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これ以上の幸せ
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「え?ハネムーン?」
イチャイチャのクリスマスが過ぎ、年末の仕事納めの日がやって来た。
オフィスの大掃除をしながら、透がふいに大河に切り出す。
「そっ!ハネムーン。俺と亜由美が先に行かせてもらっちゃって、大河とアリシアはまだだろ?年明けにでも行って来なよ」
すると洋平や吾郎も頷く。
「そうだぞ、大河。女の子にとって、新婚旅行は一生の思い出だ。ちゃんと連れて行ってやれ」
でも…と大河は言葉を濁す。
「俺が何日もオフィスを留守にするのは気が引けるって、瞳子が…」
「バカだな。お前が誰よりも優先しなきゃいけないのは瞳子ちゃんだぞ?」
「そうだよ。それに俺達、そんなに頼りない?大河がいなくたって、全然問題ないよ」
吾郎と透のあとに、洋平も口を開いた。
「大河。お前が俺達のプライベートを大事にしてくれるように、俺達もお前のプライベートを大事にしたい。お前だけじゃない。瞳子ちゃんのもな」
うんうん!と透も頷く。
「それに大河。アリシアを幸せにするって誓ったんだろ?アリシアを幸せに出来るのは、大河だけだよ」
「透…」
大河はうつむいてじっと考えてから顔を上げる。
「分かった。瞳子に話してみる」
「ああ、それがいい」
3人は笑顔で大河に頷いてみせた。
◇
「海外旅行、ですか?」
その日の夕食で、早速大河は瞳子に話をしてみた。
「ああ。俺達が新婚旅行に行ってないのを、みんな気にしてくれてて。年明けにでも行って来いって」
「でも海外旅行ともなると、2、3日じゃ済みませんよね?大河さんをそんなに長く不在にさせるなんて…」
「俺がいなくても、あいつらなら大丈夫だ。何も心配ない」
「そうですけど…。私はそこまでして、海外旅行にこだわるつもりはないです。また2泊3日で神戸に行けたら、それで充分です」
瞳子はきっぱりと言い切る。
どうやら本当に海外旅行に憧れはないようだ。
「神戸はまた必ず行こう。でもそれとは別に、俺は瞳子と海外旅行に行きたいんだ。ゆっくり時間をかけて、二人で一緒に色んな所に行って、色んなものを見て、色んな気持ちを共有したい。ダメか?」
控えめに瞳子の顔を覗き込むと、瞳子は、うーん…と視線を外した。
「例えばどんな所?」
「瞳子が行きたい所ならどこへでも」
「んー、特に思いつかないです」
「じゃあ、フランスはどうだ?」
「フランス?」
「ああ。仕事で行った時、綺麗な景色を瞳子に見せたいって思ったんだ。あの時はまだ俺達、つき合ってなかったけど」
「私もあの時、大河さんに会いたくて堪らなかったの。今頃何してるのかな?って、毎日大河さんのこと考えてたんです」
瞳子…と、大河は言葉に詰まる。
「そんなに可愛いこと言われたら、今すぐ瞳子をフランスに連れて行きたくなる。よし、飛行機のチケット取ろう!」
いやいやいや!と、瞳子は必死に手を振って止める。
「大河さん、落ち着いて。ご旅行は計画的にって言うでしょ?」
「それ、何か違うぞ」
「そう?まあ、いいから。とにかくゆっくり考えてからにしましょ。ほら、泉さんももうすぐ出産でしょ?そしたら洋平さん、しばらくは家庭優先になるから、お二人と赤ちゃんの生活が落ち着いてから考えましょう」
「あー、確かにそうだな。分かった。日程は改めて考えるけど、フランスに行くのは決まりな?」
すると瞳子は嬉しそうに、うん!と頷く。
「瞳子、可愛い…。今すぐ連れて行きたくなる」
「もう、大河さん。1分前に戻って!」
「あはは!振り出しに戻ったな」
「ほんとに。無限ループですよ?」
「仕方ないだろ?瞳子が可愛い過ぎるんだから」
「また私のせいなのー?」
美味しい瞳子の手料理を味わいながら、大河は楽しそうに、あはは!と笑っていた。
◇
「瞳子、おいで」
寝る前にベッドでパソコンをいじっていた大河は、寝室に入って来た瞳子に声をかける。
