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第四十話 お前らは番?
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「――おかえりなさいませ! ご無事で良かった!」
無事に森の外に戻ってくると、ずっと待っててくれていた御者に出迎えられる。
目頭に涙を溜め込み、声を震わせているその様子は、あたし達が帰ってきてくれたことを、本当に喜んでくれているようだ。
『さてと。んじゃ、オイラは家に帰るぞ。達者でな』
「あっ……待ってシロちゃん!」
「ミシェル?」
「アラン様、シロちゃんを連れて帰れませんか? このまま帰すのは、可哀想です!」
「…………」
アラン様は、肯定するわけでも、否定するわけでもなく、ただ黙ってあたしを見つめる。
「シロちゃんはまだ子供なんです。それに、仲間はもう死んじゃって、一人ぼっちだって……そんなの、可哀想です!」
「それは、本人から一緒にいたいと聞いたのか?」
「い、いえ……」
「なら、ちゃんと本人に聞かないといけないな」
「…………」
あたしの視線の先には、気まずそうにこちらをチラチラ見ているシロちゃんの姿があった。
「シロちゃん、あたし達と一緒に暮らそうよ」
『な、なに言ってるんだ。キツネは人間とは住めないぞ。それに、オイラといてニンゲンになんの得があるんだ?』
「得とか考えてないよ。あたしはね、巻き込んじゃったのに、色々と協力してくれたあなたへの恩返しをしたい。その第一歩として、安全な場所の提供をして、他者との温もりをまた感じてほしいの。嫌……かな?」
あたしの真剣な気持ちをシロちゃんにぶつける。
これで、もしシロちゃんが嫌だと言ったら、その時は素直に諦めよう。シロちゃんのためにやろうとしてることなのに、シロちゃんが嫌がってては意味がないもんね。
『……かーちゃんが言ってたぞ。いつか大切な仲間を作れ。そして外に出ろ。そこには無限に世界が広がっているってさ』
「そうだね。外の世界には、この森よりももっと大きくて、綺麗な場所があるよ」
『ふーん……ま、まあそれなりに面白そうではあるし? ここに一匹でいても危険だしな! 仕方ないから、行ってやってもいいぞ!』
少し素直じゃないシロちゃんは、プイっと顔を逸らしながらも、良い返事を返してくれた。
「アラン様、シロちゃんが来てくれるって!」
「そうか。なら問題ない。兄上には、俺から話しておく」
「あたしも一緒にお願いしに行きますよ! その前に……シロちゃん、これからもよろしくね!」
『おう、よろしくなニンゲン、それとアランサマ』
「えっと、あたしの名前はミシェル、こっちはアランだよ」
『なんだ、お前にも名前はあったんだな。でも、どうしてアランはアランサマなんだ?』
言われてみれば、自然界で生きてきたシロちゃんには、そういうのはよくわからないよねと思いながら、あたしは馬車で森を後にする。
長かったようで、短かった大冒険――そこで蓄積された疲労は既にピークに達してしまったのか、強烈な睡魔が襲ってきた。
「ミシェル、眠いなら寝るといい」
「ちょっと寝ます……」
あたしは、隣に座っているアラン様の肩に頭を乗せる。
やっぱり、こうやって大切な人と平和な時間を過ごしていると、とても心が……温かくなるなぁ……ぐぅ……。
****
『おいミシェル、朝だぞ。いい加減起きるんだぞ』
あたしの名前を呼ぶ声に反応して目を開けると、そこはあたしの部屋だった。
あれだけ森の中で動いていたからか、体のあちこちが筋肉痛になっている。
それに、何故か頭が変に痛いというか、凄く重い。何時間も昼寝をした後みたいな、何とも言えない重さだ。
「って、あれ? あたし、どうやって部屋に戻ってきたんだろう? 馬車に乗ってからの記憶が無いや……」
『オイラはしっかり覚えているぞ。さすがはオイラだぞ!』
「ふふっ、さすがシロちゃんだね。それで、あたしはどうやって戻ってきたの?」
『この変な形の山に着いた後、アランがミシェルを抱えて、ここに寝かせたんだぞ。ニンゲンの寝床は、こんなにフカフカでズルいぞ!』
えぇ!? アラン様だって、たくさん疲れているはずなのに、あたしってばそんなところでまで迷惑をかけてたの!?
