お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO

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第五章・恋の進行状況

35・坊ちゃま登場!

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 僕の心は、緊張感で一杯だった…ブルッと震え、そして一点を見つめる。

 少し長めのプラチナブロンドを揺らして、紺碧の海のような瞳は強い光が宿っている。
 純白の軍服でスッと剣を構える姿は、ハァ~ッと溜息ものだ。もう…眩しくて目が潰れるっ!

 そう悶絶してから、しっかりしなきゃ!と自分を叱咤して、改めて前をじっと見る。坊ちゃまは少しだけ緊張しているのか、唇をちょっとだけ噛んでいる。そして目の前の対戦相手であるステファニーをギン!と睨んだ。対するステファニーは…ん?あれっ、何だか様子がおかしくない?

 先の戦いの時とは違って、何だかモジモジとしている。すぐ前にいるジュリアスを見ようとして、そして直ぐに目線を外してしまっているんだ。どうした?ステファニー…

 僕をはじめ観客達は、そんなステファニーを心配する。もしかして、さっきの試合で怪我でもしたのかな…?
 そんなことを思いながらも見守り続けていると、やがて真っ赤になりながらその場にヘタリ込んだ。

 どうした?一体…とその場は騒然とする。目の前の坊ちゃまも、その闘志の持っていきどころがなくて戸惑っている。やがて団長が心配して近付き、ステファニーが耳元で何かを囁いて…

 「騎士学園ステファニー、体調不良につき王都学園ジュリアス不戦勝!」

 突然、ジュリアスは戦わずして勝利を告げる声が…
 それから体調不良なら仕方ないよね…と観客達も納得して、ステファニーには温かい労いの拍手が送られる。
 それから慌てて次鋒のロイ・アルバが登場して、ドギマギした様子で剣を構えた。坊ちゃまも気を取り直して、涼しげな視線をスッと相手に向けた。そして…

 だから何だろう?その次鋒のロイも、固まったまま身動き一つしない。どうした?騎士学園チーム…
 二人続けてのそんな状況に、騎士学園大将のガイと騎士団長は何やら真剣に話し合っている。それから告げたのは、またまた坊ちゃまの不戦勝…なんで?

 一体どうしたんだという何とも言えない時間が過ぎて、まあ、そんなこともあるんだ?と無理矢理納得する感じの空気が流れる。
 それからお次に登場は、中堅ルーカス・マルドゥ。強いんだろうがちょっとチャラい感じの男だ。何故かノリノリでアリーナにやって来て、挑発するように坊ちゃまを見ながらカッコよく剣を構えた。坊ちゃまといえば相次ぐ相手の棄権で、ちょっと面倒になってしまったようで、スン…と挑発には乗らず剣を構えた。
 どうやら今回は無事試合が出来そうだと、周りの人々も安堵し二人の対決を見守る。

 ──ガッ、シャッ!

 ジュリアスの剣が、始まりと同時に振り下ろされた。目にも留まらないその先制攻撃に、ルーカスは顔を強張らせる。
 何とかその攻撃を避けたルーカスだが、ジュリアスのことを少し舐めていたのだろうか、意外にも力強いその攻撃に今更ながらに焦りを見せる。

 「ふんぬ、やぁっ!」

 そう声を上げたのはルーカスだ。負けじとブゥン!と勢いよく横から振り上げる。だが、上げ止まったルーカスの手首を、剣で素早くはたき落としたジュリアス。そして…

 ──カラーーン。
 
 手首の物凄い衝撃で、ウッ!とルーカスはしゃがみ込んだ。

 「勝者!王都学園次鋒ジュリアス・エドモア」

 その瞬間、地鳴りのような歓声と勝者を讃える拍手が鳴り響く。

 「うぉーーーっ!坊ちゃまぁぁ~」

 今までの微妙な雰囲気を吹き飛ばすような、その快勝に湧き立つ。勝った後もその表情を崩さず、ポーカーフェイスを貫く姿勢に、胸を鷲掴みされる人達が続出する。ぐおぉ~あれは、僕の坊ちゃまだぞぉ!と誇らしい気持ちになった。

 「凄いな~やっぱりジュリアス様だ!お顔の強さに負けてないなぁ~。ところでさっきの不戦敗の二人だけど…顔に負けてなかったか?真っ赤になって動けないみたいだったけど…」

 そのトムさんの言葉にハッとする。もしかして、もしかしてだけど…そうなの?嘘でしょ!
 剣じゃなくて、顔が良すぎて相手の戦意が消失したんだよね?そんな異質な威力で勝ったなんて…交流戦始まって以来なんじゃない?でも納得ー!

 僕はそうホクホクになっていたけど…次は?と思い出すと、そんな浮かれている場合じゃないのだと気付いた。つ、次は、アイツだ…イーライ!

 「それでは次は、王都学園勝者ジュリアス・エドモアと、騎士学園副将イーライ・アノーだ!」

 この勝ち残り式トーナメント戦の辛いところは、続けて戦わないといけないところだ…。実戦さながらの緊張感を!ということで、その厳しい方式をこの交流戦でも取り入れたそうだけど、勝ったらずっと出ずっぱりになる。坊ちゃまは前の二人は不戦勝だったとはいえ、ずっとこの緊張感の中に身を置いている。そろそろ疲れて来ただろうと心配になる。それに次はいよいよ、因縁がある人物と…

 坊ちゃまは先の三人の時と同じく、真顔でサッと戦闘態勢を取る。そこにイーライが薄ら笑いを浮かべながら…

 「おい!不戦勝して嬉しいだろ?だけど俺はそうはいかない…本気を出さないと、その美しい顔に傷が付くことになるぜ?」

 胸がズキン!と傷んだ。半分とはいえ、僕の血を分けた兄弟が坊ちゃまを侮辱している。何故あんなことを言える?人を馬鹿にしやがって!
 
 僕は坊ちゃまへの申し訳なさと、イーライへの怒りでブルブルと震えた。「坊ちゃま、勝って!」僕はこの世界に生まれて、神も仏もあったもんじゃない…と信心深くはなかったけれど、今回限りは祈った!坊ちゃまの無事と、勝利を…
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