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10 白いドレスの女神(ダニエル視点)
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ウエディングドレスに身を包んだトリシアを見た時、本気で女神がそこに居るのかと思った。
(・・・・・・いつの間に私は天に召されたのだろうか?)
純白のドレスの胸元と裾には、小粒のダイヤがふんだんに縫い付けられていて、陽の光を受けてキラキラと光る。
しかし、その光も、トリシア自身が発する眩い輝きの前では霞んでしまいそうな程である。
散々悩んでドレスを選んだ甲斐があった。
最っ高に似合っている。
複雑な形に結い上げられた、艶やかなミルクティー色の髪も、彼女の美しさを引き立てている。
うなじに落ちる後れ毛の本数まで完璧だ。
露わになった彼女の白い肩が扇情的で、誰にも見せたく無い様な、私の妻だと自慢して歩きたい様な、相反する気持ちが交互にやって来る。
私が完全に自分の世界にトリップしていると、控えめに呼び掛ける声が聞こえてきて、漸く我に帰った。
「ダン?どうしました?」
「ああ。・・・済まない。
とても似合っているよ」
(ああぁぁっっ!!!!
何故もっと気の利いた褒め言葉が言えないんだっっ!?
私は馬鹿かっ!!)
「ふふっ。ありがとうございます」
トリシアは私の簡素な褒め言葉にも、頬を染めて嬉しそうに微笑んでくれた。
(あぁっ!可愛い!
可愛過ぎるっ!天使かっ!?)
内心軽くパニックを起こしている私だが、長年培った感情を隠す表情で取り繕えている筈・・・・・・。
だが、トリシアの後ろに控えているマリベルとソニアは、肩を震わせて笑いを堪えていた。
後で覚えておけよ!
礼拝堂の重々しい扉が開く。
緊張で震えるトリシアに後ろ髪を引かれながら、私は一人で入場した。
トリシアの入場を待つ間、親族の席が目に入る。
寄り添うセレスティナとエルミニオは相変わらず仲が良さそうだ。
何かを耳打ちしては微笑み合ったり、髪や背中を撫でたりしている。
久し振りにこの光景を見て、トリシアが傷付かなければ良いのだが・・・・・・。
しかし、予想に反して、バージンロードを近付いて来るトリシアは、落ち着いた様子だった。
時折、トリシアが義兄の方へ視線を向けている様に見えて胸の奥がズキズキ痛んだが、彼女は幸せそうに見える微笑みを浮かべたままだった。
おそらくそれは、ただの演技であり、その胸の内にどんな感情が渦巻いているのかは、窺い知れないけれど。
何事も無く式は進行して、いよいよもうすぐ・・・・・・
私は昨日の会話を思い出していた。
『結婚式の誓いのキスだが・・・頬か額にするのはどうだろうか?』
義兄の目の前で、愛していない男に唇を奪われるなんて、きっと辛いだろうと考えての提案だった。
トリシアの気持ちを考えての事でもあるが、本番で泣いて嫌がられたりしたら、絶対に立ち直れないと言う思いもあった。
『お気遣いは有り難いですが、唇にして頂いた方が良いと思いますよ。
折角、社交界で仲の良い婚約者同士だと見られ始めた所なのに、誓いのキスを頬にしたりしたら台無しです。
・・・・・・ダンが嫌で無ければ、ですが』
恥ずかしそうに目を伏せる彼女に、心臓がバクバクして、どうにかなりそうだ。
(嫌な訳無いだろう!!)
『・・・勿論、私の方は唇でも構わない。(寧ろそうしたい!)
やっぱり嫌だと思ったら、式の最中でも構わないから合図してくれ』
───だが、トリシアからは今の所、何の合図も無い。
良いのか?
本当に?
俄に緊張して来た。
もはや、表情を取り繕えているかも分からない。
「それでは、誓いの口付けを」
神父の言葉に私達は向かい合う。
恭しい手つきでヴェールを上げると、潤んだ栗色の瞳が真っ直ぐにこちらを見た。
私はゴクリと唾を飲み込む。
逡巡する私を促す様に、愛らしい桜色の唇が緩く弧を描いた。
『大丈夫です』
そう言われた気がして、ゆっくりと顔を近付ける。
トリシアが嫌がらずに瞳を閉じたのを確認して、彼女の唇にそっと触れた。
(・・・・・・いつの間に私は天に召されたのだろうか?)
