【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO

文字の大きさ
64 / 96
第九章・秘密の友達

64・皇后様との対面

しおりを挟む
 会ってみては…なんて言われたけど、そんなに簡単にお会いできるものなの?と面食らう。おまけに皇女様は、まだお生まれになってから半年ほど…だけどきっと可愛いだろうな?ってお会いしてみたい気もするけど…
 そう躊躇している私に陛下は大きく笑って「そんなに緊張せずとも…私に初めて会った時の元気はどうした?」とおっしゃる。それとはまた違う緊張なんですけどぉ~

 そう思いながらも、せっかくのその申し出をお断りする訳にもいかず、皇后様が会ってくださるならば…と了承する。それから学園での生活やキャロラインの婚約などの話をさせていただき、それから話はルシード殿下のことになる…

 「あれのせいで、エルバリンのルシード王子には迷惑を掛けてしまってなぁ…アリシアさえ良ければ、学園で力になってやって欲しい。幼い頃から苦労している人だから…」

 思わずといった感じで陛下がそう言ったけど、幼い頃から苦労…ですって?
 やっぱりルシード殿下の留学は、何か裏がありそうだ…これ以上はきっと、聞いても話してはくださらないだろうけど。
 それから陛下には、また必ず近況を知らせにくるようにと念を押されてから、ジャックマンに連れられて皇后宮まで移動する。皇后宮は皇居の奥まったところにあり、調度品などは花をモチーフにしたものなど女性的で洗練されている。そして普段余り人が行き来しないのか、しんと静まり返っていて…
 少し離れているだけで、これ程印象が違うのかと驚いていると…

 「アリシア様、皇后様はこちらにいらっしゃいます」

 そこは皇后様の自室のようで、私なんかがここに入ってもいいのかしら?と重ねて思わせる。そしてジャックマンが扉をノックし、「アリシア様がいらっしゃいました」と声を掛ける。そして皇后様御本人の声なのか、中から入るようにと落ち着いた声が聞こえて…

 「あなたがアリシアですね?以前から陛下やキャロラインから聞いています。だから…初めて会ったとは思えないくらい!細かい挨拶はいいから、こちらにいらして」

 扉を開けるなり、頭を下げる間もなくそう言われ、不敬だが思わず目の前の人を見つめてしまう。
 曇り一つない透明のエメラルドグリーンの瞳。それに銀糸のような美しい髪が腰の辺りまで流れ落ちている…なんという美しい方だろう?それに思っていたよりも、ずっとお若い!恐らくは三十半ばほど…だけどやっぱりキャロラインにソックリだわ!緊張していたけど、まるでキャロラインが側にいるみたいだと、少しリラックスしてくる。

 「お初にお目にかかります。ランドン伯爵家アリシアと申します。皇后様の姪であるキャロライン令嬢とは、本当に仲良くしていただいております」

 そう言う私に、フワッと笑顔を向けられる皇后様。ううっ…流石にキャロラインとは従姉妹の皇后様…笑顔が眩し過ぎるっ。この世界って、何故こんなに光属性の人が多いんだろうか…

 そうドキドキしながら、呼ばれるまま皇后様の御前に座らせていただく。それから皇后様付きの侍女の方が紅茶を入れてくれて有り難く頂戴しようとすると、中には花びらのようなものが浮かんでいて…とってもオシャレ。
 流石皇后宮、細部まで行き届いているわぁ~と、感心していると…ニコニコ笑ってらっしゃる皇后様と目が合う。

 ──だけどホントにそっくりだわ!見た目も勿論だけど、雰囲気というのか…そして優しい眼差しまでも。

 「アリシア…キャロラインのことでは、本当にありがとう!あの子を守ってくれて、そして何より力強い味方になってくれて。あの子…お義姉様が亡くなってからずっと一人で耐えてきたの。ほんの小さい頃から、あの大きな屋敷で一人で過ごしてきたのよ?食事を共にしたことなんて、数えるくらいしかないんじゃないかしら…。本当は仕事なんて放って置いてでも、兄があの子を構うべきだったのに…あれほど放置しておくなんて!だから私達の元に来た方が、キャロラインの為に良いと思ったの。スティーブの妃になって皇居に来た方が寂しくないだろうと…それがかえって苦しめてしまって」

 そう言って皇后様は目を伏せる。ずっと気になっていた…何故キャロラインが、スティーブ殿下の婚約者になったのだろうと。もちろん身分や見た目など文句の付けようがない人だが、他に候補者がいない訳ではないだろう…なのに?と。なるほど…そうだったのね。
 そしてもう一つ、キャロラインのあの我慢体質は、幼い頃からの体験が要因だったのだと分かった。そうだったならお兄様…もっとアロワ公爵様を叱っても良かったのに!だけどきっとお兄様は、それを感じ取っていたに違いない…だから婚約の了承を貰いに行く時、我慢出来ずにああ言ったのね?
 
 以前、何故やられっぱなしで居るの?という私の問いに、キャロラインは自分が口下手で性格が大人しいからだと言っていた。それを鵜呑みにしてきたけど…
 そしてアロワ公爵様とそのお兄様が、相当に忙しいことは知っていた。だけど…皇后様が心配し憤慨される程だったなんて!
 そして私は反省する…親友達が大好きで守るわ!そうずっと言い続けてきたけど、結局は独りよがりだったのだろうか?相手の深い心情までは全然分かっていなかったのだと…
 
 そう言えばそうね、ブリジットもあれほどの熱い想いを胸に抱えていたし、一見クールに見えるクリスティーヌも、其の実色々あるのかも知れない…無理に聞き出すのは違うだろうが、もっと仲間達に寄り添わないとダメなんだと改めて思う。

 そして皇后様は私の手を取ってぎゅっと握り、「キャロラインが変わったのは、あなたのおかげよ?」と言ってくださった…それには涙が滲む。

 「あの子ね…凄く嬉しそうに、あなたの話をするのよ?アリシアに恥じない自分でいたい…って。だからもう大丈夫ね?おまけに愛する人とも出会って、今まで孤独を味わっていた分これからはずっと幸せでいられるわね?」

 それに泣き笑いで頷く私。それから皇后様は「キャロラインがお嫁に行った後、お兄様はきっとその時思い知るでしょうね?その淋しさを」と静かに呟く。そして私も同意の意味でそっと目を閉じた。

 それから皇女様にお会いして、その尊い御身をおっかなビックリで抱かせていただく!前にロッテに、皇居へ行ったことを子供や孫に自慢できるわよ?なんて言ったけど、私はそれよりもずっと恐れ多い経験をさせていただいた…それこそ子孫末代にまで伝えなくては~!
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処理中です...