『それで、その後……なんだっけ……そうだ。アランと一緒に、知らないニンゲンのところに行ったぞ。オイラ達を大喜びで出迎えた、傷だらけのニンゲンだったぞ』
「傷だらけって……その人、ウィルモンドって名前じゃなかった?」
『うーん? アニウエって呼び方の方が耳に残ってるぞ』
シロちゃんの言っている人は、確実にウィルモンド様のことだね。
でも、どうしてウィルモンド様のところに、シロちゃんを……あーっ! そうだ! シロちゃんをここに住ませていいか、ウィルモンド様とお話しないといけないんだった!
ああもう、何から何までダメダメじゃん! 散々アラン様に迷惑をかけたのに、更にかけてどうするの!?
『そうだ、ミシェルが起きたら呼んでくれって、アランに言われてたんだぞ。面倒くさいけど、おいしいリンゴを貰ったから、声をかけてやるぞ。オイラって義理堅いな~!』
「あ、シロちゃん!」
シロちゃんは、あたしの呼び止める声なんて一切聞かずに、少し開いていた窓から飛び降りていってしまった。
ちょっと、ここって三階なんだけど、飛び降りて大丈夫なの!?
「シロちゃ……あ、よかった。大丈夫そうだ」
急いで窓からシロちゃんの様子を見てみると、シロちゃんは何事もなかったかのように着地し、アラン様の部屋に向かって大地を駆けていた。
もう、心配させないでよ……ビックリして、心臓がキュッとしちゃった。
「……偉そうに心配させないでとか思ってるけど、あたしだって同じ様に、アラン様に心配をかけてた……」
いつも冷静なアラン様が、あたしを抱きしめて再会を喜んでいたくらいには、心配をかけていたのは間違いないだろう。
少なくとも、あたしが逆の立場だったら、心配過ぎて、居ても立ってもいられなくなってたと思う。
「もっとしっかりしなきゃ。そうじゃないと、アラン様に愛想を尽かされちゃう」
せっかく良い素材が手に入ったのに、あたしがしっかりしてないせいで、アラン様の生活がまた乱れ、結果的に研究の質が落ちたら意味が無い。
専属使用人として、助手として、気を引き締めないと――そう思っていると、アラン様とシロちゃんが、部屋の中に入ってきた。
「ミシェル、目を覚ましたか。調子はどうだ?」
「寝すぎて頭が重い以外は、問題ありません。アラン様は? 怪我をしてましたよね?」
「帰ってきてから、自分で治したから問題無い」
そっか、それならよかった……再会した時、アラン様はボロボロだったから、凄く心配してたんだ。
『まったく、三日も寝てるなんて、ニンゲンは寝坊助だぞ』
「え、三日? あたし、三日も寝てたの!?」
「ああ、そうだ。帰ってきた翌日に起きてこなくて心配だったから、回復術師に診てもらったんだ。そうしたら、極度の疲労で眠っているだけと言われたから、ゆっくり休んでもらったというわけだ」
み、三日? うそうそうそ……あたし、アラン様に迷惑をかけたどころか、三日も仕事をサボってたってこと!?
「ああぁぁぁぁ!! どれだけダメダメなのあたし!? こんなんじゃ、アラン様の使用人としても、助手としても失格だよ!?」
なにから何までダメダメすぎることに耐えきれなくなったあたしは、現実逃避をするように、布団をかぶって丸くなった。
……じ、自分が情けなさすぎる……穴があったら入りたい……いや、このまま消えちゃいたい気分だよ……。
「しっかり休むことは、必要なことなんだろう?」
「そ、それはそうですけど……」
「君はしっかりと役目をはたしている。だから胸を張れ」
あたしを布団から出したアラン様は、曇りない眼であたしを見つめる。
きっとあたし一人だったら、しばらくは自分のミスを引きずっていたと思う。でも、アラン様にそう言ってもらえると、大丈夫なんだって思える。
これも、あたしがアラン様のことを好きになってるからなのかな……な、なーんて……。
「ありがとうございます。アラン様の足を引っ張らないように、これからも頑張りますね」
『なあなあミシェル。オイラずーっと思ってたんだけど』
「思ってたこと? なにかな?」
『お前らって仲良しだよな? 再会した時はくっついてたし……もしかして、番なのか?』
「ぶーっ!?」
せっかく改めて誓いを立てたというのに、シロちゃんの爆弾発言に驚いて、思わず吹き出してしまった。
「おい、どうした急に。シロに何か言われたのか?」
『オイラ知ってるぞ! ニンゲンって、番は口をくっつけるんだぞ! 確か、チューって言うんだろ! オイラ達キツネにはない習慣だから、気になるぞ!』
「あ、あわわわ……あたし達は、まだそういう関係じゃ……!」
しどろもどろになりながら、言い訳を何とかしようとするが、まだ起きたばかりなうえに、ドキドキで頭が回らない。
きっと今のあたし、顔が真っ赤になってるよ。だって、ドキドキしすぎて顔から火が出そうなくらい、熱くなってるもん!
