アンコール マリアージュ

葉月 まい

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私を助けてくれますか?!

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 (ん?この手紙…)

 仕事を終えて寮に戻った真は、『302 齋藤』と書かれたポストを開けて封筒を取り出し、手を止める。

 宛名を確認すると、齋藤 真菜様とあった。

 (今度は逆に間違えられたか…)

 入居の際、管理人から、ポストに記名するかどうかを尋ねられた。

 女性のひとり暮らしも多く、防犯の観点から、ポストの記名をどうするか、本人に確認しているのだという。

 真は、ここにはそう長くいないから記名しなくていいと1度は断ったのだが、真菜との1件があり、やはり記名してくれと頼んだのだった。

 真菜のポストは相変わらず記名されていない為、今回は逆のバターンで間違われたのだろう。

 そう思って、隣の202のポストに入れ直そうとして、ふと気付く。

 (これ、切手と消印がない…)

 さらによく見ると、住所は合っているが部屋番号が書かれていない。

 (部屋番号が分からず、ここまで届けに来たのか)

 裏返してみても、差出人の名前はどこにもなかった。

 (本人に部屋番号を確認すればいいものを、わざわざここまで来て、ポストの名前を見て入れた…)

 妙な胸騒ぎがして、真はじっと封筒を見つめる。

 無地の事務的な封筒に、パソコンで印刷された文字…

 DMでもなければ、大事な封書でもなさそうだが、かと言って友人からのものにしては味気ない。

 そもそも友人なら、部屋番号を本人に確認するだろう。

 真は、親指をすっと封筒の上に滑らせてみた。
 そして一気に顔色を変える。

 封筒を手にしたまま急いで部屋に帰ると、鞄をそこらに放り出し、ダイニングの椅子に座った。

 テーブルに置いた封筒に手をかけ、一瞬ためらう。

 (もし俺の見当違いなら…。その時は彼女に謝るまでだ)

 小さく頷いてから、ゆっくりと封を開けると、中に手を入れずに封筒を傾けた。

 微かな音を立てて、中身がテーブルに落ちる。

 (…やっぱりか)

 大きくため息をつきながら、真は天を仰ぐ。

 テーブルの上には、1枚のカミソリの刃が落ちていた。

*****

 「おはようございます!」

 オフィスにいたスタッフ全員が立ち上がり、真に挨拶する。

 「おはようございます。今日は様子を見させてもらうだけなので、気にせず普段通りの仕事をして下さい」
 「はい!」

 そう言ってそれぞれ仕事に戻るが、皆どこかソワソワした様子だ。

 それはそうだろう。
 いきなり会社の役員が来て、普段通りの仕事をしろと言われても、やり辛いだけだ。

 それが分かっていても、真は今日どうしてもフェリシア 横浜に来たかった。

 目的は、真菜の様子を見るためだ。

 2日前の夜、真菜宛にカミソリの刃が届いた事は、本人には話していない。

 昨日、寮の管理人に防犯カメラの記録を見せてもらった。

 あの日、真が帰宅する時間から遡って見てみると、夜の7時頃に、帽子を被り焦げ茶色のスプリングコートを着た人物が、辺りをうかがいながらポストに封筒を入れる様子が写っていた。

 だが、エントランスの外の集合ポストは、防犯カメラでは遠目にしか捉えられておらず、顔はおろか、男なのか女なのかもよく分からない不鮮明なものだった。

 真菜に話して、心当たりを聞いてみようかとも考えたが、カミソリの刃を送られてショックを受けない人などいない。

 やはり本人には黙ったまま、しばらく様子を見てみようと考えたのだ。

 店長がどうぞと椅子を勧めてくれたが、いや結構と断って、壁際に立ったままオフィスの様子をじっと見守る。

 真菜は、どうやら新入社員らしい女の子にあれこれと説明しながら、デスクでパソコン作業をしていた。

 時折女の子と笑い合ったり、終始和やかに仕事をしている真菜を見て、きっと自分に不審な物を送られたとは考えもしていないのだろうと真は思った。

 (心当たりを聞いたところで、首を横に振られるだけだな)