サイドテーブルにパソコンを置くと、瞳子がベッドに入るなり、大河は両腕を伸ばして瞳子を抱き寄せた。
瞳子は甘えるように大河に身を寄せて横たわる。
「電気消すよ?」
「うん」
暗くなった部屋で、ほのかな月明かりの中、大河は優しく瞳子の髪をなでながら幸せな気持ちに浸っていた。
(今、こうやって瞳子が俺の腕の中にいてくれることが、何より嬉しい)
出逢った頃の瞳子は、男性に触れられることに怯えていた。
どんなに好きになった相手でも、身体に触れられると恐怖が蘇ってしまう。
私は一生、普通の恋愛も結婚も出来ない、と嘆いていた瞳子。
(そんな瞳子が、俺と結婚してくれて、今もこうやって身を寄せてくれているなんて。俺は瞳子をちゃんと幸せに出来ているのだろうか。過去の恐怖は、全て消し去ることが出来たのか?瞳子は俺と一緒にいることに、無理したりしていないだろうか)
ふとそんな不安が頭をよぎる。
その時、大河さん、と瞳子が視線を上げた。
「ん?どうした?」
「うん、あのね。夕食の時大河さんが、新婚旅行の話をしてくれたでしょう?」
「ああ。それがどうかした?」
「あの時は私、別にいいのに、なんて思ってたけど、今になってすごく嬉しくなってきたの。私、大河さんと新婚旅行に行きたい」
「瞳子…」
「私ね、普通の恋愛は諦めて生きてきたの。でも大河さんと出逢えて、心から愛してもらって、今も優しく抱きしめてもらってる。すごくすごく幸せで…。大河さんと結婚出来ただけで、もう夢のように幸せなの。だからそれ以上のことなんて、何も望んでなかった。さっき大河さんに、一緒にフランスに行こうって言われて、そんなことまでしてくれなくてもって思ったけど、だんだん行きたくて堪らなくなって…。行ってもいいのかな?私。これ以上の幸せを望んでも、バチが当たったりしない?」
瞳子…と、大河は目を潤ませる。
「何を言っている?俺は瞳子を世界一幸せにすると誓ったんだ。まだまだこんなもんじゃない。もっともっと幸せにしてみせる。瞳子は誰よりも綺麗な心の持ち主なんだ。バチが当たるどころか、神様だって瞳子の幸せを願わずにはいられないよ、きっと」
「ええ?神様が?」
「ああ。瞳子の息を呑むほどの美しさを前にすると思うんだ。瞳子は神様の祝福を受けて、この世に生まれてきたんだと思う」
「そ、それは大きな勘違いですよ?そんなこと言ったら、それこそバチが当たっちゃう」
「バチ当たりなのは俺の方だ。こんなにも清らかで綺麗な瞳子を、独り占めしてるんだからな」
「大河さんにバチなんて当たりません。私を救ってくれた、世界で一番素敵な人なんだから」
「いーや、絶対に神様に怒られる。お前ごときが瞳子に触れるな!とかって」
「まさか!私には大河さんしかいないのに。神様、お願いだから大河さんを私から奪わないで」
両手を組んで懇願する瞳子を、大河はギュッと抱きしめる。
「たとえ神に背いてでも、俺は瞳子を決して手放したりしない」
「大河さん…」
二人でしばらく抱き合ってから、ゆっくりと身体を離した。
互いに目が合うと、真顔でぱちぱちと瞬きする。
「あの…、私達なんだか盛り上がり過ぎてません?」
「うん…。俺も今そう思った」
「ですよね。恥ずかしくなってきちゃった」
「そうだな。誰かに聞かれたら、バカップルか?って笑われそうだ」
「あはは!確かに。でも大河さんと一緒なら、笑われてもいいの」
「瞳子は違うよ。極上の女性なんだから」
「大河さんだって、私のたった一人の愛する人です。って、またさっきのやり取りに戻っちゃった」
「ははっ!バカップルのループだな。名付けて『バカップループ』」
バカップループ?!と、瞳子は目を丸くしてから笑い出す。
「おかしい!大河さん、座布団1枚!」
「えー、1枚だけ?」
「じゃあ、おまけで10枚!」
「ずいぶん弾んだな」
「あはは!」
無邪気に笑う瞳子を愛おしそうに見つめてから、大河は瞳子を抱き寄せて優しく口づけた。