純白のドレスの胸元と裾には、小粒のダイヤがふんだんに縫い付けられていて、陽の光を受けてキラキラと光る。
しかし、その光も、トリシア自身が発する眩い輝きの前では霞んでしまいそうな程である。
散々悩んでドレスを選んだ甲斐があった。
最っ高に似合っている。
複雑な形に結い上げられた、艶やかなミルクティー色の髪も、彼女の美しさを引き立てている。
うなじに落ちる後れ毛の本数まで完璧だ。
露わになった彼女の白い肩が扇情的で、誰にも見せたく無い様な、私の妻だと自慢して歩きたい様な、相反する気持ちが交互にやって来る。
私が完全に自分の世界にトリップしていると、控えめに呼び掛ける声が聞こえてきて、漸く我に帰った。
「ダン?どうしました?」
「ああ。・・・済まない。
とても似合っているよ」
(ああぁぁっっ!!!!
何故もっと気の利いた褒め言葉が言えないんだっっ!?
私は馬鹿かっ!!)
「ふふっ。ありがとうございます」
トリシアは私の簡素な褒め言葉にも、頬を染めて嬉しそうに微笑んでくれた。
(あぁっ!可愛い!
可愛過ぎるっ!天使かっ!?)
内心軽くパニックを起こしている私だが、長年培った感情を隠す表情で取り繕えている筈・・・・・・。
だが、トリシアの後ろに控えているマリベルとソニアは、肩を震わせて笑いを堪えていた。
後で覚えておけよ!
礼拝堂の重々しい扉が開く。
緊張で震えるトリシアに後ろ髪を引かれながら、私は一人で入場した。
トリシアの入場を待つ間、親族の席が目に入る。
寄り添うセレスティナとエルミニオは相変わらず仲が良さそうだ。
何かを耳打ちしては微笑み合ったり、髪や背中を撫でたりしている。
久し振りにこの光景を見て、トリシアが傷付かなければ良いのだが・・・・・・。
しかし、予想に反して、バージンロードを近付いて来るトリシアは、落ち着いた様子だった。
時折、トリシアが義兄の方へ視線を向けている様に見えて胸の奥がズキズキ痛んだが、彼女は幸せそうに見える微笑みを浮かべたままだった。
おそらくそれは、ただの演技であり、その胸の内にどんな感情が渦巻いているのかは、窺い知れないけれど。
何事も無く式は進行して、いよいよもうすぐ・・・・・・
私は昨日の会話を思い出していた。
『結婚式の誓いのキスだが・・・頬か額にするのはどうだろうか?』
義兄の目の前で、愛していない男に唇を奪われるなんて、きっと辛いだろうと考えての提案だった。
トリシアの気持ちを考えての事でもあるが、本番で泣いて嫌がられたりしたら、絶対に立ち直れないと言う思いもあった。
『お気遣いは有り難いですが、唇にして頂いた方が良いと思いますよ。
折角、社交界で仲の良い婚約者同士だと見られ始めた所なのに、誓いのキスを頬にしたりしたら台無しです。
・・・・・・ダンが嫌で無ければ、ですが』
恥ずかしそうに目を伏せる彼女に、心臓がバクバクして、どうにかなりそうだ。
(嫌な訳無いだろう!!)
『・・・勿論、私の方は唇でも構わない。(寧ろそうしたい!)
やっぱり嫌だと思ったら、式の最中でも構わないから合図してくれ』
───だが、トリシアからは今の所、何の合図も無い。
良いのか?
本当に?
俄に緊張して来た。
もはや、表情を取り繕えているかも分からない。
「それでは、誓いの口付けを」
神父の言葉に私達は向かい合う。
恭しい手つきでヴェールを上げると、潤んだ栗色の瞳が真っ直ぐにこちらを見た。
私はゴクリと唾を飲み込む。
逡巡する私を促す様に、愛らしい桜色の唇が緩く弧を描いた。
『大丈夫です』
そう言われた気がして、ゆっくりと顔を近付ける。
トリシアが嫌がらずに瞳を閉じたのを確認して、彼女の唇にそっと触れた。
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