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第7章 旅立ち
7ー1 卒業
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車を降りて霊園の中を歩けば先発組は既にルクミニー先生の墓前で待っていた。
「久しぶり!!」
イジャイが飛びついてきて次々とハグをした。
「オフィサー! あの時は助けていただいてありがとうございました」
先発組はイジャイの父の車で来ていた。救出時は混乱のうちに分散してまともにお礼が言えなかった巡査部長へルチアーノたちは口々に礼を述べた。
「わたしはこの子を迎えに行っただけだ。卒業おめでとう。アッバース君、ルチアーノ君、シャキーラ君、アディティ君ー」
校外学習欠席の女子ひとりを含め巡査部長は全員に祝いの言葉をかけると墓前に促した。
「シャキーラ。君が通報してくれたんだよね。大変だったんだろう? ありがとう」
スディープがシャキーラに歩み寄ればこれもそれぞれ彼女に礼を言う。
転校して事件後学校には顔を出さなかったシャキーラと会うのは「ゲーム」会場以来だ。
「わたしひとりじゃ動けなかった。バーラムが助けてくれたの」
彼女だけではないが十年生の時よりもかなり大人びた容貌になったシャキーラが恥ずかしそうに応える。
5日目脱出権を行使したバーラムとシャキーラは午後になってようやく幹線道路にたどり着いた。通る車に助けを求めたが首輪を爆弾だと勘違いされて逃げられた。だが通報はしてもらえて最寄り警察署からの車に保護された。
犬に噛まれたバーラムは既に倒れて意識がない状態だったという。
彼を噛んだ野犬は幸い狂犬病を持っていなかったが、その他の雑菌にやられ長く治療を受けた。リハビリに励んだものの右手には今もわずかに障害が残るそうだ。
その彼はここには来ていない。
殺生に関わらなかったのは更生施設行きにならなかったことで明らかだが、親戚関係の絡みもありジャイナ教徒の家としては「人殺しのゲーム」にはもう関わりたくないらしい。
バーラム本人は来たがっていたとアッバースから聞いた。そして、
「じゃ、そろそろ本人と繋ごう。バーラム! ready?」
アッバースのスマホにバーラムの姿が映る。
足を運ぶことは親が許さなかったもののネットで繋ぐのは許可が出たそうだ。
手を振るルチアーノたちにバーラムは卒業祝いを述べる。
「おれは来年だ」
事件の約1ヶ月後、州の試験の時バーラムの右手はスムーズに字を書ける状態ではなかった。将来に関わる試験をその状態で受けるのは避け留年して翌年受験した。高校卒業はルチアーノたちより1年遅れとなる。
通報の礼には、
「おれは道路で寝てただけだ。シャキーラが頑張ったんだ」
と返しシャキーラが目頭を拭う。
この霊園は駅からバスでしばらく行った先にあった。それが問題だった。
事件の後程度の差こそあれ誰もがバスが苦手になったのだ。
ふと眠気が来てパニックになり、バス停でもない所で飛び降りた者。
このまままた意識がなくなって気がついたら閉じ込められているのではないか。そもそもまだリアル人狼ゲームは続いていてこれは外に出た夢なのでは、と耐えられず途中下車した者。
ルチアーノもしばらくはバスに乗らなかった。
大学進学後はそうもいかないと最近になって施設の後輩に付き合わせてバスに乗る練習をし、仕上げにアッバースとクラスの友人と共に長めに乗ってようやく大丈夫だとの自信を得た。
事件の後、転校せず学院に残ったのはクラスで5人だった。まずは校外学習に参加しなかった男子1人と、男性の奨学金組、ルチアーノ、アッバース、ヴィノード。
ヴィノードは三ヶ所からがっちり奨学金を受けていて転校は不可能だった。
学院から奨学金を受けている2人は同じ修道会の遠方の学校になら転校出来ると言われたが、ルチアーノは卒業後はわからないから今は「故郷」のラクナウにもう少しいたいと断った。アッバースは遠くでは週末家に帰れなくなると残留を選んだ。
