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三人の幸せ
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「皆様、こんにちは!」
こんにちはー!と、元気な子ども達の声が返ってくる。
朱里は微笑んで言葉を続けた。
「本日は桐生ホールディングスプレゼンツ『みんなおいでよ!わくわくコンサート』にようこそお越しくださいました。私は本日司会を務めます、栗田 朱里と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
お辞儀をすると大きな拍手が起こった。
今日はいよいよ、桐生ホールディングスが手掛けたコンサート当日。
この日の為に朱里は毎日準備に追われていた。
観客は関係者のみとは言えど、投資家やマスコミ関係者も来場する。
必ず良いコンサートにしてみせる!と、朱里は直前まで頭をフル回転させて念入りに準備を進めてきた。
子ども達が読みやすいようにプログラムにもイラストを多く入れ、楽器の名前も紹介した。
曲名の横には、その曲の説明を分かりやすく載せようと、東条と何度も言葉を練り直した。
会場内のロビーにも、あちこちに可愛い飾りや記念撮影用のパネルを置き、音楽のクイズを交えたスタンプラリーも設置した。
その甲斐もあってか、開演時間には既に子ども達は笑顔でわくわくとした様子だった。
まずは、社長からの挨拶と、このコンサート開催の経緯が話される。
手短に切り上げたあと、朱里は東条と会話方式で司会を進行していった。
「みんなは、何か楽器を習っているかな?ピアノを習っているよってお友達は手を挙げてください」
朱里の呼びかけに、はーい!と、あちこちで手が挙がる。
「おー、たくさんいるね。嬉しいなあ」
東条がにこにこと会場内を見渡す。
早速ピアノ曲を2曲演奏し、その流れで今度はヴァイオリンを習っている子に手を挙げてもらう。
ピアノほど多くはないが、数人が手を挙げてくれた。
「おっ!男の子もいますね。どう?ヴァイオリンは楽しいかな?」
朱里が尋ねるとその男の子は、めっちゃむずかしいー!と大きな声で言った。
あはは!と笑いが起こる。
「分かる、めっちゃ難しいよな!でも、そんな難しいヴァイオリンをがんばってる君は、めっちゃかっこいいぞ!」
東条の言葉に、男の子は照れたように、ヘヘッと笑った。
「それでは次に、そんなめっちゃ難しいヴァイオリンをソロで演奏してもらいます。ベートーヴェン作曲の『ヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調作品24』別名スプリング・ソナタとも呼ばれているこの曲の第1楽章をお届けします。この季節にビッタリの春らしく明るい曲を、どうぞお聴きください」
コンサートマスターがピアノの伴奏で見事に演奏したあと、東条が先程の男の子に聞いた。
「僕、どうだった?今のヴァイオリンの演奏は」
「めっっちゃすごかった!」
あはは!とまたもや笑いが起こり、ステージ上に残っていたコンサートマスターが、うやうやしく頭を下げた。
「どうやったらそんなに弾けるの?」
男の子が思わず尋ねる。
朱里はコンサートマスターにマイクを近づけた。
「このめっちゃ難しいヴァイオリンを弾くには、とにかく練習あるのみです。でも、この曲が弾きたい!っていう気持ちも大事です。どんな曲でもいいから、これを弾けるようになるぞ!って思いながら、これからもがんばってね!」
男の子は、はい!と目を輝かせて返事をした。
第一部はそんな和やかな雰囲気で終了。
15分の休憩を挟み、いよいよ第二部のオーケストラの演奏となる。
休憩時間中に急ピッチで舞台を準備し、朱里も段取りを再度チェックする。
第一部とは雰囲気を変え、ズラリと並んだオーケストラのメンバーに、子ども達は、うわーと圧倒されているようだった。
一曲目は、アンダーソンの『シンコペイテッド・クロック』
「コツコツと時計の音が聞こえてきますよ。でもこの時計、時々ちょっとズレちゃうことがあるんです。さあ、今日はちゃんとズレないでコツコツ時間を刻めるかな?よーく聴いていてくださいね」
演奏が始まり、子ども達はステージに釘付けになる。
