【完結】死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く

miniko

文字の大きさ
8 / 200

8 体調不良の原因は?

しおりを挟む
 現実逃避も兼ねて、脳内でお父様に悪態をついていると、目の前のイケメンが「ねぇ」と私に呼び掛けた。

「はい、何でしょう?」

「オフィーリア嬢は、もしかして、僕の事が嫌いなのかな?」

 突然そう言われて、ヒクリと口の端が引き攣る。

「滅相もございませんわ。何故その様な事を?」

「自分で言うのも変だけど、一般的には、筆頭公爵家の嫡男との縁談って良縁だろう?
 大抵の人には喜んで貰えると思うんだけど、君は本当に全く興味が無さそうだし……、寧ろ、少し困っている様に見えるから」

 顔には出していないつもりだったのに、なかなか鋭いな。

「興味が無いだなんて……。勿論、とても光栄だと思っていますわ。
 ただ、私の様な立場の者にとっては、あまりにも身に余るお話でして、とても恐縮しておりますの」

 扇子で口元を隠しながらホホホと笑う。

 彼は、自分のせいで私が怪我をした訳でも無いのに、責任を取ろうとしてくれている優しい人だ。
 十八歳の記憶を持つ私から見たら、今のアイザックは幼さの残る可愛らしい男の子だけれど、同年代のご令嬢達がキャアキャア言うのは分かる気がする。

 だけど……、残念ながら今の私はアイザックを弟の様にしか思えないし、そうじゃなかったとしても、自分の命を賭けてまで恋をするほどの情熱は持てない。

「そう?
 嫌われてないなら良かったけど……。
 でも、婚約は望んでいないって事かな?」

 透明な水色の瞳に見詰められると、心の奥まで見透かされてしまいそうで、なんとも居心地が悪い。

「本当に残念ですが、私では相応しくありませんから」

「残念に思っている様には見えないんだよなぁ……」

 瞳を伏せた私に、アイザックが苦笑しながら呟いた時、背後から「ウッ……」と微かな呻き声が聞こえた。

 反射的に振り返ると、先程お茶を淹れてくれた公爵家の侍女が、片手で口元を覆いティーワゴンにもう片方の手をついた状態で辛うじて立っていた。
 彼女は微かに震える声で「失礼いたしました」と謝罪の言葉を吐き出す。

 一瞬だけ毒を警戒したが、来客対応中の侍女が飲食をする事は考えられない。
 それにスプレー噴霧式や毒針なども、厳重に警備された公爵邸で使用できるとは思えない。
 だとすれば、単なる体調不良か?
 伝染病だと厄介だけど、咳とか発疹とかも出てないし、どうだろう?
 いくつかの可能性を頭に浮かべながら、席を立つ。

「ちょっと、貴女!」

 声を掛けながら近寄った私に叱責されると思ったのか、彼女は大きく肩を震わせた。
 緩慢な動作で上げられた顔は、可哀想なくらいに青褪めている。

「申し訳……」

「謝らなくて良いのよ。
 怒っている訳では無いのだから。
 そんな事よりも、貴女、顔が真っ青になっているわ。
 もしかして、体調が悪いの?」

「申し……、あ、いえ、今朝は普通だったのですが、急に気持ちが悪く……」

 彼女は再び謝罪を口にしようとしたが、『謝らなくて良い』と言われたのを思い出したらしく、少し口籠もりながらも聞かれた事にだけ答えた。

「まあ、それはいけないわ。
 これまでも、急に体調を崩す事があったの?」

「いえ、大丈夫…、です。
 ユーニス、新しいお茶を……」

 ユーニスというのは、もう一人の侍女の名前らしい。
 どうやら冷めてしまったお茶を淹れ直そうとしているみたい。

「今はそんな事はどうでも良いわ。
 ねぇ、もしかして、浮腫みが酷かったり、強い眠気に襲われたり、いつもより体が怠かったりしない?」

 私の質問に、侍女は瞠目した。

「……何故それを?」

(やっぱり、これは多分……)

 前世でバイト先の女性社員が、同じ様な症状になったことがあった。

 でも、もしかしたら私の勘違いかもしれないし、センシティブな話でもある。
 他の人に聞かれない様に、彼女の耳元に口を寄せてコッソリと囁いた。

「直ぐにお医者様に診ていただいた方が良いわ。
 もしかしたら貴女、妊娠しているかもしれないから」

「……えっ!?」

 心当たりがあったのか、彼女は青かった顔を真っ赤にさせて視線を泳がせた。

しおりを挟む
感想 1,006

あなたにおすすめの小説

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ
恋愛
 王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。 「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」  しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。    完結致しました(2022/06/28完結表記) GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。 ★お礼★  たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます! 中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!

処理中です...