後ひとりの残留組はスディープだった。
『親がそのまま行きなさいって』
家庭の事情という奴だろう。
彼は姉のラシュミカと時々校内で話しているようだった。
そこから美味しいミタイの店の情報が流れ甘味好きのアッバースと、一緒に行くことが多かったルチアーノも恩恵を被った。
転出組のうちシャキーラとバーラムはすぐだったが、校外学習不参加の女子とイジャイ、アディティは転校先の要請で州試験までは学院にいた。かつて38人いた教室で8人で授業を受け、勉強を教え合い、試験を受けた。とりわけアッバースがよく面倒を見てくれたが本人は、
『スティーブンの真似』
と笑っていた。
試験が終わった日に寮の食堂を借りて小さなフェアウェルパーティを開いた。
そこでルチアーノは生涯忘れないであろう言葉をもらった。
『言っておこうと思ったの』
ルチアーノはお母さんのご飯を知らないって言ってたよねとアディティに話しかけられた。
『確かにその記憶はないのだと思う。だけどあなたは『お母さんのご飯』をここに持っていると思うから』
と自分の胸を押さえた。
『私が料理が下手なのは知っていると思うけど、うちのお母さんのご飯は美味しい』
その日の気候や体調に合わせてスパイスを調整し、メニューを考えたその人だけに合わせた特別な料理。
『気持ちがこもっている。ルチアーノもお姉さんたちが幸せになれるようにって頑張ってお料理が上手くなったんでしょ。私、チャパティがまともになったって家で褒められたんだ』
ルチアーノに教わったからだと微笑む。
『この人に幸せになってほしい! って気持ちがこもっているのが家で食べるご飯が特別な理由。だから、ルチアーノはもう自分の中に『お母さんのご飯』を持っている』
将来家庭を持ったらきっとー
アディティは途中で言葉を止めた。
泣き出した理由を勘違いされたくない。ルチアーノはヒンドゥー教徒の彼女へ敬意を込めて合掌した。
「バフット バフット ダンニャワード、アディティ」
今日再会した彼女にあの言葉への礼を言うと、本人は言ったね程度の反応だった。家族がいる人間らしい認識だ。
ルチアーノは生涯この言葉を胸に生きていく。
将来家庭を持つことも子孫も残すこともない。
リアル人狼ゲームの中に閉じ込められている時はここまで酷いことが人生にあるのかと嘆いた。首輪から麻薬に近い薬を流し込まれた時にはもうこれほど泣くことはないと思った。
人生は、ルチアーノが思った以上に残酷だった。
そう知った時、ゲームの時ソファーの上でとは比べ物にならないほどわんわんと泣き続けた。あの頃のまだ楽観的だった自分と今の自分は違う。
それでもただ生きていく。
孤独ではない。友人はいる。
州の試験の後クラスは解体されルチアーノとアッバース、他の三人とそれぞれ別のクラスに編入された。そのクラスにいたふたりとルチアーノとアッバースは何ということもなく親しくなり、休み時間には四人でしゃべり、一緒に食べ、時に遊びに出かけるようになった。
時々アッバースはふっと目を浮かせることがある。
ルチアーノの視線に気づくと目立たぬように笑い、こちらもわずかに笑んで返す。
おそらく今ここにいないスティーブンとナラヤンのことを思っているのだろう。罪悪感が胸をよぎる。
休日にアッバースの家へ招かれた。
四人首を並べて、彼が子どもの時から覗いていたという階段から1階のスニーカーショップを眺める。
『本当だ。靴を買った人ってにこにこしてるんだ』
ルチアーノが言えばもうひとりが、
『靴が新しくなってうれしくない人間はいないってか』
ともつぶやく。
『スティーブンも同じこと言ったぜ、ここで』
ルチアーノの耳元でさっとささやいてから、
『だろ? だから俺も靴屋になるんだ』
アッバースは胸を張った。
お金を稼ぎ友人がいれば人生は何とかなるだろう。
