私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

文字の大きさ
7 / 7
第一章・望まない形で

7・青天の霹靂

しおりを挟む
 一度目と二度目の人生の違いは何?私が行動したことで、これまではまるで知らなかったことを聞くことになった。私だけが知らない真実…そんなものがこの世に存在していたなんて!だけど私には、どういうことなのか全く分からない。そしてシンシアのらしくない行動の意味だって…

 あろうことかロリーは、今まで散々庇ってきたシンシアに追い出される形でノートン邸を出て行った。少し抵抗したようだけど、シンシアの剣幕に押されるように泣きながら去ったという。これには誰もが信じられないと無言になる…
 
 それにしても不思議なのは、お兄様のこと。いつもだったら、シンシアに関わること全てに騒ぎ立て、絶対に黙ってなんかいなかった。それが…黙りこくっていた。それから屋敷を追い出されるロリーを一瞥したお兄様は、そのまま大人しく自室へと戻って行く。そんないつもとは違う態度に、残った者達に困惑した空気が流れて…
 それからどういう訳か、シンシアが私に近付きそっと耳打ちを。もうこれで大丈夫ですよ…って。ええっ?

 一体何が大丈夫なのかしら?私には疑問だけが残る。それからシンシアとお兄様に事あるごとに尋ねたけど、はぐらかされていつも終わる。どうも私には、言いたくないことのよう。お父様にでも聞いてみる?そう思ったけど、ノートン家の家業が忙しくなり会えない日々が続く。そうこうしているうちに、私には意外なところから嵐が近付いてきていた。誰も予想出来ないほどの…

 「ええっ、お父様…もう一度おっしゃっていただけますか?私に縁談が来ているって…そんな馬鹿な!」

 久しぶりにノートン邸に帰って来るなり、私を執務室に呼び付けたお父様。二人で話すなんて滅多にないこと…そう逸る気持ちで行ってみれば、そんな衝撃的なことを告げられる。
 それもまた、ロウレン侯爵家からの縁談だと聞く。衝撃的過ぎて頭の整理が出来ない。どうして?今回はあの人に会ってさえいない!そんなことって…

 「エズラ・ロウレンですね…その相手は。侯爵家の令息で帝国騎士団の。だけど会ったこともない人です!どうにかお断りすることは出来ませんか?」

 祈る気持ちでそう尋ねてみる。もう二度と同じ徹は踏まない…嫌というほど辛い目にあったじゃない?あれから三ヶ月ほどが過ぎ、それでも時々悪夢を見るほどの。それほどの辛く哀しい日々を繰り返すなんて…絶対に無理よ!

 「まてまて、落ち着くんだ。相手はエズラ卿ではない…それには私だって相当に驚いている。今回の縁談の相手は、スチワート・ロウレン。錬金術師だ…」

 それには驚き過ぎて固まってしまう。錬金術師のスチワートですって?そんなことってあるのかしら…これまで何の接点もない。この前偶然すれ違い、そしてブローチを拾ってもらっただけの…

 「だけどお父様…彼は錬金術師ではありませんか!結婚など無縁な人物です。それがどうして私なのです?」

 一度目の人生の時、錬金術師は結婚を許されていないのだと聞いたことがある。結婚した当時、エズラは二十五でスチワートは二十三…二つ違いの兄弟だった。エズラから聞いたことによると、ロウレン侯爵家では名前だけの存在で、将来戻って来ることもない。帝国の為に働き、そして帝国の為に死んでいく。能力を持っているが故に、人並みの幸せさえ望めないのだと。珍しく酔って帰った夜に、寂しそうにポツリと呟いていた。なのに…

 「いいや、それは一般的に言われている錬金術師のイメージだ。彼は上位錬金術師…だから結婚することも家庭を持つことも許されている。だが普通はそうだとしても、これまで本当に結婚する者などいなかった。それは己の血を残すのを嫌うからだろうな…」

 初めて聞く事実に言葉を失う。確かにあの時出会ったのはエズラではなくスチワート。それによって運命が変わった?だけどスチワートはエズラの弟。違う相手だとしても、とてもじゃないけど平常心でいられないわ!そんなの無理…そう思うけど、お父様が言ったある言葉に引っ掛かる。それで聞かずにはいられなくなって…

 「血を残すのを嫌う…とはどういうことなのです。錬金術の能力は遺伝しないと聞いています。それなのにですか?」

 思わずそう尋ねると、お父様は途端に難しい顔をする。私などには知り得ないことも、家長会議に出席を許されているお父様はきっとご存知のはず。そしてこのことは、帝国の闇の部分に触れることでもあるのを知っている。実際は何をさせられているのか、知る由もないから。

 「それはロウレン侯爵家の血筋のことだ…あの家は能力者が生まれやすい。歴代上位錬金術師になるのは、ほぼあの家系の者だと言ってもいいくらいだ。だから複雑な感情があるのだろう」

 ──ええっ、ロウレン侯爵家の血筋がですって?

 私の胸が早鐘を打つ。かつては私も、その家の一員だった。だけどどうして、私は知らなかったの?そんな大切なことを…

 「だからお前には無理強いはしない。だが私の顔を立てて、一度だけ会ってはくれないか?それで十分義理は立つ。もちろんその後、断っても構わない」 

 義理?一体どういう経緯で、この縁談が持ち込まれたのだろうと疑問に思ってしまう。だけどそこまで言われてしまうと断り辛くなる。それからあの印象的な碧い瞳を思い浮かべて…まさかあの人こそが、本当の孤独の中に生きてきた人だったなんてね。私にさえ想像も出来ないような深淵…だからこそ、もう一度私と会いたいってことかしら。まさか私が死に戻っていることを、感じているんじゃないわよね?

