アンコール マリアージュ

葉月 まい

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約束は守りますからね?!

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 (はあ…)

 大きなため息をつきながら、真は社長室の前で立ち止まる。

 気が重い。だが、報告しない訳にはいかない。

 気を決してドアをノックした。

 「社長、真です」
 「どうぞ」
 「はい。失礼致します」

 ドアを開け、硬い表情でお辞儀をしてから顔を上げると、社長はにこにこと真に笑顔を向けていた。

 「昨日は、休ませて頂きありがとうございました」
 「いやいや、休んでいた訳ではないだろう?良くやってくれた」
 「は、あ、あの?」

 真がキョトンとしていると、社長は立ち上がり、真の肩をポンと叩いてきた。

 「助かったよ、真。これで我が社は、ますます大きく宣伝される」
 「あの…、取材の件は」
 「ああ。今朝、真菜さんから電話があったよ。雑誌の取材、引き受けるってな」
 「えっ!」
 「早速先方にも連絡した。大変喜ばれたよ。通常よりもページ数を増やして、彼女を特集したいと。真、取材の日は彼女をサポートしてあげなさい。分かったな?」
 「は、はあ」

 半分首をひねりながら、真は気の抜けた返事をした。

*****

 「真ー菜ー、電話よ。ドリーム ウェディングの記者さんから、取材の件でって」

 はいと返事をして、真菜は久保から受話器を受け取る。

 今朝、出勤してすぐに、真菜は本社の社長宛に、取材を引き受けると電話をした。

 おそらく、すぐに先方にもそう報告されたのだろう。

 昨日、真とはあんな別れ方をしたが、彼が真菜の希望を聞いて1日付き合ってくれたのは事実だ。

 ならば約束通り、真菜も取材を引き受けなくてはならない。

 小さくため息をついてから、気合いを入れ直し、真菜は保留音を止めて電話に出た。

 「ふーん。じゃあ、真菜の担当のお客様が挙式する日に合わせて、取材に来られるのね?」

 電話を終えた真菜は、打ち合わせた内容を久保に報告する。

 「はい。その様子を追いかけて、記事にして下さるそうです。写真も先方が随時撮影されるそうです。もし時間が許せば、私に挙式後質問したいと」
 「分かったわ。そしたら、その後の業務から真菜は外すから」
 「すみません」
 「あら、真菜が謝る事じゃないでしょ?社のPRになるんだし。頑張ってね!それで、取材はいつ?」
 「はい。出来れば2週間以内にお願いしたいと。これから、取材に協力してくれそうなお客様を当たってみます」

 そう言って真菜はデスクに戻り、自分の担当するお客様のファイルをめくり始めた。

 (9月上旬で、どなたかお願い出来そうなカップルは…。あっ!)

 真菜は、このお二人しかいないと確信して、電話をかけ始めた。

 3日後。

 最終打ち合わせたの為、園田様・上村様がサロンに現れた。

 「この度はありがとうございました。快く取材を引き受けて下さって」 

 真菜が頭を下げると、お二人は、いえいえと明るい声で笑いかける。

 「私、真菜さんに申し訳ない事をしたんだから、もちろん喜んで協力させて頂きます。罪滅ぼしにはならないけれど、真菜さんのお役に立てるなら、なんでもします」

 そう言って新婦が真菜の手を取り、頷く。

 「それに、家族や列席者にも確認しました。顔出しNGの人はいません。むしろみんな喜んでましたよ」

 新郎も、笑いかける。

 「ありがとうございます。当日は、誠心誠意、お二人の結婚式をお手伝いさせて頂きます。よろしくお願い致します」 

 真菜は、新郎新婦と笑顔で頷き合った。
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