今回の墓参、ルチアーノは気が進まなかった。とても皆に合わせる顔がない。だがルクミニー先生へ卒業の報告に行こうと言い出したのはアッバースで行かない理由づけが難しい。消極的な理由で参加したが久しぶりの元気な顔にはほっとした。アッバースに感謝だ。
なお学院では他クラスや別の学年ですら女子の転出が相次ぎ、十年生の教室など男子校のようになった。「誘拐された少女」と誤解されたくない親が転校させたのだろう。
「じゃあ行こう。バーラム、先生のお墓がきちんと映ってなかったら教えてくれ」
アッバースがスマホをルクミニーの墓へかざす。
それぞれに先生へ卒業の報告をし、冥福を祈った。
(ルクミニー先生。ごめんなさい。俺の担任になんてならなければ今もお元気で教えていらしたかもしれないのに)
婚約者の方と結婚して幸せな家庭をも持っていただろう。
(俺はともかく、他の皆の卒業を祝ってください)
最後まで膝をついていたヴィノードが立ち上がるとアッバースは言った。
「実は、先週ナラヤンと会った。ここにメッセージを持ってきている」
スマホを指す。
リアル人狼ゲームの時彼が「人狼」としてどう動いたか全て告白しているという。
「聞く気がある奴は聞いてやってくれないか」
「ちょっと待て」
イジャイの父が止め、車の方へ報告に行く。
「誰でも聞こえる場所でそういう話は止めて」
呼ばれて来たのは後発組の車を運転してきたラクシュミだ。
バスを避けること、首謀者ふたりが今も逃亡中であること、万一記者に追われた時の対策に駅からは車で移動し、墓地には警察官が立ち会う。イジャイの父が捜査担当者に確認しての指示である。立ち会いのひとりはその巡査部長なのだがもう一人わざわざムンバイからラクシュミが来たのは、
(俺の様子を見に来たのか)
素知らぬ顔はしていてくれるが少し落ち着かない。
結局、郊外のレストランの部屋をラクシュミが借り切ってその録画を上映することとなった。チャイと最初の軽食は、
「私からの卒業祝いだと思って」
だそうだ。
磨かれたマーブル模様の壁、装飾のついた椅子に無駄に大きなテーブルと豪華過ぎる。ルチアーノはアッバースと目を合わせて肩をすくめた。
「久しぶり!!」
イジャイが飛びついてきて次々とハグをした。
「オフィサー! あの時は助けていただいてありがとうございました」
先発組はイジャイの父の車で来ていた。救出時は混乱のうちに分散してまともにお礼が言えなかった巡査部長へルチアーノたちは口々に礼を述べた。
「わたしはこの子を迎えに行っただけだ。卒業おめでとう。アッバース君、ルチアーノ君、シャキーラ君、アディティ君ー」
校外学習欠席の女子ひとりを含め巡査部長は全員に祝いの言葉をかけると墓前に促した。
「シャキーラ。君が通報してくれたんだよね。大変だったんだろう? ありがとう」
スディープがシャキーラに歩み寄ればこれもそれぞれ彼女に礼を言う。
転校して事件後学校には顔を出さなかったシャキーラと会うのは「ゲーム」会場以来だ。
「わたしひとりじゃ動けなかった。バーラムが助けてくれたの」
彼女だけではないが十年生の時よりもかなり大人びた容貌になったシャキーラが恥ずかしそうに応える。
5日目脱出権を行使したバーラムとシャキーラは午後になってようやく幹線道路にたどり着いた。通る車に助けを求めたが首輪を爆弾だと勘違いされて逃げられた。だが通報はしてもらえて最寄り警察署からの車に保護された。
犬に噛まれたバーラムは既に倒れて意識がない状態だったという。
彼を噛んだ野犬は幸い狂犬病を持っていなかったが、その他の雑菌にやられ長く治療を受けた。リハビリに励んだものの右手には今もわずかに障害が残るそうだ。
その彼はここには来ていない。
殺生に関わらなかったのは更生施設行きにならなかったことで明らかだが、親戚関係の絡みもありジャイナ教徒の家としては「人殺しのゲーム」にはもう関わりたくないらしい。
バーラム本人は来たがっていたとアッバースから聞いた。そして、
「じゃ、そろそろ本人と繋ごう。バーラム! ready?」
