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第11章・アリシア危機一髪
79・疑惑のマーティン
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あれからルシードからは、予定が付き次第お茶会の招待状を送るからと言われている。ルシードとは既に何度もお茶を共にしているから、今更?って思うけど、将来皇帝陛下になるかも知れないウィリアム殿下との初対面…そのくらいの準備が必要なのだろう。だけどね…三つも年下ということもあり、正直言ってノーマークというか、失礼ながら興味もあんまり無かった。
突如親友がその妃候補筆頭になっちゃったから、急上昇しちゃったわよね。あの時、結局クリスティーヌの気持ちを聞き忘れたし。というか、明言しなかったというのが正解で。クリスティーヌって、やっぱりどこか男前な性格だからさ、この帝国を背負って行くのは自分しかない…って思っている節があるわよね。他に良い候補がいないせいだろうけど…
「やあ、アリシア!」
突然、そんな自分を呼ぶ声に振り返る。あの嬉しそうにはにかんでいる笑顔は…フィリップ?こんなところで会うのは珍しい!一年生の教室は一階だから、二階にいるなんて…
「フィリップ、二年生のクラスに用事が?こんな所で会うなんて滅多にないわよね」
遠くで手を振っていたフィリップは、あっという間に目の前まで駆けてくる。相変わらず足が早い!そのことにドキッとしていると…
「今から生徒会室に行くんです。イベントのアンケート、一年生分全て集まったので。アリシアもそうですか?」
「そうなの!帰る前に持って行っちゃおうと思って。会長、副会長は、放課後毎日いるって言ってたし。一緒に持って行きましょう!だけど待って…他のクラスの分をアンドリューが取りに行ってるから」
そう言っていると、Cクラスからアンドリューが出てくる。大量のアンケート用紙を持っているから、どうも全て集められたみたいね。
「おっ、フィリップ!一緒に行くのか…」
私の隣にいるフィリップを見たアンドリューは、一瞬顔を顰めたように見えた。何だろう?仲は悪くなかった筈だけど。
それはほんの一瞬で、今はもう普通にしている。だから大丈夫よね?
それで三人で、生徒会室へと向かうことに。もう既に殆どの生徒は帰途について、窓から見ると何台もの馬車が学園から走り去って行く。それを見て、ハリスが待ってるかも?と少し焦る…だけど伝えておいたから大丈夫だよね。
「フィリップって家が遠いじゃない?だから早く用事を済ませて帰った方がいいわね。一時間くらいかかるの?」
そう聞く私にフィリップは、うーん…と暫し考えてから返事をした。
「一時間半くらいかなぁ。二時間はかからないと思うけど…」
「嘘でしょう?そんなに!」
そんなにかかるなら、もはや寮に入った方がいいような?そう思って見つめていると…
「ハハッ、遠すぎるかい?ホントは馬車じゃなくて、馬に乗って来た方が早いんだけどね」
そう言って笑うフィリップ。だけど本当に大変そう…御者も往復だけで凄い距離よね~
「僕はロブの家には遊びに行ったことがあるんだ。ガーイン伯爵邸とロード辺境伯邸とは、かなり遠いお隣さんだって聞いたけど?」
そのアンドリューの問いにフィリップは、可笑しそうに笑う。うん…かなり遠いお隣さんですって?
「アハハッ、そうなんだ!凄く遠いけど、隣接してるのは間違いないよ。そうだな…馬を飛ばして二十分くらいかかるかなぁ。」
そ、それって…もう隣って言わないんじゃあ?だけどロブの叔母様が確か、辺境伯家に嫁いだんだったよね?隣同士…何だかロマンスがありそうだ!おまけにそれぞれ領地は別にあるのに、帝都にある家は隣なんて…不思議な巡り合わせだわ。アンドリューが「それって、ギリギリ帝都だよなぁ…」なんて言っている。確かに!この帝国で広い土地を手に入れようとすると、そのくらい遠いところになってしまうのだろう。そう思ってから、ふとルーシーのことを思い出した。
ルーシーは、家は繁華街の近くだと言っていた。あのメイン通りから歩いて行けるほどの…どのくらいの大きさの家なのかは知らないけど、相当土地が高いような気がする。それぼどの羽振りの良さはやっぱり怪しすぎる!
だけど…もしも、その罪が白日のもとに晒されたとして、ルーシーはどうなってしまうのだろう?良くてお家取り潰しのうえ、子爵は僻地送りか国外追放だろうな…
首謀者はグァーデン伯爵だろうけど、どのくらい関わっているのかによる。おまけにエルバリン国の御家騒動にも関わっているとしたら…きっと断罪される!最悪処刑だってあるかも知れない。そうなったら、あの子はどうなってしまうのだろう?そこまで関わっていないのを祈るしかないけど…
そんなことを考えていたら、生徒会室の前まで来ていた。それで三人で中に入ろうとした時、何気なく今通って来た廊下をチラリと見た。すると…遠くに人が横切っていったのが見える。あの先にあるのは、サロンだろうか?そう思って精一杯目を凝らす。そして見えてきたのは…えっ、あの人は!
「どうした?アリシア。入らないのかい」
不思議そうにフィリップが聞いてきたけど、私の目はそこに釘付けになっている。そこにはルシードの侍従のマーティンが、窓から何かをじっと見ていた。私の視線になど全く気付かずにただ一点を凝視して…
それで私は、何をそれほど見ているのかと興味が湧く。マーティンに気付かれないように身を低くしながら移動して、生徒会室の直ぐ側の階段の脇の窓から下を見下ろす。すると…
「あれっ、あれは…ルーシー?」
生徒玄関前でルーシーがバーモント家の馬車に乗り込もうとしている。マーティンは何故、それほどルーシーを見ているんだろう?
