【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO

文字の大きさ
57 / 96
第八章・恋の予感?

57・ブリジットの恋

しおりを挟む
 私達が驚き過ぎて騒然とする中、一人難しい顔しているアンドリューがいる。そしてそのアンドリューは、今まで秘めいていた苦しい胸の内を語り始める…

 「あのジョセフ・ランバートは、元々スコット家の領地にある貧乏子爵家の出身なんだ。ジョセフは小さい頃から天才だと騒がれてて、うちの父親が支援して学園に通った。そして教師になったという経緯がある。だから僕らが子供の頃には、当時学園に通っていたジョセフが家庭教師を務めていたんだ。まあ、支援して家に住まわせてやる変わりに、それが条件だったってわけ」

 なんと!だけど…そんな設定あったかな?と考える。私は前世でランバートルートをやったけど、そんなことは初耳で…教師になった後からゲームが始まったから、端折られてたの?それにしてもブリジットの恋のお相手があの人だったなんて!意外すぎるっ。

 「ブリジットは昔から先生のことが好きだった…。だけど僕からしたら、教師だと言っても子爵家の出だ…ブリジットを幸せに出来るのか?って思って反対してた。だってブリジットだったら、例えば皇族と縁があったって不思議じゃないだろ?裕福な伯爵家の令嬢だし、あの容姿だ…もっと楽な道へ行って欲しいって思ってしまって。おまけに歳も七つも違うし…それって僕が間違ってる?」

 そうアンドリューは真剣な顔をして私達に尋ねた。私達は皆、そんなアンドリューを批判することは出来ない。そしてもちろんその気持ちは間違いじゃない!きょうだいでおまけに双子、その幸せを願うのは当たり前だもの。それで一つ納得がいったことが…以前私がランバート先生に頼まれてお手伝いをしていた時に、アンドリューが頻繁に現れたのはこういうことだったのかと。もちろん私を心配していたのは本当だと思うけど、ランバート先生という人を本当の意味で見極めたかったんだろうな。だけどそれはもしかして先生もなのかも…私に手伝いを頼むのは、ブリジットを間接的に見守りたかったから?そう思われてならない。だけどそう気付いたからといって、アンドリューを責めることは出来ないけど…

 「アンドリュー、あなたのその気持ちは間違ってなんてないわよ。それだけブリジットのことが大切なのよね?私だってそう!だけど一番大切なのは、ブリジットの気持ちじゃない?もちろん先行きが心配なのは分かるわよ。でもそれってブリジットが望んでいるものかしら?ブリジットは子供の頃からの恋する気持ちを、今でも変わらず大切にしている…違う?」

 そう言う私にアンドリューはショックを受けたよう。そしてガックリと俯いて押し黙った。だけどそれは私が言わなくても、既に分かっているんだろう…誰よりも近い存在のブリジットのことだもの。

 「うん…そうだよな。僕がずっと反対していても、ブリジットはその気持ちを曲げなかった…それ程の強い想いなんだと思う。だけどアイツは?ランバートのやつは、同じ気持ちなのか?もしかして、してやったりなんじゃないかと…」

 それに私は、フルフルと頭を振る。そして私よりも少し高い位置になった背中を、そっと撫でる。

 「あのね、ブリジットが言ってたわ、ずっといい返事が貰えない…って。アンドリューが言うように、先生がそんな不純な気持ちだったとしたら、二つ返事で了承すると思わない?そうしなかったってことは、ブリジットの為を思って返事出来なかったってこと。もちろん教師という立場もあるだろうけど、それよりも自分は相応しくないと思ったんじゃないかしら?だけど断らなかった時点でブリジットへの気持ちはあるの。そしてああやってパートナーとしてここに来るのも勇気がいった筈。そうしてでもブリジットの喜ぶ顔が見たかった。そうじゃない?」

 そう言う私に、バッと顔を向けるアンドリュー。その目には涙が滲んでいるように見えた。私にはきょうだいもいないし、ましてや双子でもない。だからそんな二人の絆は想像するだけだが、お互いを愛する気持ちは間違いない…だから認めてあげて!そう思いながら、再びアンドリューの背中をポンポンと優しく叩く。それから吹っ切れたように明るい笑顔を見せたアンドリューが…もう大丈夫そうだ!

 そして皆んなでブリジットとランバート先生に手を振って、「こっち、こっちー!」と合図する。そして全員が合流したところで、ちょうど学園長の挨拶が始まる。

 「今日は卒業を祝うパーティーです!皆んなで沢山踊って、沢山食べて、楽しい思い出を作って下さい。学園長の言葉は以上!思いっ切り踊れ~諸君!」

 それを合図に、音楽が流れ出す。一曲目は練習にも使用していた曲だったから、とっても有り難い!選曲してくれた人に感謝をしつつ、笑顔でアンドリューの手を取った。そして…

 くるくると舞う!難しいことはまだ出来ないけど、間違っても楽しけりゃいいでしょ?と。時々アンドリューの足を踏んだりしたけど、それでも私達は笑いながら踊る!チラッと親友達の楽しんでいる姿を見ながら…
 そして二曲続けて踊った後は三曲目…そうなると、婚約している人達だけがその場に残ることになる。

 その何組かの中に、キャロラインとお兄様の姿が!きっとこの為にお兄様は婚約を急いだのね?と気付いた。今まで学園で良い思い出が少ないキャロラインの為に、きっと最高の思い出を残してあげたかったのだろう…自分がこの学園にいる間に。そんな二人の楽しそうな姿を、皆んなでホゥーッと感嘆の声を上げて見つめる。二人がダンスを踊る姿は本当に絵のように美しく、愛で満ちあふれている…そしてそのダンスが終わると、盛大な拍手が巻き起こる!

 「うわああーっ!キャロライン、お兄様!物凄く素敵だったわよ?こんな二人の姿が残せないのが本当に惜しいわ!知っている人全員に見せたいのに…」

 「ふふふっ、ありがとう!アリシアがそれを憶えていてくれるならいいわ!それが私にとって一番だから…」

 そう言ってお互いの身体をそっと抱き締め合う。わお!めっちゃいい香り~

 それからは少し小休止で、飲み物を飲んだり談笑したりする時間が取られる。もう喉、カラカラだからね!するとその時、遅れて来た人達が何組か入って来る。きっと入り口で、途中で入るのを三曲目が終わるまでは止められていたのだろう。よく見るとその中にはロブの姿も。パートナーはよく知らない令嬢で、きっと例の特別措置で選ばれた人じゃないかな?そう思って見ていると…
 
 続けて会場に入って来た、一組のカップルを見た瞬間固まる!それはここにいる人達も例外ではなくて…

 「何?どういうことなの?何故彼女と彼が、一緒に来るわけ?信じられない!」

 ブリジットがそう呟き、私達は全く同じ思いでそれを見つめていた。

 フワッとしたピンクの髪に、眩しい程の深紅のドレス。そして最近全くみることがなかった満面の笑みを浮かべている。そして…濃紺の衣装を身に纏って現れた、印象的な赤い髪の令息。その二人に私達は釘付けになる…。その二人とは、ルーシーとフィリップ!

 ──な、何故あの二人が一緒に?ええっ!どうしたの…
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処理中です...