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21 新しい母
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《side:ルルーシア》
メイジャー家からエイムズ家へ向かう馬車の中。
緊張で握り締めていた私の手に、ローレンス様の大きな手が重なる。
「まだ混乱してる?」
「少し」
「ごめん。
急展開だったもんな。
かなり強引だった自覚はあるけど、どうしてもルルーシアを失いたくなかった」
「ご両親は、この件についてなんと仰ってるんですか?」
「二人共、歓迎してるよ」
・・・・・・本当に?
没落寸前の子爵家の娘だけど、大丈夫?
私の不安を察したのか、ローレンス様はクスクス笑った。
「ルルーシアも知ってるだろうけど、母はああいう人だから、可愛い娘が出来るって楽しみにしてるし、父も・・・。
実は、ルルーシアの事は事前に調べていたみたいなんだ」
ローレンス様の話によると、夫人から『息子が親しくしている令嬢がいる』と聞いた侯爵様は、私の事を秘密裏に調査していたらしい。
ローレンス様は高位貴族の子息なのだから、当然と言えば当然の事だ。
その結果、有難い事に『家族には問題があるものの、本人には問題無し』と判断されたみたいで、侯爵様もローレンス様の計画に反対なさらなかったそうだ。
それを聞いて、私はホッと胸を撫で下ろした。
「婚約の手続きと同時に、ルルーシアはエイムズ侯爵家の傘下であるビリンガム伯爵家の養女になって貰おうと思ってるんだけど、いいかな?」
「先方が宜しければ」
「あちらもウチと縁戚になれると乗り気だ。
特に伯爵夫人は母上と同じで娘を欲しがってた人だから嬉しそうだった。
彼女は早くルルーシアに会いたいって言って、今日ウチに来てる筈だよ」
「・・・心の準備が・・・・・・」
突然決まった義母になる人との顔合わせに、私は再び緊張し始めた。
気持ちを落ち着かせる間もなく、馬車は侯爵家に到着した。
震えそうになる足を叱咤して、ローレンス様のエスコートで馬車を降りると、にこやかな二人の女性が駆け寄って来た。
「ルルーシアちゃん、いらっしゃい。
貴女がウチのお嫁さんになってくれるなんて、嬉しいわ!!」
満面の笑みの侯爵夫人に続いて、初めてお会いするご夫人も、私に挨拶をしてくれた。
「初めまして!
私はジェマ・ビリンガムよ。
貴女の義母になる予定です」
「初めまして、ビリンガム夫人。
ルルーシア・ブルーノと申します」
「やだわ、ビリンガム夫人だなんて。
お義母様って呼んでちょうだい。
やっぱり女の子っていいわねぇ。
小さくって、可愛くって、良い匂いがするわ。
汗くっさいウチの馬鹿息子達とは大違い!
それにしても細いわね~。
ちゃんとご飯食べてる?」
(汗くっさい・・・・・・?)
ビリンガム伯爵家は武人の家系だ。
子息が三人いるが、皆んな王宮で騎士をしているムキムキの筋肉マンだと言う。
確かに可愛いとは対極のタイプかもしれないけど・・・・・・
「二人共、テンション高過ぎ。
ルルーシアがビックリしてるから」
グイグイ来る伯爵夫人に若干戸惑っていると、ローレンス様が苦笑しながら間に入ってくれた。
押しの強さには驚いたけど、嫌ではない。
歓迎してくれて嬉しい。
立ち話もなんだからと、応接室に移動する。
二人の夫人とローレンス様の話し合いの結果、私はこのまま数日間はエイムズ侯爵家に滞在し、ビリンガム伯爵家の受け入れ態勢が整い次第そちらに移動させて貰う事になった。
私はと言えば、自分の状況が目まぐるしく変化するのに付いて行くので精一杯。
オロオロしている間に全てが決まっていた。
「ところで、あの、侯爵様はどちらに・・・?」
当主様にご挨拶をしなくても良いのだろうか?
すると、侯爵夫人が申し訳なさそうに私の問いに答えた。
「今日はあの人もルルーシアちゃんをお迎えする予定だったんだけどね、急遽領地に行く事になっちゃって。
帰って来るのは明日になるわね」
「そうですか・・・」
侯爵様も反対はしていないと聞いたけれど、お会いして確かめる迄は、やっぱり不安だ。
私の表情が少し曇ったのを感じたのか、安心させる様に侯爵夫人は笑った。
「大丈夫よ。そんなに心配しなくても。
あの人だって、女性不信気味で後継ぎを作れないんじゃないかって心配していたローレンスが『妻に迎えたい女性が居る』と言い出した事を凄く喜んでいるのだから」
───はっ!?!?
「女性、不信・・・・・・、ですか?
