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139 防いだはずの
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礼儀も忘れてノックもせずに乱入したアイザックは、その場の状況を視界に映すと、ポカンと口を半開きにして固まった。
彼の前髪は汗で額に貼り付いているし、呼吸も服装も乱れている。
取り乱した姿は私を心配してくれた証だと思うと、なんだか少し嬉しかった。
「私は無事ですよ。アイザック様」
「そう、みたいだね。……良かった」
アイザックは、まだ拳を握った状態だった私と、鳩尾を片手で押さえながら壁に凭れてなんとか立っているサディアス殿下を交互に眺め、困惑した表情で呟いた。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。急いで駆け付けてくださって、ありがとうございます。
ですが、ここは王太子宮ですし、流石にノックもしないのはマズいのではないですか?」
そう注意すると、アイザックは開け放たれたままの扉をコンコンと叩いて「失礼します」とおざなりに言った。
それ乱入してからやっても意味ないから。
サディアス殿下はアイザックの態度を気にした様子もなく、「意外と早かったな」なんて、呑気な感想を吐いた。
「で? 何をしでかしたんですか?」
そう詰め寄ったアイザックに、サディアス殿下は苦笑いを返した。
「どうして私が何かしたって決め付けるんだ?
まあ、間違ってはいないけど」
「当たり前じゃないですか。
僕のオフィーリアは強くて美しいですが、何の非も無い相手に攻撃を加えたりはしません」
サディアス殿下を睨め付けながら、アイザックは私を背に隠した。
『美しい』は関係なくない?
ってゆーか、婚約者の令嬢が王太子に暴力を振るったって知ったら、ドン引きするのが普通だよね?
チラリと振り向いて、ウットリした微笑みを向けるのはやめて。
「さて。何があったのか、僕にも納得出来るご説明をお願いしますね、王太子殿下」
冷ややかな声で殿下に向かってそう言ったアイザックへ、侍女さんがスッと片手を上げて発言の許可を求めた。
「僭越ながら私がご報告させて頂いてもよろしいでしょうか」
「確かに、第三者の証言が一番公平ですね。
ではお願いします」
アイザックに促された侍女さんは、私がこの部屋へ入ってから今迄の出来事を、細大漏らさず、ありのままに報告した。
話が進むに連れて、アイザックが不穏な空気を発し始める。
部屋の温度が急激に下がったのは、気のせいじゃないと思う。
「ふぅん。本心ではないとは言え、僕の最愛を愚弄したんですね?
腕の一本や二本、失う覚悟は出来ているんでしょうね?」
「オフィーリア嬢には本当に申し訳ない事をした。
だけど、ほら、そもそもお前が彼女の事となるとそうやって暴走するから心配したんじゃないか。
まあ、私も人の事は言えないが……」
サディアス殿下の言う事も一理あるんだけど、お前が言うなよって突っ込みたい。
まあ、でも私は思いっきり殴ったから、結構スッキリしちゃったんだよね。
「アイザック様、サディアス殿下の腕を潰すのは、執務能力が落ちるのでお勧めしません」
今回された事は腹立たしいけど、サディアス殿下は自分の非を認めて臣下に頭を下げられる人だ。
その部分は評価出来ると感じた。
それに、サディアス殿下を除くと、王位継承権を持つ人達の中で一番優秀なのは、多分アイザックなんだよな。
継承権の順位は低いけど、絶対アイザックを擁立しようとする動きが出て来る。
私が王太子妃になるとか無理だし、婚約解消はもっと無理だと思う(色んな意味で)。
「それもそうだな。
では殿下、今回の件は大きな貸しが一つという事で。
いつか返して頂きます」
「分かった。覚えておくよ」
なんとか互いが納得する形に落ち着いて、ホッと胸を撫で下ろしていると、再び部屋の外が騒がしくなった。
「今度は何かしら?」
慌ただしいノックの後に入室したのは、私を此処へ連れて来た側近さんだった。
「大変です、殿下。
フォーガス伯爵領の農村部にて、伝染病の蔓延が確認されました」
私は驚きに目を見開き、アイザックを見上げた。
眉根を寄せた深刻な表情の彼と目が合う。
「フォーガス伯爵領と言えば、ベアトリス様の家の領地の隣…、でしたよね……?
確か、王都から見て東側に位置する……」
そんなのおかしい。
だって、ゲームの中でパンデミックが起こるのは、北の地域だったはずで……。
嘘でしょ? もしかして私、何か間違えたの?
私が間違えたせいで、人が、死ぬかもしれないの?
