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第二章・学園生活が幕を開ける
11・ざまぁ展開
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「そ、それは!」
バーモント嬢の顔は青ざめ、どうしたらよいのかと言い淀んでいる。私がヒロインのそんな表情を見ながら思うのは、いつもならこうだったのは、きっとキャロラインなんだろうと。そう気付いたら苦い思いになった…
私は中等部で起きたことは知らない…だけど、もう既にキャロラインは一切反論せず、黙ってその理不尽な叱責に耐えている。ということは、これまで何度もそのような目に遭っているということ。それこそ嫌というほど…。キャロラインだって始めは、公女として毅然と立ち向かった筈だ。それを諦めてしまうほどの数々な出来事が、中等部で既にあったのだろう。その悔しさを思うと…もう黙っちゃいられない!
「もしかして、皇太子殿下のところに?自分のグループの実験に参加もせずに、移動してらっしゃったのではないですか?」
そう言うとバーモント嬢は、顔を羞恥で真っ赤に染める。流石に恥ずかしい行動だということは、分かっているらしい。このヒロインであるバーモント嬢は、もう既に皇太子ルートに入っているのだろう。攻略対象者の中で、一番一緒にいるのは皇太子殿下だからだ。それって中等部の時に狙いを定めたのかしら?だけどハーレムエンドということもあるから、油断出来ないけど…
「そ…、そうです…」
そう蚊の鳴くような小さな声で白状したバーモント嬢。やはり…と思っていると、意外なところから声が上がる。
「実験中の移動はいけないことかも知れないけど、それをどうしてあんたが批判するんだ?そんな資格あるのか!」
その声に驚いて聞こえた方に顔を向けると、Bクラスのテーブルにいる可愛らしい顔をした令息のものだった。その途端閃く…あの人も攻略対象だったかしら?そう感じてマジマジと見つめた。
まるで令嬢と見紛うばかりの顔…濃紺の髪にパッチリとした橙の瞳、それに真っ白な肌をして、とてもじゃないけれど男性には見えない。こういう人はBLゲームにいるんだと思ってたけど…
「何ですって?ところで令息は」
「僕はスコット伯爵家のアンドリューだよ。だからあんたがルーシーをイジメる資格なんてないってんだよ!」
そのスコット令息は、苛々した様子でこちらをギロリと睨む。それには殿下も大きく頷いて「それはそうだな」と嬉しげに言っている。そしてこの中の何人かのクラスメイト達も「ルーシー様が可哀想!」「あの言い方されるとキツいよなぁ~」などと言っている。それで…
「そうですわよね。言い方が生意気だったのなら謝ります。けれども…では、お聞きします!この中で、これが起こった原因を説明出来る方いらっしゃる?何故バーモント嬢は転び、それをキャロライン様は疑われ責られている…その理由を説明出来る方っているのかしら?そうなら私は、今すぐ黙りますわ」
その問いに、この教室にいる人はキョロキョロとして見回している。「お前は?」「知らないよ」「私だって分からないわ」などと口々に言い合いながら…
「ではスコット令息、説明していただける?あなたは分かるんでしょ」
「僕だって知らないよ!だからそこまでルーシーを責める必要があるかって言ってんだよ。もうこんな言い合いヤメたらいいじゃないか…早く実験に戻ろうよ」
そのスコット令息のハイトーンボイスに、皆も頷きながら同意している。もうこの息詰まる雰囲気から、早く解放されたいようだ。だけどそれでは…
「あなたの言い分は分かりました。早く実験に戻らねばなりませんね、授業中ですから。だけどそれって、公女であるキャロライン様が謂れもないことで誤解され、責められたままでいいという訳?それって…バーモント嬢はダメで、キャロライン様はいいって言ってることと、同じだって分かってる?」
それにスコット令息はギョッとする。そして途端に下を向いて、何かブツブツ言っている。流石にマズい…と思っているようだ。