ウッドブロックが軽快に規則正しくコツコツ鳴っていたか思うと、コッ…ツ、コツとふいにズレる。
子ども達は、あれ?という顔で、家族と顔を見合わせて笑っていた。
「続いての曲は、サン=サーンス作曲の組曲『動物の謝肉祭』です」
ライオンやゾウ、白鳥など、色々な動物を表現した短い曲を、朱里のナレーションを挟みながら演奏する。
バックスクリーンで動物のイラストを映し出したり、照明を変えたりする演出も加えた。
そして最後は、エルガー作曲の『威風堂々』
中間部はCMでも使われたりする有名な曲で、ラストの盛り上がりも迫力があり、子ども達は演奏が終わった途端大きな拍手を送ってくれた。
アンコールの『ラデツキー行進曲』は、みんなで一緒に楽しもう!と、指揮をやりたい子、楽器を演奏したい子もステージに上がってもらう。
客席の大人達も手拍子で参加してもらい、大いに盛り上がってコンサートは幕を閉じた。
*****
「うわー、可愛い!これヴァイオリンの絵かな?たのしかった♡だって」
ホールの多目的室を借りての打ち上げ。
皆でわいわいと食事をしながら、お客様アンケートに目を通す。
どれもこれも、楽しかった!おもしろかった!の文字が並んでいた。
「あ、これあの男の子じゃないかな?ヴァイオリンはめっちゃむずかしくてやめたかったけど、これからもがんばります!だって」
朱里がアンケート用紙を東条に見せる。
「おおー!嬉しいね!今日のコンサートが何かのきっかけになってくれたら、こんなに喜ばしいことはないよ」
「そうですね!」
ふふっと二人で微笑み合う。
すると、瑛の父がやって来た。
「マエストロ、今日は本当にありがとうございました!いやー、素晴らしい演奏でした」
「こちらこそ。このような機会をいただき本当に感謝しております。私自身も、今回は貴重な経験をさせていただきました。本当に楽しかったなあ。ねえ、朱里さん」
そう言って朱里に同意を求める。
「ええ、本当に。仕事なのを忘れて、私も普通に楽しんじゃいました」
「朱里ちゃんの司会も良かったよー。東条さんとの掛け合いもバッチリだったね」
「ははっ!俺達、漫才やろうか?」
「マエストロ、本職をお忘れなく」
三人で、あはは!と笑い合う。
瑛はその輪に入れず、離れた所で一人佇んでいた。
*****
コンサートが終わった次の日。
瑛は聖美の屋敷を訪れていた。
結納を1週間後に控え、最終確認を兼ねて会うことになっていた。
リビングで二人でお茶を飲む。
「瑛さん、お仕事の様子はいかがですか?」
「はい。ちょうど昨日大きなイベントが終わりまして、少し落ち着いたところです」
「そうですか。良かったです」
「聖美さんは?短大の卒業式、いかがでしたか?」
「はい。無事に終わりました」
「そうですか。それでは、しばらくのんびり出来ますね」
「いえ、それがそうでもなくて。私、来月からイギリスに留学することにしました」
…は?と瑛は、思わず聖美の顔を見る。
「留学…ですか?どれくらいの期間でしょうか?」
「そうですね、まだはっきりとは決めておりません。あちらの四年制大学に編入することにしまして、卒業するまでは帰国する予定もありません」
瑛は瞬きを繰り返す。
「あの、それは…。結婚の時期も分からないという事でしょうか?」
「結婚につきましては、私から瑛さんにお話したい事がございます」
そう言うと聖美は、カップをテーブルに置き、正面から瑛に向き合った。
「瑛さん。私との結婚を考えてくださり、本当にありがとうございました。とても嬉しく有り難いお話でしたが、私のわがままで結婚は取りやめとさせていただきたく、お願い申し上げます」
そう言うと深々と頭を下げる。
「え…、あの。それは、イギリスに留学されるからですか?でしたら、帰国されてからでも構いません。何年でもお待ちしております」
「まあ、ありがとうございます。ですが、留学が理由ではありません」
「それでは、なぜ?」
「幸せになれないからです。私も、瑛さんも、そして朱里さんも」
え…と瑛は言葉を失う。
「何が悪いとかではありません。私は瑛さんも朱里さんも大好きです。心から大切な人です。だから、私達三人ともが幸せになれるよう願っています。瑛さん、ご自分の幸せが何かを見つけてくださいね。私も、自分の力で必ず幸せになってみせます」
でもまずは、朱里さんみたいにキラキラした素敵な女性を目指します、と聖美は笑った。