「はぅぅぅ……と、とにかくアラン様の部屋に、研究をしに行きましょう! あ、それよりも! あたしもちゃんとウィルモンド様にお話をした方が良いですかね!?」
「兄上は、仕事で屋敷を空けているが……ミシェル、シロに何を言われたんだ?」
そ、そうだよね! いきなりこんな動揺をしていたら、気になるよね! でも、こんな恥ずかしい内容の話なんて、言えるわけないよー!
『アランの部屋って……もしかして、住処のことか? やめておいたほうがいいぞ。アランの住処、足の踏み場もなかったぞ……ニンゲンの住処は、ここみたいにみんな綺麗だと思ってたけど、大間違いだったぞ……』
「えぇ!? アラン様、あたしが見てないからって、また部屋を散らかしたんですか!?」
「……さあ、なんのことだ?」
露骨に目を逸らしてる! これは、絶対にあたしがいないからって、部屋を散らかし放題にしてる態度だ!
「とぼけても駄目ですよ! ごはんもちゃんと食べて、休息も取っているんですよね!?」
「どこかの誰かのおかげで、その辺りは習慣になったから問題ない」
「なら部屋を散らかさないのも、習慣づけてください! 早く部屋の片づけをしますよ! その後に研究をしましょう!」
「あ、おい待て! とりあえず部屋着から着替えてからでも遅くはない! だから、そんなに手を引っ張るな!」
この場を乗り切るため、そして照れ隠しをするために、グイグイとアラン様の手を引っ張る。
もう、シロちゃんってば変なことを言うんだから! 番だなんて……そんな、アラン様とそう言う関係だなんて……いつかはそうなりたいけどさ……アラン様との結婚生活……えへへ、凄く良いかも……。
『……これだけ仲良しなのに、番じゃないって……ニンゲンはよくわからないぞ?? それに、まだって……それって、ミシェルは結構乗り気なんだぞ? アランも嫌がってなかったし……やっぱり番だぞ!』
無事に森の外に戻ってくると、ずっと待っててくれていた御者に出迎えられる。
目頭に涙を溜め込み、声を震わせているその様子は、あたし達が帰ってきてくれたことを、本当に喜んでくれているようだ。
『さてと。んじゃ、オイラは家に帰るぞ。達者でな』
「あっ……待ってシロちゃん!」
「ミシェル?」
「アラン様、シロちゃんを連れて帰れませんか? このまま帰すのは、可哀想です!」
「…………」
アラン様は、肯定するわけでも、否定するわけでもなく、ただ黙ってあたしを見つめる。
「シロちゃんはまだ子供なんです。それに、仲間はもう死んじゃって、一人ぼっちだって……そんなの、可哀想です!」
「それは、本人から一緒にいたいと聞いたのか?」
「い、いえ……」
「なら、ちゃんと本人に聞かないといけないな」
「…………」
あたしの視線の先には、気まずそうにこちらをチラチラ見ているシロちゃんの姿があった。
「シロちゃん、あたし達と一緒に暮らそうよ」
『な、なに言ってるんだ。キツネは人間とは住めないぞ。それに、オイラといてニンゲンになんの得があるんだ?』
「得とか考えてないよ。あたしはね、巻き込んじゃったのに、色々と協力してくれたあなたへの恩返しをしたい。その第一歩として、安全な場所の提供をして、他者との温もりをまた感じてほしいの。嫌……かな?」
あたしの真剣な気持ちをシロちゃんにぶつける。
これで、もしシロちゃんが嫌だと言ったら、その時は素直に諦めよう。シロちゃんのためにやろうとしてることなのに、シロちゃんが嫌がってては意味がないもんね。
『……かーちゃんが言ってたぞ。いつか大切な仲間を作れ。そして外に出ろ。そこには無限に世界が広がっているってさ』
「そうだね。外の世界には、この森よりももっと大きくて、綺麗な場所があるよ」
『ふーん……ま、まあそれなりに面白そうではあるし? ここに一匹でいても危険だしな! 仕方ないから、行ってやってもいいぞ!』
少し素直じゃないシロちゃんは、プイっと顔を逸らしながらも、良い返事を返してくれた。
「アラン様、シロちゃんが来てくれるって!」
「そうか。なら問題ない。兄上には、俺から話しておく」
「あたしも一緒にお願いしに行きますよ! その前に……シロちゃん、これからもよろしくね!」
『おう、よろしくなニンゲン、それとアランサマ』
「えっと、あたしの名前はミシェル、こっちはアランだよ」
『なんだ、お前にも名前はあったんだな。でも、どうしてアランはアランサマなんだ?』
