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第3章 仲間ではいられない(3日目)
3ー18 覚悟2
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十二時。カマリはドアを開けた。
最後まで生きることをあきらめるつもりはない。
出来ることは全て行う。
ニルマラが廊下で歌って踊るのがうるさかった。ドアを閉めた部屋の中にいても何か歌っているな程度に聞こえた。
ならば、ドアを開けておけば他の部屋へ叫びが聞こえるのではないか。
だから襲ってくる姿が見えたら「人狼は◯◯だ!」と叫ぶ。
ドアに近いガヤトリのベッドの横、傍らのパソコン机にはターメリックを水で溶いたものをスパイスボックス(よくあるステンレス円形の器を台所から持ってきた)に入れておいた。
横には一枚の紙。ダウドが私物回収で取り返したノートから切り外した。
声が最優先だが予備として指にターメリックを付けて名前を書く手段も用意した。
この部屋でひとりで過ごす夜も三日目となった。静けさに潰されそうな夜は間もなく終わるだろうか。
切り札は人に託した。
権利を行使する前に他人に話したのだが遠隔では薬の中身は変えようもない。そもそも毒中和薬など元々どう使っていいのかわからない代物だ。
夕方丹念に沐浴をし会議の後もスティーブンを探す群れからは抜けて軽くシャワーを浴びた。
就寝時間を過ぎパソコンの前を離れてから好む神のマントラを1080回唱えた。
そして迎えた十二時、ドアをシャンティの椅子で押さえて開け放し、ガヤトリの椅子を廊下が見える方向に据えてベッドサイドに座った。
大きな自分の鼓動を聞きながらしばらく、廊下に気配がした。
ドア上の時計は十二時二十分過ぎ。カマリは大きく息を吸い、それが止まった。
虎の被り物をした人物がドアに姿を現した。
(卑怯者!)
続いて猿の被り物。同じ黒いロングコートに白い靴でこちらへ突進してくる。体型からは男子だ。
カマリは動かず椅子に座ったまま襲撃者を迎えた。猿が持つ白い縄はきっとサントーシュたちを殺した凶器、恐ろしさが背を這い上がる。
ザン!
先に近づいた虎の右腕に、ベッドマットの下から柄を覗かせ挟んだ包丁を引き出し叩きつける。
「!?」
明らかに人体ではない軽い感触。
恐怖は今やカマリの体中を染めあげる。
(プロテクター?)
気づいた時には縄が目の前に、
「っ!」
とっさにしゃがんで避け、冷たい床の上をくるくると寝転がって逃げる。
だが包丁を落としてしまった。台所から一番大きい物を選んできたのに。
猿と虎に入り口側を取られ走り逃げまわるカマリをシャンティとパドミニのベッド間の壁に追い詰め虎が腕を掴む。
「嫌っ!」
一瞬虎が躊躇する気配を見せた。
「があっ!」
包丁が胸に突き立てられる。が骨に当たった。深くない。回りは切られたようで血が薄い色のサルワールに滲んでいく。痛い。崩れ落ちる自分が処刑されたバドリやヤトヴィックと似ていると思いつつそれでも逃げようと胎児のように体を丸めて転がり、
「んぎゃああああああっ!!」
ザクリ。上に向いた左側肩と首の間に包丁を叩き込まれた。溢れ流れる血。
続いて頬をかすめ右の肩も切り込まれた時最早カマリの意識はなかった。
襲撃者たちの白い靴にカマリの鮮血が模様を描くように飛び散っていた。
最後まで生きることをあきらめるつもりはない。
出来ることは全て行う。
ニルマラが廊下で歌って踊るのがうるさかった。ドアを閉めた部屋の中にいても何か歌っているな程度に聞こえた。
ならば、ドアを開けておけば他の部屋へ叫びが聞こえるのではないか。
だから襲ってくる姿が見えたら「人狼は◯◯だ!」と叫ぶ。
ドアに近いガヤトリのベッドの横、傍らのパソコン机にはターメリックを水で溶いたものをスパイスボックス(よくあるステンレス円形の器を台所から持ってきた)に入れておいた。
横には一枚の紙。ダウドが私物回収で取り返したノートから切り外した。
声が最優先だが予備として指にターメリックを付けて名前を書く手段も用意した。
この部屋でひとりで過ごす夜も三日目となった。静けさに潰されそうな夜は間もなく終わるだろうか。
切り札は人に託した。
権利を行使する前に他人に話したのだが遠隔では薬の中身は変えようもない。そもそも毒中和薬など元々どう使っていいのかわからない代物だ。
夕方丹念に沐浴をし会議の後もスティーブンを探す群れからは抜けて軽くシャワーを浴びた。
就寝時間を過ぎパソコンの前を離れてから好む神のマントラを1080回唱えた。
そして迎えた十二時、ドアをシャンティの椅子で押さえて開け放し、ガヤトリの椅子を廊下が見える方向に据えてベッドサイドに座った。
大きな自分の鼓動を聞きながらしばらく、廊下に気配がした。
ドア上の時計は十二時二十分過ぎ。カマリは大きく息を吸い、それが止まった。
虎の被り物をした人物がドアに姿を現した。
(卑怯者!)
続いて猿の被り物。同じ黒いロングコートに白い靴でこちらへ突進してくる。体型からは男子だ。
カマリは動かず椅子に座ったまま襲撃者を迎えた。猿が持つ白い縄はきっとサントーシュたちを殺した凶器、恐ろしさが背を這い上がる。
ザン!
先に近づいた虎の右腕に、ベッドマットの下から柄を覗かせ挟んだ包丁を引き出し叩きつける。
「!?」
明らかに人体ではない軽い感触。
恐怖は今やカマリの体中を染めあげる。
(プロテクター?)
気づいた時には縄が目の前に、
「っ!」
とっさにしゃがんで避け、冷たい床の上をくるくると寝転がって逃げる。
だが包丁を落としてしまった。台所から一番大きい物を選んできたのに。
猿と虎に入り口側を取られ走り逃げまわるカマリをシャンティとパドミニのベッド間の壁に追い詰め虎が腕を掴む。
「嫌っ!」
一瞬虎が躊躇する気配を見せた。
「があっ!」
包丁が胸に突き立てられる。が骨に当たった。深くない。回りは切られたようで血が薄い色のサルワールに滲んでいく。痛い。崩れ落ちる自分が処刑されたバドリやヤトヴィックと似ていると思いつつそれでも逃げようと胎児のように体を丸めて転がり、
「んぎゃああああああっ!!」
ザクリ。上に向いた左側肩と首の間に包丁を叩き込まれた。溢れ流れる血。
続いて頬をかすめ右の肩も切り込まれた時最早カマリの意識はなかった。
襲撃者たちの白い靴にカマリの鮮血が模様を描くように飛び散っていた。
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