【完結】死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く

miniko

文字の大きさ
81 / 200

81 新たな侍女

しおりを挟む
 公爵夫人とエイダに許可を得てから、私はパメラを抱っこしてソファーに座り直した。
 愛らしい巻き毛の天使は今、わたしの膝の上で上機嫌にビスケットを食べている。
 両手で持ったビスケットを小さな口でサクサクと齧っている様は、リスみたいでとても愛らしい。

「このビシュケットおいちいよ? フィーちゃんもたべゆ?」

『食べゆ?』が可愛過ぎないか?

 可愛さを武器にする新手の暗殺者は、どうやらフレデリカだけではなかったらしい。
 油断大敵である。

「まあ、ありがとう。パメラは優しいのね」

 ニコニコと差し出されたお菓子を、内心悶絶しながらも笑顔で受け取ると、褒められたパメラはヘヘっと照れ臭そうに笑った。

 二人の侍女は、私の目の前に座っている公爵夫人の背後に楚々とした立ち姿で控えながら、私とパメラの交流に微笑まし気な眼差しを向けている。

「では、今日は私にパメラを会わせてくださる為に、ご招待頂いたのでしょうか?」

 パメラの頭を撫でながら私が問うと、公爵夫人は軽く首を左右に振った。

「それもあるけど、エイダとユーニスを改めて紹介したくて。
 貴女の新しい専属侍女候補に推薦しようと思ってね」

「新しい侍女?」

 思ってもみなかった提案に驚いていると、夫人がクスッと笑った。

「勿論、リーザさんを解任しろって意味ではないのよ?
 オフィーリアは、嫁いでくる時にリーザさんを連れて来るのでしょう?」

「え? ええ、そうですね。
 リーザが望んでくれればですが……」

 まだ婚約が内定したばかりで、具体的な事を何も考えていなかった私は、少し戸惑いながらも頷いた。

「でも、筆頭公爵家の当主夫人としては、専属侍女が一人だけでは心許ないのよ。
 少なくとも三人は必要だわ」

 ウチは弱小伯爵家だから、使用人の数もヘーゼルダイン家と比べればかなり少ない。
 だから私の専属侍女はリーザだけだ。
 一人しか付けられないし、一人で充分だったから。
 リーザが休暇を取る日は、手の空いたメイドか、お母様の侍女に身支度を手伝ってもらっている。

 だが、筆頭公爵家の夫人ともなれば、そうもいかないのだろう。
 機密情報を扱うこともあるだろうし、身の危険を感じることも多い立場なのだから、きっとセキュリティ面は重要だ。
 常に側に置く者は、しっかりと教育された優秀な使用人達の中でも、特に信用出来る者でなければならないのかもしれない。

「お話は理解しましたが……、エイダとユーニスは、それで良いの?」

 私がアイザックの妻となった後ならば、専属侍女の座を狙う者も多いだろう。
 しかし、私達の婚約はまだ内定段階だ。
 婚約の書類は既に王宮に提出済みだと聞くが、高位に位置する家ほど婚約や婚姻、爵位の相続などの届け出は、受理されるまでの審査に時間がかかるらしい。
 しかも、実際に嫁いでくるのは早くても学園を卒業した後になる。
 折角公爵家の侍女になったのに、今はまだ末端の伯爵家の小娘に過ぎない私に忠誠を誓わねばならないって、彼女達にとってメリットとデメリットどちらが大きいのだろう?

 そう思って公爵夫人の後ろの二人に問い掛けると、二人は首が取れそうな位に勢い良く頷いた。
 おおっ、圧が凄い。

「私達は、自ら『オフィーリア様にお仕えしたい』と、アイザック様にお願いしたのです!」

「そういう訳だから、受け入れてやってくれないかしら?」

「ええ、そういう事であれば、私に異論はありません」

「そうと決まれば、早速今日からユーニスを貴女に付かせようと思うのだけど。
 エイダはまだ子供が小さいから、ウチに残って当主夫人の生活の流れや仕事について覚えてもらって、ユーニスには貴女の近くで貴女の趣味趣向や行動パターンなどを学んでもらいたいの。
 既にエヴァレット伯爵には、話を通してあるわ」

 oh……。
 父よ、なぜ私にそれを報告しない?

 いつの間にやら、外堀がすっかり埋まってしまっている。
 そんなに囲い込まなくても、もう逃げたりしないよ?

「分かりました。よろしくお願いします」

「ユーニスにはアイザックが嬉々として色んな技術を教え込んでいたから、かなり優秀よ?
 侍女の仕事は勿論、諜報活動も得意だし、体術も習得済みだし、暗器も扱えるから護衛も出来るわ。
 好きなように使ってあげてね」

 は? 諜報? 暗器?
 アイザック、侍女に何仕込んでくれてるんすかっ!?

 驚いて思わずユーニスを凝視する。
 小柄でちょっと童顔な彼女は、とてもそんな荒事などとは無縁な存在に見えるが……。

「改めまして、ユーニスと申します。
 得意な仕事は情報収集です。
 オフィーリア様にお仕えする事が出来て、大変光栄です。
 本日からよろしくお願い致しますっ!!」

 満面の笑みで自己紹介をしたユーニスに苦笑を返す。

(お茶を淹れたり、髪を結ったり、ドレスを選んだりするよりも、情報収集が得意な侍女って一体……?)

 因みに、エイダの方はデスクワーク系のスキルを磨かれているらしく、計略を図る事が得意らしい。

(私に仕える事になったのって、侍女だったよね?)
しおりを挟む
感想 1,006

あなたにおすすめの小説

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ
恋愛
 王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。 「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」  しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。    完結致しました(2022/06/28完結表記) GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。 ★お礼★  たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます! 中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!

処理中です...