【完結】死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く

miniko

文字の大きさ
20 / 200

20 晴天の霹靂

しおりを挟む
 私達を乗せた馬車は、王都の中心街を目指してガタゴトと進んで行く。

「そもそもどうして、オフィーリアとベアトリスが友達になったんだ?」

「この前、お茶会で一緒になったの。
 アイザックに頼まれてたから、声を掛けてみたんだけど、話してみるととても楽しくて」

 嬉しそうに応えるベアトリスを見ていると、こっちまで嬉しくなる。
 楽しいと思ってくれていたのか。

「それで、オフィーリアを気に入って、無理矢理友達にしたのか?」

 胡乱な視線でベアトリスを見るアイザックだけど、私から言わせれば貴方と友達になった時だってかなり強引だったからね?

「無理矢理だなんて、そんな事してない……………、わよ、ね?」

 心外だといった感じで声を上げたベアトリスだが、途中で自信が無くなったのか最初の勢いを失い、不安そうに揺れる視線を私に送った。
 普段は凛とした眉が僅かに下がってしまった顔はなんとも可愛らしくて、思わずフフッと笑みを零す。

「はい。私も望んでベアトリス様とお友達になりました」

『それ見たことか』と言わんばかりに、「フフン」と得意気に胸を張るベアトリス。
 アイザックは「あ、そう」と、面白くもなさそうな顔で呟き、車窓に流れる街並みへと視線を移した。




 中心街にある大きな広場の前で馬車を降りた私達は、取り敢えずウインドウショッピングを楽しむ事にした。

「オフィーリア。はぐれるといけないから、はい」

 そう言って片手を差し出すアイザック。

「あ、いえ、私は大丈夫……」

「ズルいわ、アイザック。
 オフィーリアは私と手を繋ぐのよ!」

 私達が散策する予定のエリアは貴族向けの店が多い場所なので上品な雰囲気だし、警ら隊があちこちに居るから治安も良い。
 今日は人通りも然程多くないし、護衛騎士も連れて来ているので、はぐれる心配はないと思うのだけど……。

 私は二人に、迷子になる程の小さな子供だと思われているのだろうか?
 そりゃあ二人に比べれば子供っぽく見えるかもしれないけど、一応同じ年齢よ?

 結局、私を真ん中にして三人で手を繋ぐハメになった。
 何故だ?

 まあ、二人が満足そうだから、別に良いけどね。


 モザイク模様の石畳の左右には、レンガ造りの瀟洒な建物が建ち並び、看板や街灯なんかもレトロ可愛い。
 前世を思い出してから見る街並みは、まるでテーマパークの中にでも迷い込んだみたいで、歩いているだけでも気分が上がる。

 通りかかったぬいぐる店のショーウィンドウには、なんだか見覚えのあるキャラクターが鎮座していて、懐かしさについ目を奪われた。

「何か気になるものがあった?」

 ベアトリスの問いに『前世でお馴染みだったキャラがいたので』とは言えなくて、笑顔で「いいえ」と答える。


 特に目的もなく、三人で街をブラブラ歩いて、気になった店を片っ端から覗いてみる。
 ただそれだけなのに、彼等と一緒だと凄く楽しい。
 友人になって間もないけれど、きっと私は二人の事が好きなのだ。


 途中で入った雑貨屋では、花を象った可愛らしいヘアピンを見付けた。
 アイザックが「今日の記念に」と、私とベアトリスに色違いでプレゼントしてくれた。

 どうやら最近、ご令嬢達の間では、友人同士でお揃いの髪飾りを着ける事が流行っているらしい。
 ベアトリスは「オフィーリアとお揃い!」と、瞳を輝かせながらはしゃいで、アイザックにお礼を言っている。
 なんて可愛い生き物なんだ。

 私もアイザックにお礼を言うと、照れ臭そうに笑ってくれた。


 次に入った文具店では、レターセットを三種類購入した。
 二種類はアイザックやベアトリスに手紙を書く際にでも使おうと思って。
 そして、残りの一種類。「一番売れている」と店員に勧められたレターセットは、今後の断罪回避計画に必要な小道具になる予定だ。


 文具店を後にした私達は、再び街歩きを始め、平和な時間を過ごしていたのだが……。


「……うわっ……」

 不意にアイザックが呟いた。
 どうやら近くの高級料理店から出て来た人物に目を留めたらしく、眉根を寄せて小さな溜息をつく。

 彼の視線の先を追った私も「ゲッ」と令嬢らしくない呟きを漏らしそうになり、慌てて口をつぐんだ。

 そこにいたのは、銀糸の髪に紺色の瞳を持つ美少年。
 今世ではまだ会った事がないけれど、前世では、画面越しによく見ていた人物。
第二王子のクリスティアンだったのだ。

 まさか、出掛けた先で一番会いたくないキャラクターに遭遇してしまうなんて。

(なんでこんなにタイミングが悪いのよぉ!?
 お願いだから、コッチに気付かないで!)

 そんな願いも虚しく……。

 偶然こちらを向いたクリスティアンと、アイザックの視線が絡んだ。
 ハッと驚いた顔をしたクリスティアンは、次の瞬間、不機嫌そうなオーラを放ちながらズンズンと大股で私達に近寄って来たのだ。
 引き連れていた煌びやかな護衛騎士達が、少し慌てた様子でクリスティアンの後を追う。

(マジか。最悪だわ)

 学園に入学するまでは、第二王子と顔を合わせる機会なんてないと思っていたのに……!!

しおりを挟む
感想 1,006

あなたにおすすめの小説

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ
恋愛
 王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。 「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」  しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。    完結致しました(2022/06/28完結表記) GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。 ★お礼★  たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます! 中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!

処理中です...