 このままずっとオフィスの一角に立っていては、目障りなだけだろうと、真はオフィスを出た。

 サロンを抜け、式場に繋がるエントランスに入ると、ぐるっと建物を見渡す。

 (へえ、細部まで凝ったデザインだな。天井も高いし、壁の装飾も可愛らしい。明るい雰囲気も、ガーデンに良く合っている)

 前回は、慌ただしく模擬挙式の新郎役をやるはめになり、じっくり見て回る時間もなかった。

 今日は真菜の様子だけでなく、フェリシア 横浜をゆっくり見るという目的もあった。

 (他店と比べると、やはりここの強みはこのガーデンの解放感だな)

 綺麗に咲く花を見ながら、ガーデンに足を踏み入れた時だった。

 「真さん!」

 急に名前を呼ばれて、驚いて振り返る。

 真菜が分厚い書類を胸に抱えて、こちらに駆け寄って来るのが見えた。

 「お疲れ様です!珍しいですね、真さんがここにいらっしゃるなんて」
 「ああ。他店はひと通り見学したんだが、ここはまだゆっくり見たことがなかったからな」
 「そうですか。じゃあ、今日はどうぞじっくりご覧くださいね。あ、よろしければ、私がご案内しましょうか?」
 「え、そんな時間あるのか?仕事は?」
 「今日は、午後からしか接客の予定はないので。それにちょうど、私もガーデンを下見に来たんです。今度、ガーデンで人前式を挙げられるお客様が、ブーケセレモニーもご希望なので、列席者の椅子の配置を考えようと思って…」
 「ブーケセレモニー?何だ?それ」
 「あら、真さんもご存知ないんですね。じゃあ、ちょっとやってみませんか?」

 そう言って真菜が、簡単に内容を説明する。

 「実際にやってみましょ!まず、真さんはここから歩いて行って、列席のゲストからお花を受け取ります。はい、どうぞ」
 「あ、どうも」

 真菜が渡す真似をし、つられて真も受け取る真似をする。

 「全員から受け取ってくださいね。ほら、もっとにこやかに。おめでとう!お幸せにねー」
 「あ、はい。どうも」
 「全部受け取ったら、この階段を上がってください。ここが祭壇代わりになります。そして、私達スタッフが、素早くリボンでまとめてブーケにしますね。すると新婦が入場して来ます。はい、私が新婦役です!さあ、ブーケを差し出してプロポーズを」
 「え、ええ?今?」
 「そう、今です!」
 「あ、じゃあ、結婚してください」
 「ブッブー、30点」
 「はあ?」

 真は呆れたように眉を下げる。

 「一生に一度のプロポーズですよ?そんな低いテンションで、綺麗な花嫁からオッケーの返事を貰えますか?はい、やり直し!」
 「はあ、じゃあ…。君の人生を僕に預けてください、お願いします!」

 え…と真菜が真顔に戻る。

 「真さん、そういうタイプだったんですか?なんか意外…」
 「なんだよもう!どうでもいいだろ?どれが正解なんだよ」
 「確かに。正解なんてないですよね。愛がこもっていればそれで充分ですよね」
 「やれやれ…。実際はどういうのが多いんだ?」
 「そうですね、結構皆様長くお話されますよ。出会った時からずっと君の事が好きでした、から始まって、最初のデートでは~とか、エピソードを細かく話されたり…。反対に、片膝を付いてズバッとひと言、結婚してください!って勢いよくプロポーズされる方もいらっしゃったり」
 「へー、おもしろいな」
 「私は、毎回感動してしまいます。新婦様より号泣しちゃって、何度先輩に怒られたことか…」
 「ははっ!想像つく」

 真は思わず笑い出す。

 「お二人の幸せな瞬間に立ち会えるなんて、素敵な仕事ですよねー。どんな恋愛ドラマを見るよりも、感動して泣けてきます。私、毎回箱ティッシュ1個使い切りますよ」
 「お前、どんだけ?!」