言われてみれば、自然界で生きてきたシロちゃんには、そういうのはよくわからないよねと思いながら、あたしは馬車で森を後にする。
長かったようで、短かった大冒険――そこで蓄積された疲労は既にピークに達してしまったのか、強烈な睡魔が襲ってきた。
「ミシェル、眠いなら寝るといい」
「ちょっと寝ます……」
あたしは、隣に座っているアラン様の肩に頭を乗せる。
やっぱり、こうやって大切な人と平和な時間を過ごしていると、とても心が……温かくなるなぁ……ぐぅ……。
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『おいミシェル、朝だぞ。いい加減起きるんだぞ』
あたしの名前を呼ぶ声に反応して目を開けると、そこはあたしの部屋だった。
あれだけ森の中で動いていたからか、体のあちこちが筋肉痛になっている。
それに、何故か頭が変に痛いというか、凄く重い。何時間も昼寝をした後みたいな、何とも言えない重さだ。
「って、あれ? あたし、どうやって部屋に戻ってきたんだろう? 馬車に乗ってからの記憶が無いや……」
『オイラはしっかり覚えているぞ。さすがはオイラだぞ!』
「ふふっ、さすがシロちゃんだね。それで、あたしはどうやって戻ってきたの?」
『この変な形の山に着いた後、アランがミシェルを抱えて、ここに寝かせたんだぞ。ニンゲンの寝床は、こんなにフカフカでズルいぞ!』
えぇ!? アラン様だって、たくさん疲れているはずなのに、あたしってばそんなところでまで迷惑をかけてたの!?
『それで、その後……なんだっけ……そうだ。アランと一緒に、知らないニンゲンのところに行ったぞ。オイラ達を大喜びで出迎えた、傷だらけのニンゲンだったぞ』
「傷だらけって……その人、ウィルモンドって名前じゃなかった?」
『うーん? アニウエって呼び方の方が耳に残ってるぞ』
シロちゃんの言っている人は、確実にウィルモンド様のことだね。
でも、どうしてウィルモンド様のところに、シロちゃんを……あーっ! そうだ! シロちゃんをここに住ませていいか、ウィルモンド様とお話しないといけないんだった!
ああもう、何から何までダメダメじゃん! 散々アラン様に迷惑をかけたのに、更にかけてどうするの!?
『そうだ、ミシェルが起きたら呼んでくれって、アランに言われてたんだぞ。面倒くさいけど、おいしいリンゴを貰ったから、声をかけてやるぞ。オイラって義理堅いな~!』
「あ、シロちゃん!」
シロちゃんは、あたしの呼び止める声なんて一切聞かずに、少し開いていた窓から飛び降りていってしまった。
ちょっと、ここって三階なんだけど、飛び降りて大丈夫なの!?
「シロちゃ……あ、よかった。大丈夫そうだ」
急いで窓からシロちゃんの様子を見てみると、シロちゃんは何事もなかったかのように着地し、アラン様の部屋に向かって大地を駆けていた。
もう、心配させないでよ……ビックリして、心臓がキュッとしちゃった。
「……偉そうに心配させないでとか思ってるけど、あたしだって同じ様に、アラン様に心配をかけてた……」
いつも冷静なアラン様が、あたしを抱きしめて再会を喜んでいたくらいには、心配をかけていたのは間違いないだろう。
少なくとも、あたしが逆の立場だったら、心配過ぎて、居ても立ってもいられなくなってたと思う。
「もっとしっかりしなきゃ。そうじゃないと、アラン様に愛想を尽かされちゃう」
せっかく良い素材が手に入ったのに、あたしがしっかりしてないせいで、アラン様の生活がまた乱れ、結果的に研究の質が落ちたら意味が無い。
専属使用人として、助手として、気を引き締めないと――そう思っていると、アラン様とシロちゃんが、部屋の中に入ってきた。
「ミシェル、目を覚ましたか。調子はどうだ?」
「寝すぎて頭が重い以外は、問題ありません。アラン様は? 怪我をしてましたよね?」
「帰ってきてから、自分で治したから問題無い」
そっか、それならよかった……再会した時、アラン様はボロボロだったから、凄く心配してたんだ。
『まったく、三日も寝てるなんて、ニンゲンは寝坊助だぞ』
「え、三日? あたし、三日も寝てたの!?」
「ああ、そうだ。帰ってきた翌日に起きてこなくて心配だったから、回復術師に診てもらったんだ。そうしたら、極度の疲労で眠っているだけと言われたから、ゆっくり休んでもらったというわけだ」
み、三日? うそうそうそ……あたし、アラン様に迷惑をかけたどころか、三日も仕事をサボってたってこと!?
