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第三十九話 諦めたら終わりだぞ!
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「アラン様!!」
ラフレシアが完全に沈黙し、安全が確認できてから間もなく、あたしはアラン様に力強く抱きついた。
ああ、アラン様の鼓動が聞こえる。熱を感じる。色々な音が、感触が、彼が生きていることを実感させてくれる。
「……無事で良かった。こんなにびしょ濡れで……つらかっただろう」
「アラン様だって、ボロボロじゃないですか……」
あたしを優しく抱きしめ、そっと頭を撫でるアラン様の声色は、優しさに満ち溢れていた。
その優しさが嬉しいと思うと同時に、あたしのせいでアラン様がボロボロになってしまったことに対して、強い罪悪感が襲ってきた。
「俺が不甲斐ないばかりに、ミシェルを危険な目に合わせてしまった。すまなかった」
「そんな、あたしが自分から行くって言ったんですから……あたしこそ、偉そうに啖呵を切っておきながら、お荷物になってしまってごめんなさい」
「君は何も悪くない」
「悪いですよ! あたしが離れ離れになったせいで、アラン様がボロボロになっちゃったじゃないですか!」
一気に襲い掛かってきた罪悪感が、大粒の涙となってあたしの頬を濡らす。その涙は、地面に落ちる前に、アラン様に優しく拭われた。
「それ以上自分を責めるな。とにかく、ミシェルが無事で本当に安心した。君があの花に攻撃されて離れ離れになった時、心配で生きた心地がしなかった」
それはあたしも同じ気持ちだよ。アラン様がいないってシロちゃんに聞いた時に、本当に心配したもの。
『アランサマ、生きててよかったな、ニンゲン!』
「うん……ありがとうシロちゃん」
「シロはなんだって?」
「生きてて良かったねって言ってます。シロちゃん、あたしをずっと守ってくれたんです」
「そうか。ミシェルを守ってくれてありがとう、シロ」
『うわぁ! どうしてニンゲンって生き物は、どいつもこいつも頭を撫でるんだ! くすぐったいぞ!』
口では怒って見せてるけど、言うほど嫌じゃないのか、耳を少し垂らして撫でられるの受け入れているシロちゃん、とっても可愛いなぁ。
「やはりここは危険すぎる。目的のものは見つかってないが、撤退しよう」
「そうですね……このままだと、いくつ命があっても足りなさそうですし……あ、せっかく手に入れた魔道具の水晶を落としてますよ」
「ん? そのようだな。今の戦闘で落としてしまったようだ」
コロコロと地面を転がる魔道具の水晶は、相変わらず柔らかい光の筋を放っている。
これもせっかく手に入れたけど、ちゃんと使えず終いだったね……あれ?
「アラン様、よく見ると……水晶の光が、この花を示しているように見えませんか?」
試しに水晶を持って移動してみるが、水晶の光は変わらずラフレシアを示している。
もしかして、この花にあたしたちが探している植物の手がかりがあるとか……!? それとも、この花自体が探しているアリエノ草なの!?
「アラン様、もしかしてこの花が、あたし達が探している植物……アリエノ草なんでしょうか?」
「その可能性は薄いだろう。俺が読んだ本に書かれていた絵とは、あまりにもかけ離れてる。だが、エルフの力を使えば、あるいは……」
アラン様の期待には応えたい。でも、エルフの力と言われても、何をどうすればいいか、全然わからない。
てっきり、エルフの力を持ってるだけで見つけられると思ってたんだけど、そんな甘くはないってことだね。
……とりあえず、研究の時のように、あたしの魔力を注いでみたけれど、何の反応もない。
「ダメみたいです……うぅ、あたしのエルフの力じゃ、ダメなのかな……」
『なんかよくわからないけど、エルフなら見つけられて、ニンゲンにはその力があるってことだろ? ならニンゲンなら余裕だぞ!』
「シロちゃん……あたしには、エルフの血が半分しか入って無いの。だから……」
『だから、なんなんだ? 諦めたら終わりだぞ!』
「シロちゃん……」
「ミシェル、君ならきっとできる」
「アラン様まで……」
クールに、しかしとても熱い信頼をあたしに向けるアラン様と、お前なら出来るという、確固たる意志を持ってあたしを励ますシロちゃん。
二人に励まされたおかげで、あたしでも出来るって思えてきた。
肝心な時に弱気になっちゃって……こんな情けないお姉ちゃんじゃ、悠と芽衣に笑われちゃう! お姉ちゃん、しっかりするから!
「……よしっ!」
あたしは動かなくなったラフレシアに、もう一度あたしの魔力を流す。
反応がなくても、絶対に諦めない。あたしの魔力が空っぽになるまで、流し続けてやるんだから!
「……これ、は……光り始めている?」
あたしの魔力の受け続けたラフレシアの大きな口の近くに、そよそよと風になびく、真っ白な植物があるのを見つけた。それは、まるであたしを歓迎するかのようだ。
「すごい、全てが白い! それに、さっきまで見えてなかったってことは……あたしの力で上手くいったんだ!」
「そのようだな。よくやった、ミシェル」
「アラン様!」
本日再びの抱擁。でもさっきのとは違う。さっきは再会の感動の抱擁、これは目的を達成した喜びの抱擁。似てるかも知れないけど、全然違うものだ。
「さあ、こんなところに長居する必要はない。さっさと帰ろう」
「帰るって……どっちに行けばいいのか……」
「森に入る前に、魔法陣を残しただろう?」
「あ、そうだった!」
森に入る前に、アラン様が帰るのに必要な魔法陣を残してたのを、すっかり忘れてた! そうとわかれば、こんな森なんてさっさと抜けて、屋敷に帰ろう!