 驚く真をよそに、ふふふと真菜は嬉しそうに笑っている。

 「さ!じゃあ、そろそろオフィスに戻りますね。真さんは?本社に戻られるんですか?」
 「ああ、そうだな」

 そして、あ!と思い出す。

 「ん?どうかしましたか?」

 真菜が首を傾げて振り返る。

 「あ、いや、その…。最近郵便物、どうだ?何か変わった事とか…」
 「ああ、郵便屋さんの入れ間違いですか?あれから宛名はしっかり確認してますよ。大丈夫です」
 「そ、そうか。そうじゃなくて、いや、いいんだ」

 ん?と、真菜は不思議そうな顔で真を見る。

 「とにかく!何かあったらいつでも知らせてくれ。じゃあ」

 そう言って片手を挙げると、真は足早に去って行った。

*****

 それからも、真は毎日帰宅するとポストを急いで確認する。

 (1度ここに来て部屋番号が分かったのなら、次からは郵便で届くはず…)

 そう思って気にしていたが、不審な封筒はそれ以降届かなかった。

 だが、間違えて202のポストに入れられる可能性もある。

 しかも宛名が真菜となっていれば、本人は疑わずに開けてしまうだろう。

 (どうしよう、もしそうなったら…。そうなる前に事情を話した方がいいのか。いや、このまま何も起こらないかもしれないし)

 頭の中で葛藤する。

 心配な事がもう1つあった。

 真は、新たに住む場所を決め、数日後にはここを出て行くのだ。

 (そうなったら、彼女に何かあっても気付いてやれない)

 管理人には、防犯カメラを見せてくれと頼んだ時に、嫌がらせの手紙が届いたから、今後も注意してくれと頼んでおいた。

 (俺がいなくなった後のことは、管理人に任せるしかないか…)

 ぼんやりと考えているうちに、随分長い間ポストの前に立ち尽くしていた。

 (やれやれ、これじゃあ俺が不審者だ)

 苦笑いして、エントランスに入ろうとした時だった。

 ふと顔を上げると、遠くから歩いてくる真菜の姿が見えた。

 (今帰りか。結構遅いな。ん?)

 人通りのない道を歩いている真菜の後ろに、人影が見えた気がした。

 (気のせいか…。いや、違う!)

 真菜の後ろに隠れるように、怪しい動きをする男が確かに真菜に近付いている。

 真は真菜のもとへと一気に走り出した。

 が、次の瞬間、男が後ろから真菜の口を塞ぎ、そのまま地面に押し倒した。

 んんー!と真菜が、声にならない悲鳴を上げる。

 「何をする!やめろ!」

 思わず叫んだが、男は構わず真菜のブラウスに手をかける。

 真菜は必死で身をよじるも、男が体重をかけていては敵うはずもない。

 (くそっ、間に合わない)

 走りながら、真は大声で叫んだ。

 「真菜、蹴り飛ばせ!」

 聞こえてきた声に反応するように、真菜がパンプスのヒールを蹴り上げた。

 うぐっとうめき声を上げて、男が自分のすねに手をやる。

 一瞬力が緩んだその隙に、真菜は男の手から逃れて立ち上がり、真の方へと走り出した。

 「真菜!」

 抱き留めると、真菜は真の胸に顔をうずめて泣き出した。

 「真さん…、こ、怖かった」

 「大丈夫、もう大丈夫だ」

 震える真菜を抱きしめながら、真は逃げて行く男を睨む。

 すぐにでも追いかけて捕まえたかったが、この状態の真菜を放り出す訳にはいかない。

 ひたすら真菜の頭をなで、大丈夫だと繰り返した。

*****

 「はい、ココア。飲めそうなら少しでも飲んだ方がいい」

 ひとまず真の部屋に帰り、そう言ってカップを渡すと、ソファに座った真菜はゆっくり口を付けた。

 「…美味しい」

 まだ顔は強張っているが、ようやく少し安心したらしい。

 真は真菜の隣に座る。

 どうやって話を切り出そうかと考えあぐねていた。

 (例の件も話した方がいいだろうか。いや、まずは彼女の話から聞いた方がいいか)