アッバースのスマホにバーラムの姿が映る。
足を運ぶことは親が許さなかったもののネットで繋ぐのは許可が出たそうだ。
手を振るルチアーノたちにバーラムは卒業祝いを述べる。
「おれは来年だ」
事件の約1ヶ月後、州の試験の時バーラムの右手はスムーズに字を書ける状態ではなかった。将来に関わる試験をその状態で受けるのは避け留年して翌年受験した。高校卒業はルチアーノたちより1年遅れとなる。
通報の礼には、
「おれは道路で寝てただけだ。シャキーラが頑張ったんだ」
と返しシャキーラが目頭を拭う。
この霊園は駅からバスでしばらく行った先にあった。それが問題だった。
事件の後程度の差こそあれ誰もがバスが苦手になったのだ。
ふと眠気が来てパニックになり、バス停でもない所で飛び降りた者。
このまままた意識がなくなって気がついたら閉じ込められているのではないか。そもそもまだリアル人狼ゲームは続いていてこれは外に出た夢なのでは、と耐えられず途中下車した者。
ルチアーノもしばらくはバスに乗らなかった。
大学進学後はそうもいかないと最近になって施設の後輩に付き合わせてバスに乗る練習をし、仕上げにアッバースとクラスの友人と共に長めに乗ってようやく大丈夫だとの自信を得た。
事件の後、転校せず学院に残ったのはクラスで5人だった。まずは校外学習に参加しなかった男子1人と、男性の奨学金組、ルチアーノ、アッバース、ヴィノード。
ヴィノードは三ヶ所からがっちり奨学金を受けていて転校は不可能だった。
学院から奨学金を受けている2人は同じ修道会の遠方の学校になら転校出来ると言われたが、ルチアーノは卒業後はわからないから今は「故郷」のラクナウにもう少しいたいと断った。アッバースは遠くでは週末家に帰れなくなると残留を選んだ。
後ひとりの残留組はスディープだった。
『親がそのまま行きなさいって』
家庭の事情という奴だろう。
彼は姉のラシュミカと時々校内で話しているようだった。
そこから美味しいミタイの店の情報が流れ甘味好きのアッバースと、一緒に行くことが多かったルチアーノも恩恵を被った。
転出組のうちシャキーラとバーラムはすぐだったが、校外学習不参加の女子とイジャイ、アディティは転校先の要請で州試験までは学院にいた。かつて38人いた教室で8人で授業を受け、勉強を教え合い、試験を受けた。とりわけアッバースがよく面倒を見てくれたが本人は、
『スティーブンの真似』
と笑っていた。
試験が終わった日に寮の食堂を借りて小さなフェアウェルパーティを開いた。
そこでルチアーノは生涯忘れないであろう言葉をもらった。
『言っておこうと思ったの』
ルチアーノはお母さんのご飯を知らないって言ってたよねとアディティに話しかけられた。
『確かにその記憶はないのだと思う。だけどあなたは『お母さんのご飯』をここに持っていると思うから』
と自分の胸を押さえた。
『私が料理が下手なのは知っていると思うけど、うちのお母さんのご飯は美味しい』
その日の気候や体調に合わせてスパイスを調整し、メニューを考えたその人だけに合わせた特別な料理。
『気持ちがこもっている。ルチアーノもお姉さんたちが幸せになれるようにって頑張ってお料理が上手くなったんでしょ。私、チャパティがまともになったって家で褒められたんだ』
ルチアーノに教わったからだと微笑む。
『この人に幸せになってほしい! って気持ちがこもっているのが家で食べるご飯が特別な理由。だから、ルチアーノはもう自分の中に『お母さんのご飯』を持っている』
将来家庭を持ったらきっとー
アディティは途中で言葉を止めた。
泣き出した理由を勘違いされたくない。ルチアーノはヒンドゥー教徒の彼女へ敬意を込めて合掌した。
「バフット バフット ダンニャワード、アディティ」
今日再会した彼女にあの言葉への礼を言うと、本人は言ったね程度の反応だった。家族がいる人間らしい認識だ。
ルチアーノは生涯この言葉を胸に生きていく。
