【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO

文字の大きさ
53 / 96
第八章・恋の予感?

53・お誘い

しおりを挟む
 一目で分かる光属性…波打つプラチナブロンドの髪が歩くたびにふわりと揺れ、見たこともないくらい鮮やかな菫色の瞳。それに華美過ぎてなければ、割合自由な服装のこの学園において、豪華な刺繍が施された詰襟の上衣が、飛び抜けて目立っている。それはファンタジー界の主人公が、迷い込んで来た?と聞きたくなるような美麗さで…

 ──ホ、ホントに誰よ?それにどうして私を見ているの?全く知らない人だけど…

 その人が、とうとう私の目の前までやって来る。もう私達はその人のみを見ていて、目を離せなくなっている。それからその人はほんの少し頬を綻ばせて、口から薔薇でも出るんじゃ…と思わせるような形の良い唇を開いた。

 「レディー、君がアリシアかな?」

 ──レ、レディーだと?そんな気障キザな声掛け方法ってある!?おまけに何だか知らないけど、私の名前を知ってるー!

 そして私は、隣に座っているブリジットとクリスティーヌの顔をバッと見る。全員口を閉じはいるが、私達は以心伝心なのよ!とばかりに目だけで会話を繰り広げる。

 『この人誰?知らない?』

 『知らないわよ!だけど何だか違う世界の人みたいね?』

 『どうでもいいから、返事してみなさいよー!』

 目をしばしばさせて無言で会話をしていると、そこで意外な人物が口を開いた。

 「ルシード殿下、いらしていたのですね?そうです…こちらのご令嬢が、アリシア様ですわ!」

 その瞬間、声の主であるキャロラインの方へ私達の視線は釘付け!えっ…キャロラインの知ってる人?

 「アハハハっ、殿下…いきなりでは、アリシアが驚いてしまいますよ。私から紹介しますね!」

 いきなり聞こえる豪快な笑いにギョッとする。この声は…お兄様?

 「お、お兄様?一体どうなって…」

 その人の余りに強力な後光で気が付かなかったが、後ろからお兄様も来ていたようで…そして美し過ぎる二人が並び立っている姿は、まさにファンタジー!これからタッグを組んで、魔王を倒しに?と聞いてしまいそう。もしもし、ここは乙女ゲームの世界ですのよ?

 それからキャロラインがスクっと立ち上がり、その人に礼をとってからお兄様の隣へと移動する。その行動にどうした?と呆気に取られる私達が…

 「アリシア、それにブリジットとクリスティーヌ。こちらは交換留学で来られた隣国エルバリン国の第一王子、ルシード・グリヌート殿下だ」

 それには三人でスッと立ち上がり「お初にお目にかかります」と、カーテシーをとって頭を下げる。ここは学園だが、初めてお会いする隣国の王子様に敬意を込めて…。そして私は思う…これは何だか見えて来たぞ?

 交換留学…それにまず注目する。そしてこんな時期に…これはスティーブ殿下と絶対関係があるわね?
 急に決まったスティーブ殿下の留学。それに意味を持たせる為に帝国がとった苦肉の策…それがきっと、交換留学だということ。じゃあ、帝国からのお願いを無下にも扱えず、その交換相手としてやって来たのがこちらのルシード殿下なのだろう。それって…めっちゃお気の毒!

 その内情を知っているブリジットもクリスティーヌも感じたらしく、途端に可哀想な人を見るような目で見ている。
 それはそうだよね?あのスティーブ様のせいで突然留学なんて、可哀想過ぎるっ。そんな私達の微妙な空気を感じ取ったルシード殿下は、意外にも明るく…

 「アハハ!分かっちゃった?私もいきなりで戸惑ったよね…。でもまあ、これを機会に帝都学園の生徒達と親睦を深めればいいかな?って」

 取り澄ました様子もなく、ざっくばらんにそう告白する殿下。この人、この見た目では考えられないくらい自然体だわね…嫌いじゃないわよ?