 そっと真菜の表情をうかがう。

 顔色もだいぶ良くなっていた。

 「気分はどうだ?少し落ち着いた?」
 「はい。あの、ありがとうございました」

 小さく頭を下げてくる真菜に、真は首を振る。

 「いや、俺は何もしていない」
 「いえ、真さんがいなかったら、私、今頃どうなっていたか…」

 そう言って、自分を抱きしめるように身を縮める。

 落ち着いたと思っていたが、また少し震え始めていた。

 「もう大丈夫だから」

 真が背中をさすりながら声をかけると、真菜は頷いて顔を上げた。

 その目には、今にも溢れ落ちそうに涙を溜めている。

 (話をするのはやめよう)

 そう思いながら、ただただ背中をさする。

*****

 どれくらいそうしていたのだろう。

 ふと時計を見ると、もう日付が変わる頃だった。

 「そろそろ休んだ方がいい。自分の部屋に帰れるか?」

 そう言うと、真菜はビクッと身体を震わせる。

 暗い部屋で1人で夜を過ごすのは、今は無理だろう。

 「じゃあ、君が寝付くまで、俺が外で見張ってるよ」
 「え?外でって?」
 「君の部屋の前で。誰も入って来ないように」
 「そんな、真さんを外で見張らせるなんて出来ません」
 「じゃあ、1人でも平気か?」
 「それは…」
 「だろ?いいから、さ、行こう」

 真は真菜の鞄を持つと、肩を抱きながら1つ下の階に下りた。

 鍵を開けて玄関のドアに手をかけた真菜が、心配そうに真を振り返る。

 「大丈夫だから、ほら、入りな」
 「でも…」

 そう言って少し考えてから、真菜は顔を上げる。

 「やっぱり中に入って下さい。ベランダから誰か入って来たらって思うと怖いし…」
 「ああ、確かに」

 真は頷いて、真菜に続いて部屋に上がった。

 「すみません、殺風景で。あ、今コーヒー淹れますね」
 「そんな事は気にするな。それにさっき飲んだばかりで、お腹もちゃぷちゃぷだ」

 すると真菜は、驚いたように真を見上げてから、ぷっと小さく吹き出した。

 「なんだ?」
 「だって、うふふ、真さんってば、お腹がちゃぷちゃぷって」
 「それが何だ?」
 「だって可笑しくって。真顔の強面でちゃぷちゃぷって、あはは!」

 堪え切れなくなったように笑い出す。

 「何が可笑しいんだ?いいから早く寝ろ!」
 「はーい。その前にお風呂入ってきます。あ、勝手に帰らないでね!ちゃんといてくださいね!」
 「分かったから、早く行け!」

 ふふっとまだ笑いが収まらない様子で、真菜はバスルームに入って行った。

 急いで入ったのか、ものの10分程で、真菜は髪をタオルで乾かしながら部屋に戻ってきた。

 「ちゃんと温まったのか?」
 「はい。でもやっぱり怖くて急いで出ちゃいました。目を閉じるのも怖くて、開けたままシャンプーしたら目に入っちゃって」

 そう言って目を擦る真菜に、おいおい大丈夫かと真は心配になる。

 「明日は仕事、行けそうか?休んだらどうだ?」
 「いえ!休むなんてとんでもない。絶対行きます」
 「でも、帰りは?ここまで誰かと一緒に帰れるか?」
 「いえ、それが、うちのスタッフみんな寮には住んでなくて。実家とか、恋人と同棲とかで」

 うーん…と真は腕を組む。

 「分かった。じゃあ俺が迎えに行く」
 「ええ?!そんな、だって真さん、本社勤務でしょ?」
 「ああ。でもここに帰って来るんだから、寄り道するだけの話だ」
 「そんな、でも、だって」
 「うるさいなあ。じゃあ1人で帰れるのか?それとも誰かの家に泊まらせてもらうか?恋人と同棲中の家に」
 「う、い、いや。それは…」
 「分かったらさっさと寝ろ!」

 床にあぐらをかいて睨んでくる真に、真菜は仕方なく頷いてベッドに入った。

*****

 次の日。
 営業時間を終えたフェリシア 横浜のオフィスに、前触れもなく現れた真を見て、皆は仰天する。

 「専務!どうされましたか?な、何かこちらに不手際でも?」
 「いや、違う。真菜は?」
 「真菜は?!真菜は!え、ま、真菜は今、サロンでお客様と打ち合わせ中でして…」
 「分かった。じゃあ、表で待っていると伝えてくれ」

