに飛ばされて
転んだ。

「魔力は暴力じゃないと言ったのは
    お前だからな」

クリスティーヌは兄の風で左右に
飛ばされ転がり動けなくなった。

「つっ、、痛い…」

「今度、ティファニーや使用人に
    手を出したら炎を出すぞ」

そう言い兄はクリスティーヌを睨み
ならがら出て行った。

いくら皆よりも魔力が弱いからって…
何で使用人達にまで馬鹿にされないと
いけないのよ。

痛い…クリスティーヌは涙を流した。

すぐに父の元に行き使用人達の事や
兄から受けた暴力を訴えたが、
父からの言葉はクリスティーヌが
思ったものとは違った。

「あいつには言っておくが
    お前は静かにしていればいい。
    もう問題をおこすな」

クリスティーヌは何でそこまで…?と
父の言葉に絶望した。

次の日から誰1人として
クリスティーヌの部屋に来る者は
居なかった。
部屋の外に出ても使用人達には無視され
クリスティーヌは
調理場でパンを切りハムを焼き
自分で料理をして食事をしていた。

悔しい…早くビルウィルと結婚して
この屋敷を出たい。
そう思った…
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