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7 初めての朝
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チュンチュン・・・ピチチチ・・・
ピィピィ・・・・・・
遠くから小鳥の囀りが聞こえて、私は夢の世界からゆっくりと引き戻された。
何だか凄く嫌な夢を見ていた気がする。
「うぅ~~ん・・・・・・」
小さく唸りながら寝返りを打ち、薄く目を開くと、輝く銀色の髪の毛が目の前で揺れた。
「あ、目が覚めましたか?
おはようございます、アイリス」
低く艶っぽい声で呼び掛けられて、ドキッと心臓が跳ねる。
ああ、そうだった。
昨夜は───。
「おはよう。ブライアン・・・」
右腕を私の枕にしていたブライアンは、左手で私の頬をそっと撫でて、愛しそうに目を細めた。
少し疲れている様に見えるのは、気のせいだろうか?
目の下に薄っすらとクマがあるみたい。
「もしかして、貴方、昨日はあんまり寝ていないの?
人と一緒のベッドで寝るのは眠り難い?」
「いいえ。
それは大丈夫なのですが・・・。
可愛い貴女の寝顔を見ていたら、眠れなくなりました」
甘い雰囲気に免疫が無い私は、どう反応して良いのか分からない。
どこまで本気なのだろうか?
「ブライアンは、常に甘い言葉を吐くよね」
「ダメでしたか?」
「ダメ、じゃないけど・・・、意外だったかな。
もっと硬派なイメージだったから。
そーゆーのは、あんまり使い過ぎると嘘っぽくなるよ」
フフッと笑って忠告すると、ブライアンはちょっと眉根を寄せた。
「全部本音なんですけどねぇ。
アイリスに信じてもらえなくなるのは困るので、ちょっと気を付けます。
体は大丈夫ですか?
もし動くのが辛ければ、朝食をベッドまでお持ちしましょうか」
私の黒髪を手櫛で整えながら、蕩ける様な笑みを浮かべる。
甘いっ!そして過保護!
「いいえ。
大丈夫、よ・・・・・・ん"んっ・・・!」
起き上がろうとしたのだが、下腹部に鈍痛が広がる。
でも、別に動けない訳では・・・・・・。
「無理しないで。
今日は一緒にダラダラしましょう。
朝食を持ってきます」
スルリとベッドから抜け出した彼は、私にガウンを投げた。
「目の毒なので、羽織って下さいね」
(そう言えば、私、服着てない!)
ブライアンはいつの間にか自分だけ夜着を着ていて、私だけ裸。
気付いた途端に、頬に一気に熱が上がる。
揶揄う様に笑いながら寝室を出て行く彼の背中を、真っ赤な顔で見送った。
ベッドに残された私は、ノソノソと上半身を起こして、ガウンに袖を通す。
ふと見下ろした胸元に、無数の所有痕が残っている事に気が付いた。
(ええええっっ!
嘘でしょ!?いつの間に?)
ブライアンは意外と独占欲が強いのかもしれない。
これじゃあ暫く胸元が開いたドレスは着られないではないかと、遠い目になった。
一月前迄は義弟になる筈だった男性と、昨日結婚して、初夜も滞りなく済ませてしまった。
何だか不思議な感覚だ。
だが、意外と私の中に拒絶反応は無い。
驚く程自然に、現状を受け入れる事が出来ている。
このまま平凡で幸せな夫婦になっていく事が出来るのだろうか?
ブライアンの事は、どちらかと言えば好ましいと思う。
私に対して恋愛感情を持っていなかったはずの彼が、急激に距離を詰めてくるのには、正直戸惑っている。
しかし、それも彼なりに、新たに夫婦としての関係を作っていこうとしているのだろう。
甘過ぎる空気には慣れないけど、そのお陰でチャールズに傷付けられた私の乙女心が少しだけ満たされていく。
でも、だからこそ・・・・・・
このまま心を預けきってしまう事が、彼を信じきってしまう事が、怖いとも思うのだ。
だって、彼が愛していた女性が消えて、まだ一ヶ月。
義務感から私を愛しているフリをしてくれていても、まだ心の中には別の人が住んでいるはずなのだから。
他の女性に心を残した夫との生活は、今後彼に惹かれれば惹かれる程に、どんどん辛くなっていくのだろう。
昨夜は彼に「覚悟を決めて」なんて言ったが、覚悟が足りなかったのは私の方かもしれない。
暫くして、ブライアンが二人分の朝食を乗せたカートを押して、戻って来た。
「お待たせしました。
お腹空いていますか?」
「少しだけ」
ベッドに半身を起こした私の膝に、一人分の食事を乗せたトレーを置く。
ブライアンはサイドテーブルで食べるらしい。
「食べさせて差し上げましょうか?」
「自分で食べるわよ。
子供じゃ無いんだから」
「子供だなんて、思った事はありませんよ」
意味深な眼差しがイチイチ色っぽくて背中がゾクっとする。
年下の癖に、どうしたらそんな色気が身につくのよ!?
「朝食が済んだら、湯浴みをしますか?
昨夜はアイリスが寝落ちした後に、湯で濡らしたタオルで軽く清めて差し上げたのですが・・・」
「そんな事までしたの!?」
「当然です」
えっ?それ当然なの?
ねぇ、死ぬ程恥ずかしいんだけど、私がおかしいの?
