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3 許されない想い
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高位貴族の登場に、怯え切った表情を見せる令息達に、エルミニオ様は鋭い眼差しを向ける。
「君は確か、マエスタス伯爵家の嫡男だったね。
安心したまえ。
アルバラード侯爵は、大事な娘をそんな風に思っている男に近付けさせたりはしないから。
勿論、僕も、ファルケ侯爵家も絶対に許さないしね。
僕のセレスティナは確かに美しいけれど、パトリシアだって別の美しさを持っている。
それに、彼女はセレスティナに負けないくらい聡明で、芸術的な才能にも長けているし、誰にでも優しい。
まあ、君達が僕の義妹の魅力を知る必要は無いけどね。
もう一生関わる事は無いだろうから」
冷たく言い放たれて、令息達は真っ青になって、ガタガタ震え始めた。
見た所、彼等は全員伯爵家以下の家柄の様である。
二つの侯爵家から睨まれる事になれば、貴族社会でこれから生きて行くのに苦労するだろう。
自業自得なので、可哀想とは思わないけれど。
・・・・・・そんな風にどうでも良い事を必死で考えていたのは、自分の心に芽生えた感情を、なんとか誤魔化そうとしたからかも知れない。
しかし、そんな努力も虚しく、胸の奥からは歓びが勝手に湧き上がってくる。
だって、お父様以外の男性に、私にもお姉様とは違う魅力があるのだと認めて貰えたのは初めてだったのだ。
嬉しいのは当たり前じゃないか。
では、ドキドキするのは何故?
頬が熱くなるのは、何故?
彼が愛しているのは、お姉様なのだと分かっている。
私へ向ける感情は、義妹に対しての好意でしかないのだという事も。
それでも私は、胸の高鳴りを止める事が出来なかったのだ。
初めてお姉様が妬ましいと思った。
私が欲しい物をなんでも持っているお姉様は、当たり前の様にエルミニオ様にも愛されているのだ。
───お姉様は狡い。
そんな風に醜い考えを持ってしまう自分の事が、吐き気がする程嫌いになった。
それから十一年も経った今でも、私はこの初恋に囚われたままだ。
この気持ちは、誰にも知られてはいけない。
何も望んではいけない。
大好きなお姉様を傷付けたくは無い。
大好きなエルミニオ様を困らせたくも無い。
誰かを傷付けて、自分も傷付くしかない恋ならば、捨ててしまいたいと何度も願った。
でも、どんなに捨てようとしても、捨てられなかった。
婚約者候補の調査の過程でそれを知ったダニエル様は、私の恋心を否定しなかった。
契約結婚だから、お互いに愛は必要無いと言った。
それは、この想いを無理に捨てなくて良いという意味でもある。
私の為などでは無く、きっとダニエル様にとって好都合な話なのだろう。
だが、彼が提案してくれた契約は、私にとっても本当に救いだったのだ。
「パトリシア?
どうした?ボーッとしてたぞ。
二人の結婚式が、そんなにショックだったか?」
お姉様の人生の晴れ舞台の最中に、過去を思い出してボンヤリとしていた私は、耳元で囁かれた婚約者の呼び掛けで我に返った。
心配そうな瞳で私の顔を覗き込む様子は、とても女嫌いには見えない。
結婚式は順調に進んでおり、新郎新婦が誓いの言葉を述べている所だった。
「ご心配をおかけして、申し訳ありません。
ダニエル様のお陰で思う存分涙を流せて、少しスッキリしました。
有難うございます」
まだ少しだけ潤んだ瞳で微笑むと、ダニエル様はフッと視線を逸らし、「そうか」と一言だけ呟いた。
その耳が少しだけ赤くなっている。
お礼を言われて照れたのだろうか?
女嫌いの公爵様は、案外可愛い所があるようだ。
「君は確か、マエスタス伯爵家の嫡男だったね。
安心したまえ。
アルバラード侯爵は、大事な娘をそんな風に思っている男に近付けさせたりはしないから。
勿論、僕も、ファルケ侯爵家も絶対に許さないしね。
僕のセレスティナは確かに美しいけれど、パトリシアだって別の美しさを持っている。
それに、彼女はセレスティナに負けないくらい聡明で、芸術的な才能にも長けているし、誰にでも優しい。
まあ、君達が僕の義妹の魅力を知る必要は無いけどね。
もう一生関わる事は無いだろうから」
冷たく言い放たれて、令息達は真っ青になって、ガタガタ震え始めた。
見た所、彼等は全員伯爵家以下の家柄の様である。
二つの侯爵家から睨まれる事になれば、貴族社会でこれから生きて行くのに苦労するだろう。
自業自得なので、可哀想とは思わないけれど。
・・・・・・そんな風にどうでも良い事を必死で考えていたのは、自分の心に芽生えた感情を、なんとか誤魔化そうとしたからかも知れない。
しかし、そんな努力も虚しく、胸の奥からは歓びが勝手に湧き上がってくる。
だって、お父様以外の男性に、私にもお姉様とは違う魅力があるのだと認めて貰えたのは初めてだったのだ。
嬉しいのは当たり前じゃないか。
では、ドキドキするのは何故?
頬が熱くなるのは、何故?
彼が愛しているのは、お姉様なのだと分かっている。
私へ向ける感情は、義妹に対しての好意でしかないのだという事も。
それでも私は、胸の高鳴りを止める事が出来なかったのだ。
初めてお姉様が妬ましいと思った。
私が欲しい物をなんでも持っているお姉様は、当たり前の様にエルミニオ様にも愛されているのだ。
───お姉様は狡い。
そんな風に醜い考えを持ってしまう自分の事が、吐き気がする程嫌いになった。
それから十一年も経った今でも、私はこの初恋に囚われたままだ。
この気持ちは、誰にも知られてはいけない。
何も望んではいけない。
大好きなお姉様を傷付けたくは無い。
大好きなエルミニオ様を困らせたくも無い。
誰かを傷付けて、自分も傷付くしかない恋ならば、捨ててしまいたいと何度も願った。
でも、どんなに捨てようとしても、捨てられなかった。
婚約者候補の調査の過程でそれを知ったダニエル様は、私の恋心を否定しなかった。
契約結婚だから、お互いに愛は必要無いと言った。
それは、この想いを無理に捨てなくて良いという意味でもある。
私の為などでは無く、きっとダニエル様にとって好都合な話なのだろう。
だが、彼が提案してくれた契約は、私にとっても本当に救いだったのだ。
「パトリシア?
どうした?ボーッとしてたぞ。
二人の結婚式が、そんなにショックだったか?」
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心配そうな瞳で私の顔を覗き込む様子は、とても女嫌いには見えない。
結婚式は順調に進んでおり、新郎新婦が誓いの言葉を述べている所だった。
「ご心配をおかけして、申し訳ありません。
ダニエル様のお陰で思う存分涙を流せて、少しスッキリしました。
有難うございます」
まだ少しだけ潤んだ瞳で微笑むと、ダニエル様はフッと視線を逸らし、「そうか」と一言だけ呟いた。
その耳が少しだけ赤くなっている。
お礼を言われて照れたのだろうか?
女嫌いの公爵様は、案外可愛い所があるようだ。
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