うっとりと目を閉じて身体を預けてくれる瞳子に、大河はもう何も考えられなくなる。
二人は言葉もなく、湧き上がる愛しさのまま互いを求め合った。
イチャイチャのクリスマスが過ぎ、年末の仕事納めの日がやって来た。
オフィスの大掃除をしながら、透がふいに大河に切り出す。
「そっ!ハネムーン。俺と亜由美が先に行かせてもらっちゃって、大河とアリシアはまだだろ?年明けにでも行って来なよ」
すると洋平や吾郎も頷く。
「そうだぞ、大河。女の子にとって、新婚旅行は一生の思い出だ。ちゃんと連れて行ってやれ」
でも…と大河は言葉を濁す。
「俺が何日もオフィスを留守にするのは気が引けるって、瞳子が…」
「バカだな。お前が誰よりも優先しなきゃいけないのは瞳子ちゃんだぞ?」
「そうだよ。それに俺達、そんなに頼りない?大河がいなくたって、全然問題ないよ」
吾郎と透のあとに、洋平も口を開いた。
「大河。お前が俺達のプライベートを大事にしてくれるように、俺達もお前のプライベートを大事にしたい。お前だけじゃない。瞳子ちゃんのもな」
うんうん!と透も頷く。
「それに大河。アリシアを幸せにするって誓ったんだろ?アリシアを幸せに出来るのは、大河だけだよ」
「透…」
大河はうつむいてじっと考えてから顔を上げる。
「分かった。瞳子に話してみる」
「ああ、それがいい」
3人は笑顔で大河に頷いてみせた。
◇
「海外旅行、ですか?」
その日の夕食で、早速大河は瞳子に話をしてみた。
「ああ。俺達が新婚旅行に行ってないのを、みんな気にしてくれてて。年明けにでも行って来いって」
「でも海外旅行ともなると、2、3日じゃ済みませんよね?大河さんをそんなに長く不在にさせるなんて…」
「俺がいなくても、あいつらなら大丈夫だ。何も心配ない」
「そうですけど…。私はそこまでして、海外旅行にこだわるつもりはないです。また2泊3日で神戸に行けたら、それで充分です」
瞳子はきっぱりと言い切る。
どうやら本当に海外旅行に憧れはないようだ。
「神戸はまた必ず行こう。でもそれとは別に、俺は瞳子と海外旅行に行きたいんだ。ゆっくり時間をかけて、二人で一緒に色んな所に行って、色んなものを見て、色んな気持ちを共有したい。ダメか?」
控えめに瞳子の顔を覗き込むと、瞳子は、うーん…と視線を外した。
「例えばどんな所?」
「瞳子が行きたい所ならどこへでも」
「んー、特に思いつかないです」
「じゃあ、フランスはどうだ?」
「フランス?」
「ああ。仕事で行った時、綺麗な景色を瞳子に見せたいって思ったんだ。あの時はまだ俺達、つき合ってなかったけど」
「私もあの時、大河さんに会いたくて堪らなかったの。今頃何してるのかな?って、毎日大河さんのこと考えてたんです」
瞳子…と、大河は言葉に詰まる。
「そんなに可愛いこと言われたら、今すぐ瞳子をフランスに連れて行きたくなる。よし、飛行機のチケット取ろう!」
いやいやいや!と、瞳子は必死に手を振って止める。
「大河さん、落ち着いて。ご旅行は計画的にって言うでしょ?」
「それ、何か違うぞ」
「そう?まあ、いいから。とにかくゆっくり考えてからにしましょ。ほら、泉さんももうすぐ出産でしょ?そしたら洋平さん、しばらくは家庭優先になるから、お二人と赤ちゃんの生活が落ち着いてから考えましょう」
「あー、確かにそうだな。分かった。日程は改めて考えるけど、フランスに行くのは決まりな?」
すると瞳子は嬉しそうに、うん!と頷く。
「瞳子、可愛い…。今すぐ連れて行きたくなる」
「もう、大河さん。1分前に戻って!」
「あはは!振り出しに戻ったな」
「ほんとに。無限ループですよ?」
「仕方ないだろ?瞳子が可愛い過ぎるんだから」
「また私のせいなのー?」
美味しい瞳子の手料理を味わいながら、大河は楽しそうに、あはは!と笑っていた。
◇
「瞳子、おいで」
寝る前にベッドでパソコンをいじっていた大河は、寝室に入って来た瞳子に声をかける。
サイドテーブルにパソコンを置くと、瞳子がベッドに入るなり、大河は両腕を伸ばして瞳子を抱き寄せた。