将来家庭を持つことも子孫も残すこともない。
リアル人狼ゲームの中に閉じ込められている時はここまで酷いことが人生にあるのかと嘆いた。首輪から麻薬に近い薬を流し込まれた時にはもうこれほど泣くことはないと思った。
人生は、ルチアーノが思った以上に残酷だった。
そう知った時、ゲームの時ソファーの上でとは比べ物にならないほどわんわんと泣き続けた。あの頃のまだ楽観的だった自分と今の自分は違う。
それでもただ生きていく。
孤独ではない。友人はいる。
州の試験の後クラスは解体されルチアーノとアッバース、他の三人とそれぞれ別のクラスに編入された。そのクラスにいたふたりとルチアーノとアッバースは何ということもなく親しくなり、休み時間には四人でしゃべり、一緒に食べ、時に遊びに出かけるようになった。
時々アッバースはふっと目を浮かせることがある。
ルチアーノの視線に気づくと目立たぬように笑い、こちらもわずかに笑んで返す。
おそらく今ここにいないスティーブンとナラヤンのことを思っているのだろう。罪悪感が胸をよぎる。
休日にアッバースの家へ招かれた。
四人首を並べて、彼が子どもの時から覗いていたという階段から1階のスニーカーショップを眺める。
『本当だ。靴を買った人ってにこにこしてるんだ』
ルチアーノが言えばもうひとりが、
『靴が新しくなってうれしくない人間はいないってか』
ともつぶやく。
『スティーブンも同じこと言ったぜ、ここで』
ルチアーノの耳元でさっとささやいてから、
『だろ? だから俺も靴屋になるんだ』
アッバースは胸を張った。
お金を稼ぎ友人がいれば人生は何とかなるだろう。
今回の墓参、ルチアーノは気が進まなかった。とても皆に合わせる顔がない。だがルクミニー先生へ卒業の報告に行こうと言い出したのはアッバースで行かない理由づけが難しい。消極的な理由で参加したが久しぶりの元気な顔にはほっとした。アッバースに感謝だ。
なお学院では他クラスや別の学年ですら女子の転出が相次ぎ、十年生の教室など男子校のようになった。「誘拐された少女」と誤解されたくない親が転校させたのだろう。
「じゃあ行こう。バーラム、先生のお墓がきちんと映ってなかったら教えてくれ」
アッバースがスマホをルクミニーの墓へかざす。
それぞれに先生へ卒業の報告をし、冥福を祈った。
(ルクミニー先生。ごめんなさい。俺の担任になんてならなければ今もお元気で教えていらしたかもしれないのに)
婚約者の方と結婚して幸せな家庭をも持っていただろう。
(俺はともかく、他の皆の卒業を祝ってください)
最後まで膝をついていたヴィノードが立ち上がるとアッバースは言った。
「実は、先週ナラヤンと会った。ここにメッセージを持ってきている」
スマホを指す。
リアル人狼ゲームの時彼が「人狼」としてどう動いたか全て告白しているという。
「聞く気がある奴は聞いてやってくれないか」
「ちょっと待て」
イジャイの父が止め、車の方へ報告に行く。
「誰でも聞こえる場所でそういう話は止めて」
呼ばれて来たのは後発組の車を運転してきたラクシュミだ。
バスを避けること、首謀者ふたりが今も逃亡中であること、万一記者に追われた時の対策に駅からは車で移動し、墓地には警察官が立ち会う。イジャイの父が捜査担当者に確認しての指示である。立ち会いのひとりはその巡査部長なのだがもう一人わざわざムンバイからラクシュミが来たのは、
(俺の様子を見に来たのか)
素知らぬ顔はしていてくれるが少し落ち着かない。
結局、郊外のレストランの部屋をラクシュミが借り切ってその録画を上映することとなった。チャイと最初の軽食は、
「私からの卒業祝いだと思って」
だそうだ。
磨かれたマーブル模様の壁、装飾のついた椅子に無駄に大きなテーブルと豪華過ぎる。ルチアーノはアッバースと目を合わせて肩をすくめた。
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