その笑顔は、いつものうつむき加減ではなく、真っ直ぐに前を見据えた輝くような笑顔だった。
こんにちはー!と、元気な子ども達の声が返ってくる。
朱里は微笑んで言葉を続けた。
「本日は桐生ホールディングスプレゼンツ『みんなおいでよ!わくわくコンサート』にようこそお越しくださいました。私は本日司会を務めます、栗田 朱里と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
お辞儀をすると大きな拍手が起こった。
今日はいよいよ、桐生ホールディングスが手掛けたコンサート当日。
この日の為に朱里は毎日準備に追われていた。
観客は関係者のみとは言えど、投資家やマスコミ関係者も来場する。
必ず良いコンサートにしてみせる!と、朱里は直前まで頭をフル回転させて念入りに準備を進めてきた。
子ども達が読みやすいようにプログラムにもイラストを多く入れ、楽器の名前も紹介した。
曲名の横には、その曲の説明を分かりやすく載せようと、東条と何度も言葉を練り直した。
会場内のロビーにも、あちこちに可愛い飾りや記念撮影用のパネルを置き、音楽のクイズを交えたスタンプラリーも設置した。
その甲斐もあってか、開演時間には既に子ども達は笑顔でわくわくとした様子だった。
まずは、社長からの挨拶と、このコンサート開催の経緯が話される。
手短に切り上げたあと、朱里は東条と会話方式で司会を進行していった。
「みんなは、何か楽器を習っているかな?ピアノを習っているよってお友達は手を挙げてください」
朱里の呼びかけに、はーい!と、あちこちで手が挙がる。
「おー、たくさんいるね。嬉しいなあ」
東条がにこにこと会場内を見渡す。
早速ピアノ曲を2曲演奏し、その流れで今度はヴァイオリンを習っている子に手を挙げてもらう。
ピアノほど多くはないが、数人が手を挙げてくれた。
「おっ!男の子もいますね。どう?ヴァイオリンは楽しいかな?」
朱里が尋ねるとその男の子は、めっちゃむずかしいー!と大きな声で言った。
あはは!と笑いが起こる。
「分かる、めっちゃ難しいよな!でも、そんな難しいヴァイオリンをがんばってる君は、めっちゃかっこいいぞ!」
東条の言葉に、男の子は照れたように、ヘヘッと笑った。
「それでは次に、そんなめっちゃ難しいヴァイオリンをソロで演奏してもらいます。ベートーヴェン作曲の『ヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調作品24』別名スプリング・ソナタとも呼ばれているこの曲の第1楽章をお届けします。この季節にビッタリの春らしく明るい曲を、どうぞお聴きください」
コンサートマスターがピアノの伴奏で見事に演奏したあと、東条が先程の男の子に聞いた。
「僕、どうだった?今のヴァイオリンの演奏は」
「めっっちゃすごかった!」
あはは!とまたもや笑いが起こり、ステージ上に残っていたコンサートマスターが、うやうやしく頭を下げた。
「どうやったらそんなに弾けるの?」
男の子が思わず尋ねる。
朱里はコンサートマスターにマイクを近づけた。
「このめっちゃ難しいヴァイオリンを弾くには、とにかく練習あるのみです。でも、この曲が弾きたい!っていう気持ちも大事です。どんな曲でもいいから、これを弾けるようになるぞ!って思いながら、これからもがんばってね!」
男の子は、はい!と目を輝かせて返事をした。
第一部はそんな和やかな雰囲気で終了。
15分の休憩を挟み、いよいよ第二部のオーケストラの演奏となる。
休憩時間中に急ピッチで舞台を準備し、朱里も段取りを再度チェックする。
第一部とは雰囲気を変え、ズラリと並んだオーケストラのメンバーに、子ども達は、うわーと圧倒されているようだった。
一曲目は、アンダーソンの『シンコペイテッド・クロック』
「コツコツと時計の音が聞こえてきますよ。でもこの時計、時々ちょっとズレちゃうことがあるんです。さあ、今日はちゃんとズレないでコツコツ時間を刻めるかな?よーく聴いていてくださいね」
演奏が始まり、子ども達はステージに釘付けになる。
ウッドブロックが軽快に規則正しくコツコツ鳴っていたか思うと、コッ…ツ、コツとふいにズレる。
子ども達は、あれ?という顔で、家族と顔を見合わせて笑っていた。
