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第八章・恋の予感?
58・ある疑問
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あれって…何故?そんなふうに思ったのは、私達だけではない。今まで狙っていたスティーブ殿下が居なくなって、次に狙っているのは辺境伯家の令息なの?と、殿下との経緯を知っている人達は皆、唖然としてルーシーを見つめている。
だけどそんな視線などどこ吹く風なルーシーは、フィリップの腕を取りニコニコ笑顔を振り撒きながら会場内を歩いている。そしてこれは…恐らく特別措置によって組まれたパートナーではない!そしもそうなら同じ学部同士になると聞いているから。実際中等部の生徒達は、婚約者がいる生徒などはごく少数で、殆どは先生によって決められているのだろう。ダンスが終わったらさっさと離れて、同性同士で話に花を咲かせている。そんな中での二人の登場に、私達はもとより他の生徒達も動揺を隠せないようで…
それに私達はフィリップとは面識がある。ランドン邸で一緒に楽しく過ごしたフィリップが、よりによってあのルーシーとパートナーになるなど、予想出来なかったことだから…
「なんだ?何故ルーシーとフィリップが!?今まで接点なんて無かったと思うけど…もしかしてロブが紹介したのかな…フィリップとは従兄弟同士なんだろ?」
アンドリューがそう言って首を傾げている。二人は確かに従兄弟同士だけど…だからって紹介する?そうとは思えない!スティーブ殿下のルーシーに対する言動は、数多くの誤解を生んだ。そして殿下はルーシーに対して恋愛感情はないと言い切っている。だけどその他の人達は?となると、ロブとアンドリュー、そしてニクソンは本当にルーシーのことが好きだったように思う。特にロブはそんな自分の感情に悩み、私と婚約解消までしてルーシーに告白している。
そしてこっぴどくフラれたと言っていたけど…それなのに紹介などあり得るだろうか?それはないと思うよねぇ…
それから二人を気にしながらも、今はパーティー中だから!と気を引き締め直し、今度はお兄様と踊ったり、クラスメイト達とお喋りしたりして、思い思いの楽しい時間を過ごす。そして気付けば、最初は中等部と高等部の生徒達が面白いようにハッキリと分かれていたのに、いつの間にか生徒達が入り混じって、一緒に楽しむようになってくる。すると…
「ア、アリシア!お久しぶりです」
そんな声に振り返ると、そこには笑顔のフィリップが。そして当然のように隣にはルーシーがいる。こんなに間近で見るのは、ルーシーを懲らしめようとしたあの時以来で…。そしてルーシーがベリーだという事実を私が知った…それを知ってるのかしら?そう思うが、その無表情からは何も読み取ることは出来ない…
「フィリップ!お久しぶりね?だけど…私は二人が知り合いだった事実に驚いているんだけど」
そうハッキリと聞いてみる私。それにフィリップは、不思議そうな顔をして私を見ている。その顔を見ていたら、私とルーシー、そしてキャロラインとのいざこざは、よくは知らないのかも…と思わせる。だけど忘れてはならないのは、ロブがルーシーにフラれたことは知っているはずよね?ってこと。ランドン邸で落ち込んでいるロブに理由を尋ねた時、一緒に聞いていた筈…それなのに?何故パートナーになったんだろう…
「え、ええ。ロード辺境伯家はバーモント子爵様と仕事上のお付き合いがあるのです。それで冬季休暇中に偶然ルーシー嬢とお会いして、何故だかこういうことに…」
そうフィリップが説明してくれたけど、いつものフィリップとは明らかに違う、歯切れの悪さが際立っている。それでなるほど…と分かったような気がした。今回のこと…それに関わっているのは、ルーシーの義父であるバーモント子爵なんだろう。そしてスティーブ殿下の心を掴めなかったルーシーは、その次に狙うのはフィリップだってことなの?だけど待って…攻略対象でもないフィリップとなんてあり得るの!?そう困惑していると…
「そうなのよ?ランドン令嬢。お義父様のお仕事について行ったら、フィリップ様と偶然知り合って。おまけにロブの従兄弟だって言うじゃない?まるで運命みたいだと思いませんか?」
そう言ってルーシーは、鮮やかに笑う。そんなルーシーに私は、また違う感情を抱いていて…
運命…ですって?そう言われた途端、何かがおかしいと思い始める。今の私達の会話の中で?いいえ、違う!もっと前からそれを感じていたような気がする。違和感…それは何だったのかしら?