 「私はこの家の女主人として、やっと形になってきたところです。ですから…結婚のことはまだ考えられません!ですが断ってよいのを条件に、一度だけお会いしてみたいと思います」

 不思議な縁に導かれ、私はスチワートともう一度だけ会ってみることに決める。何故か会ってみたいような気もする…不思議だけど。
 もちろん私は、ロウレン家の誰とも結婚するつもりなどない。もう二度とエズラの顔を見ることもないし、あの家に足を運ぶこともない。だけど…それでも気になってしまうのは確か。私は自分のこの気持ちの正体を探ってみることにした。この後どんな偶然が待っているのかも知らずに…
しおりを挟む
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

ノコノコ
2026.02.02 ノコノコ

シンシアが素になってロリーを追い出すくらいの凄い秘密なんでしょうかね。シンシアに対する秘密と思っていたけれど、フレデリカのことなのかしら。

さてスチアートがフレデリカのヒーローになるのでしょうか。

2026.02.02 MEIKO

読んでいただいてありがとうございます😊
その真相は…まだ判明しませんが、複雑に絡み合った驚愕の事実になります。それを知ったフレデリカは、どう行動していくでしょうか。そしてこのロリー。早々に退場したかに見えますが、この人が鍵を握ることに…
そしてスチワート!この人も秘密がありそうです。そして隠れた想いも…
どうぞ今後もお楽しみ下さい😊

解除
operahouse
2026.02.02 operahouse

 6話まで読みました。
 どう見ても、兄貴と義妹ができてますね。義妹の侍女が口走ろうとしていたことは、清い男女交際ではなくすでに男女の仲ってことでは、とゲスイ勘ぐりをしてしまいます。使用人たちも、次期若奥様だから、義妹優遇していたのではとしか見えない。父ちゃんは息子と養女ができているのを知らないみたいな感じ。
 初回も義妹あての縁談を主人公が強引に割り込んだと相手に説明しているのでは?
 どうなることか楽しみです。

2026.02.02 MEIKO

読んでいただいて、ありがとうございます!
兄とシンシアが…きっとそれは、フレデリカも少し疑っているかも知れません。ですが真相は…
兄アルベルトは、虚勢を張っているだけで本当は弱い人なんです。そしてそれにも理由があるのです。秘密の判明にはまだ遠いですが、どうぞ今後も楽しんていただけると嬉しいです😊

解除
ロスマリス
2026.02.01 ロスマリス

捨てろ捨てろ、こんな糞家族
一緒に居るだけ無駄。
でもやり返す位はして、お金も
ぶんどってから捨ててやれって
思いますね。正当な権利はしっかり
主張しましょう。

2026.02.02 MEIKO

感想ありがとうございます!😊
いくら何でも酷い家族達。これから少しずつ明らかになっていきますが、何やら秘密がありそうです。それはノートン伯爵家だけでなく、あの家でも…
そしてフレデリカはもう前だけを向いていて、自分の幸せの為に行動することになります。その先には何が待ち受けているのかを、お見逃しなく!🥹

解除

あなたにおすすめの小説

『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様

恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。 不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、 伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。 感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、 ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。 「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」 足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。 「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」 一度凍りついた心は、二度と溶けない。 後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、 終わりのない贖罪の記録。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。  生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。  けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。  それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。  その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。 その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。

貴方が私を嫌う理由

柴田はつみ
恋愛
リリー――本名リリアーヌは、夫であるカイル侯爵から公然と冷遇されていた。 その関係はすでに修復不能なほどに歪み、夫婦としての実態は完全に失われている。 カイルは、彼女の類まれな美貌と、完璧すぎる立ち居振る舞いを「傲慢さの表れ」と決めつけ、意図的に距離を取った。リリーが何を語ろうとも、その声が届くことはない。 ――けれど、リリーの心が向いているのは、夫ではなかった。 幼馴染であり、次期公爵であるクリス。 二人は人目を忍び、密やかな逢瀬を重ねてきた。その愛情に、疑いの余地はなかった。少なくとも、リリーはそう信じていた。 長年にわたり、リリーはカイル侯爵家が抱える深刻な財政難を、誰にも気づかれぬよう支え続けていた。 実家の財力を水面下で用い、侯爵家の体裁と存続を守る――それはすべて、未来のクリスを守るためだった。 もし自分が、破綻した結婚を理由に離縁や醜聞を残せば。 クリスが公爵位を継ぐその時、彼の足を引く「過去」になってしまう。 だからリリーは、耐えた。 未亡人という立場に甘んじる未来すら覚悟しながら、沈黙を選んだ。 しかし、その献身は――最も愛する相手に、歪んだ形で届いてしまう。 クリスは、彼女の行動を別の意味で受け取っていた。 リリーが社交の場でカイルと並び、毅然とした態度を崩さぬ姿を見て、彼は思ってしまったのだ。 ――それは、形式的な夫婦関係を「完璧に保つ」ための努力。 ――愛する夫を守るための、健気な妻の姿なのだと。 真実を知らぬまま、クリスの胸に芽生えたのは、理解ではなく――諦めだった。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。