魔法のいらないシンデレラ 3

葉月 まい

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瑠璃の職場

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すみれを預けた後、オフィス棟の3階に向かいながら、瑠璃はそっとお腹に手を当てる。

(ここ数週間で、一気に大きくなった気がする。すみれの時よりも早いなあ。二人目だからかしら?)

そんな事を考えつつ、愛おしそうにお腹をなでる。

出産予定日は8月の下旬。

体調に気を付けながら、瑠璃は時短で仕事を続けていた。

「おはようございます」

企画広報課のドアを開けると、皆が一斉に瑠璃を見て笑顔で応えてくれる。

「おっはよー!瑠璃ちゃん」
「今日も元気かーい?」

賑やかで優しいメンバーに囲まれ、瑠璃はここに来るといつも明るい気持ちになる。

「瑠璃ちゃん、おはよう!」
「おはよう、奈々ちゃん」

隣の席の奈々は、2つ年下だが同期入社で、もはや瑠璃の大親友。

一緒に組んで仕事をしたり、時にはおしゃべりに花を咲かせたり…

瑠璃が時短勤務の為、奈々の仕事の負担が大きくなってしまっているが、そんな事は全く気にも留めていない様子で、逆に瑠璃を気遣ってくれる。

今や瑠璃の生活には、ここでの時間が欠かせないものになっていた。

「おはよう、瑠璃ちゃん」
「青木課長、おはようございます。いつも遅い出勤で申し訳ありません」

瑠璃は、デスクに近付いてきた課長に頭を下げる。

「全然気にすることないよ!むしろ妊娠中も働いてくれて、とても助かってる。だけど、くれぐれも無理はしないように!奈々ちゃん、しっかり見張っててね」

青木の言葉に、奈々は、はい!と頷く。

そして束の間、二人は微笑みながら見つめ合った。

(うわー、ラブラブ!)

見ている瑠璃の方が照れくさくなって、思わず視線を落とす。

「そう言えば、瑠璃ちゃん。明後日からいよいよ京都だね」
「あ、はい。ですので次の出勤は、1週間後になります。よろしくお願いします」

いつもの調子に戻って青木とそう話していると、加藤や山下ら他のメンバーも話に加わる。

「そっかー。瑠璃ちゃん、清河きよかわさんによろしくね!」
「またお会いしたいなー」
「うん、あの花火大会が懐かしいよな」

皆でしみじみと頷き合う。

京都の老舗ガラス工房を営む清河は、ホテル フォルトゥーナ東京に作品を卸してくれている他、かつては花火大会の日に上京して、ホテルの屋台で出店してくれていた。

だが、そんな清河も、今年で85歳。
気軽にこちらから上京をお願い出来なくなっていた。

それでも、ホテルのショッピングアーケードに並べる作品は作り続けてくれており、瑠璃はそんな清河に直接お礼を言おうと、総支配人の夫、一生いっせいやすみれと共に会いに行くことにした。

一生は初め、妊娠中の瑠璃の身体を心配して、自分だけが行こうか?と言っていたが、瑠璃は、体調も安定しているし、今のうちにすみれにも家族旅行をさせてあげたいから、と三人で京都に行きたいとお願いしたのだった。

2泊3日で京都を訪れ、清河の作品を直接選ばせてもらってホテルに配送する他、瑠璃の祖母の料亭にも顔を出す予定だ。

「でも、良かったよな。清河さん、今はお弟子さんがいるんだよな?」
「そうだった。若い男の子、二人だっけ?」

清河には子どもがおらず、跡継ぎも弟子もいなかったのだが、作品が広く知られるようになると、ぜひその技術を教わりたいと、今は住み込みで修行している弟子が二人いるそう。

今回の訪問は、その二人への挨拶も兼ねている。

「どんな人達なんだろうな?」 
「瑠璃ちゃん、良かったら写真撮ってきてよ」
「あ、そしたら俺達も今、写真撮ろうぜ!」

山下の提案で、皆は集まって集合写真を撮る。

大きめの紙にプリントアウトすると、余白にそれぞれメッセージを寄せ書きした。

「瑠璃ちゃん、清河さんに渡してね」
「はい!きっと喜んで下さると思います」

瑠璃は、笑顔で大事そうに受け取った。
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