「続いての曲は、サン=サーンス作曲の組曲『動物の謝肉祭』です」
ライオンやゾウ、白鳥など、色々な動物を表現した短い曲を、朱里のナレーションを挟みながら演奏する。
バックスクリーンで動物のイラストを映し出したり、照明を変えたりする演出も加えた。
そして最後は、エルガー作曲の『威風堂々』
中間部はCMでも使われたりする有名な曲で、ラストの盛り上がりも迫力があり、子ども達は演奏が終わった途端大きな拍手を送ってくれた。
アンコールの『ラデツキー行進曲』は、みんなで一緒に楽しもう!と、指揮をやりたい子、楽器を演奏したい子もステージに上がってもらう。
客席の大人達も手拍子で参加してもらい、大いに盛り上がってコンサートは幕を閉じた。
*****
「うわー、可愛い!これヴァイオリンの絵かな?たのしかった♡だって」
ホールの多目的室を借りての打ち上げ。
皆でわいわいと食事をしながら、お客様アンケートに目を通す。
どれもこれも、楽しかった!おもしろかった!の文字が並んでいた。
「あ、これあの男の子じゃないかな?ヴァイオリンはめっちゃむずかしくてやめたかったけど、これからもがんばります!だって」
朱里がアンケート用紙を東条に見せる。
「おおー!嬉しいね!今日のコンサートが何かのきっかけになってくれたら、こんなに喜ばしいことはないよ」
「そうですね!」
ふふっと二人で微笑み合う。
すると、瑛の父がやって来た。
「マエストロ、今日は本当にありがとうございました!いやー、素晴らしい演奏でした」
「こちらこそ。このような機会をいただき本当に感謝しております。私自身も、今回は貴重な経験をさせていただきました。本当に楽しかったなあ。ねえ、朱里さん」
そう言って朱里に同意を求める。
「ええ、本当に。仕事なのを忘れて、私も普通に楽しんじゃいました」
「朱里ちゃんの司会も良かったよー。東条さんとの掛け合いもバッチリだったね」
「ははっ!俺達、漫才やろうか?」
「マエストロ、本職をお忘れなく」
三人で、あはは!と笑い合う。
瑛はその輪に入れず、離れた所で一人佇んでいた。
*****
コンサートが終わった次の日。
瑛は聖美の屋敷を訪れていた。
結納を1週間後に控え、最終確認を兼ねて会うことになっていた。
リビングで二人でお茶を飲む。
「瑛さん、お仕事の様子はいかがですか?」
「はい。ちょうど昨日大きなイベントが終わりまして、少し落ち着いたところです」
「そうですか。良かったです」
「聖美さんは?短大の卒業式、いかがでしたか?」
「はい。無事に終わりました」
「そうですか。それでは、しばらくのんびり出来ますね」
「いえ、それがそうでもなくて。私、来月からイギリスに留学することにしました」
…は?と瑛は、思わず聖美の顔を見る。
「留学…ですか?どれくらいの期間でしょうか?」
「そうですね、まだはっきりとは決めておりません。あちらの四年制大学に編入することにしまして、卒業するまでは帰国する予定もありません」
瑛は瞬きを繰り返す。
「あの、それは…。結婚の時期も分からないという事でしょうか?」
「結婚につきましては、私から瑛さんにお話したい事がございます」
そう言うと聖美は、カップをテーブルに置き、正面から瑛に向き合った。
「瑛さん。私との結婚を考えてくださり、本当にありがとうございました。とても嬉しく有り難いお話でしたが、私のわがままで結婚は取りやめとさせていただきたく、お願い申し上げます」
そう言うと深々と頭を下げる。
「え…、あの。それは、イギリスに留学されるからですか?でしたら、帰国されてからでも構いません。何年でもお待ちしております」
「まあ、ありがとうございます。ですが、留学が理由ではありません」
「それでは、なぜ?」
「幸せになれないからです。私も、瑛さんも、そして朱里さんも」
え…と瑛は言葉を失う。
「何が悪いとかではありません。私は瑛さんも朱里さんも大好きです。心から大切な人です。だから、私達三人ともが幸せになれるよう願っています。瑛さん、ご自分の幸せが何かを見つけてくださいね。私も、自分の力で必ず幸せになってみせます」
でもまずは、朱里さんみたいにキラキラした素敵な女性を目指します、と聖美は笑った。
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