「この学園は皆んなが平等だと言いながら、子爵令嬢は許されて公爵令嬢は許されないのかしらぁ~不思議ね?誰かこの違いを説明出来るのかしらね」
そして自分の言ったことの重大さに気付いて、ブルブルと震えているスコット令息。その姿は子鹿のように可愛い。その前までゆっくりと歩いて、それから私はそっと耳元に近付いて囁いた。
「説明出来ないのなら、お黙り!」
それからクルッと踵を返して、バーモント嬢の隣に戻る。するとバーモント嬢は警戒したようにブルッと身体を震わせた。この場がシーンと静まり返っている。それから説明を続けようと口を開いたが、もはや誰も反論しなかった。
「皆さん!この実験は何をやってたと思います?『放電現象』の実験ですよ。アルコールランプの炎を挟んで、二本の針に稲妻を走らせるのを目的としていました。ランバート先生が言ってたのを聞いてましたか?」
初めての化学の授業でおまけに実験。そしてまだクラスにも慣れていない状況で、集中しろというのも無理かも知れない。だけど実験中だ…不必要な移動はもちろん、安全に配慮して行動しなければならない。おまけにチラッとバーモント嬢を見れば、白衣は一応着ているものの、恐らくアクセサリーはそのままじゃないかと思う。それに裾が大きく広がるドレスを着ていて、その格好から既に最初から実験に参加するつもりなんてないんじゃないかと思わせる。きっと自分は見てるだけでいいと思ってたんでしょうね?実際こういう時は、令息達が率先してやってくれるだろうし、だけどせめて感謝して側で見ているくらいはしないと…
「だから静電気じゃないかと」
「えっ…」
「バチッ!として痛かったんでしょう?静電気じゃないですか?ってこと」
「えーっ?」
「だからたまたまキャロライン様の近くで起こっただけで、誰のせいでもなく、動いていたバーモント嬢のせいだってことです」
「はああ?何だぁ…」
「なのでバーモント嬢は端で大人しくしてて下さい。危ないから」
「それがいいよね…」
私とその周囲で会話が進み、バーモント嬢は一言も喋らずにおずおずと端まで移動する。
それから私はキャロラインに笑顔で近付き、そっと身体を支えて椅子に座らせる。その向かいの席に座る皇太子殿下を、フン!と一瞥しながら。
バーモント嬢の顔は青ざめ、どうしたらよいのかと言い淀んでいる。私がヒロインのそんな表情を見ながら思うのは、いつもならこうだったのは、きっとキャロラインなんだろうと。そう気付いたら苦い思いになった…
私は中等部で起きたことは知らない…だけど、もう既にキャロラインは一切反論せず、黙ってその理不尽な叱責に耐えている。ということは、これまで何度もそのような目に遭っているということ。それこそ嫌というほど…。キャロラインだって始めは、公女として毅然と立ち向かった筈だ。それを諦めてしまうほどの数々な出来事が、中等部で既にあったのだろう。その悔しさを思うと…もう黙っちゃいられない!
「もしかして、皇太子殿下のところに?自分のグループの実験に参加もせずに、移動してらっしゃったのではないですか?」
そう言うとバーモント嬢は、顔を羞恥で真っ赤に染める。流石に恥ずかしい行動だということは、分かっているらしい。このヒロインであるバーモント嬢は、もう既に皇太子ルートに入っているのだろう。攻略対象者の中で、一番一緒にいるのは皇太子殿下だからだ。それって中等部の時に狙いを定めたのかしら?だけどハーレムエンドということもあるから、油断出来ないけど…
「そ…、そうです…」
そう蚊の鳴くような小さな声で白状したバーモント嬢。やはり…と思っていると、意外なところから声が上がる。
「実験中の移動はいけないことかも知れないけど、それをどうしてあんたが批判するんだ?そんな資格あるのか!」
その声に驚いて聞こえた方に顔を向けると、Bクラスのテーブルにいる可愛らしい顔をした令息のものだった。その途端閃く…あの人も攻略対象だったかしら?そう感じてマジマジと見つめた。
まるで令嬢と見紛うばかりの顔…濃紺の髪にパッチリとした橙の瞳、それに真っ白な肌をして、とてもじゃないけれど男性には見えない。こういう人はBLゲームにいるんだと思ってたけど…
「何ですって?ところで令息は」
