3 / 170
序章 過去
0ー3 故郷(ロサンゼルス 2024年)
しおりを挟む
「先生、これお土産です」
野外道場にて白いプラスチックバックを手で振る。
カナダへ行って故国インドの食材を買ってくるのはある意味馬鹿げているが、このあたりには自分たちの出身州の食材を扱う店は少ない。稽古を付けてくれる彼が喜ぶかもと思ったら止める理由はなかった。
アメリカ暮らしも長くなったある日、故郷の古武術道場から電話が入った。
腕の立つ弟子が留学で近くに行く。良ければ稽古を付けもらったらどうか。
若いので色々目には付くだろうが、そこは社会人としてフォローしてあくまで先生として立ててくれればありがたい、と。実際その通りだったが彼は学生というだけではなく、実家の会社のアメリカ支社長という地位も引っ提げて来た。
ほとんどお飾りだが仕事を放り投げてはおらずビジネス面で有益な情報交換も出来た。彼にとってもアメリカでの仕事歴が長い自分は悪くない人脈だと思う。
何より武術の腕は抜きん出ていて、遠い異国の地で良い教師を得、修行を重ねられる幸運を自分は喜んでいた。
ピッと場の雰囲気が変わった。
「これは……」
「ああ済みません。お店で配っていたチラシを抜き忘れてました」
手を伸ばすが彼はチラシを掴みじっと見つめたままだ。
「店主の弟さんだそうで」
カナダ育ちの大学生はムンバイで親戚宅滞在中に消息を絶った。
店員たちが話しているのが耳に入ったのだが、彼らの姉が弟が帰らなければ結婚しないと言い張って困っているとのこと。
「こいつ、もうとっくに死んでるよ」
ロハンはぽいとチラシを簡易テーブルに投げた。
「先生?」
「姉ちゃん、かなり年離れてるんだろ。可哀相じゃねえか」
人生棒に振っちまうとそこは小さくごまかすとロハンは身支度に向かった。
チラシの中で豊かな巻き髪の愛嬌ある青年が微笑んでいた。
(アビマニュ君、か……)
野外道場にて白いプラスチックバックを手で振る。
カナダへ行って故国インドの食材を買ってくるのはある意味馬鹿げているが、このあたりには自分たちの出身州の食材を扱う店は少ない。稽古を付けてくれる彼が喜ぶかもと思ったら止める理由はなかった。
アメリカ暮らしも長くなったある日、故郷の古武術道場から電話が入った。
腕の立つ弟子が留学で近くに行く。良ければ稽古を付けもらったらどうか。
若いので色々目には付くだろうが、そこは社会人としてフォローしてあくまで先生として立ててくれればありがたい、と。実際その通りだったが彼は学生というだけではなく、実家の会社のアメリカ支社長という地位も引っ提げて来た。
ほとんどお飾りだが仕事を放り投げてはおらずビジネス面で有益な情報交換も出来た。彼にとってもアメリカでの仕事歴が長い自分は悪くない人脈だと思う。
何より武術の腕は抜きん出ていて、遠い異国の地で良い教師を得、修行を重ねられる幸運を自分は喜んでいた。
ピッと場の雰囲気が変わった。
「これは……」
「ああ済みません。お店で配っていたチラシを抜き忘れてました」
手を伸ばすが彼はチラシを掴みじっと見つめたままだ。
「店主の弟さんだそうで」
カナダ育ちの大学生はムンバイで親戚宅滞在中に消息を絶った。
店員たちが話しているのが耳に入ったのだが、彼らの姉が弟が帰らなければ結婚しないと言い張って困っているとのこと。
「こいつ、もうとっくに死んでるよ」
ロハンはぽいとチラシを簡易テーブルに投げた。
「先生?」
「姉ちゃん、かなり年離れてるんだろ。可哀相じゃねえか」
人生棒に振っちまうとそこは小さくごまかすとロハンは身支度に向かった。
チラシの中で豊かな巻き髪の愛嬌ある青年が微笑んでいた。
(アビマニュ君、か……)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる