お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO

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第四章・過去の亡霊

22・涙の告白

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 いや、いや、いや!有り得ないでしょ?そんな馬鹿なぁ~

 僕は驚き過ぎて、目が点になっていた。どこをどうやってそんな結論に行き着いたのかも、回目見当もつかない。何てことを言うんだろう?と唖然としてラウル殿下を見つめる。すると…

 「その目だよ。その特異な赤紫の瞳は、隣国であるアイシャ国の王族の特徴だ。血が全く入っていなかったとしたら、その色になるなど有り得ないんだ。エリオットはその特徴が色濃く出ている」

 僕は初耳だった…アノー伯爵家に隣国の王族の血が!?祖父からも母からも一切聞いたことが無かった。祖父は事故で母は病気でと、二人共に急に亡くなった為に言う暇が無かったのかも知れないが…
 それにしても、この目の色が?そんなに珍しい色だなんて。じゃあさ、分かる人にはバレバレだってこと?僕がアノー伯爵家の人間だって!

 「君はアノー伯爵家の令息だね?嫡男が随分前から行方不明だと聞いている。君の曾祖母がアイシャの王家からアノー家に嫁いだんだ。凄い反対に合って勘当同然だったそうだよ?愛を貫く人だったんだろうね…」

 全然知らなかった…そんな事、思ったことすらない!そんな情熱的な人だったの?僕の曾祖母様と曾祖父様は…
 どうやって知り合ったのかは知る由もないが、命懸けの恋だったのだろう。だけどそこまで相手を愛せるなんて、羨ましいな…

 だけどそれから、アノー家の人達はその王族の特徴を引くようになった…ってコトだね。
 恐らくそのことは父は知らないと思うし、この国でも一部の人達しか知らないんだろう。ラウル殿下は、やはり王族ということでその特徴をご存知だった。だけどそれなら…と気付いて、隣に座る坊ちゃまを見つめる。

 「ぼ、坊ちゃま…もしかして、知って?」

 坊ちゃまは公爵家の嫡男で、博識なお方だ。幼い頃はラウル殿下と一緒に勉強をしていたと聞いているし、知っていてもおかしくない。
 坊ちゃまはどこまでも優しく、静かに僕を見つめていた。
 それからゆっくりとコクリと頷いた。そして…

 「最初から知っていた…エリオットがアノー伯爵家の令息なんだってこと。ひと目で分かったよ。何故こんなところで死にかけて?と思ったけど、何か理由があるんだと。君から私に告白しようと思うまで、黙っていようと心に決めていた」

 僕は泣いた…。泣くつもりなんてなかったけど、後から後から頬に流れる涙を止めることは出来なかった。坊ちゃまの優しさが心に沁みて仕方が無かったんだ。そんな貴族家の怪しい子供を、知ってて何も言わずに側に置いてくれるなんて!

 「ぼ、僕には、あの家に居場所なんて無かったんです。母が急に亡くなって、それから継母と異母兄弟が一遍に現れて…。昔から居た使用人達も暇を出されて、それでも僕なりに頑張ろうと思ってたんです。だけど、子供の僕ではどうにもならなくって…逃げました。一生懸命、逃げたんです!ぼ、坊ちゃま、黙っていてすみません!ぐっ…あああっ」

 ボタ、ボタと流れ落ちる涙はそのままに、止める術を知らない僕。それから忘れようと胸に仕舞っていたあらゆる事が思い出されて咽び泣き、それ以上の言葉も出なくなっていった…

 そんな僕にそっと近付き、ぎゅっと抱き締める腕が。いつだって安心出来る坊ちゃまの胸だ…。それからわんわんとひとしきり泣いて、いつの間にか気を失うように眠ってしまっていた。


 +++++

 
 「悪かったね…ジュリアス。私も、いつも明るいエリオットが、そんな目に合っていたなど思ってもなかったんだ!あんなに泣くなんて…。何か理由があるのだと思ってはいたんだが。それにあの男がいるよね?君のところにも来たんじゃないかい?私にも接近しようとしてきた。寸前に護衛が止めたがね。…だから話した方がいいと思って」

 ジュリアスはその腕に眠っているエリオットを抱えたまま、ギラリと光る目でラウルを見た。それから力強く頷く。

 「ええ、小虫が一匹入り込んで来ました。返り討ちになるとも知らずに…。それからその虫けらの兄弟も近くに居るようです」

 ラウルはその言葉に驚き、目を見開くが、目の前のジュリアスが意外にも冷静なのを見て、安堵するように何度も小さく頷いた。

 「エリオットは泣きつかれて眠ってしまったね。私の護衛を呼ぼう!部屋まで送らせるとしよう」

 まるで母のように優しい顔でエリオットを見ていたジュリアスは、バッと顔を上げラウルを真正面から見つめながら勢いよく首を振った。

 「いいえ…エリオットに触ることが出来るのは、私だけですから!」

 それからジュリアスは、軽々とエリオットを抱き上げる。その剣幕に驚いたラウルは、自分が第一王子だという立場も忘れて、二人の為に部屋の扉をサッと開け、いつまでもその背中を見送っていた。
 
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