 踵を返すと、はあ…と気の抜けた声で見送られた。

 オフィスを出て、停めてある車に戻りながら、ふと振り返る。

 通り沿いのサロンはガラス張りになっていて、日が暮れると明るいサロンの中の様子がよく見えた。

 真菜と新人の女の子が、にこやかに向かい側のカップルに話をしている。

 こちらからは背中しか見えないそのカップルに、真は妙な顔で見入った。

 (何だろう、どうってことない二人だ。なのになぜか気になる…)

 口元に手をやり、じっと考え込む。

 頷きながら、時折顔を上げて熱心に話を聞いている新郎とは対照的に、じっとうつむいたままの新婦。

 (上着も着たままじゃないか。ん?上着…)

 セミロングの髪に、焦げ茶色のスプリングコートを着た新婦の後ろ姿を食い入るように見ていた真は、やがて、あっ!と声を上げた。

 (あの人、あの防犯カメラに映っていた?)

 いや、まさか、という思いと、そうに違いないという思いが交錯する。

 (どういう事だ?俺はてっきり、真菜にカミソリを送った人物は、夕べの男だと思っていたのに。まさか、違うのか?)

 だとしたら、一体どうなっているのか。

 (あの新婦が真菜にカミソリを送ったとして、じゃあ夕べ襲いかかってきたあの男は無関係なのか?たまたま別の2つの事件が続いただけ?そんな事あるだろうか…)

 ひたすら考えを巡らせていると、やがて真菜達が立ち上がり、互いにお辞儀をした。

 そしてサロンの出口まで来ると、深々とお辞儀をしてカップルを見送る。

 真はとっさに顔を伏せ、自分のすぐ近くを通り過ぎて行くカップルをそっとうかがう。

 「いやー、良かったよな、亜希。色々希望も聞いてもらえたし、式が楽しみだな」

 明るい声の新郎の横で、やはりうつむいたまま無言の新婦。

 真はさり気なくその身長を目測する。

 (俺の胸辺り。160㎝くらいか)

 帰ったら、管理人にもう一度防犯カメラの映像を見せてもらおう。

 ポストの位置と比べて、大体の身長が分かるはずだ。

 そう思っていると、真さん!と真菜の声がした。

 制服のスーツの上にカーディガンを羽織り、鞄を肩にかけて駆け寄って来る。

 「すみません!お待たせしてしまって。打ち合わせが思いのほか長引いてしまったので、着替えないで来ちゃいました」
 「いや、大丈夫だ。じゃあ帰ろう」

 そう言って車のドアを開けると、真菜は目を丸くして固まった。

 「え、こ、これ、何ですか?」
 「車だ」
 「それくらい分かります!なんで車?しかも、こんな大きな黒塗りの…」
 「役員車だ。いいから早く乗れ」
 「ええー!役員車なんて、そんなの下々の私は乗れません!」
 「じゃあどうするんだ?車の横を走って帰るのか?」
 「そ、そんなの無理ですよ!私、チーターじゃないんで」
 「だったら早く乗れ!」
 「いやー!無理ですー!」

 周りの通行人が、振り返ってひそひそと囁き合っている。

 「ええいもう!誘拐犯に間違われるだろうが!乗れったら乗れ!」

 ドンと背中を押されて、あれーと真菜は車に倒れ込んだ。

 ぐいっと真菜を奥に押しやるように隣に座った真は、出してくれ、と運転手に告げる。

 「ええー?運転手さんまでいる!」
 「もう、いちいちうるさい!でっかい声出すな!」
 「真さんの方が声大きい…」

 真菜はブツブツ呟きながらも、ようやくじっと座る。

 真は、やれやれと肩で息を吐くと、膝にパソコンを置いてカタカタと打ち始めた。

 「ね、真さん」
 「でっかい声出すなと言っただろ」
 「でっかくないでしょ。ひそひそ話してるの」
 「まったく…何だ?」
 「真さん、毎日こんな車で出勤してるの?」
 「役員だから役員車を使わされる。それが何か?」
 「やっぱり偉い人なのね?真さんって」