ラフレシアが完全に沈黙し、安全が確認できてから間もなく、あたしはアラン様に力強く抱きついた。
ああ、アラン様の鼓動が聞こえる。熱を感じる。色々な音が、感触が、彼が生きていることを実感させてくれる。
「……無事で良かった。こんなにびしょ濡れで……つらかっただろう」
「アラン様だって、ボロボロじゃないですか……」
あたしを優しく抱きしめ、そっと頭を撫でるアラン様の声色は、優しさに満ち溢れていた。
その優しさが嬉しいと思うと同時に、あたしのせいでアラン様がボロボロになってしまったことに対して、強い罪悪感が襲ってきた。
「俺が不甲斐ないばかりに、ミシェルを危険な目に合わせてしまった。すまなかった」
「そんな、あたしが自分から行くって言ったんですから……あたしこそ、偉そうに啖呵を切っておきながら、お荷物になってしまってごめんなさい」
「君は何も悪くない」
「悪いですよ! あたしが離れ離れになったせいで、アラン様がボロボロになっちゃったじゃないですか!」
一気に襲い掛かってきた罪悪感が、大粒の涙となってあたしの頬を濡らす。その涙は、地面に落ちる前に、アラン様に優しく拭われた。
「それ以上自分を責めるな。とにかく、ミシェルが無事で本当に安心した。君があの花に攻撃されて離れ離れになった時、心配で生きた心地がしなかった」
それはあたしも同じ気持ちだよ。アラン様がいないってシロちゃんに聞いた時に、本当に心配したもの。
『アランサマ、生きててよかったな、ニンゲン!』
「うん……ありがとうシロちゃん」
「シロはなんだって?」
「生きてて良かったねって言ってます。シロちゃん、あたしをずっと守ってくれたんです」
「そうか。ミシェルを守ってくれてありがとう、シロ」
『うわぁ! どうしてニンゲンって生き物は、どいつもこいつも頭を撫でるんだ! くすぐったいぞ!』
口では怒って見せてるけど、言うほど嫌じゃないのか、耳を少し垂らして撫でられるの受け入れているシロちゃん、とっても可愛いなぁ。
「やはりここは危険すぎる。目的のものは見つかってないが、撤退しよう」
「そうですね……このままだと、いくつ命があっても足りなさそうですし……あ、せっかく手に入れた魔道具の水晶を落としてますよ」
「ん? そのようだな。今の戦闘で落としてしまったようだ」
コロコロと地面を転がる魔道具の水晶は、相変わらず柔らかい光の筋を放っている。
これもせっかく手に入れたけど、ちゃんと使えず終いだったね……あれ?
「アラン様、よく見ると……水晶の光が、この花を示しているように見えませんか?」
試しに水晶を持って移動してみるが、水晶の光は変わらずラフレシアを示している。
もしかして、この花にあたしたちが探している植物の手がかりがあるとか……!? それとも、この花自体が探しているアリエノ草なの!?
「アラン様、もしかしてこの花が、あたし達が探している植物……アリエノ草なんでしょうか?」
「その可能性は薄いだろう。俺が読んだ本に書かれていた絵とは、あまりにもかけ離れてる。だが、エルフの力を使えば、あるいは……」
アラン様の期待には応えたい。でも、エルフの力と言われても、何をどうすればいいか、全然わからない。
てっきり、エルフの力を持ってるだけで見つけられると思ってたんだけど、そんな甘くはないってことだね。
……とりあえず、研究の時のように、あたしの魔力を注いでみたけれど、何の反応もない。
「ダメみたいです……うぅ、あたしのエルフの力じゃ、ダメなのかな……」
『なんかよくわからないけど、エルフなら見つけられて、ニンゲンにはその力があるってことだろ? ならニンゲンなら余裕だぞ!』
「シロちゃん……あたしには、エルフの血が半分しか入って無いの。だから……」
『だから、なんなんだ? 諦めたら終わりだぞ!』
「シロちゃん……」
「ミシェル、君ならきっとできる」
「アラン様まで……」
クールに、しかしとても熱い信頼をあたしに向けるアラン様と、お前なら出来るという、確固たる意志を持ってあたしを励ますシロちゃん。
二人に励まされたおかげで、あたしでも出来るって思えてきた。
肝心な時に弱気になっちゃって……こんな情けないお姉ちゃんじゃ、悠と芽衣に笑われちゃう! お姉ちゃん、しっかりするから!
「……よしっ!」
あたしは動かなくなったラフレシアに、もう一度あたしの魔力を流す。
反応がなくても、絶対に諦めない。あたしの魔力が空っぽになるまで、流し続けてやるんだから!
「……これ、は……光り始めている?」
あたしの魔力の受け続けたラフレシアの大きな口の近くに、そよそよと風になびく、真っ白な植物があるのを見つけた。それは、まるであたしを歓迎するかのようだ。
「すごい、全てが白い! それに、さっきまで見えてなかったってことは……あたしの力で上手くいったんだ!」
「そのようだな。よくやった、ミシェル」
「アラン様!」
本日再びの抱擁。でもさっきのとは違う。さっきは再会の感動の抱擁、これは目的を達成した喜びの抱擁。似てるかも知れないけど、全然違うものだ。
「さあ、こんなところに長居する必要はない。さっさと帰ろう」
「帰るって……どっちに行けばいいのか……」
「森に入る前に、魔法陣を残しただろう?」
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