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22 契約の解除
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ダンは少し泣きそうな顔で、私に言った。
「君ほど美しくて魅力的な女性は居ない。
私にとって、君だけが特別だった。
私は君を愛していたんだ。
婚約する前から、ずっと・・・・・・」
「え・・・・・・?」
愛している?
誰を?
私、を・・・?
一瞬、頭が真っ白になって、何を言われたのか分からなかった。
少しづつ、ジワジワとその意味が胸に染み込んでくると、先程迄の苦しかった気持ちが綺麗に消えて行く。
苦しみは消えた筈なのに・・・・・・
何故か、涙が次々に零れて、止まらない。
ダンがハンカチを差し出したので、遠慮なくそれで頬を拭った。
彼は静かに私の反応を待っている。
「う、そ・・・・・・」
掠れた声で呟くのが精一杯だった。
「本当。ずっと騙していて済まない」
「・・・だって私を、愛さ、ないって・・・言った」
涙で声が詰まるが、必死に言葉を紡いだ。
彼の想いを知りたくて。
「そうだね。悪かった。
あの頃の君は、義兄への想いが忘れられなくて、苦しんでいただろう?
だから、私が告白したりすれば、その想いを早く捨てなければと思わせて、益々苦しめるんじゃないかと思った。
それに、・・・・・・格好悪いけど、君に振られるのが分かりきっているのに、告白するのが怖くもあった」
最後の方は、少し気まずそうに目を逸らされた。
自分が傷付くのが分かっていて向き合うのは、とても怖い。
それは、先程まで私が抱えていた気持ちと全く同じだから、よく理解出来る。
───じゃあ、本当に?
『お姉様みたいな美貌は無くても、いつかは私だけを想ってくれる殿方と、出逢う事が出来るかしら』
幼い頃に捨ててしまった私の夢は、いつの間にか叶っていたのだ。
歓びと戸惑いと・・・、他にも様々な思いが入り混じった、複雑な感情が湧いてくる。
混乱を極めている私は、何も言葉を返せなかった。
「・・・・・・ごめん。
折角、君が次の恋に進もうとしてる時に、急にこんな事を言うなんて、卑怯だよね。
無理に引き止めたくて、告白した訳じゃないんだ。
君が幸せになれるなら、私の事は気にせずに、ここを出て行ってくれても構わない。
だけど、君には自分の価値に気付いて欲しくて・・・。
君は素晴らしい女性だよ。
皆んなに愛されて当然の人だ。
君の次の恋が、上手くいくかは分からないけど、きっとこれから、私以外にも沢山の人が君を好きになるから・・・」
待って。
違う。
そうじゃない。
「・・・要ら、ない」
「え?」
「ダン以外は、要らない」
沢山の涙を流した私の喉からは、掠れた小さな声しか出なかった。
涙を拭って、深く、深く、息を吐く。
呼吸を整えて、ゆっくり丁寧に伝えたい。
もう決して、間違わない様に───。
「・・・私が好きになったのは、ダンだから、貴方以外の愛は要らない」
彼の目を見てそう伝えれば、美しいタンザナイトの瞳が、少しづつ見開かれていく。
無表情な彼が、私にだけ見せてくれる、様々な顔がとても愛しい。
「本当に・・・?」
「はい。
・・・・・・だから、離縁しなければいけないかと思って、悩んでいました」
「は!?なんで?」
「私がエルミニオ様以外を好きになったら、離縁するって契約だったではないですか。
そこにはダンも含まれるかも知れないと・・・」
「そのパターンは想定してなかった・・・」
「お飾りの妻に想いを向けられても、貴方が困るかもしれないと思って・・・。
それに、これ以上好きになってしまったら、別れるのが辛くなるから・・・、だから、今の内に離れなければと思ったのです」
私の告白に、彼は苦しそうに顔を歪ませた。
「もう二度と君を不安にさせないと誓うから、これからも、ここに居てくれないか?」
「貴方が、そう望んでくれるのなら」
立ち上がり、私の隣まで移動したダンは、跪いて、私の手を取る。
蕩ける様に甘い、青紫の瞳と視線が絡んだ。
「トリシア。君を愛している。
誰にも負けない位に。
だからどうか、本当の妻になって、ずっと、一生、私の側にいて欲しい」
私の手の平に、優しいキスが落ちて来た。
キスをする場所によって、その意味は変わるという。
手の平へのキス。
その意味は〝懇願〟
「・・・はい。喜んで」
答えた声は少し震えてしまった。
再び滲んだ視界に映るダンの笑顔は、それまで見た中で一番、幸せそうだった。
こうして私達の契約結婚は終了し、本物の夫婦となったのだ。
「君ほど美しくて魅力的な女性は居ない。
私にとって、君だけが特別だった。
私は君を愛していたんだ。
婚約する前から、ずっと・・・・・・」
「え・・・・・・?」
愛している?