 真は、はあ、と手を止めてため息をつく。

 「偉い人って何だ?」
 「だから、ざっくり偉い人」
 「つまり、俺の役職名を知らないって事か?」
 「えへへ、お察しの通りで。美佳ちゃんに冊子見せてもらったのに、忘れちゃいました。社長じゃないって事だけは分かります」
 「社長の下は、みんなざっくり偉い人って訳か」
 「そうなりますかねー?」
 「もういい。とにかく黙ってろ」

 ギロッと睨まれて、真菜は、はーいと首をすくめた。 

 やがて寮に到着すると、真は車を降りてから素早く通りの様子をうかがい、不審者がいないか確認した。

 真菜は明るい声で、ありがとうございましたー!と運転手に声をかけている。

 が、夕べ襲われた場所にちらっと目をやると、急に顔を強張らせた。

 真はそっと真菜の背中に手を添える。

 「ほら、行くぞ」
 「あ、はい」

 二人並んでポストの前に立つと、中から郵便物を取り出す。

 (特に不審な物はないか…)

 自分宛の手紙を確認してから、隣の真菜の手元を覗く。

 真菜の手にした手紙も、特に怪しい物はなさそうだ。

 安心した真は、ふとエントランスの脇に置かれた観葉植物に目をやった。

 頭の中に、防犯カメラの映像が蘇る。

 (ポストに手紙を入れていたあの人物、確かこの観葉植物と同じ背の高さだったな…)

 目を閉じて、映像を思い出す。

 間違いない。確かにこの木と並んだ時、同じ高さだった。

 今度は、封筒を見ている真菜に目を移す。

 観葉植物よりは、少し真菜の方が背が高い。

 「お前身長いくつだ?」
 「え?165cmですけど…」

 顔を上げて答える真菜の前に、ぴたっと近付いて立ってみる。

 (さっきの新婦は、確か俺の胸の辺りだった。真菜よりは、やはり少し背が低い。という事は…)

 あの手紙をこのポストに入れたのは、おそらくさっきの新婦。

 だが、一体なぜ?そして夕べの男は?

 じっと考え込んでいると、胸の前でくぐもった声がした。

 「あのー、真さん。もの凄い至近距離で、私の前に立ちはだかっているのはなぜ?」
 「ん?ああ、すまん。さ、行くぞ」

 もう一度周囲に目を走らせてから、真は真菜とエントランスに入った。

 「じゃあ、ここで」
 「はい、ありがとうございました」

 202号室の前まで真菜を送り届けると、真は自分の部屋へと帰ろうとした。

 だが、真菜は玄関の前で立ちすくんだままだ。

 よく見ると、握り締めた両手が、微かに震えていた。

 「…大丈夫か?」

 そっと声をかけると、真菜が身体をびくっとさせる。

 「あ、あの…。やっぱり怖くて。もし誰かが暗い部屋に潜んでいたらって思うと…」

 そう言うとさらに怖くなったのか、ガタガタと震え出す。

 真は思わず、真菜の身体を抱き締めた。

 「分かった。俺も一緒に入るから、大丈夫だ」

 すると真菜は、心底ホッとしたように頷いた。

*****

 真菜の部屋のローテーブルにパソコンを広げて仕事をしていた真は、漂ってきた美味しそうな匂いに、思わず顔を上げる。

 部屋着に着替えた真菜が、キッチンで料理をしていた。 

 さっきまであんなに怖がっていたのが嘘のように、楽しそうに鼻歌を歌っている。

 (やれやれ、まるで別人だな)

 苦笑いするが、怖がっていたのは本当だ。

 (昨日の今日だもんな、無理もない。それに、あの道はもう、怖くて歩けないんじゃないか。さっきもあの場所を見て、怖がっていたし)