 「それでどうしてお兄様がご一緒に?それにキャロラインは、もう既にお会いしていたようね。それに…何故私の名前をご存知なのかしら?」

 そうお兄様に尋ねてみる。恐らくはお兄様が生徒会長だからだと思うけど、それだけで私の名前まで知っている理由にはならない。おまけに顔まで知ってたの?そんな気がして…

 「まず何故私と殿下が共にいるのかだが…私がこの留学の調整をさせていただいていたからだ。ようは、殿下に留学の意思がお有りになるのかの確認や、決まってからも日程や皇居内で滞在される部屋の準備まで、一手に任されていたんだ。こちらに来られるまではもちろん手紙でだが、もう既に友人のように接していただいて…」

 そうか…お兄様が最初に、スティーブ殿下の留学の件をお祖父様に話したって言っていた。それで決まったんだけど…ワザとよね?一日も早く殿下に去って行って貰いたかったお兄様。だから面倒なこと一切を引き受けて、早急にことを運んだんだわ!まるでそれは追い込み漁…漁師か!?っての!怖いわぁ~

 だけど待って、それは分かったけど私のことは?そう思って再び見つめると…

 「キャロラインとは、殿下をルーベルト邸にご招待した時に既に会ったんだ。それと…アリシア、突然だけど生徒会に入らないか?殿下には学園に早く慣れる為にも、入っていただくことにしたんだが、私の従兄妹である君に一緒に入ってくれると安心なんだが…だからその件で特徴をお話したんだよ」

 ──な、何を勝手に…それに生徒会ですって?絶対に入らないって決めてたんだけど…ヤダ~

 「だけどお兄様…生徒会って、忙し過ぎるじゃない?だから入学してからも私達、何ヶ月も会えなかったのよ?そんなに忙しいのは、嫌かも~」

 そう言う私に眉をへの字に寄せて、困った顔をするお兄様。そんな顔されてもねぇ、嫌なものは嫌だし…

 「絶対にダメか?なにも会長、副会長になれって言ってる訳じゃない。ただの生徒会の一員…ってだけだ。だからそんなに忙しくは…アリシアにお願い出来ると嬉しいんだがなぁ」

 ううっ…私にまで追い込み漁!追い込み漁の達人~

 「でもアリシア、いいんじゃない?どうせ絶対入れって言われるわよ、あなたは!」

 クリスティーヌ、他人事だと思ってぇ~

 「そうそう!遅かれ早かれ入ることになると思うわよね?」

 嘘…そんなことってある?ブリジット!

 「アリシアがそうしてくれると助かるなぁ…ダメ?」

 キャロライン、そんな可愛い言い方を!だけどお兄様と二人して追い込んで来るわね?

 それにフハァーッと大げさに溜め息を吐き、それから目を瞑る。そして観念したように再びパチッと目を開く。

 「分かったわ!そのお役目承るわ。そう言われるとやらなきゃ収まらないだろうし…」

 それにお兄様は嬉しそうな顔をして「済まないなぁ~」と言っている。確かに私も、いずれ入ることになるかも?とは思っていた。だけど予想より一年早い…

 「ありがとうアリシア。どうぞよろしく!私のことはルシードと呼んでくれて構わないよ?」

 そう言ってルシード殿下は、再び笑顔を見せる。眩しっ、歯まで光ってなかったぁ?

 「ところでアリシア…お前、卒業パーティーのパートナーが決まってないって言ってただろ?それならルシード殿下になっていただいたらどうだろう?」

 「ええっ!それは殿下がお困りになると思うけど?」

 お兄様からのそんな提案に、それはいくらなんでも~と躊躇する。すると…

 「いいや、アリシア…もし良かったら、私とパートナーになっていただけませんか?」

 そうルシード殿下は言うと、徐ろに私の手を取る。あれ…?そう思って呆気に取られていると、手の甲にキスを落とす殿下が…

 「キャーーッ!」

 これは私の悲鳴ではない。これまでの成り行きを見守っていた、カフェテリアにいる人達が一斉にそう叫んだ!気持ちは分かるけど…本人より驚くのヤメて~

 自分の手にキスをする、この世の者とも思えないような完璧な人を見ながら、ドギマギしていると…いきなりこの場に高い声が響く。
 
 「ちょっと待ったー!」

 ──今度は誰よ?
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処理中です...