【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko

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2 お荷物王女

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「妹が良いなぁ」

「僕も!」

三人目の子を身籠っている王妃の大きなお腹を撫でながら、幼い王子達は無邪気にそう言い合った。
その願いが叶って姫が生まれ、喜んだのも束の間。
生まれた子供が初めて瞼を開いた時、彼等の喜びは不安に変わってしまった。

その姫は、王妃と同じ黄緑色の瞳。
兄である二人の王子と違い、王家の瞳を持たなかったのだ。

それでも、国王夫妻も兄王子達も、唯一の姫を深く愛していた。
だからこそ、その姫を、アンジェリーナを過保護なまでに心配したのだ。



『建国の神話』は、冷静に考えれば突っ込み所が満載の胡散臭い話だ。

しかし、不思議な事に、臣籍降下などで王家から離脱した者の元には『王家の瞳』は滅多に生まれない。
遺伝だけでは説明が付かないその神秘性が、この神話に説得力を加えているのかもしれない。

そして実際にそれを信じている者達は存在するのだ。




アンジェリーナが三歳の時、王家の者達の危惧していた事が現実になる。
異常なまでの泣き声に駆け付けた乳母が見たのは、アンジェリーナの背中にクッキリとついた大きな痣だった。

犯人は侍女の一人だったが、残念ながら充分な証拠が用意出来なかった。
被害者である幼いアンジェリーナは、虐待を受けたショックから、犯人の顔を思い出せなくなっていたのだ。

「クソッ!!
大々的に処罰出来れば、良い見せしめになったのに・・・・・・」

王太子のシルヴィオは、悔しそうに唇を噛んだ。

「だが、あの女は限りなく黒に近いグレーだ」

第二王子のメルクリオも苦々しい表情。

「分かっている。このままにはしないさ。
相応の代償を払って貰おうじゃないか」

愛する家族を傷つけられて、黙っていられる訳が無い。
王宮を追われた侍女は、王家によって秘密裏にされた。



王宮内で働く者は大勢いる。
その中には勿論、ルーナリア教徒も多数存在するのだ。
彼等はアンジェリーナを影で『お荷物王女』と呼んでいた。

この国の歴史をきちんと調べれば、『災いをもたらす』なんて根拠の無いデマだと簡単に分かるはずなのに。

勿論、あからさまにアンジェリーナを蔑んだり、あの侍女の様に手を出す者は狂信的な一部の過激派だけなのだが、事を起こさせる前に過激派信者と普通の信者を見分けるのは難しい。
信教の自由を保証している以上、ルーナリア教徒である事だけを理由に王宮を追い出す訳にはいかない。
そもそも、それが出来たとしても、半数近くの人間を辞職させてしまえば、人材不足で王宮が立ち行かなくなってしまう。

アンジェリーナに影を付けた上で王宮での生活を続けさせ、過激派の洗い出しをするという案も検討されたが、彼女を囮のように使い、危険に晒してまで犯人を捕まえるのでは本末転倒であると却下された。

結局、アンジェリーナを王宮の外の安全な場所に避難させるのが一番だと結論が出た。
そこで、彼女を有力者の子息と婚約させ、婚約者の邸で保護して貰う事が考えられた。

アンジェリーナの後ろ楯は弱い。
普通ならば、母である王妃の実家がアンジェリーナの援護をしてくれるのだろうけれど、実はギルランダ王家では、近親婚により王族の血が濃くなり過ぎるのを防ぐ為、下位貴族の令嬢でも優秀であれば正妃として娶る事が許されており、現在の王妃は子爵家の出身なのだ。

だから、婚約者の家がアンジェリーナの後ろ楯になってくれる事も期待した。

二人の相性が良ければそのまま婚姻させれば良いし、そうでなければアンジェリーナが自分の身を守れる様になるまでの仮の婚約でも構わない。
彼女は魔力量がとても多いらしいので、ある程度成長して魔術を習得すれば、物理攻撃からは自分で身を守れる様になるはずだ。


ルーナリア教徒への牽制の為、出来るだけ高位の、有力な貴族家が望ましい。
そして、家族も本人も信頼に値する者である事。
直ぐにでもアンジェリーナの身柄の受け入れが可能である事。
邸のセキュリティが万全である事。
なるべくアンジェリーナと年齢が近い事。

その条件で選ばれたのが、エルヴィーノだった。

筆頭公爵家の次男。
公爵夫人は王妹で、アンジェリーナの叔母。
公爵家の者達は使用人も含めて皆、アンジェリーナを可愛がってくれている。
特に妹を欲しがっていたエルヴィーノは、アンジェリーナをめちゃくちゃ甘やかしていた。
年は少し離れているが、彼より年齢が近い者の中には条件に合う者はいなかったし、八歳程度ならば許容範囲とされた。
未婚の男女が同じ屋根の下に暮らすことへの懸念は残るが、対外的には『従兄弟だから問題ない』として押し通せると考えられた。



エルヴィーノは自分の役割りを良く理解し、アンジェリーナをそれまで以上に大切にした。

しかし、相手は三歳である。
エルヴィーノはアンジェリーナに対してある種の愛は持っていたが、当然ながらそれは恋愛感情とは別物だった。
だから、彼はこの婚約が仮初の物になるだろうと思っていた。
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