ローレンス様がっ!?」
思いもよらない言葉に驚いて、ローレンス様の顔を凝視すると、彼は気まずそうにフイッと目を逸らした。
「まあ、その話は追々・・・」
どうやら私達には、まだまだお互いに知らない事が沢山あるらしい。
メイジャー家からエイムズ家へ向かう馬車の中。
緊張で握り締めていた私の手に、ローレンス様の大きな手が重なる。
「まだ混乱してる?」
「少し」
「ごめん。
急展開だったもんな。
かなり強引だった自覚はあるけど、どうしてもルルーシアを失いたくなかった」
「ご両親は、この件についてなんと仰ってるんですか?」
「二人共、歓迎してるよ」
・・・・・・本当に?
没落寸前の子爵家の娘だけど、大丈夫?
私の不安を察したのか、ローレンス様はクスクス笑った。
「ルルーシアも知ってるだろうけど、母はああいう人だから、可愛い娘が出来るって楽しみにしてるし、父も・・・。
実は、ルルーシアの事は事前に調べていたみたいなんだ」
ローレンス様の話によると、夫人から『息子が親しくしている令嬢がいる』と聞いた侯爵様は、私の事を秘密裏に調査していたらしい。
ローレンス様は高位貴族の子息なのだから、当然と言えば当然の事だ。
その結果、有難い事に『家族には問題があるものの、本人には問題無し』と判断されたみたいで、侯爵様もローレンス様の計画に反対なさらなかったそうだ。
それを聞いて、私はホッと胸を撫で下ろした。
「婚約の手続きと同時に、ルルーシアはエイムズ侯爵家の傘下であるビリンガム伯爵家の養女になって貰おうと思ってるんだけど、いいかな?」
「先方が宜しければ」
「あちらもウチと縁戚になれると乗り気だ。
特に伯爵夫人は母上と同じで娘を欲しがってた人だから嬉しそうだった。
彼女は早くルルーシアに会いたいって言って、今日ウチに来てる筈だよ」
「・・・心の準備が・・・・・・」
突然決まった義母になる人との顔合わせに、私は再び緊張し始めた。
気持ちを落ち着かせる間もなく、馬車は侯爵家に到着した。
震えそうになる足を叱咤して、ローレンス様のエスコートで馬車を降りると、にこやかな二人の女性が駆け寄って来た。
「ルルーシアちゃん、いらっしゃい。
貴女がウチのお嫁さんになってくれるなんて、嬉しいわ!!」
満面の笑みの侯爵夫人に続いて、初めてお会いするご夫人も、私に挨拶をしてくれた。
「初めまして!
私はジェマ・ビリンガムよ。
貴女の義母になる予定です」
「初めまして、ビリンガム夫人。
ルルーシア・ブルーノと申します」
「やだわ、ビリンガム夫人だなんて。
お義母様って呼んでちょうだい。
やっぱり女の子っていいわねぇ。
小さくって、可愛くって、良い匂いがするわ。
汗くっさいウチの馬鹿息子達とは大違い!
それにしても細いわね~。
ちゃんとご飯食べてる?」
(汗くっさい・・・・・・?)
ビリンガム伯爵家は武人の家系だ。
子息が三人いるが、皆んな王宮で騎士をしているムキムキの筋肉マンだと言う。
確かに可愛いとは対極のタイプかもしれないけど・・・・・・
「二人共、テンション高過ぎ。
ルルーシアがビックリしてるから」
グイグイ来る伯爵夫人に若干戸惑っていると、ローレンス様が苦笑しながら間に入ってくれた。
押しの強さには驚いたけど、嫌ではない。
歓迎してくれて嬉しい。
立ち話もなんだからと、応接室に移動する。
二人の夫人とローレンス様の話し合いの結果、私はこのまま数日間はエイムズ侯爵家に滞在し、ビリンガム伯爵家の受け入れ態勢が整い次第そちらに移動させて貰う事になった。
私はと言えば、自分の状況が目まぐるしく変化するのに付いて行くので精一杯。
オロオロしている間に全てが決まっていた。
「ところで、あの、侯爵様はどちらに・・・?」
当主様にご挨拶をしなくても良いのだろうか?
すると、侯爵夫人が申し訳なさそうに私の問いに答えた。
「今日はあの人もルルーシアちゃんをお迎えする予定だったんだけどね、急遽領地に行く事になっちゃって。
帰って来るのは明日になるわね」
「そうですか・・・」
侯爵様も反対はしていないと聞いたけれど、お会いして確かめる迄は、やっぱり不安だ。
私の表情が少し曇ったのを感じたのか、安心させる様に侯爵夫人は笑った。
「大丈夫よ。そんなに心配しなくても。
あの人だって、女性不信気味で後継ぎを作れないんじゃないかって心配していたローレンスが『妻に迎えたい女性が居る』と言い出した事を凄く喜んでいるのだから」
───はっ!?!?
「女性、不信・・・・・・、ですか?
ローレンス様がっ!?」
思いもよらない言葉に驚いて、ローレンス様の顔を凝視すると、彼は気まずそうにフイッと目を逸らした。
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どうやら私達には、まだまだお互いに知らない事が沢山あるらしい。
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