「ああぁぁぁぁ!! どれだけダメダメなのあたし!? こんなんじゃ、アラン様の使用人としても、助手としても失格だよ!?」
なにから何までダメダメすぎることに耐えきれなくなったあたしは、現実逃避をするように、布団をかぶって丸くなった。
……じ、自分が情けなさすぎる……穴があったら入りたい……いや、このまま消えちゃいたい気分だよ……。
「しっかり休むことは、必要なことなんだろう?」
「そ、それはそうですけど……」
「君はしっかりと役目をはたしている。だから胸を張れ」
あたしを布団から出したアラン様は、曇りない眼であたしを見つめる。
きっとあたし一人だったら、しばらくは自分のミスを引きずっていたと思う。でも、アラン様にそう言ってもらえると、大丈夫なんだって思える。
これも、あたしがアラン様のことを好きになってるからなのかな……な、なーんて……。
「ありがとうございます。アラン様の足を引っ張らないように、これからも頑張りますね」
『なあなあミシェル。オイラずーっと思ってたんだけど』
「思ってたこと? なにかな?」
『お前らって仲良しだよな? 再会した時はくっついてたし……もしかして、番なのか?』
「ぶーっ!?」
せっかく改めて誓いを立てたというのに、シロちゃんの爆弾発言に驚いて、思わず吹き出してしまった。
「おい、どうした急に。シロに何か言われたのか?」
『オイラ知ってるぞ! ニンゲンって、番は口をくっつけるんだぞ! 確か、チューって言うんだろ! オイラ達キツネにはない習慣だから、気になるぞ!』
「あ、あわわわ……あたし達は、まだそういう関係じゃ……!」
しどろもどろになりながら、言い訳を何とかしようとするが、まだ起きたばかりなうえに、ドキドキで頭が回らない。
きっと今のあたし、顔が真っ赤になってるよ。だって、ドキドキしすぎて顔から火が出そうなくらい、熱くなってるもん!
「はぅぅぅ……と、とにかくアラン様の部屋に、研究をしに行きましょう! あ、それよりも! あたしもちゃんとウィルモンド様にお話をした方が良いですかね!?」
「兄上は、仕事で屋敷を空けているが……ミシェル、シロに何を言われたんだ?」
そ、そうだよね! いきなりこんな動揺をしていたら、気になるよね! でも、こんな恥ずかしい内容の話なんて、言えるわけないよー!
『アランの部屋って……もしかして、住処のことか? やめておいたほうがいいぞ。アランの住処、足の踏み場もなかったぞ……ニンゲンの住処は、ここみたいにみんな綺麗だと思ってたけど、大間違いだったぞ……』
「えぇ!? アラン様、あたしが見てないからって、また部屋を散らかしたんですか!?」
「……さあ、なんのことだ?」
露骨に目を逸らしてる! これは、絶対にあたしがいないからって、部屋を散らかし放題にしてる態度だ!
「とぼけても駄目ですよ! ごはんもちゃんと食べて、休息も取っているんですよね!?」
「どこかの誰かのおかげで、その辺りは習慣になったから問題ない」
「なら部屋を散らかさないのも、習慣づけてください! 早く部屋の片づけをしますよ! その後に研究をしましょう!」
「あ、おい待て! とりあえず部屋着から着替えてからでも遅くはない! だから、そんなに手を引っ張るな!」
この場を乗り切るため、そして照れ隠しをするために、グイグイとアラン様の手を引っ張る。
もう、シロちゃんってば変なことを言うんだから! 番だなんて……そんな、アラン様とそう言う関係だなんて……いつかはそうなりたいけどさ……アラン様との結婚生活……えへへ、凄く良いかも……。
『……これだけ仲良しなのに、番じゃないって……ニンゲンはよくわからないぞ?? それに、まだって……それって、ミシェルは結構乗り気なんだぞ? アランも嫌がってなかったし……やっぱり番だぞ!』
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