 テーブルの上で両手を組み、じっと考え込んでいると、真菜がいきなり視界に入って来た。

 目の前に大きなお皿を差し出す。

 「ジャジャーン!お待たせしました。唐揚げの完成でーす」

 そう言ってテーブルにお皿を置くと、味噌汁やご飯、サラダも次々と並べる。

 「さ、早く食べましょ!」
 「あ、ああ」

 促されるまま、真は唐揚げに箸を付ける。

 「うまっ!なんだこれ?」
 「え、ただの唐揚げですけど。そんなに美味しいですか?」
 「ああ。食べた事ない味だ」

 ほんとに?と、真菜は仰け反る。

 「あー、そっか。真さん、鶏肉はいつも、チキンソテーのなんちゃらかんちゃらとかを食べてるんでしょ?こんな庶民の、The 唐揚げ!は、お目にかかった事ないのね?って、聞いてます?」

 真菜の問いには答えず、真はパクパクと唐揚げを頬張る。

 「そんな唐揚げばっかり…。ちゃんと三角食べしてください」
 「何だ?三角食べって」
 「子どもの頃、言われませんでした?おかずを順番に食べなさいって。あ、もしや真さんの場合は、種類が多くて六角食べとか?あー!唐揚げなくなっちゃう」

 真菜は慌てて自分の取り皿に、かろうじて3つ唐揚げを確保した。

 「ふう、セーフ」

 あっという間に残りの唐揚げも、真が全て平らげる。

 「あー、うまかった。どうやって作ったんだ?これ」
 「ええ?普通ですよ。醤油とみりん、にんにくと生姜にお肉を漬け込んで、片栗粉をまぶして揚げただけです。真さん、定食屋さんとかにも行った事ないんですか?」
 「ああ。高校まで実家暮らしで、そのあとアメリカの大学と院に行って、そのまま会社の海外事業部でハワイとかフランスに行ってたから」

 へえー、と真菜は頷く。

 「じゃあ、日本は久しぶりなんですね」
 「ああ。ちょっとコンビニに入ったら、もう、もの凄くって驚いた」
 「あはは!もの凄かったですか?」
 「そりゃもう。日本って凄いな」

 コンビニで目を輝かせている真を想像して、真菜は笑いが止まらなくなる。

 「おもしろーい、真さん。立派な方なのに、コンビニに感動するなんて。そう言えば真さんって、今いくつなんですか?」
 「29だ」
 「ふーん…。ハワイとフランスの店舗にいらしたんですよね?えっと『プルメリア オアフ』と、フランスは確か…」
 「シャトー・デ・ラ・セーヌ」
 「そう!それ。『ボンジュール、ムッシュ…』なんだっけ?」
 「は?シャトーだってば」
 「そうそう」

 真は、じとーっと疑わしい目で真菜を見る。

 「さてはお前、アニヴェルセル・エトワールの全店舗、覚えてないな?」
 「覚えてますよ、もちろん」
 「じゃあ、言ってみろ」
 「『フェリシア 横浜』でしょ?『ローズ みなとみらい』に…」

 真菜が指折り数えながら答える。

 「横浜エリアはいい。他は?」
 「ほ、他?えーっと、『シエル 青山』『フォンテーヌ お台場』『リュリュ…』」
 「リュミエール 代官山」
 「そうそれ。あと『コリーヌ 幕張』『ネーネー…札幌』」
 「ネーネー?!『ネージュ 札幌』だ」
 「言いましたよ?ちゃんと」
 「嘘つけ!言ってない。他は?」

 真はまたしても鋭い視線を向ける。

 「えー、『ソレイユ 沖縄』と…。あともう1つ神戸」
 「そう、神戸は?」
 「えっと、『マドモアゼル 神戸』」
 「はあ?!『ベル・メール 神戸』だ」
 「すごーい!真さん、コンプリート!」

 パチパチ手を叩く真菜に、はあ…と、真はため息をつく。

 「お前、新入社員でもスラスラ言えるぞ?ちゃんと覚えておけ。あと、意味もな。今度テストする」
 「ええー?!テストなんて、やだ!」
 「やだじゃない!覚えろ!」

*****

 そんな会話をひとしきりしたあと、真は改めて真菜に切り出した。

 「大事な話がある」

 えっ…と顔を上げると、真菜は飲んでいたコーヒーをテーブルに置いて頷く。

 「落ち着いて聞いてくれ。夕べお前の身に起きた事、あれはれっきとした犯罪だ」

 真菜の顔が、一気に強張る。

 「本来なら警察に被害届を出して、犯人を捕まえてもらうべきだろう」
 「警察…被害届?それは、何があったのか、私が話をするって事?」
 「ああ。おそらく事細かに聞かれるだろう。思い出したくない事もな」