瞳子は甘えるように大河に身を寄せて横たわる。
「電気消すよ?」
「うん」
暗くなった部屋で、ほのかな月明かりの中、大河は優しく瞳子の髪をなでながら幸せな気持ちに浸っていた。
(今、こうやって瞳子が俺の腕の中にいてくれることが、何より嬉しい)
出逢った頃の瞳子は、男性に触れられることに怯えていた。
どんなに好きになった相手でも、身体に触れられると恐怖が蘇ってしまう。
私は一生、普通の恋愛も結婚も出来ない、と嘆いていた瞳子。
(そんな瞳子が、俺と結婚してくれて、今もこうやって身を寄せてくれているなんて。俺は瞳子をちゃんと幸せに出来ているのだろうか。過去の恐怖は、全て消し去ることが出来たのか?瞳子は俺と一緒にいることに、無理したりしていないだろうか)
ふとそんな不安が頭をよぎる。
その時、大河さん、と瞳子が視線を上げた。
「ん?どうした?」
「うん、あのね。夕食の時大河さんが、新婚旅行の話をしてくれたでしょう?」
「ああ。それがどうかした?」
「あの時は私、別にいいのに、なんて思ってたけど、今になってすごく嬉しくなってきたの。私、大河さんと新婚旅行に行きたい」
「瞳子…」
「私ね、普通の恋愛は諦めて生きてきたの。でも大河さんと出逢えて、心から愛してもらって、今も優しく抱きしめてもらってる。すごくすごく幸せで…。大河さんと結婚出来ただけで、もう夢のように幸せなの。だからそれ以上のことなんて、何も望んでなかった。さっき大河さんに、一緒にフランスに行こうって言われて、そんなことまでしてくれなくてもって思ったけど、だんだん行きたくて堪らなくなって…。行ってもいいのかな?私。これ以上の幸せを望んでも、バチが当たったりしない?」
瞳子…と、大河は目を潤ませる。
「何を言っている?俺は瞳子を世界一幸せにすると誓ったんだ。まだまだこんなもんじゃない。もっともっと幸せにしてみせる。瞳子は誰よりも綺麗な心の持ち主なんだ。バチが当たるどころか、神様だって瞳子の幸せを願わずにはいられないよ、きっと」
「ええ?神様が?」
「ああ。瞳子の息を呑むほどの美しさを前にすると思うんだ。瞳子は神様の祝福を受けて、この世に生まれてきたんだと思う」
「そ、それは大きな勘違いですよ?そんなこと言ったら、それこそバチが当たっちゃう」
「バチ当たりなのは俺の方だ。こんなにも清らかで綺麗な瞳子を、独り占めしてるんだからな」
「大河さんにバチなんて当たりません。私を救ってくれた、世界で一番素敵な人なんだから」
「いーや、絶対に神様に怒られる。お前ごときが瞳子に触れるな!とかって」
「まさか!私には大河さんしかいないのに。神様、お願いだから大河さんを私から奪わないで」
両手を組んで懇願する瞳子を、大河はギュッと抱きしめる。
「たとえ神に背いてでも、俺は瞳子を決して手放したりしない」
「大河さん…」
二人でしばらく抱き合ってから、ゆっくりと身体を離した。
互いに目が合うと、真顔でぱちぱちと瞬きする。
「あの…、私達なんだか盛り上がり過ぎてません?」
「うん…。俺も今そう思った」
「ですよね。恥ずかしくなってきちゃった」
「そうだな。誰かに聞かれたら、バカップルか?って笑われそうだ」
「あはは!確かに。でも大河さんと一緒なら、笑われてもいいの」
「瞳子は違うよ。極上の女性なんだから」
「大河さんだって、私のたった一人の愛する人です。って、またさっきのやり取りに戻っちゃった」
「ははっ!バカップルのループだな。名付けて『バカップループ』」
バカップループ?!と、瞳子は目を丸くしてから笑い出す。
「おかしい!大河さん、座布団1枚!」
「えー、1枚だけ?」
「じゃあ、おまけで10枚!」
「ずいぶん弾んだな」
「あはは!」
無邪気に笑う瞳子を愛おしそうに見つめてから、大河は瞳子を抱き寄せて優しく口づけた。
うっとりと目を閉じて身体を預けてくれる瞳子に、大河はもう何も考えられなくなる。
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