【完結】女嫌いの公爵様は、お飾りの妻を最初から溺愛している

miniko

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13 胸の高鳴り

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「凄いな。トリシアは手先が器用で、芸術的なセンスがあるのだな。
ピアノの腕も素晴らしかった」

あまり表情を変えないダンが、微かに目尻を下げて目を細めた。
本気で褒めてくれているのだろうと感じて、嬉しくなる。
そう言えば、あの人も───。

「有難うございます。
エルミニオ様も、よくそう言って褒めてくれました」

「・・・そうか」

あれっ?
なんだろう?
急に機嫌が降下した気がする。
・・・気のせい、だよね?


「・・・ん?
ダンの前でピアノを弾いた事、ありましたっけ?」

「いや、学園で、たまたま耳に入った事があったんだ」

「そうなんですね。
まさか、学生時代から私の存在をご存知だったなんて、思いませんでした」

ダンは学生時代から有名人だったから、勿論私は彼の存在を認識していた。
でも、全く接点が無かったから、私の事を認識されているとは思わなかった。
まあ、あの美しいセレスティナの、地味な妹として、ある意味私も有名だったのかも知れないが・・・・・・。
長年のコンプレックスが顔を出して、少々気落ちしてしまいそうだったが、美しい景色に目を移して、心を落ち着かせた。

自然って良いな。
癒される。
ダンと馬に乗るのは緊張したし、恥ずかしかったけど、連れて来て貰えて良かった。


「そろそろ食事にしようか?」

バスケットの中には、色々な具材のサンドイッチ。
私が好きな、ハムとチーズのサンドイッチも・・・・・・

「あ、ダンが好きなローストビーフのサンドイッチもありますね」

「・・・何故分かった?
言った事があったか?」

微かに目を見開き、驚いた表情をしているのが、少し可愛い。

「いいえ。でも、食べる時に、いつも少しだけ嬉しそうです」

「私は無表情で、感情が分かりにくいと言われるのだが・・・」

「ええ、最初は分かりにくかったですけど、長く一緒に居ると、少しは分かるようになりますよ」

ふふん。と、得意気に胸を張って見せる。

「そうか・・・」

呟いた彼は、なんだか嬉しそうに見えた。


大自然の中での贅沢な食事を終え、少し散歩をする事にした。
木漏れ日の中を深呼吸しながら歩くのは気持ち良かった。
今日は私も乗馬用のパンツとブーツを履いているので、とても動き易い。
これならば、渓流の岩場も歩けるのでは無いだろうか?
私は無謀にも、水辺に近付こうとした。

「もう少し、滝の近くに寄ってみたいのですが・・・」

「岩場は滑り易いから、足元に気を付け・・・」
「きゃあ!」

言われたそばから足を滑らせ、体が大きく傾く。
マズい!と思ったが、覚悟していた衝撃はやって来ず、代わりに温かな腕に抱き止められた。

「危なかったな」

見上げると、心配そうな青紫の瞳と視線が絡まった。

(近い!!)

途端に頬に熱が集まる。
恥ずかしさに俯いた私の視界に、今度は川に突っ込んだダンの左足が映った。

(嘘でしょ!?)

申し訳無さに、今度は一気に血の気が引いた。

「ご、ご、ごめんなさいぃ!!!」

平謝りの私を見て、彼はフハッと吹き出して、声を上げて笑った。

「赤くなったり青くなったり、忙しそうだな。
そんなに心配しなくても、今日は少し暑いくらいだから、冷たい水が気持ち良いよ」

こんなに楽しそうに笑うダンを初めて見た。

なんだろう、胸が、ドキドキする。
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