「僕はスコット伯爵家のアンドリューだよ。だからあんたがルーシーをイジメる資格なんてないってんだよ!」
そのスコット令息は、苛々した様子でこちらをギロリと睨む。それには殿下も大きく頷いて「それはそうだな」と嬉しげに言っている。そしてこの中の何人かのクラスメイト達も「ルーシー様が可哀想!」「あの言い方されるとキツいよなぁ~」などと言っている。それで…
「そうですわよね。言い方が生意気だったのなら謝ります。けれども…では、お聞きします!この中で、これが起こった原因を説明出来る方いらっしゃる?何故バーモント嬢は転び、それをキャロライン様は疑われ責られている…その理由を説明出来る方っているのかしら?そうなら私は、今すぐ黙りますわ」
その問いに、この教室にいる人はキョロキョロとして見回している。「お前は?」「知らないよ」「私だって分からないわ」などと口々に言い合いながら…
「ではスコット令息、説明していただける?あなたは分かるんでしょ」
「僕だって知らないよ!だからそこまでルーシーを責める必要があるかって言ってんだよ。もうこんな言い合いヤメたらいいじゃないか…早く実験に戻ろうよ」
そのスコット令息のハイトーンボイスに、皆も頷きながら同意している。もうこの息詰まる雰囲気から、早く解放されたいようだ。だけどそれでは…
「あなたの言い分は分かりました。早く実験に戻らねばなりませんね、授業中ですから。だけどそれって、公女であるキャロライン様が謂れもないことで誤解され、責められたままでいいという訳?それって…バーモント嬢はダメで、キャロライン様はいいって言ってることと、同じだって分かってる?」
それにスコット令息はギョッとする。そして途端に下を向いて、何かブツブツ言っている。流石にマズい…と思っているようだ。
「この学園は皆んなが平等だと言いながら、子爵令嬢は許されて公爵令嬢は許されないのかしらぁ~不思議ね?誰かこの違いを説明出来るのかしらね」
そして自分の言ったことの重大さに気付いて、ブルブルと震えているスコット令息。その姿は子鹿のように可愛い。その前までゆっくりと歩いて、それから私はそっと耳元に近付いて囁いた。
「説明出来ないのなら、お黙り!」
それからクルッと踵を返して、バーモント嬢の隣に戻る。するとバーモント嬢は警戒したようにブルッと身体を震わせた。この場がシーンと静まり返っている。それから説明を続けようと口を開いたが、もはや誰も反論しなかった。
「皆さん!この実験は何をやってたと思います?『放電現象』の実験ですよ。アルコールランプの炎を挟んで、二本の針に稲妻を走らせるのを目的としていました。ランバート先生が言ってたのを聞いてましたか?」
初めての化学の授業でおまけに実験。そしてまだクラスにも慣れていない状況で、集中しろというのも無理かも知れない。だけど実験中だ…不必要な移動はもちろん、安全に配慮して行動しなければならない。おまけにチラッとバーモント嬢を見れば、白衣は一応着ているものの、恐らくアクセサリーはそのままじゃないかと思う。それに裾が大きく広がるドレスを着ていて、その格好から既に最初から実験に参加するつもりなんてないんじゃないかと思わせる。きっと自分は見てるだけでいいと思ってたんでしょうね?実際こういう時は、令息達が率先してやってくれるだろうし、だけどせめて感謝して側で見ているくらいはしないと…
「だから静電気じゃないかと」
「えっ…」
「バチッ!として痛かったんでしょう?静電気じゃないですか?ってこと」
「えーっ?」
「だからたまたまキャロライン様の近くで起こっただけで、誰のせいでもなく、動いていたバーモント嬢のせいだってことです」
「はああ?何だぁ…」
「なのでバーモント嬢は端で大人しくしてて下さい。危ないから」
「それがいいよね…」
私とその周囲で会話が進み、バーモント嬢は一言も喋らずにおずおずと端まで移動する。
それから私はキャロラインに笑顔で近付き、そっと身体を支えて椅子に座らせる。その向かいの席に座る皇太子殿下を、フン!と一瞥しながら。
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