誰を?
私、を・・・?
一瞬、頭が真っ白になって、何を言われたのか分からなかった。
少しづつ、ジワジワとその意味が胸に染み込んでくると、先程迄の苦しかった気持ちが綺麗に消えて行く。
苦しみは消えた筈なのに・・・・・・
何故か、涙が次々に零れて、止まらない。
ダンがハンカチを差し出したので、遠慮なくそれで頬を拭った。
彼は静かに私の反応を待っている。
「う、そ・・・・・・」
掠れた声で呟くのが精一杯だった。
「本当。ずっと騙していて済まない」
「・・・だって私を、愛さ、ないって・・・言った」
涙で声が詰まるが、必死に言葉を紡いだ。
彼の想いを知りたくて。
「そうだね。悪かった。
あの頃の君は、義兄への想いが忘れられなくて、苦しんでいただろう?
だから、私が告白したりすれば、その想いを早く捨てなければと思わせて、益々苦しめるんじゃないかと思った。
それに、・・・・・・格好悪いけど、君に振られるのが分かりきっているのに、告白するのが怖くもあった」
最後の方は、少し気まずそうに目を逸らされた。
自分が傷付くのが分かっていて向き合うのは、とても怖い。
それは、先程まで私が抱えていた気持ちと全く同じだから、よく理解出来る。
───じゃあ、本当に?
『お姉様みたいな美貌は無くても、いつかは私だけを想ってくれる殿方と、出逢う事が出来るかしら』
幼い頃に捨ててしまった私の夢は、いつの間にか叶っていたのだ。
歓びと戸惑いと・・・、他にも様々な思いが入り混じった、複雑な感情が湧いてくる。
混乱を極めている私は、何も言葉を返せなかった。
「・・・・・・ごめん。
折角、君が次の恋に進もうとしてる時に、急にこんな事を言うなんて、卑怯だよね。
無理に引き止めたくて、告白した訳じゃないんだ。
君が幸せになれるなら、私の事は気にせずに、ここを出て行ってくれても構わない。
だけど、君には自分の価値に気付いて欲しくて・・・。
君は素晴らしい女性だよ。
皆んなに愛されて当然の人だ。
君の次の恋が、上手くいくかは分からないけど、きっとこれから、私以外にも沢山の人が君を好きになるから・・・」
待って。
違う。
そうじゃない。
「・・・要ら、ない」
「え?」
「ダン以外は、要らない」
沢山の涙を流した私の喉からは、掠れた小さな声しか出なかった。
涙を拭って、深く、深く、息を吐く。
呼吸を整えて、ゆっくり丁寧に伝えたい。
もう決して、間違わない様に───。
「・・・私が好きになったのは、ダンだから、貴方以外の愛は要らない」
彼の目を見てそう伝えれば、美しいタンザナイトの瞳が、少しづつ見開かれていく。
無表情な彼が、私にだけ見せてくれる、様々な顔がとても愛しい。
「本当に・・・?」
「はい。
・・・・・・だから、離縁しなければいけないかと思って、悩んでいました」
「は!?なんで?」
「私がエルミニオ様以外を好きになったら、離縁するって契約だったではないですか。
そこにはダンも含まれるかも知れないと・・・」
「そのパターンは想定してなかった・・・」
「お飾りの妻に想いを向けられても、貴方が困るかもしれないと思って・・・。
それに、これ以上好きになってしまったら、別れるのが辛くなるから・・・、だから、今の内に離れなければと思ったのです」
私の告白に、彼は苦しそうに顔を歪ませた。
「もう二度と君を不安にさせないと誓うから、これからも、ここに居てくれないか?」
「貴方が、そう望んでくれるのなら」
立ち上がり、私の隣まで移動したダンは、跪いて、私の手を取る。
蕩ける様に甘い、青紫の瞳と視線が絡んだ。
「トリシア。君を愛している。
誰にも負けない位に。
だからどうか、本当の妻になって、ずっと、一生、私の側にいて欲しい」
私の手の平に、優しいキスが落ちて来た。
キスをする場所によって、その意味は変わるという。
手の平へのキス。
その意味は〝懇願〟
「・・・はい。喜んで」
答えた声は少し震えてしまった。
再び滲んだ視界に映るダンの笑顔は、それまで見た中で一番、幸せそうだった。
こうして私達の契約結婚は終了し、本物の夫婦となったのだ。
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