「後で全身洗ってあげますね」
「結構です」
「遠慮なさらずに」
「お断りしますっ!!」
前言撤回。
拒絶反応、今出てる。
ピィピィ・・・・・・
遠くから小鳥の囀りが聞こえて、私は夢の世界からゆっくりと引き戻された。
何だか凄く嫌な夢を見ていた気がする。
「うぅ~~ん・・・・・・」
小さく唸りながら寝返りを打ち、薄く目を開くと、輝く銀色の髪の毛が目の前で揺れた。
「あ、目が覚めましたか?
おはようございます、アイリス」
低く艶っぽい声で呼び掛けられて、ドキッと心臓が跳ねる。
ああ、そうだった。
昨夜は───。
「おはよう。ブライアン・・・」
右腕を私の枕にしていたブライアンは、左手で私の頬をそっと撫でて、愛しそうに目を細めた。
少し疲れている様に見えるのは、気のせいだろうか?
目の下に薄っすらとクマがあるみたい。
「もしかして、貴方、昨日はあんまり寝ていないの?
人と一緒のベッドで寝るのは眠り難い?」
「いいえ。
それは大丈夫なのですが・・・。
可愛い貴女の寝顔を見ていたら、眠れなくなりました」
甘い雰囲気に免疫が無い私は、どう反応して良いのか分からない。
どこまで本気なのだろうか?
「ブライアンは、常に甘い言葉を吐くよね」
「ダメでしたか?」
「ダメ、じゃないけど・・・、意外だったかな。
もっと硬派なイメージだったから。
そーゆーのは、あんまり使い過ぎると嘘っぽくなるよ」
フフッと笑って忠告すると、ブライアンはちょっと眉根を寄せた。
「全部本音なんですけどねぇ。
アイリスに信じてもらえなくなるのは困るので、ちょっと気を付けます。
体は大丈夫ですか?
もし動くのが辛ければ、朝食をベッドまでお持ちしましょうか」
私の黒髪を手櫛で整えながら、蕩ける様な笑みを浮かべる。
甘いっ!そして過保護!
「いいえ。
大丈夫、よ・・・・・・ん"んっ・・・!」
起き上がろうとしたのだが、下腹部に鈍痛が広がる。
でも、別に動けない訳では・・・・・・。
「無理しないで。
今日は一緒にダラダラしましょう。
朝食を持ってきます」
スルリとベッドから抜け出した彼は、私にガウンを投げた。
「目の毒なので、羽織って下さいね」
(そう言えば、私、服着てない!)
ブライアンはいつの間にか自分だけ夜着を着ていて、私だけ裸。
気付いた途端に、頬に一気に熱が上がる。
揶揄う様に笑いながら寝室を出て行く彼の背中を、真っ赤な顔で見送った。
ベッドに残された私は、ノソノソと上半身を起こして、ガウンに袖を通す。
ふと見下ろした胸元に、無数の所有痕が残っている事に気が付いた。
(ええええっっ!
嘘でしょ!?いつの間に?)
ブライアンは意外と独占欲が強いのかもしれない。
これじゃあ暫く胸元が開いたドレスは着られないではないかと、遠い目になった。
一月前迄は義弟になる筈だった男性と、昨日結婚して、初夜も滞りなく済ませてしまった。
何だか不思議な感覚だ。
だが、意外と私の中に拒絶反応は無い。
驚く程自然に、現状を受け入れる事が出来ている。
このまま平凡で幸せな夫婦になっていく事が出来るのだろうか?
ブライアンの事は、どちらかと言えば好ましいと思う。
私に対して恋愛感情を持っていなかったはずの彼が、急激に距離を詰めてくるのには、正直戸惑っている。
しかし、それも彼なりに、新たに夫婦としての関係を作っていこうとしているのだろう。
甘過ぎる空気には慣れないけど、そのお陰でチャールズに傷付けられた私の乙女心が少しだけ満たされていく。
でも、だからこそ・・・・・・
このまま心を預けきってしまう事が、彼を信じきってしまう事が、怖いとも思うのだ。
だって、彼が愛していた女性が消えて、まだ一ヶ月。
義務感から私を愛しているフリをしてくれていても、まだ心の中には別の人が住んでいるはずなのだから。
他の女性に心を残した夫との生活は、今後彼に惹かれれば惹かれる程に、どんどん辛くなっていくのだろう。
昨夜は彼に「覚悟を決めて」なんて言ったが、覚悟が足りなかったのは私の方かもしれない。
暫くして、ブライアンが二人分の朝食を乗せたカートを押して、戻って来た。
「お待たせしました。
お腹空いていますか?」
「少しだけ」
ベッドに半身を起こした私の膝に、一人分の食事を乗せたトレーを置く。
ブライアンはサイドテーブルで食べるらしい。
「食べさせて差し上げましょうか?」
「自分で食べるわよ。
子供じゃ無いんだから」
「子供だなんて、思った事はありませんよ」
意味深な眼差しがイチイチ色っぽくて背中がゾクっとする。
年下の癖に、どうしたらそんな色気が身につくのよ!?
「朝食が済んだら、湯浴みをしますか?
昨夜はアイリスが寝落ちした後に、湯で濡らしたタオルで軽く清めて差し上げたのですが・・・」
「そんな事までしたの!?」
「当然です」
えっ?それ当然なの?
ねぇ、死ぬ程恥ずかしいんだけど、私がおかしいの?
「後で全身洗ってあげますね」
「結構です」
「遠慮なさらずに」
「お断りしますっ!!」
前言撤回。
拒絶反応、今出てる。
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