極上の彼女と最愛の彼 Vol.3

葉月 まい

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ファイナルアンサー

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そんな週末を何度か過ごしたある日。安藤から興奮気味に電話がかかってきた。

「都筑さん!聞いてください。出たんです!すごいのが」

「え?何、ゴキブリ?」

「違いますよ!お部屋です」

「部屋が出た?って、どういうこと?」

「キャンセルです!あのマンションを購入されたお客様が、急に海外赴任が決まって、泣く泣くキャンセルされたんです。そのお部屋、南向きの1階で庭付きなんです」

へえー!と吾郎は興味を惹かれる。

「庭付きってことは、トオルも遊べる?」

「はい!広さもトオルちゃんにはちょうどいいかも。思い切り走りたい時は、ドッグランもありますしね」

「そうか!わざわざ車で遠くに行かなくても、敷地内にドッグランがあるもんね」

「そうなんです!都筑さん、いかがですか?一度内覧してみません?」

「ああ、行きたい。トオルを連れて行ってもいいかな?」

「もちろんです。私、ご案内しますね」

そして早速次の週末に、吾郎はトオルを連れてマンションを訪れた。



「うわ、もう完全に出来上がってるね」

敷地内にピカピカの街が誕生しているようで、吾郎は目を奪われる。

「そうなんです。ご入居も間もなく始まりますよ」

そう言って安藤は、吾郎とトオルをキャンセル住戸に案内する。

そこは透達の新居の隣の棟で、日当たりも抜群だった。

門扉を開けると、ポーチの片隅に小さな水道と洗い場がある。

「ここでトオルちゃんの足を洗えますよ」

「へえ!それはいいな」

「はい。1階のエントランスの裏側にも、洗い場があります。この棟はペットと一緒に住むことを考えてデザインされたお部屋なんです」

玄関を開けると、ウォークインシューズクローゼットには、リードを掛けるフックやキャリーバッグを置く棚もあった。

「さあ、ここがリビングですよー」

安藤がドアを開けると、明るく広い部屋が続いていた。

カウンターキッチンは、トオルが入ってしまわないよう、ゲートがついている。

そしてリビングの向こうには芝生の庭が広がっていた。

「おおー、気持ちいいな。トオル、早速遊ぶか」

「アン!」

吾郎がトオルを芝生に下ろすと、トオルは寝転がり、コロンコロンと身体を揺らして芝生の感触を楽しんでいる。

「可愛い!トオルちゃん。気に入ってくれたかな?」

「アンアン!」

「ふふっ、良かった」

吾郎はウッドデッキに安藤と並んで座り、トオルの楽しそうな様子を見守る。

「都筑さん。私、少し都筑さんに連絡してない時期があったじゃないですか」

「ああ、うん」

初めてドッグランに遊びに行った時の、気まずい雰囲気を思い出す。

「その間、どうしてだか分からないけど、とにかく寂しくて仕方なかったんです」

「トオルに会えないから?」

「それはまあ、そうですけど、都筑さんともお話したくて。でもなんて言って連絡を取ればいいのか、きっかけもなくて。だからミュージアムに行ったのは、また都筑さんに会えたらいいなって邪念もあったんです。ごめんなさい」

そう言って安藤は、ペコリと頭を下げた。

「いや、俺も会えて嬉しかった。来てくれてありがとう」

吾郎は素直な気持ちを口にする。
安藤も嬉しそうににっこり笑った。



「ではでは、買っちゃいますか?」

申し込み用紙を前に、安藤は真剣に吾郎の顔を覗き込む。

「買っちゃいます!」

吾郎はきっぱりと頷いた。

「ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー!」

するとトオルも、「アンアーン!」と叫ぶ。

「あはは!トオルちゃんも気に入ったのね。それではお申し込み、承ります!」

吾郎が申し込み用紙に記入すると、安藤はじっくりと確認してから顔を上げる。

「はい!これで本日のお手続きは終了です。おめでとうございます!」

「ありがとう!やったな、トオル。ここに住めるぞ」

「ふふっ、私も嬉しいです。ここならトオルちゃんも、のびのび暮らしてくれそうですもん」

安藤はトオルを抱き上げてなでると、吾郎に話し出す。

「都筑さん。お引っ越しの日は私もお手伝いさせてください」

「え?そんな、いいよ。なんだか申し訳ないし」

「ううん。トオルちゃんがいて、何かと大変だと思うので。それに私もトオルちゃんに会いたいし」

そういうことなら、と、吾郎は申し出をありがたく受け取ることにした。



「えー?なんだよー。吾郎の方が先に入居するのかよー」

マンションは新築で規模も大きい為、棟ごとに引っ越しスケジュールがある程度決められていた。

透と亜由美よりも、吾郎の方が先に引っ越すことが分かり、透は口を尖らせる。

「ははは!そういうことになるな、透くん。引っ越した際は、引っ越し蕎麦を持ってうちに挨拶に来たまえ。あ、それと。うちのトオルの方が先住民になるんだからな」

「はいー?なんだよそれ。申し込んだのは俺達が先だぞ?それにペットに俺の名前つけるとか、何考えてるの?」

「まあまあ、いいってことよ」

二人はオフィスで賑やかに言い合う。

「それに亜由美まで、トオルちゃんに会いたい!とか言い出すし」

「お、いいぜ。亜由美ちゃんもうちのトオルにメロメロになっちゃうだろうなー」

「なんだとー?」

大河と洋平は、お手上げとばかりに二人のやり取りに苦笑いする。

「ケンカしてるのに近所に住むって、仲がいいのか悪いのか…」

「ほんとだよ。でも、ま、楽しそうでいいよな」

「ああ。俺達も遊びに行かせてもらおう」

みんなでパーティールームに集まり、賑やかに楽しむ様子が目に浮かび、大河も洋平も思わず笑みを浮かべていた。
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