そして何かが弾けるように閃く…そうだ!その違和感のきっかけは、あのロブの告白だった?
『君と婚約を解消して直ぐ、俺はルーシーに好きだと告白したんだ!もちろん断られるのは分かってた。それでも君にまで迷惑を掛けたんだ…だから言うだけ言ってみようって。そしたら笑い飛ばされたよ…あなたが私に?とか言われて…』
このロブの告白を受けてのルーシーの反応…どこかおかしいと思わない?
何故攻略対象者であった筈のロブが、告白をしたからって笑い飛ばされたの?もしもルートを皇太子殿下と定めた後に、別の攻略対象者から告白されたとする。それってありがちだわよね?だとしたらこの言い方は少しあり得ない気がする。
「好きになってくれてありがとう。だけど私には心に決めた方が…」
「嬉しいけど、その気持ちには応えられないわ!だって好きな人が」
こんな感じにならない?普通なら。なのに、告白してきた相手をちょっと馬鹿にしたような発言…『あなたが私に?』そう言ったルーシー。ルーシー自身は、乙女ゲームの攻略をしている自覚はないだろう。だけど…もしも攻略対象者の告白だったら、こんなに雑な対応なんてしない気がするけど…これは絶対におかしい!
私はある可能性について考えていた。もしかして、攻略対象者だったのはロブでなく、フィリップだったのでは?ということ。
私はロブルートは知らない…ただあの美麗なスチルを思い出しただけ。赤い髪に黒い瞳の印象的な見た目、そして騎士を目指していて剣術が得意で…そんな登場人物を思い出し、それを自分の婚約者であるロブだと思い込んでしまった。だけど違っていた?あれは実はフィリップのことで、ロブは完全に部外者だったのかも知れない!驚くほど印象が似ているロブとフィリップ。これはどう考えても間違えるでしょ!おまけにゲームの時のオープニングの場面で、実際にそこに居たのはロブで…。そんな今更ながらに知った新事実に愕然とする…
そして何やら嫌な予感がするけど…ルーシー、あなた次はフィリップを攻略するつもりなの?
だけどそんな視線などどこ吹く風なルーシーは、フィリップの腕を取りニコニコ笑顔を振り撒きながら会場内を歩いている。そしてこれは…恐らく特別措置によって組まれたパートナーではない!そしもそうなら同じ学部同士になると聞いているから。実際中等部の生徒達は、婚約者がいる生徒などはごく少数で、殆どは先生によって決められているのだろう。ダンスが終わったらさっさと離れて、同性同士で話に花を咲かせている。そんな中での二人の登場に、私達はもとより他の生徒達も動揺を隠せないようで…
それに私達はフィリップとは面識がある。ランドン邸で一緒に楽しく過ごしたフィリップが、よりによってあのルーシーとパートナーになるなど、予想出来なかったことだから…
「なんだ?何故ルーシーとフィリップが!?今まで接点なんて無かったと思うけど…もしかしてロブが紹介したのかな…フィリップとは従兄弟同士なんだろ?」
アンドリューがそう言って首を傾げている。二人は確かに従兄弟同士だけど…だからって紹介する?そうとは思えない!スティーブ殿下のルーシーに対する言動は、数多くの誤解を生んだ。そして殿下はルーシーに対して恋愛感情はないと言い切っている。だけどその他の人達は?となると、ロブとアンドリュー、そしてニクソンは本当にルーシーのことが好きだったように思う。特にロブはそんな自分の感情に悩み、私と婚約解消までしてルーシーに告白している。
そしてこっぴどくフラれたと言っていたけど…それなのに紹介などあり得るだろうか?それはないと思うよねぇ…
それから二人を気にしながらも、今はパーティー中だから!と気を引き締め直し、今度はお兄様と踊ったり、クラスメイト達とお喋りしたりして、思い思いの楽しい時間を過ごす。そして気付けば、最初は中等部と高等部の生徒達が面白いようにハッキリと分かれていたのに、いつの間にか生徒達が入り混じって、一緒に楽しむようになってくる。すると…
「ア、アリシア!お久しぶりです」