そんな考えが頭をよぎった瞬間、私の視界がグラリと大きく揺れた。
彼の前髪は汗で額に貼り付いているし、呼吸も服装も乱れている。
取り乱した姿は私を心配してくれた証だと思うと、なんだか少し嬉しかった。
「私は無事ですよ。アイザック様」
「そう、みたいだね。……良かった」
アイザックは、まだ拳を握った状態だった私と、鳩尾を片手で押さえながら壁に凭れてなんとか立っているサディアス殿下を交互に眺め、困惑した表情で呟いた。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。急いで駆け付けてくださって、ありがとうございます。
ですが、ここは王太子宮ですし、流石にノックもしないのはマズいのではないですか?」
そう注意すると、アイザックは開け放たれたままの扉をコンコンと叩いて「失礼します」とおざなりに言った。
それ乱入してからやっても意味ないから。
サディアス殿下はアイザックの態度を気にした様子もなく、「意外と早かったな」なんて、呑気な感想を吐いた。
「で? 何をしでかしたんですか?」
そう詰め寄ったアイザックに、サディアス殿下は苦笑いを返した。
「どうして私が何かしたって決め付けるんだ?
まあ、間違ってはいないけど」
「当たり前じゃないですか。
僕のオフィーリアは強くて美しいですが、何の非も無い相手に攻撃を加えたりはしません」
サディアス殿下を睨め付けながら、アイザックは私を背に隠した。
『美しい』は関係なくない?
ってゆーか、婚約者の令嬢が王太子に暴力を振るったって知ったら、ドン引きするのが普通だよね?
チラリと振り向いて、ウットリした微笑みを向けるのはやめて。
「さて。何があったのか、僕にも納得出来るご説明をお願いしますね、王太子殿下」
冷ややかな声で殿下に向かってそう言ったアイザックへ、侍女さんがスッと片手を上げて発言の許可を求めた。
「僭越ながら私がご報告させて頂いてもよろしいでしょうか」
「確かに、第三者の証言が一番公平ですね。
ではお願いします」
アイザックに促された侍女さんは、私がこの部屋へ入ってから今迄の出来事を、細大漏らさず、ありのままに報告した。
話が進むに連れて、アイザックが不穏な空気を発し始める。
部屋の温度が急激に下がったのは、気のせいじゃないと思う。
「ふぅん。本心ではないとは言え、僕の最愛を愚弄したんですね?
腕の一本や二本、失う覚悟は出来ているんでしょうね?」
「オフィーリア嬢には本当に申し訳ない事をした。
だけど、ほら、そもそもお前が彼女の事となるとそうやって暴走するから心配したんじゃないか。
まあ、私も人の事は言えないが……」
サディアス殿下の言う事も一理あるんだけど、お前が言うなよって突っ込みたい。
まあ、でも私は思いっきり殴ったから、結構スッキリしちゃったんだよね。
「アイザック様、サディアス殿下の腕を潰すのは、執務能力が落ちるのでお勧めしません」
今回された事は腹立たしいけど、サディアス殿下は自分の非を認めて臣下に頭を下げられる人だ。
その部分は評価出来ると感じた。
それに、サディアス殿下を除くと、王位継承権を持つ人達の中で一番優秀なのは、多分アイザックなんだよな。
継承権の順位は低いけど、絶対アイザックを擁立しようとする動きが出て来る。
私が王太子妃になるとか無理だし、婚約解消はもっと無理だと思う(色んな意味で)。
「それもそうだな。
では殿下、今回の件は大きな貸しが一つという事で。
いつか返して頂きます」
「分かった。覚えておくよ」
なんとか互いが納得する形に落ち着いて、ホッと胸を撫で下ろしていると、再び部屋の外が騒がしくなった。
「今度は何かしら?」
慌ただしいノックの後に入室したのは、私を此処へ連れて来た側近さんだった。
「大変です、殿下。
フォーガス伯爵領の農村部にて、伝染病の蔓延が確認されました」
私は驚きに目を見開き、アイザックを見上げた。
眉根を寄せた深刻な表情の彼と目が合う。
「フォーガス伯爵領と言えば、ベアトリス様の家の領地の隣…、でしたよね……?
確か、王都から見て東側に位置する……」
そんなのおかしい。
だって、ゲームの中でパンデミックが起こるのは、北の地域だったはずで……。
嘘でしょ? もしかして私、何か間違えたの?
私が間違えたせいで、人が、死ぬかもしれないの?
そんな考えが頭をよぎった瞬間、私の視界がグラリと大きく揺れた。
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