【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko

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15 婚約者の苦悩

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「なぁエル、知ってたか?
アンジーは皇子殿下と随分仲良くなったみたいだぞ」

面倒な案件が一つ片付いて、珍しくのんびりとしたムードが漂っていた第二王子の執務室に、突然メルクリオが大きな爆弾を落とした。

「は?」

低い声ですぐさま反応したのは勿論エルヴィーノだ。

「影の報告によれば、学園の視察時の休憩時間に交流していたらしい。
皇子殿下はなかなかの美丈夫だし、もしかしたら恋に発展するかもしれないな。
僕等家族としては、アンジーを他国に嫁に出すのは寂しいし、色々と心配だから出来れば目の届く範囲にいて欲しいけれど、まぁ良縁ではあるよね」

「・・・・・・だが、帝国の皇子ならば側妃を沢山娶る可能性があるだろう?
そんな所にアンジェリーナを嫁がせる訳には・・・」

エルヴィーノが不機嫌そうにボソボソと反論すると、隣で会話を聞いていたラウルが呆れた様に口を挟む。

「また無駄な抵抗を・・・。
帝国で側妃が認められているのは、皇帝だけだって、エルも知ってるだろうが。
カルロス殿下は第四皇子だから、帝位に着く可能性は極めて低いじゃないか」

「ラウルの言う通りだ。
それに、魔術の才能もあって、人柄の評判もなかなか良いみたいだしな。
物理的にも金銭的にも身分的にも、アンジーをしっかり守ってくれるだろう」

ニヤリと笑ったメルクリオが揶揄う様に追い打ちをかける。

「・・・・・・」

ぐうの音も出ないエルヴィーノ。

ずっと前から覚悟していたはずなのに、いざアンジェリーナが自分の手を離れる時が近付いてきた事を実感すると、胸が張り裂けそうに辛い。
痛みを堪える様に眉根をギュッと寄せて黙り込んだエルヴィーノの肩を、メルクリオがポンと軽く叩いた。

「なあ、もういい加減認めた方が楽になるんじゃないか?
アンジェリーナを愛しているんだろう?」

メルクリオの問い掛けに、エルヴィーノは暫く迷う様に沈黙して、小さく溜息を漏らした。

「・・・・・・・・・俺が・・・、アンジェリーナに抱いているのは、愛とか恋みたいな、そんな綺麗で温かい感情じゃないんだ。
誰よりも大切で、守ってあげたいと思うのに、時々めちゃくちゃに壊したくなる。
笑った顔が好きなのに、泣いた顔も怒った顔も傷付いた顔も、俺だけに見せて欲しいとか思うし。
誰の目にも触れさせたくなくて、いつか彼女を閉じ込めてしまいそうな気がして怖い。
これは、愛なんてもんじゃなくて、もっとドロドロして醜い・・・・・・欲だ。
こんな汚い気持ちを可愛いアンジェリーナにぶつけるのなんて・・・・・・」

まるで懺悔でもするように、苦々しく吐き出されたエルヴィーノの本音に、メルクリオは心底馬鹿馬鹿しいと思った。

「それの何が悪い」

「・・・・・・えっ?」

「潔癖かっ?夢見る乙女かっ?
独占欲も嫉妬も欲情も、それによって生じる自己嫌悪や罪悪感も、全て恋愛に伴って当たり前に湧いて来る感情の一部だろ。
そもそも愛なんて、そんなにお綺麗なだけのもんじゃないんだ。
ドロドロのぐちゃぐちゃに醜い感情が次々と湧いてくる物なんだよ。
勿論、相手の意思を無視してそれを押し付けたりしたら問題だけどなぁ、お前は一度でもアンジェリーナの意思を直接確認した事があるのか?」

「う・・・・・・、いや・・・」

「まずはそこからだろ。
アンジェリーナだって、いつまでも子供じゃないんだ。
綺麗事だけじゃない愛情を、ちゃんと受け止められる位には成長してる。
言っておくが、お前がアンジェリーナを手放したら、そのドロッドロした欲とやらをアンジェリーナにぶつける権利が他の男に移るんだからな。
その事ちゃんと分かってるのか?」

メルクリオに煽られて、エルヴィーノは盛大に顔を顰めた。

「酷い顔してんじゃねぇか。
今、お前の頭に浮かんだのが答えなんだよ」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・っつーか、何が悲しくて、妹の婚約者にこんなアドバイスせにゃならんのだ」

急にハッと我に返って嘆くメルクリオに、ラウルは苦笑しつつ二人に紅茶を差し出した。

「まあ、さっさとその重くて面倒臭い愛情を姫さんにぶつけて、派手に玉砕してこいよ。
俺達が慰めてやるから」

振られる前提で励ますラウルを軽く睨みつつ、背中を押してくれる友人達の存在に心の中でそっと感謝するエルヴィーノだった。
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