【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO

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第三章・伯爵家当主マリン

39・誤解ですよ?

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 何だあの態度は…性格悪すぎなーい?
 それにしても小説の中のクリスって、純粋無垢なイメージだったよね?それがいくら男性に変わったからと言って、性格まで真逆なんて!

 ──正直ミシェルが、あんなクリスを選んだとしたら…引く!!

 「おーい!大丈夫か?何か色々と大変だったらしいけど…だから心配してたんだ。それで結局、ミシェルと別れちゃったのか?」
 
 乃恵留が心配そうな顔でそう聞いてきて、僕は少し俯きながらふるふると首を横に振る。

 「違うんだよ。一旦、伯爵家を継ぐために婚約を解消したくて。だから本当に別れたかった訳じゃない!でも…あれからミシェルがクリスと出逢ってしまって、おまけに僕に黙って二人で会っている。だから…迷ってるんじゃないかと思うんだ。僕とクリスとどちらを選ぶのかを…」   

 苦々しい気持ちで告白した僕は、もう自分ではどうしたら良いのか分からない。それで相談に乗ってもらおうと正直に伝え、それから乃恵留をチラリと見る。えっ…ハァッ?

 乃恵留は口をポカンと開けて固まっている。そんな意外な表情に僕の方が戸惑うけど…

 ──な、何よ?その反応は!そんなに…驚くこと?

 「え…ミシェルとクリスが会っているだと?そんな筈ないと思うが…だってクリスは相変わらず俺の所にも来ている。さっき見ただろ?ミシェルとくっついたのなら、もう俺の側にいる必要なくないか?」

 ──知らねぇよ!それと、くっついた…言うのヤメろ~

 僕はすっかりご機嫌ナナメで、そんなのクリスに直接聞いたら?って思ったけど、よくよく考えたらそうだよね…なんでだろ?

 「あのさぁ~乃恵留、聞いてみてくれないかな…ミシェルとはどういう関係なのかを。それで全てがハッキリすると思わない?」

 「えっ、ヤダなぁ~その役割…デメリットが多すぎる!」

 間髪入れずに断ろうとする乃恵留に、頼む!って無理やりお願いする。なんか嫌だっていう持ちは分かる…あの高飛車で鼻持ちならないクリスと話すのは、相当ストレスが溜まるだろうし。だけどクリスが素直に答えてくれそうなのって乃恵留だけなんだよね…

 「だってさ、僕が聞いたとしても絶対に答えてくれないよ。だけど乃恵留には素直そうだったじゃない?前に会った時も腕組んで歩いたりして親密だったよね。そう言えば…前から不思議だったんだけど、何故子爵令息のクリスが婚約者になれたの?身分的には微妙なんじゃないかと思うけど…」

 王太子殿下の婚約者と言えば、将来の王妃だ。国の母ともいえる重要な立場だよ。そんな高貴な身分になるにしては『子爵家の令息』では身分差があり過ぎる…伯爵家令息の僕だとしても微妙なトコなんだ。だから不思議なんだよねぇ…

 「実はあの見事な赤毛のせいなんだ。この国では『赤』が高貴で縁起の良い色とされているのは知っているよな?赤毛はチラホラ見掛けるだろうが、大抵は茶色っぽかったり暗い感じだったり…。だからクリスのような鮮やかな赤は相当に珍しい!燃える火のようじゃないか?そして子爵家とはいえ一応貴族だし、子供の頃から兄上の婚約者として選定されていたんだ。だから俺と兄上にとってクリスは、幼馴染とも言えるよな」

 ──おお、なる程!そう言う事か…そしてそれ、なかなかに大きな情報だよ。子供の頃から…だから我が家のように城内で過ごせるんだろうね。でもさ、いくらそういう立場だとしても「お前のような者」だってさ!失礼過ぎない?
 おまけに婚約者まで奪われそうになってるなんて、睨みたいのは僕の方だろう?マジでゴチン!とお見舞いして、ケチョンケチョンにしてやらなきゃ…
 すっかり怒りが再発しちゃったけど、おまけに今は既に王太子の婚約者じゃなくなっている訳で。それなのにいつまで自分は特別だって思ってるんだろう?理解に苦しむわ!全く…

 「クリスもさ、小さい時は割と可愛いかったんだぜ?俺や兄上の後を懸命に付いてきたりしてね…それがいつの間にかあんな感じに。おまけに婚約者の兄上がああなっちゃっただろ?気の毒ではあるよな…俺の責任でもあるし」

 ──おや…結構肩持つんじゃない?元々、当て馬の立ち位置なレオ殿下だし、実は気に入ってるんじゃない?
 なんだかそんなふうに思えてきて、チラッと乃恵留を見る。 
 すると乃恵留は僕のその視線に嫌な予感がしたようで、また変な事考えてただろ?って苦笑いする。す、鋭い!

 「だってさ~乃恵留がクリスと結婚すればいいんだよ。縁起が良い『赤』なんだろ?それで万事解決じゃん!ハハッ」

 「お前面白がってるだろ?それならお前だって、ミシェルに振られたら俺んとこ嫁に来いよ!俺と結婚して王妃になればいいだろ?それこそ万事解決じゃねぇか」

 そんな事を言い合って、ガハハッ!と笑い合う。それはお互いに絶対にないって事を知っているからこそ言える冗談だ。乃恵留と話していると、いつの間にか今世での立場を忘れてしまう。僕達はただの、海人と乃恵留に戻ってしまうのだ…

 ──カチャ、キィーッ!

 突如として部屋の扉が開く音がする。それで、ノックあった?と不思議そうに振り向くと、そこには意外過ぎる人物が、驚愕の表情をして立っていた。あ、あの人は…

 「何だと?レオ…お前ロテシュ伯爵と結婚するつもりか?」

 ──お、お、王様だぁ~!誤解ですよ?
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