 真菜は、思わず両手で自分を抱き締める。

 「どうする?警察に行くなら、俺も一緒に行って証言する」
 「あの…、私。ごめんなさい。今はまだ、とにかく考えたくなくて…、忘れたくて。怖いんです、今もずっと。だから、少し時間をください」
 「分かった」
 「本当にごめんなさい。勇気がなくて…」
 「謝るな。お前は何も悪くない。悪いのは加害者だけだ。だから決して自分を責めたりするな」

 いいな?と、真は真剣に真菜の顔を覗き込む。

 真菜は、コクリと頷いた。

 「時間をかけて、ゆっくり気持ちを落ち着かせていけばいい。ただ…」

 そこまで言ってうつむいた真に、真菜は怪訝そうに首を傾げる。

 「真さん?」
 「…ただ、もうあんな危険な目に遭う事はないとは言い切れない。しばらくは用心した方がいい。出来れば、どこかに引っ越せないか?実家に帰るとか」
 「えっ」

 突然の提案に、真菜は戸惑う。

 「実家は山梨なので、無理です。それに引っ越し先も、そんなすぐには見つけられないし…」
 「だが、そうしてるうちに、またあいつが同じ事をしにくるかもしれない。まだ捕まっていない訳だからな」

 想像したのか、真菜の顔からみるみるうちに血の気が引く。

 「それに…。俺は、ここから引っ越す事になった」

 えっ!と真菜が絶句する。

 「そ、そんな!真さんがいなくなるなんて、私、どうしたらいいの?怖い…」

 大きく開いた両目から、ぼたぼたと涙が溢れ落ちる。

 「どうやって帰って来たらいいの?ここに、暗い部屋に1人で、夜も1人で、そんな、怖い…」

 涙を拭おうともせず、震える声でそう言う真菜を、真はギュッと抱き締める。

 「落ち着け。大丈夫だから」

 腕の中で真菜は、静かに泣き続ける。

 抱き締めながら真はただひたすら、真菜が落ち着くのを待った。

 しばらくしゃくり上げていた真菜が、いつの間にか腕の中でスーッと眠り始めた事に真は気付く。

 緊張から開放されて安心したのだろう。

 真はそっと真菜を抱き上げ、ベッドに寝かせた。

 電気を消して、部屋の中が一気に暗くなった時だった。 

 「いやっ!」

 急に真菜が、叫びながら飛び起きた。

 「やめて!怖い…離して!」

 暗がりの中、何かに抵抗するように必死で手を動かしている。

 「真菜!落ち着け。俺だ、分かるか?」

 真が真菜の肩を掴んで顔を近付けると、真さん?と真菜は呟く。

 「ああ、そうだ。ごめん、すぐに電気を点けるから」

 そう言って、ベッドサイドのランプを点けた。

 ほのかな灯りの中で、真菜は深呼吸して気持ちを落ち着かせようとしている。

 真は、考えながら口を開いた。

 「真菜、俺のマンションに一緒に来い」
 「え?真さんのマンション?」
 「ああ。みなとみらいに部屋を借りたんだ。部屋数もあるし、もういつでも入居出来る。すぐに引っ越そう」

 真菜は、驚いたように瞬きを繰り返す。

 「でも、一緒に住むなんてそんな、結婚もしてないのに…」
 「古風な考えもいいと思うが、そんな事言ってる場合か?引っ越し先が決まるまでの間、ただ部屋を間借りすると思えばいいだろう。それとも、このままここでひとり暮らしするか?」
 「いや!それは…、無理です」

 真は、真菜の頭にボンと手をやる。
  
 「だったら俺と一緒に引っ越そう。それが1番安全だ。お前は自分が思ってる以上に、心にダメージを受けている。しばらくは穏やかな時間が必要だ。な?俺と一緒に来い」

 (それにもし、事件にあの新婦が絡んでいるとしたら…。社員を守るのは会社の義務だ)

 真が真剣な表情で真菜を見つめていると、やがて真菜はコクリと頷いた。
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