突如親友がその妃候補筆頭になっちゃったから、急上昇しちゃったわよね。あの時、結局クリスティーヌの気持ちを聞き忘れたし。というか、明言しなかったというのが正解で。クリスティーヌって、やっぱりどこか男前な性格だからさ、この帝国を背負って行くのは自分しかない…って思っている節があるわよね。他に良い候補がいないせいだろうけど…
「やあ、アリシア!」
突然、そんな自分を呼ぶ声に振り返る。あの嬉しそうにはにかんでいる笑顔は…フィリップ?こんなところで会うのは珍しい!一年生の教室は一階だから、二階にいるなんて…
「フィリップ、二年生のクラスに用事が?こんな所で会うなんて滅多にないわよね」
遠くで手を振っていたフィリップは、あっという間に目の前まで駆けてくる。相変わらず足が早い!そのことにドキッとしていると…
「今から生徒会室に行くんです。イベントのアンケート、一年生分全て集まったので。アリシアもそうですか?」
「そうなの!帰る前に持って行っちゃおうと思って。会長、副会長は、放課後毎日いるって言ってたし。一緒に持って行きましょう!だけど待って…他のクラスの分をアンドリューが取りに行ってるから」
そう言っていると、Cクラスからアンドリューが出てくる。大量のアンケート用紙を持っているから、どうも全て集められたみたいね。
「おっ、フィリップ!一緒に行くのか…」
私の隣にいるフィリップを見たアンドリューは、一瞬顔を顰めたように見えた。何だろう?仲は悪くなかった筈だけど。
それはほんの一瞬で、今はもう普通にしている。だから大丈夫よね?
それで三人で、生徒会室へと向かうことに。もう既に殆どの生徒は帰途について、窓から見ると何台もの馬車が学園から走り去って行く。それを見て、ハリスが待ってるかも?と少し焦る…だけど伝えておいたから大丈夫だよね。
「フィリップって家が遠いじゃない?だから早く用事を済ませて帰った方がいいわね。一時間くらいかかるの?」
そう聞く私にフィリップは、うーん…と暫し考えてから返事をした。
「一時間半くらいかなぁ。二時間はかからないと思うけど…」
「嘘でしょう?そんなに!」
そんなにかかるなら、もはや寮に入った方がいいような?そう思って見つめていると…
「ハハッ、遠すぎるかい?ホントは馬車じゃなくて、馬に乗って来た方が早いんだけどね」
そう言って笑うフィリップ。だけど本当に大変そう…御者も往復だけで凄い距離よね~
「僕はロブの家には遊びに行ったことがあるんだ。ガーイン伯爵邸とロード辺境伯邸とは、かなり遠いお隣さんだって聞いたけど?」
そのアンドリューの問いにフィリップは、可笑しそうに笑う。うん…かなり遠いお隣さんですって?
「アハハッ、そうなんだ!凄く遠いけど、隣接してるのは間違いないよ。そうだな…馬を飛ばして二十分くらいかかるかなぁ。」
そ、それって…もう隣って言わないんじゃあ?だけどロブの叔母様が確か、辺境伯家に嫁いだんだったよね?隣同士…何だかロマンスがありそうだ!おまけにそれぞれ領地は別にあるのに、帝都にある家は隣なんて…不思議な巡り合わせだわ。アンドリューが「それって、ギリギリ帝都だよなぁ…」なんて言っている。確かに!この帝国で広い土地を手に入れようとすると、そのくらい遠いところになってしまうのだろう。そう思ってから、ふとルーシーのことを思い出した。
ルーシーは、家は繁華街の近くだと言っていた。あのメイン通りから歩いて行けるほどの…どのくらいの大きさの家なのかは知らないけど、相当土地が高いような気がする。それぼどの羽振りの良さはやっぱり怪しすぎる!
だけど…もしも、その罪が白日のもとに晒されたとして、ルーシーはどうなってしまうのだろう?良くてお家取り潰しのうえ、子爵は僻地送りか国外追放だろうな…
首謀者はグァーデン伯爵だろうけど、どのくらい関わっているのかによる。おまけにエルバリン国の御家騒動にも関わっているとしたら…きっと断罪される!最悪処刑だってあるかも知れない。そうなったら、あの子はどうなってしまうのだろう?そこまで関わっていないのを祈るしかないけど…
そんなことを考えていたら、生徒会室の前まで来ていた。それで三人で中に入ろうとした時、何気なく今通って来た廊下をチラリと見た。すると…遠くに人が横切っていったのが見える。あの先にあるのは、サロンだろうか?そう思って精一杯目を凝らす。そして見えてきたのは…えっ、あの人は!
「どうした?アリシア。入らないのかい」
不思議そうにフィリップが聞いてきたけど、私の目はそこに釘付けになっている。そこにはルシードの侍従のマーティンが、窓から何かをじっと見ていた。私の視線になど全く気付かずにただ一点を凝視して…
それで私は、何をそれほど見ているのかと興味が湧く。マーティンに気付かれないように身を低くしながら移動して、生徒会室の直ぐ側の階段の脇の窓から下を見下ろす。すると…
「あれっ、あれは…ルーシー?」
生徒玄関前でルーシーがバーモント家の馬車に乗り込もうとしている。マーティンは何故、それほどルーシーを見ているんだろう?
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