そんな声に振り返ると、そこには笑顔のフィリップが。そして当然のように隣にはルーシーがいる。こんなに間近で見るのは、ルーシーを懲らしめようとしたあの時以来で…。そしてルーシーがベリーだという事実を私が知った…それを知ってるのかしら?そう思うが、その無表情からは何も読み取ることは出来ない…
「フィリップ!お久しぶりね?だけど…私は二人が知り合いだった事実に驚いているんだけど」
そうハッキリと聞いてみる私。それにフィリップは、不思議そうな顔をして私を見ている。その顔を見ていたら、私とルーシー、そしてキャロラインとのいざこざは、よくは知らないのかも…と思わせる。だけど忘れてはならないのは、ロブがルーシーにフラれたことは知っているはずよね?ってこと。ランドン邸で落ち込んでいるロブに理由を尋ねた時、一緒に聞いていた筈…それなのに?何故パートナーになったんだろう…
「え、ええ。ロード辺境伯家はバーモント子爵様と仕事上のお付き合いがあるのです。それで冬季休暇中に偶然ルーシー嬢とお会いして、何故だかこういうことに…」
そうフィリップが説明してくれたけど、いつものフィリップとは明らかに違う、歯切れの悪さが際立っている。それでなるほど…と分かったような気がした。今回のこと…それに関わっているのは、ルーシーの義父であるバーモント子爵なんだろう。そしてスティーブ殿下の心を掴めなかったルーシーは、その次に狙うのはフィリップだってことなの?だけど待って…攻略対象でもないフィリップとなんてあり得るの!?そう困惑していると…
「そうなのよ?ランドン令嬢。お義父様のお仕事について行ったら、フィリップ様と偶然知り合って。おまけにロブの従兄弟だって言うじゃない?まるで運命みたいだと思いませんか?」
そう言ってルーシーは、鮮やかに笑う。そんなルーシーに私は、また違う感情を抱いていて…
運命…ですって?そう言われた途端、何かがおかしいと思い始める。今の私達の会話の中で?いいえ、違う!もっと前からそれを感じていたような気がする。違和感…それは何だったのかしら?
そして何かが弾けるように閃く…そうだ!その違和感のきっかけは、あのロブの告白だった?
『君と婚約を解消して直ぐ、俺はルーシーに好きだと告白したんだ!もちろん断られるのは分かってた。それでも君にまで迷惑を掛けたんだ…だから言うだけ言ってみようって。そしたら笑い飛ばされたよ…あなたが私に?とか言われて…』
このロブの告白を受けてのルーシーの反応…どこかおかしいと思わない?
何故攻略対象者であった筈のロブが、告白をしたからって笑い飛ばされたの?もしもルートを皇太子殿下と定めた後に、別の攻略対象者から告白されたとする。それってありがちだわよね?だとしたらこの言い方は少しあり得ない気がする。
「好きになってくれてありがとう。だけど私には心に決めた方が…」
「嬉しいけど、その気持ちには応えられないわ!だって好きな人が」
こんな感じにならない?普通なら。なのに、告白してきた相手をちょっと馬鹿にしたような発言…『あなたが私に?』そう言ったルーシー。ルーシー自身は、乙女ゲームの攻略をしている自覚はないだろう。だけど…もしも攻略対象者の告白だったら、こんなに雑な対応なんてしない気がするけど…これは絶対におかしい!
私はある可能性について考えていた。もしかして、攻略対象者だったのはロブでなく、フィリップだったのでは?ということ。
私はロブルートは知らない…ただあの美麗なスチルを思い出しただけ。赤い髪に黒い瞳の印象的な見た目、そして騎士を目指していて剣術が得意で…そんな登場人物を思い出し、それを自分の婚約者であるロブだと思い込んでしまった。だけど違っていた?あれは実はフィリップのことで、ロブは完全に部外者だったのかも知れない!驚くほど印象が似ているロブとフィリップ。これはどう考えても間違えるでしょ!おまけにゲームの時のオープニングの場面で、実際にそこに居たのはロブで…。そんな今更ながらに知った新事実に愕然とする…
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